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プロジェクトP海中の星..


 それは……女王陛下からの指令だった。


 都市ホエールごと海を南下し……帝国を嵐竜が荒らした場所から上陸。強襲することの命令書が発令された。


 我々は悩んだ。数少ない人員で如何に犠牲を少なく上陸作戦を成功させるかと。


 スキャラ姫様は陛下から策を聞いていた。そう、我々は魔物ではない。知を持つ英魔族なのだ。


 だからこそ道具を使えと。Pプロジェクトの始まり。


 そう、これは初めて我が種族が陸へ目指した物語である。





 最初、スキャラお嬢様がもって帰ってきた案件に都市中は驚愕した。ホエール様は寝ていたが我々だけでの攻略。「全て自由にしていい」と言うが我々は過去何度も何度も陸を目指し邪魔されて失敗しており、戦いは不慣れとしていた。


 首脳陣たちは皆が不安そう顔をし、下を向いている。誰もが顔を曇らせ、無理だと言わんばかりにであった。


 しかし、スキャラお嬢様は叫んだ。


「今、我々が地上に出れているのはたまたまだ。我々が掴みとった栄光ではない!! 女王陛下の栄光ではないか!! 顔を上げよ!! ここで我々が活躍すれば晴れて英魔国民となれるだろう!!」


 スキャラお嬢様の声は首脳陣たちの顔を上げさせた。そして続く。スライム族代表のスラリンお嬢……王子が続いた。


「女王陛下は女性だ。しかし、女性でありながら我々を陸に導いた。女性に出来て何故!! 我々男どもは陸へと導けない!! 目を醒ませ!! 男はな一生に一度でいいから子孫に自慢できる事をやるべきだ!!」


 スラリンの言葉は首脳陣達を立ち上がらせるに十分だった。


 プロジェクトPが発足されるのは時間はかからなかったのである。





 女王陛下の策は道具を使えとの事だった。道具とは槍や武器の事だが、スキャラお嬢様は兵器と説く。


 我々は帝国に戦車と言う馬車で引き踏み潰す兵器があること。攻城兵器と言うものがあることを知った。


 ある人が言った。無人でなにか走らせれば被害は小さくすむのではと。


 そしてその案は受け入れられ………開発が始まった。兵器名は女王陛下発案。音楽のドラムのような姿で転がり相手の目の前で炸裂するパンジャンドラム計画が発令。


 そして私たちの苦悩の日々が始まるのだった。





 我々は最初、爆薬としてニトログリセリンスライムの体を分けて貰い。筒に詰めて、魔力によって転がす。


 地上側で初めての都市オクトパスの実験であった。


 砂浜での試験。何十台の走行に都市中が期待を乗せた試験。多くの観客が見守るなか叫ばれる。


 パンコロ!!


 結果……勢い良く砂浜をかけ上がりながら走り出したパンジャン達。


 しかし、その日事故が起きた。


 制御されていないパンジャンが逆走、観客とスキャラ族長を襲撃し、スキャラ族長を重症に追いやったのだ。


 計画は凍結されると思われた。しかし……スキャラお嬢様は怪我で運ばれるなかで我々は勇気つけられた。


「死ぬほど痛いです。素晴らしい威力でした。故に。故に英国は各員、『己が義務を果たさん』と期待します。完成させよ」


 我々は激励され、都市はその威力に沸き上がり、改良型を模索することになったのだった。





 改良型は苦行の数々だった。放てば制御できないため。真っ直ぐに進まない。


 我々は悩んだ。真っ直ぐに進ませる方法を。車輪を大きくしたり。小さくしたり。丸くしたりと小さな模型で試作の日々だった。


 無知識を呪い。


 結果が産み出せないことに焦りを感じ。


 仲間同士で喧嘩しあった。苦しい日々が続き。計画は失敗に終わるかと思われながら。試験日が迫る。


 我々は……何も出来ないのかとうちひしがれる中。スラリンお嬢が発案した。


「私が制御する」


 一同は驚いた。そして……それを否定した。しかし……スラリンお嬢は笑顔でいい放つ。


「挑戦なき者に勝利はない」


 多くの者が痺れた。多くの者が頷いた。


 そして……試験日。改良型パンジャンドラム試作1号機が完成した。





 火薬はニトログリセリンスライムの一部を貰ったスライムお嬢がパンジャンドラムに乗り込み制御するという物だった。


 勢い良く砂浜でスラリンお嬢様の詠唱「パンコロ」と言う叫びと共に転がり。


 用意された城石に向けて走り出した。


 皆が胸に手を当て祈る中で実験。


 誰もが声を出さず。陽の太陽の女神に祈りながら成功を望んだ。


 結果は………驚愕なことが起きた。


 速度調整から、左右の回転速度を変えるだけでグルグルと回り。城石をグルグルグルグルし出したのだ。


 歓声が上がり。皆が立ち上がった。泣き出すものも居た。


 そして………パンジャンは城石にぶつかった。


 城石は吹き飛んだ。


 パラパラと壊れるなかで……我々は尊い犠牲に感謝したのだった。


 スラリンお嬢様に感謝を。尊い犠牲者に敬礼を。


「「「「スラリンさまバンザイ!!」」」」

 

 そしてスラリンお嬢様の犠牲により。スライム族が唯一無二の制御者となるパンジャンドラムの開発が決まった。


 名誉の戦死したスライムのお姫さまに我々は敬意を評して、開発に没頭した。


 しかし、我々は気が付いていなかった。大変な事に。


「死ぬほど痛いですが。生き残れます。戦えます」


 スラリンお嬢様は生きていたのだった。退院後、我々は正座させられ……勝手に殺された事にしたことにお叱りを受けるのだった。






 制御が決まり、乗り手の育成が始まった。結果はニトログリセリンスライム直々に乗ることになった。


 ニトログリセリンスライムは元々はスライムが食われたとき爆発して捕食者と同士討ちすることで他のスライムを護るだけの生き方だったが、彼らは新しい職場が見つかり。陽の芽を見つけることができた。


 我々は下級生物スライム族が。英魔族スライムとなって行く過程も産み出したのである。


 スラリンお嬢様はスライムの栄光を挑戦によって掴み。勝利したのである。






 パンジャンドラムの多くの試作品が出来る中で我々は大きな大きな壁にぶち当たる。


 しかし、その度に改良を重ね。スライム族のパンロット(パンジャン操縦者)の意見を取り入れて改造を行い。少しずつ前へと進む。


 概ねの設計が決まり。量産型パンジャンと司令官型パンジャンの製作が決まった。


 だが我々は………落とし穴に落ちた。



 これをどうやって遠海から近海、浜辺まで運ぶかを悩んだのだった。






 最初の一案は現地製作案だった。


 浜辺で作り上げて運用だ。


 しかし、これは失敗することがわかった。


 まず、パンジャンは個々に癖がありパンロットは専用機を所望すること。


 次に現地を知らないために材料があるのかと。


 そして……一番は。


 浜辺を攻めるために作っているのに本末転倒であること。


 発案者はパンジャンに紐をつけて突撃出来るかの試験に従事し、不可能を立証した。時間を無駄にしてはいけない。






 次の案はパンジャン改良案だった。パンジャンに海を進む能力の付与である。


 しかし……パンロットの反発。余計な機能をつけての故障率。操縦性。水中での運用不向き。パンジャン極地旋回、信地旋回の旋回速度低下が起こる。


 パンロットは最近恐ろしいほどにパンジャンを使いこなす事に成功している。しかし、今から新しい技術模索するのは時間が足りない。


 結果は却下だった。


 発案者はパンジャンドラムにくくりつけて一緒に突撃の試験に従事。結果は酔ってしまい不可能だとわかった。





 次の案は元から上陸用の船を用意し運ぶ案が浮かんだ。


 一番実現出来そうだが非常に大量の船の運搬が必要であり、パンジャンドラムの数を減らして運用する事になってしまう。


 ホエールどのの背中のキャパを越えて動きが阻害される恐れもあり。作って持っていく運用は難しいと思われた。


 発案者はもっと悩めと個室に隔離。発狂し、結局は「何も思い浮かばない」と言われた。





 パンジャンドラムに括った奴も皆、何も思い浮かばないまま。時間が過ぎる中でスキャラお嬢様が我々の前に姿を現した。


 一通の手紙と一緒に。


「女王陛下に報告し、そして相談したわ。返答が今、来たの。部下のために私はいる。部下の幸せのために私はいる。どうぞ、読んでいいですよ」


 我々は感激した。それを慌てて開ける。内容は「魔法を使え」と言う言葉だけだった。


 魔法を使えと言われた我々は悩んだ。生活魔法や攻撃魔法防御魔法に何か切っ掛けがあるのかと。


 一人が………叫んだ。


 冷水を飲んだ硝子コップをかざして我々に見せたのは……





 氷だった。







 氷で船を作ろうと言う。


 最初は我々は出来ないや。不可能だと言った。しかし……ホエール様はそれを聞き、霊体で会話に参加してくれていた。


 ずっと前にパンジャンドラムの事故で大笑いし、都市が小刻み揺れ続けた事件のあとずっと我々を見守ってくれていたようだ。


「ワシの背中にお前らの都市が。魔法の膜で覆われ。今の生活がある」


 ホエール様は懐かしむように我々に諭す。


「最初は無理や。不可能だと思われとったが……結果は出来た。故に挑戦者に【無理】という言葉はない。お前らは限界に挑戦していない。欠点が見えてどうしようもないくらい考えろ。大丈夫じゃ英魔族だからの」


 我々は氷で船を作る計画を発案したのだった。





 パンジャンドラム用空母の開発はまたしても苦難の始まりだった。


 我々の魔法では精々小舟一隻程度の力しか産み出せず。無駄も多く。上手く成形出来ないのである。


 我々の一部は英魔王城の図書を日夜読み漁り。知識を蓄えたが有効な魔法は産み出せなかった。


 しかし……司書である女性がなんとエルフ族長に話を持っていき。我々はあの盲信狂者グレデンデ族長に会うことが出来た。


 魔法に詳しい人員を頼み込んだ。


 昔はいがみ合っていた仲だったのに英魔族と言う枠組が出来た結果が目に見えて生まれる新しい縁。


 なんと、100名の魔法使いに100名ほどの氷のエレメンタル妖精族が我々の研究に加担してくると言うのだった。


 エルフ族長は笑顔で語った。


「とにかくやってみなさい。やる前から諦める奴は一番つまらない。私は姫様を……陽の信仰を広めた。大丈夫………出来る!!」


 異種族に力強く応援され、我々は熱い思いを秘めて研究に性を出すのだった。








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