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女王と王子の出陣..


 私は馬舎でドレイクをおこずかいで買い。それに跨がり何人かのエルフの従者に挨拶する。荷物は一人分の非常食と生活品を詰めた。準備していると城の使用人や衛兵が出迎えてくれる。図書館での司書も顔を出して私を見つめる。


「本当に行かれるのですか?」


 不安そうな声であるエルフの使用人が声をかけてくれた。私はそれに頷く。


「帝国はまだ準備が出来ていないだろう。私たちもだ。それに決まった事……申し訳ないのは戦いに絶対に勝つと言えないことだ」


「……」


「だからこそ行く」


「従者一同、お帰りをお待ちしております」


「……まぁ私がいないと給料でないもんね」


「あっそうですね。姫様にお布施で暮らしてますので」


「ふふ。そっちの方が俗世ぽくていいわ。わかった。絶対に帰ってくる」


 私はドレイクを歩かせる。城の門で皆が手を振り、私は振り返す。すると……数人のドレイクに乗った人が幅寄せを行い私に並走した。


「姫様……もう出陣ですか。兵も連れず」


「そうです。200人のあの精鋭の半分でも」


「……エルフ族長。ダークエルフ族長。ここからの戦力は投じない」


 ゆっくりと同じ歩みをするのはダークエルフ族長とエルフ族長だった。エルフ族長が話をし、ダークエルフ族長は黙る。


 周りの観衆がなんだなんだと集まりだしながらも気にせずに私に言葉を続けた。


「しかし……姫様一人では」


「『護衛は要らぬ』と言った。まぁゆっくり行くさ。お前らは難民の受け入れを準備しろよ……3から5個の都市住民が来る。壁は無視して住居だけを用意すれば……なんとか出来るだろう」


「はい……妖精も木を切るのを許してますからね」


「1月、2月、3月」


「………なんでしょうか?」


「耐えられるだけ耐えよう」


「………」


「必ず帰ってくる。きっとな」


「わかりました。絶対に曲げないその意思にご武運を」


 二人は拳を握り胸の前へ叩きつける。


「陽の加護があらんことを!!」


「陽の加護があらんことを!!」


「……ええ。加護はありますよきっと」


 最近は何故かその陽の加護に関して疑問を持っている。何故か私にはその加護は貰えない気がするのだ。空の青空に輝く光を見て……何となく私には要らないのだろうと思う。胸に黒い物を秘めているうちは。





 トラスト・アフトクラトルの騎士である俺は遠征前に妻と共に父上の元へ訪れた。妻が一言聞きたい事があると言うのだ。きっとランスの事だろう。


 騎士団の執務室で父上は待っていた。妻であるアメリアの震える手を引きながら扉を開ける。


「おお、アメリアお嬢。こんにちは」


「こんにちは。お義父様……話を伺いました。出兵なさると」


「いかにも。1月後出兵だ」


「息子からの手紙に……英魔族で戦うとかかれてました」


「………知っている。しかし、そういうことだ」


「何故!? あんなにも愛した孫ではなかったのですか!!」


「アメリア……」


「アメリアお嬢……」


「そんな……なんでそんな躊躇なく剣を向け合えるのです!!」


 妻は叫ぶ。俺も父上もその気持ちがわかる。だが……妻は女だった。


「アメリア……父上は私を外した理由にそれがある」


「ああ、トラストを外した理由に剣を向けさせないとな。親子で殺し合うことは悲しい」


「だったら!! お義父上も!!」


「ワシは長く生きた。もう十分。愛しい我が孫と一戦交えるのは綺麗な余生だ。わかってくれ」


「………あぅ」


「アメリア……気持ちはわかります。しかしこれは男の問題です。覚悟を決めた息子を信じてあげましょう」


 優しく俺は妻を諭そうとする。一人息子なのだから……悩むこともわかる。だからこそ僕は笑顔で答えた。


「息子はきっと大丈夫です。私が育てた王子なのですから」


「………あの子。それで一度つぶれました」


「そう。しかし、今度は自信を持ってそうだ」


「そうだな。孫の晴れ姿でも見てやるか。前回の時は不在だったからな」


 前回とは連合国との一戦。息子は帝国に仇なす罰を背負った。今も帝国に仇なす。剣を抜けたのは理由があったのだろう。きっと、「今の帝国を罰せよ」と神が使わせたのだ。


「………いつも男性は私たちを悲しませます。うぅうぅ……」


 アメリアが顔を伏せて泣き出し、手で覆顔を覆う。


「父上……手加減せぬようお願いします」


「なーに。敵いはしない。まぁ「帰ってこい」と言うぐらいはするの」


「……うぅ……なんで。どうして……こんな……家族で……」


「昔から。そういう物はある。アメリアお嬢。息子をこれからもよろしくな」


 父上は背中を見せる。俺はそれにお辞儀し、アメリアの手を繋いで外へ出た。アメリアを泣かせたくはなかったが。こればっかりは……俺の手ではどうすることも出来ず。黙って連れ出すのだった。






「リディア……君が馬車を引くのかい?」


「えっ? ランスさん、引きませんか?」


 僕は頭を押さえる。目の前に馬車を手で持って牽こうとしている嫁に対してだ。


「どれだけ距離があると思ってる」


「えっ? すぐそこまででしょう?」


「……疲れるからやめなさい」


「せっかく牽こうとおもったのですが……変でした?」


「馬を買いましょう。馬を2頭。それで牽けば……」


「却下」


 リディアがムッとして胸を押さえるように腕を組んだ。ムッとする姿は人らしく可愛らしい。長くなった髪で大人っぽくなったかと思えばそんなことはなく。まだ、少し幼さが残る。


「お金を貯めているのです。そんな贅沢はいけません」


「……」


 前言撤回。しっかりしているようだ。


「では。荷物はどうしましょうか?」


「私が背負います。徒歩が一番です」


「………本気かい?」


「お金は節約するに越したことがありません。走るのは得意です」


「僕だけ馬を買おう。馬車は借りたの返そうな」


「走ればよろしいのでは?」


「残念だが………そこまで僕は速くない。鎧を着るしな」


 リディアとの差を感じる。魔物との差を。


「4本でカサカサしたら大丈夫じゃないですか?」


「僕は人間だよ……クククッ。それこそ遅くなる」


「笑わないでください……真面目に答えたんですよ?」


「そうか、すまなかった。でも、君より遅いし体力はない」


「では、馬だけにしましょう。私も馬みたいな種族なら……よかったです」


「ケンタウルスの女性か。君のほうがずっときれいさ」


「あっ……うれしい」


 二人で見つめ合いニコニコする。やっぱりリディアは可愛い。姿が魔物の姿でもだ。


「あのーランスロットの客さん……イチャイチャせず買うか決めてくれ」


 呆れた素振りで近くにいた顔見知りの亞人のミノタウロスに声をかけられる。早く決めてくれとの事だろう。筋肉隆々の牛男はパンツ一丁で逞しい。


「ああ、すまない。馬一頭頼む」


 僕は懐から金貨袋を出し、金額を聞いて驚く。思った以上に倍ぐらい高い。


「へい、ありがとうございました。ちょっと待ってください連れてきます」


 馬主が店の馬舎へ行くと声が聞こえる。飼育員だろうか。


 パカパカ


 蹄の音が聞こえ、屋外の陽に照らされてある一匹の。


「こんにちは。お買い上げありがとうございます」


「「え」」


 リディアと顔を見合わせる。


「ホリー・ケンタウルスです。ご主人様」


 上半身は人間の服を着た、少し可愛いげのある亞人が歩いてきたのだ。胸もぷっくりと膨らんでるのがわかるぐらいでなんとも妖艶だ。角は隣の牛男に良く似ている。


「チャンジ!! ダメです!!」


 リディアがバッテンを作り拒否する。


「女の子はダメです!! 女の子はダメです!!」


「お嬢さん。そんなこと言わず。娘を頼みます」


「リディアお嬢様……お願いします。旅がしたいのです」


「そう……可愛い娘には旅をさせろと言うのだよ。いっそランスロットが貰ってええぞ」


「僕はリディアが居ますので……」


「きゃぁ~お父様。ランスロット様ですよ!!」


「娘よしっかりご奉仕するのだよ」


「はい!!」


「私は拒否しましたよ」


 リディアがむくれている。可愛い可愛い嫉妬姿だか。僕も道徳的にどうかと思い、頭を下げる。


「すいません……流石に娘さんに乗るのは気が引けます」


「いや……すまんが。他の馬は全部売れてなぁ。他の都市……行きだ。娘以外も出払ってしまって。ランスロットの兄ちゃんに徒歩はいけないと言うことでな………」


「すいません………母親ももう歳で長距離は無理なんです」


「花嫁修行の一貫として頼むわ。リディア嬢なら。いい師匠になってくれるとも思ったんだ」


「リディアお姉さまお願いします」


「………」

 

 二人の亞人に頭を下げられ僕は困惑する。リディアに向き直るとリディアは両手を重ね同じ言葉を反芻していた。


「お姉さま……お姉さま……」


「リディア?」


「は、はい!?」


「良いだろうか?」


「わ、わたしは……ランスさんが『いい』と言うならいいと思います」


「わかった。では、ホリーさん一緒に行きましょう」


「はい!! お願いします。ランスロット様、リディアお姉様」


 リディアが胸を張り威張り出し、僕はなんとも可愛い嫁の仕草に当てられて彼女が族長だった事を思い出すのが遅れたのだった。そう、彼女は族長である。









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