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マクシミリアン騎士と交渉..


 膨大な農地の上を飛び、俺は懐かしきかの地に降りた。砦で護られたマクシミリアン自治領に竜が降りてくる光景は驚かれ騎士達が集まり槍を構える。土煙が舞うなかで俺は竜の背から降りた。帝国側なのかどうなのかはわからないが一応挨拶する。


「こんにちは………」


「何者だ……竜騎兵……帝国の者か?」


 衛兵の代表者だろう紫の鎧の人物に声をかけられる。俺を帝国と間違えたのは鎧を着ていたからだろう。角も折っており見た目は人間と変わらない。


「権力者に会いたい。冒険者カードだ。話をしたい」


「ふむ。本物だな」


 俺のカードを受け取り魔法を流して確認後に返してもらう。冒険者としての身分は便利であり、位も高いために一目置かれる。だからこそ……冒険者を名乗る。


「権力者……騎士団長は今は帝国に顔を出す予定だ。お前は何者だ?」


「騎士団長? 俺が会いに来たのはエルミア・マクシミリアン殿だ。名をトキヤと言う」


「……大祖母さまをご存知か……トキヤ……もしや!?」


「ギルドカードで名前が書いてあっただろ……」


「………少し待たれよ」


 衛兵のお偉いさんは兵士を一人走らせる。もちろん報告にだろう。俺は隣の竜人に人になれと言い姿を変えさせ服を着させた。


「湯治から帰って来ているか?」


「……帰って来ている。ふぅ、英魔国の使者か……ますます噂は本物なんだな」


「キナ臭いのはいつだって変わらない。魔物がいる中での生活だ。明日には滅んでいてもおかしくはないほど。強い魔物もいる」


「いかにも……」


 衛兵長と最近の事を聞きながら数分後。馬の土を蹴る姿が見える。姿は金色の髪に長い耳をつけた女性。その馬が駆け込み俺の隣で土煙を上げて止まった。


「よく来た。英魔王ネフィアの王配トキヤ」


「はい。お久しぶりでございますエルミア様……よろしければ堅苦しい挨拶はやめましょう。聡明なあなた様なら……少しは理解されている事でしょう」


 深く頭を下げる。馬上の姫はそれを眺めたのちにため息を吐く。


「……そうね。ようこそマクシミリアン領地へ。案内するわ」


 馬上からマクシミリアンの姫は降り、馬を衛兵に預けて俺たちは槍の囲いを抜けたのだった。


「衛兵長………ここで見たことは他言無用だ」


「……はい」


 重々しい空気が一瞬で生まれ、これからの行く末を見守る領民が不安そうな顔で俺たちを眺めるのだった。





 マクシミリアン領地主の屋敷についた瞬間。俺は竜人に暇をあげる。執務室に通され、変わらない洋風の部屋に深い椅子と机が置かれた所で俺はドッシリと構えた。暗い空気が針のように肌を突き刺し、ピリピリと体に電撃を走らせる錯覚を生む。


「飲み物用意させるわ……何かいいかしら?」


「紅茶でお願いします」


「……」


「……」


 目の前の美しいハイエルフの顔を拝む。悩んでいる顔に俺は言葉を待った。


「……彼女は元気かしら?」


「風の噂は聞かれていますでしょう。はい、彼女は元気です………生きています」


「含んだ言い方ね……あの子、無理してない?」


「………」


 「嘘も言えればいいのに」と俺は思う。しかし……それは不誠実だろう。しかし、言葉は出ない。


「……」


「あの、帝国の南で封印されし竜を討ち取った。その手腕は素晴らしいわ」


「奇跡……ですね」


 運が良かった戦いだった。代償は高くついたが。


「そう……ね……あなたは彼女に関して嘘が下手ね」


「……」


「悲しい顔してるわ。私でいいなら……相談に乗ってあげるわ。お祖母ちゃんに話してみなさい」


「今、ネフィアは右目が見えません」


「えっ……」


 予想外な言葉に彼女は顔を暗くする。


「他にも無理した結果が現れ……以前までの強さはないです。立つのもふらつく時がある」


「………それでも戦おうとしているのね」


「はい。残念ながら。俺は逃げることも考えました。しかし……ネフィアは「胸を張って戦う」と言い。決心して皆をまとめあげています」


「ふぅ……頑張ってるのに一緒にいてあげないのですか?」


「愛した女がゆっくりと壊れていくのは見てて辛いですね」


 俺はこんな事を言いに来た訳じゃない。しかし、吐露してしまう。


「はぁ……全くゴチャゴチャしてるんですよ。色々と」


「……そう。でも、あなたたちなら。大丈夫でしょうね」


 エルミアが紅茶を用意し、机に置く。俺はそれを啜り、大きいため息一つ出した。


「ありがとうございます。ん……美味しい」


 スッとした味で飲みやすい。


「おいしいでしょう。我が領地の物は」


「はい………では、本題です。あいつの書く手紙の宛先を見ました。エルミア殿へ手紙が届いているでしょう」


「ええ……届いている」


 内容は知っている。知っているが……知らないそぶりをする。理由は反応を見るため。


「………『帝国のために剣を違える事を私は怖れない。戦場で逢いましょう』だったわ」


 頬に手を置き目を伏せる彼女に俺は悩んでいる事を知る。よかった。まだ交渉できるらしい。


「帝国からは?」


「……参戦要求のみ。しかも………使者のみしか来てないわ」


「自分も使者です」


「王配がわざわざ来る方が重要でしょう」


「それだけ重要視していると言うことですよ……これ以上無理はさせたくない」


「納得した……参戦要求の不受理をお願いしに来たのね」


「如何にも。ネフィアはマクシミリアン騎士は恩に厚い騎士と思っているでしょう。故に自分を敵としても恨まず。『かかってこい』と胸を張っている。しかし、マクシミリアンは脅威だ」


「…………私が一任してると思ってる?」


「一任出来る。現に………姫であるなら」


 王族ではないが……エルミア・マクシミリアンの功績は多大な物だ。民の信も厚い。騎士団よりも発言力がある。僥倖なのは知り合いであったことだ。


「………ふぅ。あんまり帝国が好きじゃないわ」


「ネフィアは陛下を好んでますがね」


「まぁ……陛下は私に対して対等を示し、今の平安をくれた。しかし、手紙も使者も陛下の息のかかった奴じゃない。それも私は『嫌だ』と思っている」


「……では。参戦要求破棄お願いします」


「……あなたが頭を下げるのね王配」


「王配なんてあいつの隣にいるだけで成れた。プライドはございません」


「ふふふ……ふふふ……」


 エルミアがクスクスと笑いだす。


「そう……そうなの。愛したのが……たまたま……王だっただけ」


「そう、たまたま王だっただけですね」


「あなたと私は似てる。立場もね。一応、私も王配……だった」


「そうでしたね。マクシミリアン王」


 俺は好感触を得て。ここだと思い。ある条件をつける。


「マクシミリアン王国をもう一度復興させませんか?」


「………」


 唐突に俺は言葉を出し、悪い笑みを向ける。いまここでネフィアに無理はさせないを言ったのにも関わらずに交渉する。


「諦めたのですか?」


「帝国は無理と諦めたわ。私は………」


「………ネフィアに恩を売れば。死都奪還出来ます」


 エルミアが鋭い目付きになり俺を見る。獣のような鋭い目付きに頷いた。「話せ」と言っている。


「ネフィアの力はエルミア殿が思うより強くなり。魔族でありながら奇跡を起こすことが出来ます」


「聖職者ね……騎士に随伴させ。回復させる者たち」


「はい。ネフィアは異常な力があり、それは……呪いさえも浄化させてしまうほどに強力です」


「死都を普通の都にすることが出来ると?」


「出来る。現にネクロマンサーの天敵です」


 昔に目の前で焼き払ったのを見たことがあり、塔でも見せたあの力を利用する。


「………」


 目を閉じ、エルミアは悩む。


「時間をください……時間を」


「はい……答えをお待ちしております」


 俺は紅茶を飲みこみ唸る。マクシミリアンをこちら側に引き入れるのは一番いいがすでに参戦しない事を知り、それだけで良かった。しかし、悩むと言う言葉に期待しようと考えるのだった。上の結果を。












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