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スキャラ族長と三者面談..


 私はまだ距離感を掴めないまま廊下を歩く。足もおぼつかない状態で何度も何度も壁にぶつかるし、出っ張っている柱にもぶつかる。たん瘤ができそうなほど、ぶつかるが耐えられない事はない。


 痛みには慣れている。痛みを感じることは生きている証として私は思った。なお、煩わしいので痛覚は切るのだが。


「姫様大丈夫ですか?」


「大丈夫よ。扉を開けて」


「はい……」


 私は会議場の扉前で警備している衛兵に心配される。早く体になれないと不安がられてしまうと危機感を持つ。この前は大丈夫だったのに今日はダメだ。


 弱体化を気付かれてはいけない。彼らは私を強者として見ている。バレたら士気に関わるだろう。


ギギギッ!!


 そう考えながら。重々しい扉を開け私は堂々と胸を張って中央を歩いた。


ザッ!!


「女王陛下……おはようございます」


「おはよう……えっと……」


 スキャラ族長のお嬢さんとその従者の水っぽい女性しか居なかった。なんというか……静かだと思ったのだ。


「今日は質問会の予定でしたが……あなただけなんですね」


「み、みたいですね。ははは………」


「発言いいでしょうかお嬢様」


「ええ。どうぞ。ご紹介します。素スライム族のスラリンです」


「どうも……綺麗な女性な方ですね」


 人魚のような姿で、水の羽衣を着た女性がスキャラ族長の後ろでお辞儀をする。


「……あの。女王さま。この人性別ないです」


「姫様、雌雄同体とお呼びください。この姿は殿方を喜ばせるためです。一応全裸ですし」


 スラリンという女性が水っぽい胸を見せる。私は何処かで知った知識を思い出す。


「……そういえばスライムの魔物見ませんでしたね」


 雑魚の代名詞のような魔物なイメージがある。


「私たちとは違った亜種の魔物はいます。しかし、数が少ないだけでしょう。水辺がないと小さくなってしまいますので」


「へぇ~。結局他……居ませんね。居ないのであれば伝えてくれば良かったのに」


「皆さん。忙しいのです………きっと」


「スキャラさんは?」


「………」


「女王陛下……お嬢様は質問しに来ております。暇ではございません」


「ごめんなさい……そういう意味では……」


 私は言葉の軽率さを謝る。少し、考えなしだったことを恥る。腕を組んだ。3人だけで会議なんて意味を成さない。では……どうするか。


「……帝国の出兵はまだ聞いてませんから。私の部屋でお茶を飲みながらでもお話ししましょうか?」


「よ、よろしいのですか!?」


「……女王陛下。私から申し上げますとそれは暗殺されたり、危険な行為かもしれません。寝室に招くと言うのも……あまり陛下ご自身で……」


「そこまで堅い王を演じるつもりはないわ。忠臣を呼んで問題ないでしょう? それに……あなたたちほどにやられるほど私は弱くはない。一つ疑問に持ちなさい。何故、護衛がいないかを」


 ダークエルフ族長やエルフ族長が打診してきた事に護衛があった。完璧に全員が味方とは限らない。帝国の暗殺者だっているだろうと言われている。


 だが、そんな余剰の兵は居るのかと思う。一人でも足りないのに護衛なぞ贅沢だ。だからこそ。言い放つ。


「私より強い護衛を用意できるもんなら用意してみろ。余は何者ぞ?」


 私は帯剣の取っ手を叩きながら不敵の笑みを向けた。真っ直ぐつり目を吊り上げて。そんな姿に何故かスキャラ族長とスラリンが見つめ合い。笑顔になって私に向き直る。


「「女王陛下でございます!!」」


 キャキャと私を見ながら二人が手を取り合い。私はその姿にある光景を思い出す。昔に上がった劇場のあの雰囲気に。


「すごい格好いいですね!! やっぱり!! 生で見れました!!」


「お嬢様、こう勇ましいの格好いいですね!!」


「でしょう!! エリックさんに夢を見せてもらったんですけど。惚れそうですよね!!」


「ですね!! お嬢様!! お嬢様も同じ女性なのに……」


「わ、わたしを見ないで……族長だけど……族長だけど……その比較しないで」


「申し訳ございません。女王陛下……メイドを雇うご予定は? 執事でもよろしいです」


「ちょっと!? スラ姉さん!? 役職やめないで!?」


「……お嬢様。長い間……ありがとうございました」


「!?」


 私は眉間のツボを押す。スキャラ族長だけが異様に不安になってきてしまった。帝国を攻める役なのに大丈夫だろうか。






 私は自室に招き入れる。綺麗なテーブルに彼女たちを待たせ、魔力炉で湯を沸かし紅茶を入れる。この国は勝手にハーブの花が咲く。それは香りが強く非常にミルクと合うのだ。


 お盆に乗せて、テーブルに置き。おやつとして買ってくれているクッキーもお出しする。


「どうぞ」


「あっはい……すいません。女王陛下……」


「……言われればご用意致しましたのに……」


「気にしなくていいわ。家事が出来なくて女を名乗れません。マクシミリアンの師匠も家事が出来ますしね」


 師匠とは、あのハイエルフの女性である。


「スキャラお嬢様。言われてます。言われてますよ」


「……」


「あら、スキャラちゃん。家事が出来ないの? それでは……嫁ぐことできないわね」


「……」


「女王陛下。もっと言ってください。家事が嫌だとゴネておりますの」


「……まぁ私も最初はそんな物だったし。追々出来るようになればいいわ。まぁ、私の場合体罰アリでいっぱい尻を叩かれたわ~懐かしい」


 私は頬に手を添えて懐かしむ。悲しいかな……過去を懐かしむのが歳を取ったと言うこと。悲しい。スキャラちゃんが苦笑い頬を掻く。そして私に質問を投げた。


「女王陛下の尻を………どんな命知らずなのでしょうか?」


「500年前に滅んだマクシミリアン王の姫。ハイエルフのマクシミリアン元騎士団長様ね。昔はその家にメイドで働いてたわ」


「ほえ~!? 本当だったんですね!?」


「お嬢様も何処かで修業させるのもいいかもしれませんね……」


「うげぇ~」


「私の元でもいいわよ。ただし………スパルタよ」


「………粛々とお断りさせてください」


「女王命令」


「………………」


「冗談よ」


「はぁあああああ~」


 スキャラ族長が大きいため息と胸に手をやる。むにゅ~と胸が歪むくらいに安心したらしい。私も椅子に座り香りのいい紅茶を啜る。


「まぁ、昔もあなたみたいに家事なんてとか……料理なんてクソッタレって思ってましたよ。ですが……好きな人が出来ますと変わるんですよ色々」


「そうなんですか?」


「そうなんです。もっと歳を取ったらわかるようになるわ」


「お嬢様は……女王陛下よりもしかしたら年上かもしれません」


「………」


「………」


「……気にしないで行きましょう。族長全員歳上で今更です」


「はい……」


 私は頷きながら。気にしないようにする。見た目幼い人でも年上はよくあるものだ。考えてみれば私は最年少のような立場だろう。


「にしても……女王陛下」


「ここでは、ネフィアと呼んでいいよ。スキャラちゃん」


「そんな恐れ多いこと」


「不義」


「ネフィアお姉さまと呼ばせていただきます……」


「よろしい」


「私もいいですか? 女王陛下?」


「いいわよスラリン」


「ネフィアさま。ありがとうございます」


「女王陛下、女王陛下とか………かったくるしくていけない。本来もっと気楽にすればいいのにねぇ~。そんな大層な人物ではないのに~ただの婬魔よ」


 私は肩を凝っているような仕草で首を回した。


「そんなことないです。ネフィアお姉さまの偉大な功績は………流石にネフィアお姉さまにしかできません」


「そうです。スキャラお嬢様が同じこと出来るとは思えません」


「スラお姉さま~いちいち私を貶すの嫌いなの? 泣くよ?」


「ごめんなさい。お嬢様。もっとしっかりと族長として胸を張ってくださいと言う鞭です」


「…………はい」


「まぁ~まだ成って若いのだから。これからよこれから~」


「ネフィアお姉さまは数ヵ月で英魔国女王陛下らしい振る舞いです。見習ってください」


「…………はい」


 スキャラちゃんが肩を縮ませる。私はスラリンに釘を刺した。


「そこまで。厳しくしなくても……まぁ……スキャラちゃんは族長としてきっと成長しますから。長い目で見ましょう」


「………わかりました。ネフィアお姉さまがそう仰るのでしたら」


「ネフィアお姉さま………こんな人にこんだけ期待されてるなら頑張らないと……よし!! 頑張る」


 スキャラがグッと力を入れるのを私は「かわいいなぁー」と思いながら眺め。「まぁ大丈夫だろう」と信じた。「なるようになるだろう」と。


「まぁ……それは置いといて……質問をするために残ってたのでしょう?」


「あっ!! はい!!」


「なんですか?」


 私は切り替えをすませて真面目な表情になる。部屋の空気もまるで会議室のように固い空気になり。スラリンが真剣な顔で私を見る。


「帝国を攻める場合の………策をください」


「策?」


「はい………こうすればいいと言うのを……指示していただければ」


「………いいでしょう。命令書は読んだかしら?」


「はい。しかし……内容はあまり掴めておりません。これなんですが……」


「あら? なーんも書いてないわね」


 命令書はまぁ……攻めろしか書かれてなかった。もうちょっとひねりが必要だろう。


「わかった……あなた方の作戦を説明します」


 私は衛兵に紙とペンを頼み。彼女らにしてほしい事を事細かに説明し、策を授けたのだった。











 













 








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