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族長の夜 前編..


 私はセレファ。都市インバスを任されている族長であり。悪魔や淫魔の族長であるエリックとは親しい仲である。都市イヴァリースに別荘を買い。今は書斎の椅子に座っている。膝の上には人形に憑依した少女幽霊のインフェを撫でる。


「今日は……素晴らしい日です」


「……はい」


 人形を愛でながら。椅子に座り考えを纏める。


「銀髪鬼を用意しましょうか………」


「彼女は……」


「そう、危ないですが。首輪をすればいいのです。首輪を」


「………もう。首輪ついてる」


 私は都市インバスにいる。銀色の狼女を思い出していた。彼女はずっと、戦い続けていたが。今では大人しく我々の檻に入り大人しくしている。


 それを放とうと思っている。


「力になればいいですが………危ないですかね?」


「………あら? そんなのが居るんですか?」


「「!?」」


 バサッ!!


 私とインフェは驚いて声がした窓を見た。開け放たれた窓に白い翼の少女が舞い降りている。まるで………夜中の太陽のように白く輝く姿は………女神のように。


「都市インバスですね。せっかくです解き放ってください。何でも利用しましょう」


「ネフィア女王陛下……なぜここに?」


「ふふ、会議で一言も喋らずにいた貴方が少し気になっただけよ。でも、安心した。しっかりと悩んでいてくれてる。なので任せましたよ。何でも解放して使いましょう」


「ネフィア姫……」


「ネフィアお姉さま……あの。本当に前線へ?」


「ええ」


「………ご武運をお姉さま。陽の導きがあらんことを」


「ありがとう。陽の導きがあらんことを」


 姫様はそれを言ったあとに窓から飛び降りた。なんのために来たのかは話さず。任せるだけにわざわざ言いに来たのだろうか。


「……ご主人。信用されてますね。『任せましたよ』ですよ!! すごいです!!」


「………ええ、すごいですね。わざわざ……こんな吸血鬼の私に光を見せるのですから」


 期待されている。たったそれだけを私は感じとり、目を閉じて血のたぎりを押さえ込む。


 今夜は……少し熱いようだ。





 今日の夜も月は一段と眩い。その中でトロール族長はベットに横になり早く寝ようとする。


「あら、早い」


「ン?」


 トロール族長の自分は大概の事は鈍くノロマなのだが、それは早く反応できた。


「ん……トロール族長さん。ありがとう」


「オデ……ナニモ……シテナイ」


「いいえ、これからするの。トロールさん………今回も頑張って抜け出そうね‼ 今度は捕まらないように。人間に捕まらないよいに頑張っていきましょう」


「……ワザワザイイニ?」


「ええ、ワザワザ」


 トロール族長はベットから降りて窓から入ってきた鳥のような自由の翼で羽ばたく少女の頭を撫でる。


「アレカラ……モットオオキクナッタ」


「うん。では……行くね。トロールさん……信じてます」


「………オデニマカセロ」


 ネフィアはトロール族長は笑顔に頷いて窓から飛び出た。昔とは違い。自分の翼で飛び立つ姿にトロール族長は時代を感じ、「頑張ろう」と考えるのだった。







 買った家の屋根の上をアラクネ族長代理のカスガが寝そべっていた。オニヤンマの彼女は肉を食べながら空を見て……月が綺麗だと思っていた。


 フワッ


 そんな中で、隣に白い翼の女性が舞い降りる。


「こんばんわ。今日は月が綺麗ですね」


「………女王陛下……何故こんなところに?」


「カスガさんが気のなってじゃだめ?」


「気になったですか……」


「そう、アラクネ族長の代理として。頑張ってるから」


「………まぁ。死にたくはないから」


「お話を伺っても?」


 ネフィアは隣に座り、カスガを見てくる女王陛下に。身分関係なしに降りてこられる事に驚きつつ………ああ。これが蜘蛛姫を助けれた要因なのだと理解する。


「……少し話が長くなります」


「いいですよ」


「私たち、虫みたいな人型はずっともっと強い魔物の餌でした。隠れ住み、亜人にも魔物として迫害を受けてきました」


「………」


「多くの仲間はワイバーンに喰われ。亜人に負われ………数を減らし。強いものしか残れなかった」


「自然淘汰ね」


「……ええ」


 さも当然と言葉にするネフィア。カスガは彼女を眺める。


「自然淘汰でしたが……ある日に。都市ヘルカイトの話を聞き。蜘蛛姫と出会いました」


 そのまま続ける。


「暖かく。初めて我々は受け入れられた……いとも容易く」


「来るもの拒まずでしたね。我が故郷は」


「……そう。気がつけば我々は皆。移り住み………規則を学び。亜人との距離を知り。労働を知り。知識を身に付けた。気がつけば亜人とかわらない所まで来ました」


「結構、苦労されたのね………」


「はい。しかし………それが今こうして。亜人の一人として月を見れている」


 カスガが月に手を伸ばした。


「生きるのに精一杯で知りませんでした。月はこんなに美しいと」


「あなたの望む世界になるといいですね。頑張ってください。あなたは選ばれてここに居ます」


「そうですね。蜘蛛姫の代理として………選ばれてるのです。我らの運命を掴もうと思います」


 カスガは月を掴む仕草をする。


「………遅いですが新九代族長代理就任おめでとうございます。これからも英魔のために頑張ってください。英魔族昆族亜人カスガさん」


「ああ、はい。女王陛下。英魔族一員として頑張っていきます」


 ネフィアは彼女を英魔と言う。


「………女王陛下」


「なんでしょう?」


「蜘蛛姫以下、認めていただきありがとうございます。こんな場所ですがお礼を言わせてください」


「私は何もしてません。あなた方が勝ち取った身分です。誇りにしなさい。そして胸を張って生きなさい。英魔なのですから」


「……はい」


「では行きます。期待してますからね」


 ネフィアはその場にたち。翼をはためかせて屋根から飛び降りる。


 カスガはその背中を見ながら。己が期待されてることに嬉しく思うと同時に頑張ろうと思うのだった。







コンコン


「スキャラお嬢様。お客様です」


「はい……」


 私は今日。会議で粗相をして落ち込んでいた。この前は何とか威張れたのだが………仮面が剥がれ落ちたようにポロポロと荒が出てしまった。


 海側の亜人代表者として私は皆の願いも元に選出された。父上母上や皆に託されて来たのにこれではいけないと思う。


 首都に置いた我らの集合住居の家から顔を出す。こんな遅くに誰だろうか気になり玄関までお迎えに行く。スライムのメイドは後ろで控えていた。


「どちらでしょうか」


 玄関には………白い有翼のあのお方が見えて息を飲んだ。


「こんばんわ。夜遅くにすみません」


「あっ……えっと……」


 私は言葉を失う。


「少し気になったのです。一番お若いでしょうし。あんなゲテモノ集団で大変でしょう」


「えっと………その………」


「はい………」


「………お嬢様。お部屋にご案内しましょう」


「あっすいません。お茶をご用意します」


「ごめんなさい。ゆっくりしたいのですが仕事があります」


 仕事。こんな遅くに………まだ姫様は働くのだ。


ポンポン


「………?」


 姫様は私の頭を撫でる。身長は低い私でも足は長いため、同じぐらいの高さだ。そんな私の頭を撫でて下さる。


「背伸びして偉いです。頑張ってください。スキャラお嬢様」


「姫様……ワザワザありがとうございます。粗相ばかりで………その……すいません」


「そうですね」


「……すいません」


「謝ってばかりなので。一つお願いがあります」


「はい……なんでも仰ってください」


 できることならなんでもしようと思った。姫様は悪い笑みで答える。


「では、頑張って英魔に勝利を導いてください。期待してます」


 重たい言葉。でも、私は頷く。せっかく私に会いに来てくださったんだ。「頑張らないといけない」と思うのだった。







 





 

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