表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
214/732

魔王の戦争見学..


 人族の戦闘の流れを私は上空から見る。夢のイメージは白い鎧に白い翼で飛んでいるイメージだ。


 誰の夢かと考えた時……これは大地の夢なのだろうと理解できた。こんな夢を見れる物は指で数える人しか知らない。大地の意思とは違い。刷り込まれた記憶なのだろうと思う。


 上空から見える光景は平原に対する二つの勢力だ。帝国と都市連合の人間同士の戦い。そしてその光景の時期もわかった。


 一人の騎士に目が行ったからだ。馬に乗った黒い騎士と白い騎士が騎兵を引き連れて魔法使いの一団に噛みついたのだ。上空から見ると大回りして側面から圧迫し、相手の出方を見るような動きだった。


 魔法使いの一団は馬に吹き飛ばされた。騎士たちはそのまま走り抜けて逃げていく。それに遅れてやって来た連合側の騎士が逃げるのを追いかけ出し、残った魔法使いは負傷した同僚を担ぎ上げた。愚痴を溢して態勢を立て直す。


「お前……魔術士か?」


「く、黒騎士!?」


 負傷した同僚たちに凶刃が迫る。気がつけば死体の数が増えていく。たった一人の黒騎士のせいで。わざと馬から降りて……すでに護衛は倒れていたのか彼を止めれそうな人はいない。


「ま、魔物!?」


「た、たすけ!!」


 魔法使い達が遁走する背中を黒騎士は斬りつける。無慈悲に命を奪いながら、ある一人が魔法を唱えて炎球で牽制した。


 ゴバッ!!


 黒い鎧に当たり炎球が散る。騎士鎧に魔法は効き目が薄いようだ。


「魔導士見つけた……お前だけは危ない狩らせて貰うぞ!!」


 私は……勇者トキヤの単騎駆けを「参考にならない」と思い他を見る。過去であり勝つことがわかっているのではない。一人で魔法使いの団を壊滅させようとしている。こんなことは彼しかできない。


「黒騎士は個が強すぎる……」


 そして、魔導士と魔法使いの違いを思い出した。魔法使いは魔力を扱う物。魔導士は魔力を自身で作り練り上げて扱える物。


「魔力が凄く薄い………」


 魔法使いの攻撃がゆっくりと萎んでいき。ついには魔力を扱う帝国側の魔法使いが去り始める。連合都市側も去り。戦場には魔法使いはいなくなった。


「……魔力の枯渇から始まるんだ」


 だからこそ初戦での騎馬駆けは意外だったのか対応が遅れたのかもしれない。しかし、トキヤは魔導士を探して狩り来ているのはきっと魔導士は危険な存在であると言うことだろう。それも覚えておく。


「魔法が戦場を支配すると思ってた……」


 予想外なことで戦場の魔法使いは少ない。多いのはやはり長い槍を持った歩兵だった。理由はきっと鎧に有効な攻撃じゃないこと。魔力枯渇が要員だろうと見れることが出来た。


「魔法使いは使いにくいっと……矢は……」


 戦場には矢が放たれているが歩兵の装備に弾かれている。矢も有効打にならないらしい。人間ヤバ。


「矢が効いてない……鎧が強固なんだ……」


 トキヤは名の知らない魔法使いを仕切っていた魔導士を狩り。そそくさと走って陣地に帰ってきている。それも徒歩で……ちょっとやっぱおかしいこの人。


「流石旦那様と言いたいけど………ちょっと使いづらい」


 強い個人は戦場にはちょっと使いづらいと思いながら平原の草が踏みしめられるのを見ている。歩兵がゆっくりと槍を構えながらジリジリと進んでいく。歩兵を守るように騎兵が左右を忙しく動き。帝国騎兵と都市連合がぶつかった。


 そして………帝国騎兵が弾かれる。


「!?」


「我ら祖国を救わんとする勇敢なる者よ!! 我に続けええ!!」


 上空から突撃した騎兵同士。馬が倒れ、人が落馬しながらも帝国側が劣勢になり。とうとう、押し返される。


「数は上だけど質が下なのね……へぇ、騎馬戦なら連合側が強かったのね」


「いけ!! 我らの土地から追い出せ!!」


「「「オオオオオオオオ」」」


 騎兵の戦闘の最前線に女性の声がよく響いた。懐かしい声に「ああ………」と思う。紫の花の絵柄の旗に見覚えがある。


「………」


 死んだ人は帰ってこない。その無慈悲さも思い出した。惜しい人だった。


「黒騎士!?」


 劣勢の帝国騎兵の戦闘を後ろから見ていた黒い騎士たちが無言で馬から降り前に出る。大きな武器を持った者たちが帝国騎士を蹴散らしながら突っ込み。連合騎兵に正面から戦いを挑んだ。馬の足が止まった状態で、歩兵の方が動きが取りやすいのだ。


「黒騎士1番隊長前に出る!!」


「「「オオオオオオオオ!!」」」


 帝国側から大きな声で怒声と奮起する声が満ちる。戦場には士気という。やる気みたいな物があるが……やはり、それは重要な物であり。兵士を1段2段と強くする要素なのだと実感した。


「くっ……帝国騎士が息を吹き返したか!!」


 ガキンッ!!


「だが私の目の前に出てきたこと後悔させてやる」


「んお!? ククク俺に挑むか!!」


「紫蘭!! 参る!!」


 前線で指揮する者同士がぶつかり合う。馬から降り、方は斧、方は刀で戦い。そして……黒騎士の首を跳ねた。


 帝国側がこの日、この初戦によって……初めて相手の強さを知り、作戦が変わるのだった。







 帝国側が黒騎士の隊長が撃ち取られた瞬間。士気低下を危惧し撤退した。初戦は意外な手で撹乱しようとしたが全く効き目はなく。結局敗走していた。


 わかった事は前線で指揮する者は士気をがあげられるがそれだけ死ぬリスクもある事を学んだ。


 将は見える場所で待機し。指示するのも重要なのだろう。


 私は………草原の岩に座りながら考えを纏める。目の前に多くの馬と人間の亡骸を見て、これが英魔国でも行われるだろうと思う。そんなことを考えながら空を見上げると。大きい月が見えるのだ。


「はぁ……無情になれと申すか」


 きっとこれから帝国側は敵の戦力を削る作戦に変わるだろう。長期戦から疲弊と相手の将を打ち取る作戦に。


「持久戦………我慢比べ。結果……多くの連合将がトキヤ以下黒騎士によって撃ち取られ。士気も下がった事で撤退。2回目の侵攻で終わる訳ですね」


 戦場を空から見たとき。右翼左翼の騎兵が大事なのがわかった。歩兵は正面は強いが側面が弱い。そういう基本もわかった。そして……その騎兵同士で戦う場合は技量の優劣もある。


 1回見ただけで「はい。わかりました」なんてのは無理だ。


「…………でも。人の戦い方は少しだけ。わかった。問題は攻城戦……」


 どうやって城を落としてくるのかを見たかった。


「惜しんでも仕方ない……時間がないね」


 ここの出来事を見終わり、私は目を閉じる。もう起きる時間だ。





「ふぁあああんんんん?」


「んっ? 起きたかネフィア」


「………今のお時間は?」


「夕刻、晩飯前」


「今夜、眠れるかしら?」


 机に屈伏し、背筋を伸ばしながらトキヤに質問した。トキヤはカンテラの明かりだけで本を読んでいた。


「夢の戦場は……いかほど?」


「トキヤが魔法使いを仕留めていた」


「初戦か……」


「そうそう……トキヤが……」


「なに? 俺がなんだ?」


「かっこよかった」


 口を押さえ、頬を染まっているだろう私は顔を背ける。


「真面目に見てこいよ!!」


「見てきたよ………それよりもトキヤはよく私の夢がわかったね?」


「寝言で色々唸ってたぞ」


「ふーん」


 寝言で色々とね。


「ん? トキヤその本見たことあるけど……なに読んでるの?」


「ああ、これ。エルフ族長に渡そうと思ってな………秘密だ」


 本を隠して目線を反らすトキヤ。私はその姿に首を傾げて司書に聞いた。司書は笑顔で答えてくれる。


「それはですね。姫様の日記とか、お絵かきとかですね」


「!?」


「司書さん………黙っていてくれよ」


「トキヤ!! 貸して!!」


 昔を思い出してなんか嫌なことが書いていそうなので見ようとトキヤに対して手を出す。


「ネフィア……大丈夫。ネファリウス騎士と言う創作……まぁ面白いよ」


「トキヤ!! この世にはあってはならない!! 消すべき!!」


「残念だが……そうはさせない!! あいつに恩を売る」


「私に対しては仇よ!!」


 妄想垂れ流しを公開されるなんて……そんな羞恥はさすがに許せない。


「あの……姫様」


「なに!! 今、それどころでは!!」


「今さっき、トキヤ様の1冊を残して全て持って行かれました」


「ネフィア……日記とかは残すとろくなことがないな。ククク」


「……ふふ、笑って許されるとでも?」


「……すまんな。これも信用のため……いや……お前のそのふくら顔が久しぶりに見たかった」


「………」


「………なんだよ」


 私はトキヤに近付く。何となく察したのだ。


「トキヤ……」


「?」


「もう、普通の女の子ではないの……」


「知ってる。知ってるつもりなんだ」


「だったら……そんな顔をしないで」


「どんな顔だよ」


「今の顔」


「……困るな……全く。ああ、そうだよ」


 私はため息を吐いて。本を忘れる事にする。彼も傷を負っている。ずっと深い。


「いつか、あなたのネフィアに戻る日が来ると思う」


「そうだな……そう、信じて剣を握ろう」


「ええ」


 トキヤはいつだって。私を家族と見ている。だからこそ……悩むのだろう。何度も何度も。今の私に対して。





 



 


 



















 











評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ