九代族長会議前..
私は起きたあとに唯一記憶を辿りながらある部屋に旦那のトキヤとともに訪れた。そこは図書室という場所であり文字深く読む物はエルフ等の人に近い種族だけ使用する場所だ。中に入ると円柱の本棚が並び。日光も遮られた暗い部屋だった。カンテラの明かりとシャンデリアの薄暗い明かりだけがあり、読むには苦労しそうな場所だ。
「姫様……こんにちは」
「えっと、司書は変わってないんですね」
眼鏡のかけた悪魔族に挨拶する。驚きながら……彼女は知り合いだった。
「はい……その……大丈夫なのですか?」
「大丈夫。もう二度と戻ってこないと思ったけどそうは言ってられないし。そんなに嫌いな場所じゃないから」
私は悪魔でエルフのハーフ女性司書に笑顔を向けた。昔から知っている彼女。彼女はいつも私に本を持ってきたり、図書室の本を選ばせてくれた人だった。優しい人だったのは覚えている。本の入った箱にこっそりおやつとか入ってもいた。
だけど、深い関わりは禁じられていたため。あまり喋ることもなく。時が過てしまう。ここでまだ仕事してるとは思ってもいなかった。
「………あの日々は申し訳ありませんでした」
「気にしてないわ。あのとき本を沢山用意してくれたのは感謝してるし。この図書室にあの日々で足を踏み入れる事が出来たのも貴方のお陰です。本当はもっと早く御礼を言いに来るべきでしたね」
「い、いえ………非力な私をお許しくださりありがとうございます」
司書は気が弱い人だ。そんな人にトレインなどの悪魔には何も手は出せないし命令通りしか動けないだろう。そして、彼女は勘違いをしている。
「もう二度と戻ってこない。それは……私が閉じ込められていたことが嫌だって事を知ってますね。なんの因果か知りませんが……まーた閉じ込められに帰ってきましたよ。私も足で彼と」
私も手を繋いでいる彼に向き、彼はおじきをした。司書は……ちょっと涙ぐみながら言葉を紡ぐ。
「あの日から……ずっと可哀想と思ってましたが……本当に幸せになられたのですね」
「彼が連れ出してくれました。幸せです……が!!」
私は笑顔をやめて真面目な顔をする。
「まだ、秘匿されてる情報ですが帝国が我々を攻める動きがあります。司書さん!! 私が読んでいた戦記物はどちらに!!」
「えっ!? えっと!! あの柱……だけです」
「柱だけ……」
「ま、魔族の戦記はその………ございません………書き残す文化がなく……人間側の書になります」
「……終わったら学園作ろう……」
「ああ、ネフィア。すべてが終わったらな」
私は頭を押さえて呆れる。肩を叩きトキヤがその柱に近付き何冊か取る。
「ネフィア……けっこう考察されている本だ。付け焼き刃でも何とかなるかも」
「うぃ~」
バシッ
「あう」
「やる気があるのか無いのかわからないな」
頭を本で優しく軽く叩かれて頭を押さえながらそれを受けとる。これを頭に畳み込めと言う暗示だろうか。
「陛下の武勇伝じゃん。知ってる」
「知ってる?」
「夢で……一度見た」
「………そうか」
トキヤが何か眉を潜めて悩み。頷いたと思ったら何冊かの本を持って図書室に置かれているテーブルにつく。黙々と読み出し。私もそれに習って何冊かを読む。
戦記物は昔に少し読んでいたが……理解できずに難しかった本として覚えている。今、読むと少し理解出来る気がする。トキヤを見ると……目を閉じていた。
「トキヤ?」
「黙って読む」
「う、うん………」
何かを思い出そうとしている。私は黙々と人間の戦いかたを学んでいく途中に眠気が生まれ……ゆっくりと船を漕いで机に伏す。
昔に比べ……勉強は出来ない……だらしない女になってしまったらしい。
*
ネフィアが船を漕ぎ出した。俺は目を閉じて唸っている演技を止めて司書に静かにと伝える。悪魔の角と黒い肌の女性が頷く。
ちょうどいい暗さと暖かさにネフィアは眠り出す。俺は「待っていました」と言わんばかりに司書に掛け布団を頼んだ。彼女は笑顔で用意してくれ、かけてくれる。
「さぁ……ネフィア。夢でたぶん……見るだろう」
嫁の力は弱まった。まるで、使い果たしたように弱々しくなった。これもあの風竜相手で死なない方が奇跡だったが。それでも勝った対価が重くのしかかる。
「すぅ……すぅ……」
だが、夢魔の力は健在だと俺は信じている。かわいい寝顔の嫁の能力を仮定した能力を思い出す。
夢魔に生まれたのも運命。
魔王としての魔力の高さも運命。
俺が彼女を救ったのも運命。
そして、風竜を倒すのも運命だったのだろう。
偶然と言うのはネフィアの前では言葉違いだ。必然と言う言葉が正しい。
だからこそ……エルフ族長はネフィアを巻き込んだ。巻き込めば……大きく運命を変えてしまう程に運がいい故に。
「運がいいからこそ……たぶん夢で……」
俺の直感が囁く。今回も、ネフィアは見ることが出来るだろう。風竜の時のように。
何かを……足りない物は補える力を。
「本当にネフィアの能力があれなら………これも予想外な結果になるだろうな」
笑みを向けながら。どんな事をしてくれるかを期待してネフィアを見続けたのだった。
*
暗い中で私は頭を抱える。
「寝てしまった……時間がないのに」
私は夢魔として夢と現実が区別でき、夢を自由に動く事が少し出来る。
昔は……自由だったが。引っ張られるような感じで夢を見ている事が多い。金竜の夢もあれが必然だったからこそ……見れたのだと思っている。
「うーむ」
私が死ぬ場合。風竜は倒されずに居たのだと思うと。過去でここまでは生きていたと言う事が保証されていたのだろう。これが正史となっている。
「……まぁ。私が当事者だからわかったことですし。今は関係ない事で頭を使うのもよくないですね」
観測者がいなければそれが有った事なんてわからないのだと結論づけ。考えるのを止める。
「そんな事よりもここは?」
周りを見渡すと。黒から一変、平原が現れる。見たことはない場所。そんな場所で私は左右から魔法が迫るのが分かった。
「ふへ!? あぐぅ!?」
慌てて魔法を唱えようとするが痛みを発して、その場にうずくまる。火玉が飛び交い。私は痛みを覚悟し……目を閉じた。
「………」
ゴォゴォ!!
痛みがなくなり、目を開けると体をすり抜ける火玉。夢であった事を忘れていたわけではないが現実のような夢のせいで反応してしまったようだ。
多くの土埃と。魔法の撃ち合いを見ながら。ふと冷静になり……夢を分析し……一つ、私は気が付いた。
「……たまたま。見てしまえるなんて僥倖ですね。起きるのは全て見終わってからにしましょう」
私は笑みを浮かべてイメージする。空を飛ぶイメージを。上空から夢の内容を見るために……過去の戦争を見るために。




