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金竜ウロと魔王..


 簡単に竜が集まった。私が思うより簡単に。だから私はクスクスと笑い続けていた。昔の彼らを見れたから。銀竜は無事に水竜と鋼竜を連れてきてくれるだろう。金竜ウロの中でそう思いながら青々しい空を見ていた。


「本当になんで簡単にホイホイ信じたり、死ぬかもしれないのについていったりするんでしょうね」


「ネフィアさん。それはきっとおバカなんですよ。まだ」


「おバカなんですか? 強い竜でしょう?」


 まぁ今を知る私にすれば「もう少し知性があってもいいだろう」と思うほどに弱かった。簡単に説得できそうだ。


「本能のままなんです。火竜を見たでしょう? あの火竜が一番竜らしいと言えるのです。ヘルカイトは違います。あれは私たちの上です。同種を殺そうとするのが私たちの性です」


「まぁ、生存本能では?」


「……生存本能なら雌雄で殺し会わず。言葉を持つなら会話し。愛を語るぐらいはしているでしょうね」


「語らないのですか?」


「ヤるときにヤり。殺したいときに殺し。食べたい時に食べる。言葉を話そうと結局は動物であり……唯一の話し相手は殺すのが大変な相手のみ」


「……あなたはそれが嫌なんですね」


 憎々しく語り出し、私は相槌を打った。そしてウロは答えた。


「嫌です。でも、そう作られているのでしょう」


「作られている……」


「世界樹に会いました」


「世界樹ですか。綺麗な人でしたでしょう?」


「人と言うより……綺麗な樹でした」


「彼女の名前はマナ……といいます」


「……」


 少し、声音を落としてしまった。気付かれたかもしれない。


「お亡くなりになっている程遠い未来からなんですね」


「……そうやってすぐに探りを入れるぅ」


「入れたいじゃないですか……だって。私は……長くないのでしょう?」


「……」


「滅びる前に知れることは知っておきたいじゃないですか」


 金竜ウロが気がついている。私の存在を。


「銀竜は幼い……寝ているなんて嘘です。そう……私は病で倒れ。一番見晴らしの綺麗ないい場所で眠りにつきました」


「それで……丘の上に」


「銀竜に告白せず……ただ、悲しんで欲しくなくて何も言わずに逝こうとしたんですけど……欲が出ました。もう少しだけ……一緒にと。そしたら……目が覚め。空が眩く見えました」


 金竜ウロから感謝も念が私に対して集まってくる。


「たまたまあなたに憑依しただけで……」


「たまたまですが。私にとっては奇跡でした。そう、思い残しを全て終わらせる時間をいただいきました。ありがとうございます。未来の人」


「人じゃない。魔族と言う亞人。そう我らは英魔族。それだけは譲れませんわ」


「………はぁ。ネフィアさんもしかして天使と言う空想の生き物ですか?」


「……」


 私は悩む。見た目はそうと言うしかないほど悪魔じゃない。


「夢で私を見せましょう。言葉では説明できません」


「はい……今夜が楽しみですね」


 夜の帳が落ちるまで。金竜ウロの話に私は付き合うのだった。まるで、金竜ウロが居たことを残すように。





 私の時間がやって来た。金竜ウロの夢の中で私は力をふるい。彼女が見たいだろう未来の光景を映す。場所はもちろん祖国、故郷だ。


 中央に大きな樹が都市を護り。大きな大きな外縁の壁。壁の外にも小さな砦が築かれ湯気を上げている。多くの種族が交わり。生き残った強めなワイバーンが竜となり竜人となり。空で哨戒している。私が住んでいた時の記憶を拾い。


 そして、何故か私自身が……懐かしさと寂しさで涙が出そうになってしまう。片手に何故かある。初代帝国の旗が今の私を昔とは違うことを示していた。


「あの日々は楽しかった」


 空いた片手でお腹を擦りながら、金竜ウロを待つ。


 ドシャ!!


「痛い……これ夢の中? 物理も何もかも………現実みたいな……って!?」


「ようこそ、我が故郷。都市ヘルカイトに」

 

 金竜ウロが空から落ち。石で出来た壁の上に叩きつけられている。その愛らしい姿に微笑みながら私は……彼女に言う。


「あなただけに見せる未来。あなただけに教える私の世界。滅びたあとの世界よ」


「滅び……たんじゃないのですか!?」


 金竜ウロが立ち上がり。都市を見渡す。


「だって!! あれ!! ヘルカイトが空を飛んでます!!」


「そういえば……たまーに徘徊してましたね」


「都市ヘルカイト……あの暴君が……こんな……」


「この都市はそう……奇跡でしたね。たまたま未開地にあり、たまたま聖樹が根付き。たまたま異種族同士の流れる場所になり。気が付けばこんなに大きな大きな都市になりました」


 声が出ないのか金竜ウロが見渡し……そしてまた。驚いた声を上げる。


「ヘルカイトに姿が変わったのかな? ナスティ君にボルケーノ!? あと……知らない竜が2頭」


 徘徊するヘルカイトに何匹かの竜が集まり上級である日の井戸端会議をしだす。ボルケーノが大人しく会話してるのに一番驚いてたが。私も昔の彼女の血の気がヘルカイト以上に多いのに驚いてた。隠したい黒歴史なのだろう。


「……そうなんですね。時間が知を与え理性を持たせられる」


「一応……大陸に残ってる竜はあれだけ。他は知らないの。一応竜は滅んだ。ワイバーンが生き残った」


「……しかし、人はまだ世界を手に入れてはいない」


「えっ?」


 私は驚いて金竜ウロを見た。金竜ウロと目が合う。一体何を彼女は知っているのだろうか。






 ネフィアさんの方を私は見た。未来の小さき人は……どういった人かを見ていなかったからだ。先に目の前の光景に目を奪われたからだろう。


 彼女の声の方を見る。見た瞬間に私は声が漏れてしまった。


 その小さな体には似つかわしくないほど大きい白い翼が広げられ、旗だろうと記憶からわかる物を片手で持ち。人間が過去に着ていた白いドレスのような物を着込んでいる金色の髪の天使に私は頭を垂れる。


 竜より遥かに高みにあり。絶対の強者。陽の光が彼女の姿を照らす。


「人がまだ手に入れてないのを何故……ご存知なんですか?」


「あ……はい。私は世界樹から知り得たのです。私たちは作られたと」


「作られた?」


「人に……」


「……そうですか。世界樹と一緒ですね」


「はい……だからこそ私たちは私たちだけしかかからない病がある。生存本能である子孫を残す事も難しく作られているのです」


「……」


「でも、滅びはないのですね。病や多くの犠牲を越えた先にこんな未来があるなら安心です」


 私は体を伏せる。


「ありがとうございます。ネフィアさま。未来を見せていただきありがとうございます」


「他言無用よ……それに風竜も生きている」


「……そうですか」


 我々が失敗し……それを変えに来たのだろう。


「私がここへ来た理由わかる?」


「風竜を我々に倒させるためですか?」


「違うよ? どれだけ強いか見に来ただけよ。そんだけよ。わからなかった?」


「えっ?」


「えっ? わからない?」


 沈黙。ネフィアさまの考えが読めない。私は首を傾げる。


「どうして来たんですか?」


「……いや。風竜強いから見に来ただけ……」


「あっそうか……ネフィアさま。強そうですもんね。倒せますもんね」


「……倒したい。どれだけ強いか見てどうやって戦うかを練る。初めてより、新鮮な情報が欲しい」


 私のすべき事はわかった。数多くの預言の中で私は小さな預言を見つけた。


「わかりました。我々が戦うのを協力してください……私の最後の散り様をお見せしましょう」


 難しく考え過ぎていた。滅びは来るが竜と言う種族が無くなるだけ。考えを変える。種族が変わったのなら……それも滅びではあるが繋がる。


「英魔族に竜は居ますか?」


「ヘルカイトがそう言いたいのなら。呼び名は自由よ。そう!! 私は英魔族婬魔……ネフィア・ネロリリスと言ってる。種族多いから自由よ。どうしてそんなことを?」


「見つけたんです。新しい事を」


 私の能力は預言。未来を見る能力。見つけた小さな光を……私はこの天使によって新しい予言を手に入れた。


「眩しいです……光を抑えてくれませんか?」


「だ・か・ら!! 無理!!」


「じゃぁ……ここを少し飛んでもいいですか?」


「夢だから好きにどうぞ~」


 クスクスと私は笑う。重りがスッと消えたかのように翼が軽かった。



 


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