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金竜ウロ銀竜ボロス..


 同じ出会った瞬間に仲良くなるのはきっと何か、近いものがあったのだろう。


 私たちは変異種、私は竜を導く者。土竜の一種だが鱗が他と違い。光沢を放つ。


 初めて出会った同種。初めて出会った強き異性だった。天界から降りてくるほどに惹かれた。


 両者の爪は鱗に弾かれ。1日しがみつき。疲れたとき。


「もうやめよう。私はもとからやる気はないし」


「そうだね……疲れた」


 目の前の竜は子供だった。


「果実探そう。今日はそれでいいや」


「いい場所知ってる。ついてきな」


 たった、それだけで。私は銀竜ボロスについていった。




「へぇ~あなたたちそんな感じで仲良くなったんだ」


「最初は殺し合いでしたが。気がつけばずっと一緒でしたね。いいえ……空から降りてきて。私は手加減しました。私は……裏切ったんです」


「ふ~ん!!」


 クルクルと光の玉が私の周りを飛ぶ。いま、私にしか見えない光であり、独り言のように聞こえるだろう。ボロスにはそれが見えなかった。


 丘に座り、空を見上げる。青い空は何処までも続いている。私たちが滅びようと。それは続く。そして、また赤い世界になる。


「ネフィアさん悩み相談できますか?」


「いいでしょう。代わりに風竜の情報頂戴。スッゴい欲しい」


「はい……先、風竜メイルについては頭を覗いてください」


「はーい覗く。あら……ボロスに花を貰った事あるのね」


「何を見てるんですか!!」


「照れちゃって~告白はまだなの?」


「………告白は……悩んでます」


「悩み? それ?」


「いいえ。悩んでますが少し答えを得ました。それよりも…………」


 私は光の球を凝視する。


「未来預言について」


「………」


 光の球は答えない。未来から来ている筈なのは私にはわかった。勘ではあるが……私に来たという事はそう言うことだろう。


「私は多くの夢を預言として見れます。我ら竜は病と種族同士の殺し合いで数が減りいつしかは絶滅するという未来を見ました。しかし……私にはそれを防ぐ術がなかった。神だったのに。いいえ、違う。私はそれを監視する役回りだった」


「………それで?」


「私はそれを見過ごせず……力ある竜に教えていたんです。ですが……皆は受け入れるのが多かった。何もせずに………死を受け入れる」


「生けるもの全てに等しく滅びはあるわ」


「知っています。でも……何も残らないのは私は嫌です。生き物だからこそ繋がりを目指すべきです。あらたな種として残るべきです一人でも、一匹でも」


 そう……私は残したい。何かを。


「だから……悩んでます。どうすればいいかを」


「……風竜は竜で国を作ろうとしてるわ」


「それは……正しいでしょう。ですが殺しすぎです。恐怖で縛るのもおかしい。喰うならわかる。でも遊びで殺してるのは歪んでます」


「あなた、竜よね? ちょっと人間臭い」


「………生まれた場所を間違えました。いいえ、だからこそそういう意識になったのかも」


「………私もよ。間違えた」


 クスクスと笑い会う。


「まぁ、でも……滅びはきっと来るでしょう。残された時間を有意義に使いなさい」


「………そうですね。あっ………そっか………それがあった」


「どうしたの?」


「………残された時間。そうですね……期待しましょう」


「……何を考えてるの? 読めないけど?」


「その時になったらお伝えします。彼が帰ってきた」


 優しく暖かい光の球が私の中に戻った。彼が帰ってくる。銀色の光沢を放ちながら、私の隣に降りる。


「ただいま……ここもそろそろ来るな。アイツ」


「そう……これが最後の逃走ね。次は奴と相対します」


「な、なにを!? 君では勝てないだろう!!」


「そうですね……ボロスとなら勝てる」


「……ウロ君は何をしようとしてる?」


「………未来が私たち竜にはあります」


「唐突に何を言ってるんだい? いつもいつも君はそうだ」


 ボロスが首筋に噛みつく。甘くこちょばゆい。


「もう!! ボロスこちゃばゆい!!」


「ウロ……教えてくれよ」


「……風竜と相対してからね」


 私はイタズラっぽく彼に言った。一人で悩んでいたのが馬鹿らしいと思いながら。






 空が黒く、雷が鳴り響く。その中心人物である風竜が他の竜を従えて飛んでいた。


 私は彼に追いかけられている。女であることも理由だろう。


「なぁ……逃げるのをやめて風竜を戦うってなんでだよ」


「……残された竜たちの自由のために」


「ウロ。俺は何をすればいい」


「最後まで生き残って」


「無茶苦茶な。ウロも生き残るなら……やってやろう」


「……うん。約束する」


 私は頷いて風竜の目の前に躍り出る。メイルシュトロームが笑みを浮かべた。


「やっと俺の女になる気になったか?」


「独善的でクソワガママで子供みたいに力を振り回すあなた……なんか……嫌いよ」


「ふん。力でねじ伏せればいい。滅びなぞ捻り潰してやる」


「何故、どうやって滅ぶか知らないくせに。なんで滅びが願われてるか知らないくせに。生体兵器なのも知らないくせに」


「子を沢山為せば滅びん」


「まぁ、そうね。変異する……でも……もう滅びは来ないわよ」


「何を!? お前が言い出した事だろう!!」


「……言い出した。でも見えた……滅んでいい。私たちは滅んでいいんです」


「………気でも狂ったか?」


「気でも狂ったのはあなたでしょう? 最初は私たちは言葉を持たなかった。私たちは知恵をもたなかった翼も」


 風竜が風をうねらせる。


「ウロ!!」


 バシュン!!


 小さな風矢が私の横を通り抜ける。鱗が数枚消し飛んだ。


「破滅主義者め。我が王となり全てを治め神に挑めば………滅びなどこない」


「余計なお世話よ………強き竜たちは滅びを受け入れた。お前だけだよ………受け入れてないのはな!! 神である私は囁く!! お前は危険だとな!! 滅びゆく竜の最後の時間を奪わせはしない」


「……ほう。自由を取るか」


「翼がある。まだ飛べるわ……遠くまで」


「………………はぁ。いいメスだった」


 膨大な魔法陣と黒い槍が精錬される。


「味はいいだろうか?」


「………じゃぁ。また会いましょう」


 魔法陣から黒い槍が打ち出され私を襲う。しかし、火を吐いて一掃し、ボロスを呼びつけてその場を飛んで逃げる。


「風竜……宣戦。覚悟しなさい」


 滅びはやって来る。やって来るその前に私は最後の預言を手にしようと躍起になるのだった。



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