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風竜王メイルシュトローム⑤大嵐..


 奴は大きな剣を振るうたびに地面や雲が裂ける。


 奴が叫ぶたびに地面は揺れ。空間が爆ぜる。


 奴の6枚翼がはためく瞬間。鉄矢の雨が降る。


 綺麗だった地表は変動し山や谷を形成し、荒れ狂う強風による死の世界へと変貌する。


 天変地異の大異変を行う風竜メイルシュトロームは生きている天災だった。


「逃げるだけしか出来ない矮小な存在。ワイバーンよ。時間稼ぎのつもりか?」


 上空で魔法陣を多数展開し、鉄の槍を精錬する風竜が止まりながら笑う。余裕を見せる姿に僕は戦慄した。地上の宮殿は消え。今は多くの鉄槍が地面に刺さっている。魔法陣から槍は作られている。無限に。


「お前も風の魔法を目指す者だな………ちと休憩させてやろう」


「………」


 空中でその場に止まる。


「その風の魔法。独学だな」


「もちろん。師事してくれる人はいない」


「ククク、火、水にかまけ。土、風を軽視する文化は続いているか………」


「……」


 何が言いたいか僕にはわからなかった。「軽視されているのだろうか?」と思うほど、弱い風使いに出会った事はない。


「そうさ、最初は所詮は弱い風竜と侮っていたから。俺が力で教えてやった。最強の竜として……風の魔法を独学で学んでいるお前に教えよう。今、俺は風の魔法しか使っていない」


「!?」


「驚くだろう。これも風に類する魔法だ。いや、属性魔法の完成だ」


 大きな黒い鉄槍が産み出されそれを掴み。構えた。


「魔法名、風槍グングニル」


 大きな槍と共に魔法陣で待機していた槍が打ち出される。


「やっば!?」


 動きを止めてしまったのが不味かった。それは点の攻撃ではなく面の攻撃で僕に襲ってくる。苦し紛れに回避を行おうとするが。範囲が広すぎて僕は痛みを覚悟した。


 キラッ


 魔法の燐粉が目の前溢れる。見たことある魔力の形で僕は身構えた。


爆炎の十二翼(バクエンのツバサ)


 十二処じゃない魔法の爆発が至る所で行われる。その衝撃と熱風で槍と僕は吹き飛ばされた。


「あぐぅ!?」


 パスッ


 クルクルと転がるように落ちていく僕に大きな巨体の竜が抱き締めた。鋼よりも強固な鱗を持つ竜。ヘルカイトだ。


「あ、兄貴?」


「高まる魔力を感じ取ったが……まったく、『戦うな』とあれほど言っただろう」


 クルッと空中で旋回し。風竜から逃げる。


「逃げるか!? ヘルカイト!!」


「………」


「久しぶりに会ったら腰抜けになったか!!」


 無視して戦線を離脱。僕を抱き抱えたまま。荒れ狂う風から離れていく。奴は笑いながらも追ってこない。


「デラスティ!! 怪我は!!」


「ないよ竜姉。ちょっと鱗が竜姉の攻撃で剥がれた」


「ご、ごめん」


「槍に貫かれるよりマシだろう。にしても………」


 並走で飛行しながらヘルカイトは目を閉じた。


「過去より。強くなっている」


 そう、言い。それを聞いた僕は少しだけ、悔しい思いに駆られるのだった。








 空の上空で逃げるヘルカイトを見ながら我は実感する。ワイバーンの模擬戦で体が馴染み。


「もっと高みに至った」


 封印前よりも魔法が使えるようになっている事に違和感を持つ。人間を見ていた結果、精練された。女神の加護さえ感じる。


「余計な事を………ククク。だが。貰えるものは俺の物だ!! 見ているのだろ女神!!」


 封印を解き、力を渡したあの黒い女神に我は語る。


「首を洗って待っていろ。噛み殺してやる。お前らが我らを消し去った元凶だからな!!」


 女神の贔屓は弱小な者たち。弱いものは弱いもの。弱肉強食こそ我ら魔物の至上。考えが全く合わない。


「神をも喰らい。我が神になってやる!!」


 飢餓は収まらない。止めどなく溢れでる欲が我を突き動かす。全ての頂点に立ち。


 力で竜の滅びを打ち負かして見せよう。







 デラスティたちは都市テンペスに戻ってきた。所々に鱗に傷が入り。血が出る。気が付かなかったが結構、攻撃は通っていたことをデラスティは悔しがる。


「なんとか。傷はふさいだわ」


「ありがとう竜姉」


「……ええ。ヘル……どうする?」


 空気が重い無人の宿屋にヘルは唸る。


「ここで迎え撃つ………全力を持ってな。目で見て理解した。あれは俺達だけの問題じゃない」


「ヘ、ヘル」


 ナスティが不安そうに彼の腕にしがみつく。


「し、死ぬ気?」


「……何故わかった」


「な、長くいるから。そ、そんな顔始めてみた………嘘でしょ………風竜そこまでじゃ無かったでしょ?」


「ナスティ………ヘルが苦虫を潰した顔をするのも仕方ない。長い年月。溜まった魔力が膨大なんだろう。それを操ることが出来る体なのだ。勝つのは難しい。死力を尽くさないと」


「に、逃げましょう‼ ね?」


「ナスティ………お前がここまで不安がるなんて始めて見たな。残念だが都市ヘルカイトも例外じゃない。いや………全ての生き物が例外じゃない。どうなるかわからないが。今ここで抑え無ければ世界は壊れる」


 ナスティが顔を埋める。嫌々と言うように。


「全く、女々しいぞナスティ」


「ヘルは!! 生きている!! 私は死なないけどヘルは死んじゃう!!」


「男はな戦って死ぬ生き物。いいじゃないか?」


「ダメよ!! 滅んじゃう!! 私を一人にしないで!!」


 ナスティがヘルカイトに噛みつく。


「あだだだ!?」


「ナスティ……好きなのわかったから死なないように全力で勝ちに行きましょう」


「ぐぅ………」


「そうだ。ここで迎え撃つ理由は簡単だ………罠を張る。ボルケーノがな。俺は囮、お前も来いナスティ」


「う、うん」


「僕は?」


「デラスティ……お前はとにかく撹乱だ。攻撃はボルケーノとワシがやる」


 デラスティは深く頷く。


「では、時間はない!! 準備を取りかかれ!!」


 ヘルカイトの怒号で僕たちは用意をする。多くの魔法陣を描きに。


















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