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風竜王メイルシュトローム④嵐の前の..


 都市テンペスは大荒れだった。友好都市もメイルシュトロームが一夜の瞬間に消え去っている報告が都市に届き。驚きと夜逃げにより都市の機能が麻痺してしまう。壁の中でも関係なく塵に変えるのだ。


 メイルシュトロームはまだ力を溜め続けている時間が逃げる時間を稼ぐ。


 そんなガラガラとなった中でも残って商売する者もいる。そんな人の酒場に僕たちは集まった。ドカッと格安になった麦酒を置かれ、それをヘルカイトは一気に飲み干す。


「デラスティ……でっ……『ワンだけを置いてきた』と言うわけか」


 デラスティは1、2日で都市ヘルカイトから首都イヴリースに行き。帝国の都市テンペスに来た。寝なずに来ている訳じゃないが中々体に堪える旅だと彼は感じている。魔力回復ポーションがぶ飲みで頑張ったのだ。


「うん。来てくれるかわからない……だから。僕たちだけで頑張ろう」


 「僕たち」と言ったデラスティは皆を見る。強き竜たち。自分を鍛えてくれた竜達を彼は順番に見つめた。


 暴君ヘルカイト。腐竜ナスティ。火竜ボルケーノ。ここには居ないがきっと後で来てくれると信じている土竜ワン・グランド。「自分含めてこれだけしかいない」とデラスティは思う。


「過去、アイツは竜だけの世界を目指そうとした……結果は俺らが全員ムカついて反発。金銀竜にはめられたとも思うが封印した。だれも奴に賛同しなかったな。今、思うのはそれが大成功だった。都市ヘルカイトがそれを示す」


「ふん、若造だったじゃないか」


 ボルケーノが鼻で笑う。


「私たちより若く。考えが合わなかったんだ」


「今でこそ。その共存してしまっているのですけどね……もっと早ければと思わないでもない」


 ナスティが複雑そうな声を出す。


「ナスティ。奴は上を目指すし、力での抑制を目指す。そんなのはいつか爆発して溢れでる。俺らは竜だ。本来は孤高であり……仲良くしている今がおかしいのだ」


「……そうね。でも、ボルケーノも丸くなったし。ヘルカイトも丸くなったからね。デラスティが現れてからだね」


「ん?」


「デラスティが赤ちゃんだったとき。ボルケーノが拾って育てたのが、いつしか私達と肩を並べられるなんてね。なんでしょうね……なんかデラスティが鍵な気がします」


「そうか、ナスティもか」


「ふむ。私もよ……ナスティ」


「えっえっ?」


 デラスティはキョロキョロと周りを見回してドキドキと鼓動が跳ねる。期待されているのが分かり背中に重圧がのしかかった。


「ワシらの生活を賭けて倒さなきゃいかん。デラスティも覚悟しろ……見ていただろ奴の強さを」


「う、うん」


「デラスティ……逃げてもいい。見捨てて。あなたなら逃げられるわ」


「竜姉を置いてなんて……無理だよ」


「それも覚悟しなさい。仇を取る覚悟を」


 まるで、勝つ見込みが薄いのかそんなことまで言う皆にデラスティは机の下で拳を握った。これだけの実力者が集まっても勝てないのを歯痒く感じながら。





 僕は仏頂面で空を飛んだ。都市は活気が無く。人々の往来も無く。静かに店を畳んでいた。被害があった都市から一番近い都市なのだ。居るのは泥棒か故郷を捨てきれない人だけである。それを上空から眺め………都市メイルシュトロームのあった方角へ向きを変えた。


「………偵察」


 そのまま、メイルシュトロームを探しに飛ぶ。ゆっくりと警戒しながら飛んでいると………食い散らかされた魔物の死体が横たわっているのを見つけ、追っていくと……驚愕する物が見えた。


「な、なの……これ」


 建物があった。宮殿のようなものが黒い鉄で組まれ立ち上がり、中央に居眠りしている竜だけが見える。距離を取りながら周りを見ると……骨塚が至るところにあり。ここがかの竜の拠点なのがわかった。


「人の姿で隠れよう」


 竜人化し、骨塚に身を寄せる。小型の魔物が死体や骨を啄む大音が聞こえる。


 白い嵐竜は今は6枚の翼増えており、非常に強そうに見える。絶対に強い。


「………ふわぁあああ!!」


 白い嵐竜が立ち上がり2足歩行で宮殿を歩く。のしのしと。そして………咆哮をあげた。


「グアアアアアアア」


 異常なほどに高い声。周りの骨塚を骨を食べていた魔物達が逃げ惑う。


「………そこに居るな。何者だ」


「!?」


 骨塚が吹き飛び僕はそれと一緒に転がる。竜を見ると宮殿がトロけて彼の右手に集まり一本の大剣になる。物質操作を魔法で行っていた。


「なんだ……人間の生き残りか」


「…………」


「見ると様子を伺いに来たか……安心しろ!! 今回は見逃してやる。お前の都市を破壊するときと一緒になるまでな!! ははは!!」


 せっかく服を着てたけど僕は竜化した。


「ほう、お前はあのとき逃したワイバーンか」


「うん……1、2周間が忙しかった」


「そうか……まぁいい。取り逃した獲物が帰ってくるなぞ監視か何かだろう。それとも服従を決意したか? ここのワイバーンは言葉を理解しない低脳だ。美味ではあったがな」


「……エルダードラゴンがやって来るここに」


「ほう……エルダードラゴンか。奴等は全員生きているだろうな!!」


「ボルケーノ。グランド。ヘルカイト。ナスティだけが居る。こっちに戦いに行くから動かないで探すの面倒」


 食い散らかされたのを目印に来ている故に。後は……これ以上被害を出さないために。


「命令するとはいい度胸だ……ワイバーンの癖に肝も座っている。部下にしてやりたい所だが復讐の邪魔をする気だろう」


「もちろん。皆、大切な人だからね」


「ほう……結託したか‼ ならば先に潰さなくてはな!! 我が覇道の邪魔になる。新しい魔物の世が来るのだ‼」


 大きく叫び空間を震わせる。大地も空も全てが彼に震えた。


「その虐殺の覇道に意味はない」


「ほぉ!? ワシに異議を申すか!! 不敬だが!! その蛮勇に敬意を示し聞こうじゃないか!!」


「無為に………都市の人を消し去った。そんな事は必要ないと僕は思う」


「いいや、ネズミに恐怖を埋め込ませるには十分必要だ!! ワシを封印し続けた蛮行の精算であり。これからの覇道に必要だ!! 相手が頭を下げて従うまで叩き潰す」


 狂った程に力の権化のような竜だった。目の奥からは真面目に「そうあるべき」と思い。力での征服こそ至上という性格なのがわかった。


 僕が知っている王とは血色が全く違う。しかし……彼も王たる器を持てる資格の持ち主なのだろう。それがその旧き時代で受け入れられなかっただけである。いや………強者だからこそ最初のヘルカイト兄貴と同じ弱者を知らなすぎるのかもしれない。


 王とは所詮。多くの弱者と強者の混じった民を統べる者。資格を持てるが今だに、持てていない竜だと今、理解した。


「恐怖も統べる力ではあるが……それだけじゃ……反抗を生む」


「反抗も喰ってやる。力あるものが滅びる世界なぞ要らぬ。聞き飽きた。そろそろ死ね」


 白い竜が黒い鉄の剣を振る。地面が真っ二つに割れた。僕は瞬時に避けていたために攻撃は聞かなかった。


「やる気か? 逃げず」


「僕がここで逃げたら……たぶんもう次の都市へ行くから」


「くくく………体はもういい。腹も膨れた」


 僕は偵察が失敗したのを理解し、戦闘が始まる。背後に知らない人達を背負って戦おうとする。



 

















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