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女体化魔王で成り上がり、婬魔の姫と勇者のハッピーエンドのその先に  作者: 水銀✿党員
第1新章 ~英魔国誕生・英魔王ネフィア・ネロリリス~
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懐かしき帝国首都..


 私は無事に帝国到着した。首都に入る前に10人の人族の隊員達が壁の外で野宿をして私を待っていてくれている情報があった。場所は教えて貰っており地図で確認しながらは林を探す。


 林の中を馬に乗って地図で示された場所へ行くとテントを張って生活していた。隊員たちに声をかける。馬に降りて彼等に先ず初めに頭を下げた。


「遅くなってすまない。少し、遊びすぎたようだ」


「いえいえ………まぁ明日までは待てませんでしたけどね」


 ギリギリだった。


「今から敵地だ。『全員生き残るかわからない』と、トキヤが言っていたな。私も自由にさせてもらう」


「はい。覚悟しております」


 いい顔で頷き返してくれる。頼もしい。皆が皆で語り出す。


「そうだな。全員帰ればいいけどな。死ぬつもりの方が辛くないらしいしな」


「ドラゴンぐらいでないと死なないがな」


「トキヤさまみたいな……黒騎士に目をつけられたら終わる」


「おっそろしいしなぁ黒騎士は」


 ワイワイと敵地前でも顔は明るく談笑していた。期待できそうだ本当に。


「姫様、ご無事をお祈りしておきます」


「うむ………余の事は忘れろ。職務に忠実になり達成してほしい。そうだな………英魔族の義務を果たせ。余は見ているぞ」


「「「「は!!」」」」


 皆が騎士の礼を行い。彼等は背筋を正した。


「一つ、私は『自由にさせてもらう』と言ったな。もしも………黒騎士でも捕まれば私は暴れて助けに行ってやるから探して連絡してほしい。騒ぎを起こすよ」


「ひ、姫様!? 見つかったら、トキヤ殿は『死ね』といってましたが!?」


「ここに奴はおらん。だからな。死ぬんじゃないぞ………先に都市へ入っておく。別行動だ」


 私は馬に乗る。皆が私を見上げるのを笑顔で返す。口調をちょっと和らげる。


「ふふ。私の気まぐれですし、初めて出来た訓練仲間です。心痛むんですよ………色々とね」


「わかりました。テントを片付けて任務を行います。陽の加護があらんことを」


「はい。一際大きい教会に顔を出すので何かあればそこへ。加護があらんことを」


 私は馬を走らせた。都市に向けて。




 残された隊員たちはネフィアの優しさに心を打たれていた。たった10人。俺たちを助けに来てくれる器の大きさに感動していた。


「なぁ、どうする?」


「もしも、捕まったら潔く自害しよう………姫様の手を煩わせる訳にはいかない」


「だな。姫様は泣いてくださるだろう。覚えてくださる」


「行こう。俺たちはやらなくちゃいけない」


「ああ、そうだ!! 勇者に俺たちの姫様を殺させない」


 10人の隊員が固く結託し決意に溢れた表情でテントの片付けを始めるのだった。






 私は久しぶりでの検問に一人でドキドキしながら検問の順番を待っていた。連合国との戦争中のため厳しいらしい。


「次!!」


「はい」


「顔を見せろ」


 私はフードを外す。目の前の騎士から吐息が聞こえた。最近気が付いたのだが私の目や姿は婬魔の能力が少し暴発しているようで姿が人によって異なる場合があるらしい。全力で解放した場合は鏡の私を見れるものは精神力が強い方と言う。まぁ今は漏れてる程度なので錯覚程度で終わるらしいが。


「……どうされました?」


 冒険者のプレートを見せながら優しく声をかける。


「あっ……いえ!?………えっと。おお、最高ランク。どうぞご自由にお通りください」


「ありがとうございます」


 プレートのランクを見て驚いていた。顔パスに近い。まぁ~最高ランクだけど2つ名はなく。「一般冒険者で強い」てだけの評価。これがちょうどいいのだ。トキヤは「有名過ぎるので困っている」と言っていた。「暗殺得意だから目立つの嫌なのだ」と言う。「ならばドラゴン倒すな」と言いたいが。まぁうん。仕方ない。


「なぁ、あれって姫様じゃないか?」


「確かにあれだけ綺麗なら………」


「何処か剣を振る姫様で有名なのは………インペリウム家か?」


「……わからん」


 背後で騎士達がこそこそ私の噂をする。フードを被り直して宿屋を探すまえに馬は馬舎に預け路地裏に身を隠した。


「宿屋は……そうだ、あそこにしよう」


 路地裏から隠れながら目的地までゆっくり歩を進めた。私は帝国に来たついでに盗みに入ろうと思う。いや、借りよう。昔に住んでいたトキヤの家を。







 冒険者ギルドの裏、黒騎士経営の酒場に私は訪れた。トキヤの家をトキヤ直伝鍵開けで開けて荷物を投げた。探索は後日の予定だ。


「ふふふ……顔を拝みにきちゃった」


 私は愚行と言える行為として黒騎士団長に会いに来たのだ。なぜ会いに来たのかと言うと私には隠れると言う行為が異常に不得手なのである。まるで暗闇に光があるように目立ってしまうためだ。ローブとフードが外せないほどに。


 なので、ならばと直接来たことを伝えて協力を依頼した方がいい。そう私は判断してここへ来たのだ。


「ん?」


「こんにちは黒騎士のマスター。奥の部屋に用があるの入れてくれませんか?」


「………誰かは知らないが捕まる前に消えな」


 私はマスターに声をかけたが「どっか行け」と言われる。暗号とかそういうのはわからない。何とかして入りたい。音伝えと言う魔法で直接呼べばいいかもしれないが………果たして届くかもわからない。


「うーむ。誰か答えましょう。そう私は……」


「ん?」


 私はフードを外す。そして堂々とマスターにだけ名乗った。もちろん声は彼にしか聞こえない。


「大英魔国女王でトキヤの伴侶。ネフィア・ネロリリスです。こちらでは魔王でいいでしょうか?」


「………」


 マスターが悩む素振りを見せる。そりゃそうだ。目の前に王だと言うのが現れたらそんな顔をする。


「信じれないなら黒騎士団長に聞いてみるといいです。仮面の彼は驚きますよ」


「…………わかった聞いてやろう。お前は少し……何かあるからな。トキヤの近くにいた女だろう事は知っている」


 マスターが悩んだ結果、店の奥へと向かう。私を見抜いたようだ。流石、黒騎士団長の謁見を決めているから鋭い。フードを被り直し数分後にマスターが奥から現れ、カウンターの中へと入れていただける。


「黒騎士団長が待っている。粗相がないように。死にたくなければな」


「旦那の元上司に挨拶来ただけですよ」


「ふん…………女丈夫か。トキヤは元気か?」


「元気、昔より優しいです。格好いいです」


「ふ、たまには帰ってこいと言ってくれ」


「裏切り者ですよ?」


「裏切り者だろうが………客としてなら迎えるさ」


「ええ、伝えておきますね。素晴らしいお店です」


 カウンターに入り長い廊下を歩く。薄暗い中を歩くと一人、黒騎士の守衛が待っておりお辞儀して部屋に案内される。一つ二つ部屋に対して話しかけるとあの声が返ってきた。


「通せ」


「はい」


 黒騎士団長の声だ。私は彼の執務室に入る。すると仮面の男が執務机で肘をおき。私を見る瞬間に大きなため息を吐いた。


「帝国の騎士衛兵はいったい何を見て都市に入れているんだ?」


 頭を抱えながら仲間の騎士に苦言を呈する。「苦労人だなぁ~」とそれだけで同情した。


「冒険者だから入れるんですよ。トキヤが言ってました。便利だとね。拐われていた時からですね。お久しぶりです」


「はぁ、何のようだ魔王。何故ここにいる? 何が目的だ」


「まぁそれは追々話します。お茶は出ないのですか?」


 私は席に座り寛ぐ。黒騎士団長がまたため息を吐いた。


「あのとき殺しておけば………私の勘が当たってほしくはないときに当たる。結局返り咲いたか魔王」


「私も驚きです。気付けば女王陛下なんです。遠くへ来たものですね本当に………陛下に挨拶しなくちゃ」


「お茶は用意させる。で、何のようだ?」


「数ヵ月、私を見逃してください。それと、隠してください」


「敵を庇えと?」


「敵の敵は味方です。そうですね………全部お話する代わりにでどうでしょうか?」


「では、嘘をつかないようにベルを置かせて貰うぞ? あと……情報を聞いてから判断してやろう」


「ダメですよ。契約しなくちゃ………私って魔導士でトキヤを倒せるんですよ? 自爆したら~さぁ~たいへん」


「………鳴らないか。都市で暴れない事を約束しろ」


「暴れませんよ」


 チン!!


「暴れる気か………何をする気だ!!」


「はぁ……ベル嫌い。勇者を殺すんです」


「鳴らないか………勇者を殺すとは?」


「召喚されていないのですか? 4人程、強い騎士がいると思うんですけど………」


「詳しく聞こう」


 私は目的を話した。女神がいて、人間の女神が召喚した勇者の事などをこと細かく彼に説明する。偽トキヤの件があり。彼は怪しみながら私の話を聞く。


「鳴らないが……これは思い込みでも鳴らない場合がある。盲信者の妄言だ。信じれんな」


「うーむ。では、これでどうでしょうか?」


 私は立ち上がり背中を向ける。そして具現化された翼を見せつけた。


「…………悪魔の翼だろう?」


「うーむ。ならこれは?」


 今度は剣を産み出す。エメリアを呼びつけて見せることも考えたが、愛がなければ見えないため諦める。


「ん……その剣は? 何処かで………」


「世界樹の剣です」


「世界樹だと!? そうか!! あの剣か………」


 黒騎士団長に私は近寄って手渡した。


「確かに強力なアーティファクトだ」


「グランドマザーと言う女性から勝ち取った剣です。彼女は死にました。私の手で」


「………彼女が家に帰っていないとはそういうことか。何故、殺した?」


「敵の敵は味方です。あれは敵でした」


 用意されて来た紅茶を啜りながら事細かにこれも説明する。占い師の狙いは簡単に世界征服だとも。黒騎士団長は眉を潜めすべてを聞いた。


「………それで全てか」


「ええ、全て」


「世界の一端をその姿で見ているのか………」


「知らない間にです。たった短い期間でです」


 彼はタバコを吹かしはじめ。執務室椅子に深く腰かけた。


「元々、グランドマザーは敵になる気配はしていた。だから、私が直接会いに行き色々と心を許していたよ。帝国に力を貸してくれる内は味方だった」


「それで、お話なんですが。トキヤの家と占い師の家をお借りしたい。勝手に探索させてもらいます」


「ダメだ。占い師の店は先に黒騎士に調べさせる」


「…………では。その後でよろしいですか?」


「もちろんだ」


 荷物を移動しないといけないみたいだ。


「そこは妥協します。なので隠してくださいますよね? 私を?」


「………難しい所だ。今ここで殺してもいい。犠牲を払っても」


「うーむ」


「悩ましいな……しかし。ドラゴンたちはどうした?」


「秘密です。知りません」


「………他に味方は?」


「いません」


 チン


「嘘か。わかった。その味方が何も騒ぎを起こさないなら許そう。もしや部隊じゃないだろうな?」


「お答えできませんが、ありがとうございます。言っておきますよ」


 私は立ち上がり頭を下げた。彼が私の兵数を聞き出そうとするが黙秘する。


「まったく。帝国内に伏兵はいるのは辛い所だ。連合国との戦争中であることも運がいいな魔王」


「はい。では失礼します。トキヤの家と占い師の家と教会を順繰りするのでよろしくお願いします。監視を置くならどうぞ」


 私は部屋を後にする。あと一ヶ所よりたいところがありそこへ向かう。


 もう一人挨拶しとかなければならない人がいるのだ。帝国に。





 夜中、幾夜過ぎたような見慣れた寝室で私は歌を聞いた。懐かしい声の優しい囀ずるような歌声にこの私、皇帝グラム・ドレットノートは幻聴を聞こえるほどに病に犯され老い先が短いことを悟る。


「ふむ。とうとう幻聴も聞こえだし、お迎えが来る頃か」


 コンコン


「なんだ?」


 ベットから這い上がる。今日はまだ調子がいいらしく動ける体で窓を叩く音へ近付いた。


「………おまえは」


「お爺様。ネフィアです。開けてください」


「幻聴かと思ったぞ」


「本物ですよ」


 窓を開けテラスの美少女に「中に入れ」と言う。頑張って這い上がって来たのだろう。ネフィアはドレスの埃を叩いて落とした。健康そうな体だ。


「お邪魔します」


「酒はいるか?」


「今日は頑張って持って来ました。準備は私がしますね」


 ネフィアは部屋に入り、手慣れた棚から、ワイングラスを二つ用意し、手提げの鞄からワインを取り出す。何処のワインかを知るためにネフィアは私に手渡してくれ、その瓶を見る。


「英魔国のワインです。そこそこ良いのを頼んだんですよ」


 ネフィアがテーブルに置かれた白ワインを注ぎ。私はグラスを手に匂いを嗅ぐ。


「長年の熟成された芳醇な匂いだ。魔国もそこそこいい物を作るな」


「でしょう、お爺様」


「では、再会に乾杯しよう。噂は聞いているぞ魔王」


「話が早いですね。お爺様の言う通り。王に返り咲いてしまいました」


「はははは!! ワシの目に狂いはない。魔王よ。おめでとう」


「………あ、ありがとうございます」


 ネフィアは「喜んでいいのか?」と悩んでいた。王に向いていない気が少しするのだろう。しかし私は知っている。私のやり方ではない方法での王だ。そんな王とグラスを触れさせ乾杯をして一口含む。死に際の夢のような時間だ。


「まぁ!?」


 彼女も驚く。俺も驚く。


「美味だ。白ワインらしからぬ深みがある。酒は止められているが久しぶりにいただくとやはり美味いな」


「止められているのですね」


「ああ、しかし今日は持ってきてもらった物だ。いただかないとな」


「そうですね。酒は万病の薬とも言いますし。少し待ってくださいね…………出来るかな?」


 ネフィアが祝詞を歌い。グラムが飲み干したワイングラスに注ぐ。すると白ワインの中に光が生まれキラキラと輝く。


「何をした?」


「神酒にしました。祈りを捧げ。『女神にお願いします』と言ったのです」


「ふむ。味は変わらぬがな」


「はい。ですが………少しは楽になればと」


 俺がネフィアの優しさに触れながら笑みを溢す。若造の女に慕われているのは悪くないと思いながら。


「さて、魔王ネフィア。帝国には何のようかな?」


「勇者を倒しに来ました」


「勇者?」


「4人ほど新しい勇者が生まれるそうです。そこで相談があります。玉座の間をお借りしてもいいですか?」


「何をする気だ?」


「そこで勇者を待つのです。帰ってくるでしょうから」


「クククク。お前は面白いことを考えるな。魔王を倒しの出向いたら留守だったとなるのか!! 誰も帝国に居るとは思うまいからな」


「です。まぁもうひとつ理由はあるのですが………」


 ネフィアは勇者の神具について解説する。そしてそんな物があることをやはり知っていたらしく。驚きもせず俺は淡々と話を聞いていた。ついでに世界樹も見つけたことも聞く。


「あの剣を抜いたのか?」


「抜きました」


「………そうか。ワシがあと少し若ければ合戦で対峙したのに。おしい。しかしそれもまた。天の決めたことだ」


「……………合戦じゃなく1騎討ちなら」


「いいや、合戦じゃないとな!! 万の兵の泥沼の戦いはいつだって心を踊らせる」


「そうですか……残念です」


 ネフィアは自分の能力の悪夢で全盛期の俺と戦える気がしていた。しかし、指揮能力に重きを置く俺とは決闘も違うだろう。少し話し込み。夜も更け、ネフィアが帰ろうと考えたとき。俺は止める。


「少し待て、魔王。お前の旗はあるか?」


「旗ですか?」


「ああ、旗だ。国旗でもいい」


「まだ………なにも考えておりません。いいえ、考えていないより思い付かなかったですね。旗なんて」


「そうか、ならば………女王陛下となったネフィア・ネロリリスにこれを渡そうじゃないか」


 俺は立ち上がり壁に飾られている旗に近付く。交差し飾られた旗は帝国の国旗と俺の象徴であるドラゴンが書かれた盾の紋章の旗だ。


 その交差されている旗をひとつ取り外し、丸めてネフィアの元へいく。それを俺は渡そうとする。


「これって……陛下の親衛隊旗」


「もう、誰もおらん。持っていけ。王家ならドラゴンが描かれた旗が一般的だ。やろう」


「………ありがたく使わせていただきます」


 ネフィアはそれを受けとった。俺は満足する。そして、俺の夢をこやつに委ねた。


「ありがとうございます。では………帰りますね」


「ああ。楽しかったぞネフィア」


「はい」


「帰りは中を通って帰れ」


「いえ、今日はお忍びです。ですから………窓から帰りますね」


 ネフィアが窓を開け、テラスに躍り出る。フラフラと。


「帰りは……楽です」


 真上に月が登り、月明かりの中でネフィアは白い翼を広げ、丸めた旗を広げ、風が旗を靡かせる。


 俺の目に幻想的な光景が広がり、少し目を細めた。眩しすぎると言わんばかりに目に焼き付ける。


「それでは。さようなら」


 テラスから彼女は白い翼で滑空しながら飛び降りた。それを見続ける。


「ふむ。自由の羽で飛び立つか………」


 若くない自分に本当に悔しい想いになるのだった。その若い翼に。過去の自分を重ねて思う。いつかその旗をこの大陸に広めて欲しいと。我が夢を思う。




 次の日、早朝から私は教会でお祈りを済ませ長椅子に腰掛ける。隣にエメリア、隣に隊員の班長らしき人物が腰掛けた。そう、敵地で会議だ。


「姫様………黒騎士団長に話をしたのですね」


「ええ、乗り込んで。そこで占い師の家を捜査するらしいから。その後に私が行きます。あと二人だけでトキヤの家から武具とか本を帝国に送り届けて欲しい」


「姫様、わかりました。勇者については?」


「それ、私から」


 エメリアが私の膝の上に頭を転がす。精神体のために重量はない。


「ああ、破廉恥女神様」


「ネフィア。教育なってない」


「すばらしい。教育結果ですね」


「ネフィア~ネフィア~」


 私の隣でエメリアはキィーキィー文句を言う。その女神を睨み付け「早く言え」と促した。あまりの圧力に教会に居た人がブルッと身震いをする。やらかしたか。


「あら、私としたことが」


「ネフィアあなた………板についてるわね。魔王」


「鏡で練習してますから、で?」


「女神ヴィナスお姉さまは寝ているわ。やっぱり力の使いすぎ」


「では、好きにできる」


「でっ、勇者は?」


「召喚されているわ。私があなたにとりつき。一緒に行動しましょう。勇者の反応があれば伝えます」


 人間にスッと入り込むエメリア。それに驚く彼。


「女神様がついてくれるんですか………姫様がよかったなぁ」


「頑張ってね」


「はい。姫様」


「…………ねぇ女神だよ~わたし~もっとうやまって~」


 そのあともエメリアは愚痴を言い続けた。それに対して隊員と私は女神に微笑みを返すのだった。







 占い師の家に来た。ちょうど黒騎士数人が店の中をごっそりと運び出していた。調査のため盗むのだろう。まぁもう故人だ。好き勝手にするだろう。


「一緒に調査入ってもいいですか?」


 一人の騎士に声をかける。作業をやめて、私を覗き込んだ。


「ああ、いいぞ。物は持っていくなよ。隠し扉もある」


「わかった」


 話は通してあるのか、すんなりと中に入れた。中では黒騎士たちが鎧を脱いで作業に勤しんでいる。チラチラ私を見るが気にせず隠し扉の場所を教えてもらった。絨毯で隠された地下室のようで中に入るとそこでも黒騎士はせっせと本とか物を盗んで行く。


「めぼしいのありました?」


「禁術ばかりですね。あとは………奥にアーティフアァクト群があります」


「ふーん。なんかわかった?」


「まだです。調査中なため」


「了解です」


 私は邪魔にならないように避けながら。奥のアーティフアァクトの棚を見る。すると一冊の本に目が行く。


「回避すべき事柄一覧表?」


 周りの視線をみながら、それを手に取る。中は調査表だった。人間が地上を制圧するために起こしてはならない事柄が書いてあり、亞人たちによる敗北もダメだと書かれていた。読んでいくと……世界を崩壊させる物や魔物等が調べられていた。たまたま取った本が恐ろしく有用そうだったのだ。


「………」


 私はその一冊を盗む。誰も見ておらず。複写もあり。「いいよね」と思いながらそれを手に地下から上がる。


「ああ、ダメですよ持っていっちゃ」


「複写があったのでもって帰ります」


 バレた。まぁ手にもっているから仕方がない。


「複写が? なら………いいですけど」


「確認してくればいいよ。無理矢理にでも持っていく」


「………わかりました。それだけですよ」


「ありがとうございます」


 私はその本を持ってトキヤの家へ帰る。今ごろは隊員が待っている頃だろう。







 トキヤの家は住宅街の路地裏にある。昔なつかしの家であり私が昔に女になりたての頃、生活していた場所でもある。もしも、色々あって。人間として生きていくならここを使っていただろう。


 私はトキヤの家。地下へ降りる。


「数が多いですね。流石はトキヤ様………なんでもお使いになられるのですね」


「素晴らしい一品ばっかりです」


 隊員達が武器が貯蔵されている地下室に感嘆の声をあげる。


「これな、全部私のプレゼントで用意した武器たちだよ。今、使っている武器はここから一本いただいたのだ。そう、全部私の。何人かで持ち運んで商業都市へ」


 地下の武器たちは錆びておらず。今なら一本一本が素晴らしい一品なのがわかった。私に対する愛の深さも再確認する。気を引こうと沢山用意したんだ。


「全部ですか? 良いのですか勝手に?」


「全部私のになるはずだった。持って帰っても問題ない。トキヤの物は私の物。それに………これを私が特別に頑張った者への褒美でもいいかなって」


「よし全部回収!!」


「よっしゃ!! 頑張ろ!!」


 隊員が頑張って持ち出し始める。私はそれを指示した後に2階3階へと上がり。3階のトキヤの部屋に入った。中は書斎とベット、机があり魔術書などが荒らされてあった。黒騎士団が捜索した時のままなのだろう。


 しかし、ひとつだけ。荒らされている中で私はひとつ。小さい絵を見つける。トキヤが書いたのか。所々破れているが私の肖像画が書かれており。名前が書いてあった。


 私は本当に肖像画から生まれたのではないかと思うほどに素晴らしい絵だった。絵を取り丸めて荷物にしまおうかと思う。


「ネフィア様。占い師の家はどうされますか?」


「黒騎士団が丁寧に調べています。行っても何もないでしょう」


「そうですか………」


「でも。1冊ちょろまかしてきました。面白い本でしたよ」


 私は本の中身を見たとき驚いた。もしも、全てが終わっても危険はいっぱいあることが書いてあった。そう、何が起きたら滅びるかと考えて書かれた本なのだ。いつか役にたつだろう。


「それよりもこの散乱している禁書も送ってください」


「かしこまりました」


 私たちは着実に準備を行っていく。勇者を倒した先も。勇者を倒す段取りも。悲しいのは私一人で5人を倒せと言う。


「トキヤがいれば………ぬぐぐぐ」


 しかし、やるしかないと気合いを入れ直した。


 何故なら私は旦那が自慢したい程の女王様なのだから。



















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