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女体化魔王で成り上がり、婬魔の姫と勇者のハッピーエンドのその先に  作者: 水銀✿党員
第1新章 ~英魔国誕生・英魔王ネフィア・ネロリリス~
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旅の甘味所~エルフ族長のご褒美..


 私達は首都を出発する前に全員がバラバラに旅立つ事になった。トキヤ曰く。200人全員で行くのは変だと言うことらしい。冒険者を偽っての出発だった。私たちも出発する。なんと嬉しいことに二人きりでの出発だった。


「ネフィア。そういえばワンちゃんどこ行った? いつのまにか消えてたけど」


「ユグドラシルちゃんのもとへ」


「そっか………彼女のもとへか」


 ドレイクを一匹買い。それに乗って旅をする。深くローブを被りながら二人乗りの状態でトキヤが手綱を取る。残念ながらワンちゃんはもう都市ヘルカイトにお返しした。ドリアードの女の子を待たせているのだ。


「トキヤ………懐かしいね」


「懐かしいか?」


 道をゆっくりと進みながら。トキヤと旅をした日々を思い出す。


「うん。トキヤとの旅はいつぶりかな?」


「そういえば………そうだな。『魔王辞める』と言った日からだな。殆んど近場で。遠くまで旅をしていない」


「………出会ってから早いね。時間が過ぎるの」


「ああ。早いな」


 言葉に出さないが楽しい時間が多かった事を私達は知っていた。そして、これからもそれを求めるために戦わないといけない。仕方がない事だが。普通に産まれたかったとも思う。


「トキヤ。皆が隠してる事ってない?」


「………ない」


「はい、嘘ついた」


「………………隠してるのに言えるか?」


 私はトキヤや族長が隠し事をしている気がしていたが、その通りだった。


「私はけっこう隠し事されやすいね」


「ネフィア………」


「いいよ。隠し事」


「えっ? いいのか? 聞けばメチャメチャ怒ってたと聞いたが?」


「トキヤが隠し事での埋め合わせをしてくれたらいいよ。全て許す」


「埋め合わせね~」


 手綱を片手に頭を掻く彼。なにも思い付かないようだ。私はふふっと笑い。彼を見つめて言葉出す。


「ずっと一緒にいようね。なにも要らないから」


「本当に俺の事好きだな~」


「好きだよ。好き」


「………ふぅ。ちょっと引く」


「がぶ」


「あたたた!! 腕噛むな!! あたたた」


「酷い!!」


「いや!! 倦怠期とかないか?」


「ない!! 絶対ない!! 一生ない!!」


「お、おう」


「デリカシーないよね本当に。そこは恥ずかしがらずに『好き』て返すとこ。でもそういうのトキヤらしくって好き」


「はぁ~甘い」


「甘い?」


「なんか甘い」


「ふふ。そうやって、いつになっても照れるんだね」


「同じことをそのまま返す。今回は俺だった次回はわからないぞ」


「次回もトキヤ。強敵だよ私」


「ちょろいがな」


「それはちょっとムッとする」


「本当に変な所、ムッとするな」


「軽い女と言われてる気がする」


「俺だけには軽いだろ。いいや………重い女か」


「体重は………言わないでね? デリカシーないよ」


「俺を愛する想いは重いだろ?」


「あぐぅ。不意討ちイケメンスマイル~」


「次回は残念。お前だったな」


 私たちは周りの冒険者もとい、隊員たちに飽き

られながら私達は帝国へ向けて旅をするのだった。

 





「グレデンデさま。出発されました」


「行きましたか………」


 執務室の一室でソファーに座りながら紅茶を嗜んでいた私にフィアは報告しに部屋に入ってきた。私は手でこちらに誘い。彼女を膝の上に乗せる。


 綺麗な白い洋服の彼女の腰に手を回す。


「ご主人様。どうされましたか?」


「これから………君には影武者をしてもらう事になる。大変だが頼んだよ。義娘たちも無事強くなった」


「はい。ご主人様のお望み通りに」


 ネフィア様のような、綺麗な瞳に綺麗な金色の髪。彼女の本名もネフィアと言い。影武者として私が奴隷であった彼女を拾った。ただ……そう……拾っただけだった。


「フィア………今までよく頑張って来た。そしてこれからも忙しい。すまないな………なにか褒美をとらなければならないが。何が欲しいものはあるか?」


 私が彼女に向けて優しく話しかける。ネフィア様より小柄な体はネフィア様より弱々しい。しかし………姫様と言えば姫様らしいとも思う彼女に私は何かを褒美をとらせたいとも思っていた。


 こんなにも小柄な彼女に多くの無理をさせているのだから。


「ご主人様………ご褒美を頂けるのですか?」


「ああ、なんでもいい」


「………なんでもですか」


 フィアは少し逡巡したあとに私の瞳を覗き込む。私も彼女の深い青い瞳に吸い込まれながら言葉を待った。


「………一つ」


「欲しいものがあるのかい? 一つ? なんだね」


「ヤドリギの花、小さくて可愛いんです」


「ヤドリギ? あれに花が咲くのかい?」


「はい、黄色い花です。ご存知ないのですね………」


「わかった。用意しよう」


「…………はい」


 私は花が欲しいと言う女の子らしいお願いにほっこりと心があったかくなるのだった。ただ彼女は少し、ヤドリギに花が咲くのを知らないことに残念そうなのはわかった。少し、申し訳なりながらも。早く手に入れようと思う。かわいい彼女のために。






 出発後、私達は何度も旅をしている身のため。そつなく魔物を撃退しながら都市インバスにつき、九大族長の一人。吸血鬼セレファに挨拶を済ませ、都市インバスを観光する。


 昔は黒くおぞましい雰囲気が嘘のような淫らな雰囲気が漂っていたが。知らない間に都市インバスは繁華街のような娼婦や色欲の都市へと変貌し驚かされる。


 婬魔が虐げられず婬魔悪魔の住んでいる都市らしい都市へと変わってしまった。いい意味なのか悪い意味なのか。


 ローブで姿を隠し忍びながらギルドの酒場に行くと。なんと、女性たちが面積の少ない布を着て接客をしていた。色んな種族の女性が接客をし、後ろに値札がついており私達は引く。その金額を払えば………まぁうん。


「ここ、冒険者ギルドの酒場だよな………」


「娼婦ですよね」


「いらっしゃ………あっ!?」


 一人の獣族の女性が私を指を差した。ウサギ耳の獣族でピコピコと耳を動かす。


「ネフィア様!?」


「バレた」


「顔を見られたら一発だな」


 二人でローブを外し、空いてる席を教えてもらい個室に案内される。ウサギ耳の獣族は少しお待ちくださいといい。個室を後にした。


「トキヤ………この部屋。愛が深い」


 私の嗅覚に少しだけ反応する。


「なにも言うな。なにも」


 そういう部屋なのだろう。トキヤが頭を抱えて、ため息をはく。


「トキヤ………やるくせに?」


「だから、男だけで来る店だここ。お前がいるとなんか悪い気がして落ち着かないんだ」


「………よし!! わかった!! ちょい待っててね」


 私は立ち上がり個室を後にする。そして店員に声をかけ、私は案内してもらうのだった。





「やな予感がする………」


 ネフィアが嬉々として部屋を出て行ったのに不安がりながら。待つこと数分。ある一人の男性が現れる。


「はじめまして。勇者トキヤさま………ここのギルド長をしております。婬魔のインデスです」


 一人、肌の黒く背中に蝙蝠の羽根をつけた男性の悪魔が顔を出した。俺も頷いて挨拶を済ませる。


「トキヤだ。ちょっと都市が変わりすぎて変わりすぎて驚いたわ」


「そうでしょうね。婬魔族長様が私たちの『能力を存分に生かせ』と言われてこの状態です。昔の奴隷のような事は全くなくなりました」


「少しばかり。頑張りすぎだろ」


「ええ、頑張らなければ奴隷に戻ってしまう。一応私達はまだ一人で立てません。婚約者を探しているのです」


「婚約者?」


「トキヤ様のような方をです。ネフィア様のように幸せになりたいのですよ。婬魔は愛に餓えております。冒険者相手に」


「はぁ………まぁ頑張れ」


「はい。あとはやっぱり性欲は金になりますね」


「……………」


 マジで婬らな都市になってしまったらしい。


「どうですか? トキヤ様も? 遊びで抱かれても……」


「ネフィアの前でそれが言えるなら言ってみろ」


「ははは!! 冗談です!!…………とまぁ、それよりも姫様はどちらへ? ご挨拶したいのですが?」


「なんか、飛び出していった。それよりもご飯はあるよな?」


「あります。メニュー表をご用意させますね」


 そう言って個室から彼は姿を消した。まぁ………昔に比べて陰鬱な雰囲気の都市じゃなくなったのは良いことだと俺は笑みを浮かべる。


 昔ならどうでもいいとか、勝手にすればいいとか、全く気にもとめなかったが。今ではなんとも感情が揺れ動きやすい。「昔の二つ名の魔物は返上だな」と思っていた。そして。


「メニュー表お持ちしました~」


 ネフィアの声と共に個室に入って俺は一瞬で目を細める。ネフィアは外の女性たちと同じように布の面積が少ない服を着ている。今、わかったが婬魔らしい服装と言える。黒い下着ぽい。


「…………ご飯なに食べる?」


「トキヤ………他に言うことはないの?」


 ネフィアがその姿で扉にカギをかけて俺の膝の上に座る。首に手を回しながら。


「婬魔だよ」


「あのなネフィア。俺たちは戦地へ向かうんだ」


「戦地へ娼婦を連れるのは普通の事」


「俺は連れなかった」


「私は連れるの」


 なめやかしく。ネフィアが俺の首筋を舐める。


「ふふ。おいしい。今日はあなたにお買い上げされました娼婦ネフィアです」


「おまえなぁ~空気は読まないし一度は………まぁその。もう姫様だし、女王とか皆に言われてるし。ちょっと大人げない」


「…………しゅん」


 ネフィアがしょげる。


「せっかく。トキヤを喜ばせたいから………恥ずかしいの我慢して着て……演じたのに………」


「………」


「こんな姿はトキヤの前だけ。あなたの前だけは一人の女として居させて」


「あぁ……すまんな。その気にならないだけなんだ。宿屋に戻ったらその姿になってくれたら嬉しい。婬魔らしい艶姿はそそる。値札はどこかな?」


 トキヤが優しく頬を撫でる。良かったと内心思い。言い返しを考えた。


「ごめんなさい。私は既に買われてます。あなたに。不買品ですよ」


「そうかぁ、仕方ないな~」


 優しくトキヤが撫でながら、メニュー表を見て注文をお願いする。私はこの衣装を着替え。買い取り。宿屋で再度、着ようと思うのだった。







 私は珍しいヤドリギの花を妖精姫から送ってもらい手にした。しかし、疑問にも思う。ヤドリギの花は小さく黄色いが………こうゴワゴワして。綺麗と言うよりヤドリギを壁に輪にして飾るのが一番見栄えがいいと聞いた。そう家を護るためのおまじないとも。力強く宿る木。御守りとして人気らしい。


「部屋に飾りたいのか?」


 個室を与えているため。花が綺麗とか言うよりもおまじないの御守りとして飾りたいのかもしれない。乾燥させたヤドリギの輪を持ちながら彼女を探す。今日は非番な筈だ。


「そういえば妖精姫ニンフから渡す前に読めと言われていたが………なんだろうな」


 ニンフから手紙も届いている。呪文でも書いているのだろうか。内容はヤドリギの花言葉……忍耐・克服。


 まぁ素晴らしい花言葉だ。まるで姫様のようだと思った瞬間。目の前の続きの言葉でヤドリギの輪を落としてしまう。





 花言葉……キスしてください。





 私は慌ててヤドリギを拾い上げ。もう一度手紙を読んだ。そんなバカなと思いつつも鼓動が早くなる。何度読んでも花言葉は情熱的だった。


「ま、まさか………そんな筈はない」


 否定を口にする。


「ご主人様?」


「!?!?」


 私は廊下でうなっていると驚いた表情で彼女を見た。そう、フィアが背後でにこやかに声をかけてくれたのだ。


「あ、ああ。探していた所だ。これを」


「ヤドリギですね!! この前にお願いしてた!!」


「そ、そうだ!! 見つけるのに苦労した!! 首都にはないからな」


「ありがとうございます。うれしい………御守りとして飾らせてください」


「あ、ああ……」


 なんだ、やはり……飾りたいだけか。胸を撫で下ろす。緊張がほぐれた。


ポロ


「ご主人様? なにか落ちました?」


「あっそれは!!」


「…………これは、花言葉ですね」


「あ、ああ。妖精姫から教えていただいたのだ」


「花言葉は『キスしてください』ですね。知ってました」


「知っていたか。いや、私は知らなくてな………聞いてそういう意味があるのかと知ったよ」


「………ご主人様。その………花言葉。知ってどう思いましたか?」


「ど、どうとは?」


 長い長命な私は何故か冷や汗が止まらない。


「もし、あのご褒美の時に知っていたら。ご主人様はどうしましたか?」


「それは…………まぁ少し考えて今日のように用意しただろう」


「………………」


 フィアが小さな胸に手を当てて深呼吸する。そしてポツリと声を出した。


「ヤドリギが欲しかったんじゃないんです。ごめんなさい」


 ヤドリギが欲しかった訳じゃない。せっかく用意したヤドリギを欲しかった訳じゃないと言った。私はその意味を理解する。よくみると彼女の手は震えていた。


 そう………彼女のなりの精一杯のお願いだったのだ。キスしてほしいと言う褒美を恥ずかしながらも言い切り。察して欲しかったのだ。


「はぁ………」


 私は頭を押さえ自分のその察しの悪さと褒美を取り間違えた事を知り、申し訳ない気持ちになる。


「ご主人様。ごめんなさい。厚かましかったですね。冗談です。うれしいです!! ありがとうございます!!」


「フィア………今からのご褒美は間に合うかい?」


「えっ?」


「まぁ、察しの悪い男ですまなかった」


 呆けるフィアの肩を掴み。廊下の真ん中で褒美を与える。可愛らしい彼女に。


「………」


 そんな長くはない褒美。離れた瞬間。フィアは自分の唇に触れていた。なにが起きたか確かめるように。


「ご褒美、間違ってはいないよな? 私は察しが悪い。教えてくれ」


「………ご主人様。ご褒美…………ありがとうございます」


「それなら良かった。では………これからも頼んだぞ」


 私は彼女から踵を返し。廊下を歩く。


 私は姫様とトキヤ殿の愛に当てられたようだ。昔の私では想像できないほどに………顔が今は赤いだろう。








































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