感情の炎、新たな勇者の出現..
私は豪華な鳥籠こと寝室で過ごす。その中で最近思うのだが「自分の人生は閉じ込められる人生なのかもしれない」と思うのだ。幼少からずっと閉じ込められることが多かった。
「でも……昔よりも……」
だが、今は昔よりも窮屈には感じなくなっている。魔力で水を引っ張れるしキッチンもある。まるで家のような広さで。驚くべきことに2階も作るようだ。城の中に家を作ると言う。
色んな事を私のためにしてくれるのだ。いつしか鳥籠もやめて自由に出入り出来るようにしてくれるとも言っていた。
まぁそれも当分先らしいがそんなことよりも。
「トキヤ、火の鳥返して」
私は読書に耽って構ってくれない旦那様に声をかけた。
「あん? 返してなかったっけ?」
「返して貰ってない」
私は旅立つ前に自分の力をトキヤに預けていた。護って欲しいと願い。だからか、魔法が使いづらい。炎の魔法も全く使えない訳じゃないが非常に火力が弱いのだ。
「私の感情の欠落があるからお願い返して」
「欠落?」
「愛がない」
「はっ? お前………めちゃくちゃくっついて来てるじゃないか」
「そうだけど。これは体の染み付いた感情の残滓で。心は籠ってないから」
「…………本当か?」
トキヤが本を置いて私を睨む。ああ、すごむ彼は格好いいなぁ~
「愛と言う感情がないのなら………俺を求めるのはおかしくないか?」
「ネフィアはトキヤを求めると言う概念が世界にはあり。私は感情が無くてもトキヤを求めることを強いられているのです」
「……………ネフィア愛してる」
「私も愛してる」
「………あるよなぁ~。泣いてたもんな~」
「………あるかもしれない。胸が暖かい」
よくよく考えると愛は無制限に溢れるもの。それを取っても溢れるからあるのかもしれない。
「でも。返して。女王になったし!! 必殺カイザーフェニックス!! って叫びたい」
私は威厳たっぷりにクククと言い。右手を疼かせる。
「まぁ返せって言われてもお前の炎だからなぁ………勝手に帰るだろ普通」
「帰って来てない」
「はぁ………まったく」
トキヤが火の小鳥を探す。探すとちょうどトキヤの頭から現れ。床に降りていく。
「さぁ………帰ってこい~私」
「分離できる炎かぁ………考えてみれば上級魔法の一種で………」
「チュンチュン!! ちゅううううう!!」
「あっつ!?」
私は小鳥を掴もうとした瞬間にブワっと火を吐かれ手が焦げる。こやつ!!
「反抗期!?」
「どういうことだ!! 制御できないのか!?」
「わかんない!!」
トキヤが私を背中に回し庇う。素晴らしい程に格好いい。
「不測の事態だ。どうする?」
「もう。捨てていいかもね。トキヤ~」
「ああ!! こら!! 背中に手を回すんじゃない!!」
「チュン!!…………あああああ!!」
「「!?」」
小鳥が苛立ったような声を出し。燃え上がる。そしてネフィアに似た炎となった。裸体に所々火を纏い、精霊のような姿へと転じる。
「うっそだろ!? おい!?」
「トキヤ!! ダメ見ちゃ!!」
「それどころじゃないだろ!!」
「あああああああ!! トキヤから離れろ!!」
「「へっ?」」
「離れろ!!」
「う、うん」
私は恐る恐る離れた。
「どゆこと?」
「ああ………ネフィア自身だからか………なるほど」
「どゆこと?」
「ネフィア。お前の偏愛の塊だからな。感情の自我があるんだよ。でっ………言葉も喋れるし何で戻らないんだ?」
「トキヤが好きだから!!」
「トキヤ!! こいつ消していいよ」
「ネフィア!?」
トキヤが驚いた顔で私を見る。私は頷いて彼にお願いする。
「消すって言ってもな………俺を護ってくれたし。親にも会わせてくれた。親にも挨拶してくれたし。助かってるんだよなぁ~」
「ズルい!? 何があったの!? 何が!!」
「一緒になればいいじゃないか?」
「嫌だ!! 私はトキヤといたい!! トキヤ………私さ………」
「トキヤさん。ああ言ってますけど」
「戻れ。お前は感情欠落した不完全。危ない。魂を分けているだけで。ネフィアだろお前も」
「くぅ………」
フェニックスが小鳥に戻り渋々といった様子で私の肩に止まり消え失せる。その瞬間。頭が割れそうな程に傷みを伴った。
「うぅ!?」
「ネフィア!? 大丈夫か!?」
「あうぅ………まって……」
頭の中に記憶を無理矢理押し込まれる。結果数分で今までトキヤと一緒にいた記憶を持ち。恐ろしいほどに時間を過ごした気分になる。そして。
「カイザーフェニックス!!」
フェニックスを掌から出し。掴み。壁に叩きつけた。
「はい!? ネフィア、どうした!?」
「こいつ!! 私が一人の時にトキヤと学園で過ごしてた消し去ってくれる!!」
「いや!! お前だろ!!」
「体は覚えてない!! そう!! トキヤと逢瀬もしやがって!!」
バシン!!
「あううう!!」
私は頭を抑えトキヤを見る。本の角で叩かれたらしく。トキヤが本を構えていた。2発め行くぞと言わんばかりに構えている。フェニックスもズルズルと戻ってきた。
「自分自身に嫉妬してアホかと」
「ウグゥ……でも!!」
トンッ
おでこが重なりあう。いつもの瞳。真っ直ぐな瞳で私を射ぬく。
「俺のネフィアはお前だけだ。そうだろ?」
「トキヤ…………」
「おでこ熱いな」
「うん………」
私は目を閉じる。ゆっくりと生暖かい吐息が触れる距離で。
ドンッ!!
「ネフィアさん!! 話があります!!」
エメリヤが勢い良く扉を開ける。普通なら。恥ずかしくて吹き飛ばしたりするのだろうけど私はしっかりと彼を唇で感じる。
「ん……」
「ネフィア。お客さんだ」
「そうだね」
「このぉ!! バカップル!! まーた!! 女神の前で!!」
「悔しいなら相手を見つけなさい。べー」
トキヤから離れ椅子に座り。ため息を吐く。トキヤのお父さん、お母さん。優しかった。もう一回挨拶したい。今度は本当の完全なる私で。
「ネフィア!! 私を無視して黄昏ない!! 話があるのよ!!」
「まーたろくでもないんでしょ」
「そうよ………ごめん」
「あっうん。強く言いすぎました。ごめん」
「でっ? 女神………なんだ?」
「大きな大きな力を感じたの」
「力を?」
「…………」
トキヤが腕を組みながら。椅子に座る。女神が神妙な顔で語りだす。
「私たちは信仰が力です。その中で信仰を糧に事を成します」
「まどろっこしいな早く結論を言え」
「4人の勇者が召喚されるようです。私の姉が力を全力で使って」
私たちは息を飲み込む。トキヤを見ると驚愕な顔で話始めた。驚いたのか椅子から立ち上がっている。
「4人だと!? 4人!! そんな馬鹿な!!」
「勇者は一人と言う理由はないでしょう。あなたもあなたの偽物も居ますし」
「ネフィアを殺しに来ると言うことだな」
底冷えする声をトキヤが放つ。殺意を剥き出しにした猛獣の如く空気が重くなった。
「ええ。きっとそう」
「ネフィア…………ここでまて」
「トキヤ?」
「族長を呼ぶ。決めなくちゃいけない…………戦争は始まっている」
私はその言葉に頷いた。
「わかった。お願い呼んできて」
「女神も本気なんだろうな」
「姉は………愚かですから」
「トキヤ。会議室の手配も」
「ネフィア?」
「意外そうな顔をしないで。女王になってるんだから。演じる事はしなくちゃいけない。もう………逃げないよ」
トキヤが手をあげて行ってくるといい。部屋を後にした。私は椅子から立ち上がり。窓を見て城下町を見る。多くの亞人が行き交い生活している。そう………私の民だ。
勇者は恐ろしいほどに破壊を行う。彼等から私は護らなければならない。そう心に決めて挑もうと思う。
「私の民には指一本触れさせない」
心からそう思うのだった。




