女王陛下ネフィアの能力..
戴冠式は無事に終わり。怒濤の如く族長達の挨拶を住ませ。気付けば次の日になっていた。外はお祭り騒ぎも静まり。これから新しい時代が始まると言う事で仕事のために皆が散り散りになる。忙しくなるそうだった。
九大族長も大部分が去る。驚くべきは私が上がる前にすでに国境がなくなり道路建設が進んでいるらしい。敵が居なくなり繋げても利用されないと言う事のようだ。
そんなことを聞きながら軽く仮眠を取って起きた午後。私は笑顔で過ごす。何故なら。
「ふふふ~~トキヤ~~トキヤ~~」
愛しい旦那様の膝の上で対面座位と言う姿勢で彼を向かい合って座ているからだ。密着度が高いのが特徴で頬にキスしたり。首をなめたりと。私は彼を味わう事ができる。
「ネフィア。起きてから節操がない」
「トキヤ~トキヤ~」
「聞いてないな」
愛しい彼を肌で感じながら私は彼の名前だけを呼ぶ。名前を呼ぶだけでなんでこんなにも嬉しいのか。そう!! 呼ぶ相手がいる幸せ。そう幸せなのだ。
トントン、ガチャ
「姫様おはようございます」
「ネフィア。おはよう」
部屋にエメリヤとエルフ族長が現れる。私は慌てずに。トキヤの唇を奪う。
「んぐ!?」
「んん……」
「ネフィア………節操がないね」
「姫様のこの姿は見てるこちらが恥ずかしいですね」
「おはよう。お二人さん。取り込み中です」
「ネフィア…………羞恥はないのか?」
「余は女王陛下であるぞ。女王陛下がこれは恥ずかしい行為ではないと言えば恥ずかしい行為ではないのだ」
「英魔国を堕とすなよ」
「婬魔ぞ~」
人の目を気にせずにイチャイチャする。
「ネフィア!! イチャイチャしすぎ!!」
「まぁいいではないですか。気持ちわかりますよ。先ずは席に座りましょう」
二人が席に座る。最近エメリヤにはセレファから人形が贈呈され。人形に憑依し歩けるようになったらしい。綺麗なウェーブの長髪。人形らしい整った顔は女神らしいと言えば女神らしい。
「では、姫様。なにか色々と質問があると思います。女神様と一緒にお答えしましょう」
「えっ? もうどうでもいいよ。トキヤ居るし」
ズッ!!
エメリヤとエルフ族長が椅子からずっこける。
「ネフィア。あなた!! あれだけ荒れ狂って怒ってたのに!?」
「姫様………それはないでしょう。それにどちらかと言えば知っていただきたい」
「あっそう………トキヤ~だってさぁ~」
「ネフィア。真面目に聞けよ。さぁ!! 降りる」
「やぁ~だぁ~」
「エルフ族長。こんなのが女王陛下でいいのか?」
「もちろん。愛狂いは皆が知ってます」
「それもどうなんだ!?」
「私は気にしない。トキヤと一緒なら」
そう私はトキヤさえ居れば。何も欲しくはない。もう他の物をねだるのはやめた。彼だけでいい………彼だけで。お腹をさすりながら私はため息をつく。
「まぁ、真面目に話を聞こう」
「うん。いいでしょう。余に何を聞かせたいのだ?」
「威厳もないな~」
「ハハハ。姫様らしいです。でっ何処から話をしましょうか?」
「私はそうね………ネフィアが疑問に思ったことでいいと思う」
疑問………一体何を疑問に思ったのか。
「ないかなぁ………」
「姫様は骨抜きなので勝手に話しましょう。姫様のお姿についてです」
「私の?」
「何故、翼が生えたかご存知でしょうか?」
「トキヤが『天使みたいな女の子をベットの上で汚したい』と願ったから?」
「願ってない!! 願ってない!! 翼が生えたのビックリしてたわ!!」
「まぁそういう事もあるでしょうね」
「エルフ族長ぶちのめすぞ」
「冗談ですよ。ハハハハ」
エルフ族長が頭を抑えて笑う。
「でっ? 真相は?」
「姫様は完成された婬魔であると言うことです」
「完成された婬魔?」
「はい。婬魔族を調べてみました。婬魔族は異種族に変幻自在だと言うことが確認でき、それは中々魅せるために変幻するという能力でした。しかし、個人差があるようです。フィアの姿で納得しました。いいや………あのフィアのお陰でその特異性にたどりつきました」
「それは何となく私自身で感じてました。トキヤの好みの姿ですし」
ペシッ
胸を揉んで確かめる。トキヤに「はしたない」と頭を叩かれた。
「姫様。確かにそうです。しかしもっと言えば………姫様の内面も全て………変幻自在なのですよ。現に私は姫様は翼が生えていると信じた。結果はこの通りです」
私は口を押さえて驚く。
「じゃぁ!! 私の姿は!! トキヤの好みだけの話じゃないの!?」
「いいえ。トキヤさんの好みです。しかし他は他人のイメージを模倣すると思われます。だからこそ演じる事が出来るのでしょう。姿も幻影のように見え方が変わるときがあります」
「ああ、やっぱりそうか。エルフ族長………ネフィアはこれからどうなる?」
「『女王陛下らしくなる』と思われます」
「トキヤ………私、なんか怖くなって来た。私じゃなくなるの?」
「いいや。俺はお前を想い続ける限り姿は俺の好みだ。内面はお前自身のイメージだろう。大丈夫変わらないさ。変えさせない」
「トキヤ………うん。うれしい」
「チッ」
「……………エメリヤ、唐突に舌打ちするのね。なにうらやましい?」
女神が怪訝な顔をする。
「イチャイチャイチャイチャイチャイチャ!! 愛の女神の前で!!」
「いや、いいじゃないか!? 愛の女神なんだから」
「羨ましいの!!」
机をバシバシ叩くエメリヤ。私は笑い……指輪を見せつけた。ドヤ~
「早く独身卒業できればいいね。エメリヤおねえさま~」
「ネフィア、煽るな煽るな」
「まぁ、そういう訳で姫様には婬魔として魅せる能力が高いと思われます。後ですね………交遊関係が多いのは外交で有効なのもあり。とにかく女王陛下になるために生まれてきたような道筋を辿ってこられました。面白い程に」
「そういえば………聖書読んだよ!! 嘘ばっかじゃん!!」
そう、もらった本の内容は嘘ばっかだった。冒険譚だがあまりにも美化され過ぎていて気味が悪い。
「たとえば?」
「生まれたとき男だった事について!!」
「母性に目覚め女として覚醒されたことですか? 男だった理由は男を知るために彼女は最初、男として生を選んだと」
「うんな訳ないわ!!」
「へぇ~そうだったんだ」
「トキヤ騙されちゃいけない!!」
「俺にとっては。男だったのはよかったよ。結構、男の事詳しいし」
「エルフ族長。正しいと思います」
「ハハハ!! 姫様ちょろ!?」
「ちょろくはない!!」
「いや、ちょろいだろ」
私はブンブン頭を振り回して振り回して否定を表現する。
「まぁ姫様はそのような事で皆から期待を乗せられているようですね。帝国に拐われても生きてましたし」
「確かにな。俺が死にかけた……」
「そういえば、そのあとも世界樹で剣を抜いてましたね。グランドマザーと言う占い師狩ってましたし」
「お前…………グランドマザーとやりあったのか?」
「うん。あれは………敵だよトキヤ。詳しく後で話をする」
「知らないところで何があったんだ……」
説明したら長いから二人のときに説明しようと思い。トキヤには待って貰う。
「他は?」
「そうですね。太陽信仰と言うのが我らの新しい宗教で姫様には大教祖様の地位があります。私もその司教です。ええ」
「ああ。国教ね」
帝国は女神崇拝。こっちは太陽崇拝だろう。
「まとめるために用意したのです。うまく浸透しましたよ。エメリヤ様のお陰で」
「いいえ。ネフィアの知り合いが頑張った結果です。それにね…………」
エメリヤは私を見て黒い笑みを浮かべる。
「女神を倒すには女神信仰を減らさないといけないの。信仰は力です。私たち女神の」
「そうなの? へぇ~」
「ですから………あなたを使い。女神の信仰を減らし。弱くなって表へ出てきたところを戦って勝ちましょう」
「エメリヤ。見た目のわりに考えてるじゃん。最初から言ってよ」
「ダメです。断るでしょ?」
「『女王にさせる』と言われればねぇ…………はぁ」
私はため息を吐き。トキヤの唇を奪う。
「口直しにキスはやめろ!!」
「はいはい」
「姫様………これからもヨロシクお願いしますね。一応は影武者はいます。自由に動かれてください」
「影武者で回るの? 国は?」
「族長全員で回すのです。女王陛下は切り札です」
エルフ族長が笑顔で胸を張り宣言する。
「陽の導きがあるかぎりのね」
*
俺はネフィアを退かしてエルフ族長と共に寝室を出た。廊下を歩きながら話を始める。こいつは俺に話があるはずだと知っていた。だからネフィアと離れる。
「トキヤ殿………いいや。勇者殿」
「トキヤでいい。俺に話があるはずだ」
「ええ。約束は覚えてますか?」
「戴冠式でも言っていたな。覚えている。ネフィアが全員に敬われる状態なら貸そうとな」
「やり遂げました。しかし…………ネフィア様だけではダメです」
「わかってる。あいつ、俺の言うことはすぐに聞いてしまうからなぁ~操れって事だろ?」
現に今こうしているのも彼女の背を押したからだ。
「御明察です。姫様はトキヤ殿に多大なる信頼を寄せております。それに私もトキヤ殿を部下にスカウトしたいほど欲しいです。部下と言うより、王配ですので色々と政治をやっていただきます」
「おうおう……スカウトか」
「姫様抜きにしてもこれほど帝国や世界情勢に詳しい方は居ますまい。風の魔法使いは恐ろしいですが味方だと心強い」
「わかった。良いだろう………部下になろう」
「部下と言うよりかは政治関係の雑用をお願いしますね」
「へいへい。冒険者らしくな」
俺は頭を掻きながら返事をする。そして………一つ紙束を手渡され、俺はそれを受け取る。
「報告書です」
「何のだ?」
「姫様の能力について」
「婬魔の?」
「いいえ。女王陛下ネフィア・ネロリリス個人の能力です。女神もそれを感じ取り憑依していたのでしょう」
俺はそれを読み漁り驚いた顔をする。確かに言われれば能力と言われても納得する。細かく内容が書かれていた。
「要はネフィアをこっち側に引き込んだか」
「そうです。姫様は人間にもなれる。帝国にわたった場合。英魔国の負けでした」
「そこまでの能力だと思うか? 一度は否定した」
「間近で見てどう思われましたか?」
「…………運がいいな。たまたまだ」
「そう………一言で終わりますが。少し続きすぎでしょう」
廊下で俺は報告書を読み漁る。最後にこの能力に言葉をつけていた。俺は背筋が冷える。もしも………本当にこの能力があるのならば。俺でも勝てない。
「姫様は演劇も得意で、女優として馴染みのある言葉ですね」
「ああ、しかし………しっくり来るのは何故だろうな」
「九大族長とトキヤ殿にエメリヤ様だけの秘密です。知られすぎると下手したら色々な物が歪んでしまいます」
「………族長。よく気が付いたな。俺でも気にしなかったぞ」
「近くですと気になりませんが遠くからだと異常ですよ。姫様を利用する者が私たちだけである事が重要です。だから切り札なんです」
「まったく。恐ろしい男だな。眉唾もんかと思ったが………確かにな」
「一番の信教者ですからね」
報告書の表紙に目を向けて俺は頷く。「女神の祝福」と言うのを言っているが。俺たちはこれを違う言葉で表す。演劇出来るネフィアらしい能力。背筋に悪寒が走るその能力。
「ネフィアの能力は………」
間を開けて、エルフ族長を見ながら口に出す。あまりにもあまりにも馬鹿げた能力だと俺は思うが。心の奥底で納得する自分がいた。そうとしか言えない事象が多すぎる。
「機械仕掛けの神」
俺の奥さん女王陛下だと言う生易しい物ではなく魔族随一の化け物だったらしい。いや、それに我々は育ててしまったのだ。




