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魔国イヴァリース⑥女騎士..


 私は酒場に入り浸る。路地裏等ではいまだに腕を計るために襲撃されるが酒場内では伺うだけで一切関わろうとしない。冒険者の聖域は犯すことはない。いいや、衛兵に殺されるから避けるのだろう。そんなことを思いながらも私はこの狐人が経営する店に入り浸っていた。


「ネフィア様………いいのですか身を潜めなくても」


 マスターが心配してくれる。何故なら私の首に賞金がつき、狙われる事が多くなったのだ。壁に金額が提示された私の肖像画が張ってあり。目も疑うような金額が提示されている。一生トキヤと過ごせそうな金額だ。しかし、子供がいた場合は無理だろう。


「蜥蜴のリザードさんもあれから顔を見せませんね」


「のんきにしてますが………ネフィア様は狙われているのですよ!?」


「ふぅ、マスターよ。余を心配してくれるか………」


「それは………心配してます」


「昔は誰一人として声をかけてはくれなんだが………今は皆が心配し、声をかけてくれる」


 そう、距離を取っていた人が皆。声をかけてくれるのだ。賞金首になった瞬間に衛兵も「何かあれば助けを呼んでいい」と言うし。「賞金つけたやつを倒そう」とか………「一緒に戦おう」なども声をかけてくれる。全部断ったが、心は複雑だった。


「手のひらクルクルしてからに!! 今まで全く興味を示さなかったくせに、魔王の時は!!」


「…………ネフィア様。もし昔の罪を問うのでしたら。私一人の命でどうか皆をお許しください」


「は? はぁあああああ!?」


 蚊帳の外だったと思っていた私は知らぬ間に中心人物となり。今の魔国を揺るがしている。その自覚はあったが流石に言葉を疑う。


「ま、まて。余はそんなことはしない!! 過去は過去だ…………気にしないから………簡単に命を投げ出すのは許さんし、なんでポンポンそんな事を言うんだ……」


「ありがとうございます」


 おかしい、皆。私に対しておかしすぎる。


「はぁ、これも情報を封じられているから………わからない」


 そう、おかしい。そう思いながら頭を抱えていると声をかけられる。


「冒険者ネフィア・ネロリリスだな」


 声は凛とした逞しい女性の声だ。振り向くと赤い鎧を着た屈強そうな女性が立っている。キツイ顔つきだが非常に切れ長で親友狐人のヨウコのような長身美人の人間だ。そして背中に背負っている得物で何となくどこ出身の騎士かわかった。剣は刀という切れ味が恐ろしく鋭い剣だ。しかし、その剣は太く。大きく長い。刀の大剣と言った所であり。太刀と言うものだ。知っている。私はよく知っている。それがアクアマリンの故郷の物だと。


「ええ、私ですよ」


 口調を和らげる。最近気が付いたのだがたまに「余」と言ったり、声が変わったりしてしまう。自覚がないが。


「ネフィア………冒険者として直接依頼がある」


「何でしょうか?」


 罠かな。ならば、引っ掛かってみるのも一興かも知れない。


 そんなことを思いながら彼女は隣に座り。深刻な声で依頼を口にする。その横顔や、匂いなどで女の勘が働く。


「相棒を………助けてくれ」


「もちろん。話を聞かせて」


「は、早いな」


「私の勘が囁くのです。あなた…………恋してるでしょ?」


 驚く赤い女騎士は私の口を塞ぎ。慌てて周りを見る。その焦り振りに私は確信する。


 恋バナである。





 私はマスターに料理の注文をし、宿屋に持ってきて貰うことをお願いする。そのあと、人目を気にせずに堂々と歩き。宿屋に戻ってきた。戻って来る途中に彼女から自己紹介をお願いして彼女の事がわかる。


 彼女の名前はクロウディア。生まれはアクアマリンと言う都市で生まれで育ったらしい。小さい頃から勝ち気であり、男に混じって剣士の稽古を行っていたとの事。アクアマリンでは珍しくなく。女騎士は花の騎士と呼ばれ。その中には花の名前に変える者もいる。 しかし、親から貰ったものを変える気はなく。クロウディア・ベンセイルのままであるとの事。


 名のある。騎士らしく………私は知らないが「戦争で活躍した生き残り」と言う。「トキヤを知っているか?」と聞いたら。「戦場は違えと知っている」と言っていた。詳しく聞くと本当に帝国と連合国の戦争に関わっていたみたいだ。囲まれたこともあったとか。


「どうぞ………借宿ですが」


「うむ。なんとまぁ………流石は魔王か………豪華な」


「魔王じゃ………ないんですけど。ネフィアと呼んで。クロウディア」


「いいのか? 我はしがない冒険者であるぞ?」


「いいの、いいの。もし言わないと暴露されるけどいい?」


「ネフィア!! それは言わないでくれ!! わ、私からいつか言う!! それまでは………なんとか勇気を………」


「言えない時点で終わってるけどね」


「な、なにを!! そういう貴様はどうなのだ!!」


 私は赤い宝石の指輪を見せる。そして………フッと鼻で笑ってやった。


「大好きな人と結ばれてますけど何か? 流産ですが経産婦ですよ?」


「その歳で流産だと!? しかし………う、うぐぅ………くっ………負けだ」


 この赤い女騎士は面白いぐらい………いじりやすい。高貴な雰囲気だが。なおそれでいじると楽しそうだ。歳については見た目、お姉さんで通じるもんね。実際何歳だろうか。


「流産か………よく平気で言葉に出来るな………」


「平気じゃない。でも………乗り越えなくちゃ前は進めない。私は幸せになるなら何でもする。『生きる』てそういう事じゃない?」


「…………強いな」


「女は強いですよ。知らないだけで……母強し」


 そう。私はたまには泣くし、たまには落ち込むがそれでいいのだ。泣けばすっきりするし。落ち込んでも時間が経てばケロッと出来る。


「そんなことよりも。ソファにどうぞ。鎧も脱いでいいですよ。ワンちゃん!!」


 部屋の奥からドレイクが現れる。


「ネフィア様。なんのようですか?」


「四周の警戒をお願いします。私に依頼です」


「わかりました」


「ど、ドレイクが喋っているだと!?」


「…………うわぁお。そういえば驚きますよね」


 ドレイクが喋っているのに慣れすぎて。「ドレイクはしゃべるもんだ」と思ってしまい。野良ドレイクに声をかけてしまう事もあり恥ずかしい思いをしたこともあった。ああ、私よ。思い出すんじゃない。恥ずかしいじゃないか。


「では、庭で見張るとしましょう」


 ドレイクのワンちゃんが広いベランダへ歩を進め巨大化し犬と鳥のキメラのような姿のドラゴンになる。


「な、な!?」


「驚く人、初めてです」


「ま、魔国の首都はドレイクは犬の魔物になるのか!?」


「エルダードラゴンだから。こうやって姿を変えられるんだと思う。特別なだけです。さぁ話をしましょう。お茶を淹れますね」


「わ、わかった」


 しどろもどろになりながら。ソファに座る彼女。私は彼女の仕草で考えた時。一つだけ気が付いたことがあった。それは………私の視線ではきっとわからなかっただろう。オーバーリアクションに見えるだろう。しかし………彼女の仕草は普通なのだ。


 そう、私が異常なのだ。気が付いた。私は他人とは違いすぎる事を普通ではないことを思い出させる。変わり者だと。





「鎧を脱がないと依頼を聞かないわ」


 魔王ことネフィアのワガママで私は鎧を脱がされる。彼女もネグリジェに着替え薄着で私のために紅茶を用意した。透けた衣装から可愛らしい下着が見える。


「何故体を隠すんですか? 女の子同士………盛り上がりましょう?」 


 笑みを向ける彼女。綺麗な白い肌。ふくよかな太股と長い睫毛。クリッとした目と思いきや切れ長の目となる妖艶に見える女性であり、私自身もこれは………美人だと認めざる得ない女性だった。人形。そう………人間らしく人間らしくない。だからこそ魔族なのだろう。人間好みの容姿。これを妻にした旦那はさぞ素晴らしい男なのだろう。


「い、いや。私の体は傷で汚れている」


「名誉の勲章です。女騎士なら仕方ないですよ?」


「あ、ああ。そうならいいな」


「傷を気のするのは相手がいるからですね」


「な、なにを!?」


「騎士は傷を気にしない。男なら傷を自慢する。でも………女である私たちは………見られることを気にする。誰に?」


 にやっと笑う彼女に背筋が冷える。私は間違った。優しそうな雰囲気だった彼女が逃がさないと目をぎらつかせる。


 全部を話さないといけないかもしれない。


「そ、それより依頼の話をしよう。私の相棒が魔王城へ閉じ込められた。父上を止めるために単身で乗り込み。帰ってこない………聞けば………処刑されると噂を耳にした」


「そこで私に取り止めるようにお願いするわけね」


「次期魔王なら………と」


「残念ですが権限はないです。相手はどんな方? 囚われている檻を襲ってもいいかもしれないですね」


「そうか………相手は強い。強い筈だが………負けたのだろう」


「強いとかじゃなくて容姿とか。探すの大変です」


「容姿は………オーク族で屈強な拳闘士だ」


「出会いとか聞きたいな」


 「腹を括って話をしよう」と思う。彼女を満足させて協力を取り付けないといけない。だから、私は彼との出会いを話始めたのだった。







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