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魔国イヴァリース⑤九大英族長..


 エルフ族長である私は思案する。「魔王とは圧倒的な権力や暴力をふるい、常人離れした才能・能力の持ち主であり。それは魔国の族長達が冷戦を選ばないといけないほどの物でないといけない」と私は思っている。魔王であるならば。しかし、姫様は果たして魔王なのだろうか。


 そんなことをいつも自問自答しながらわかりきった答えに満足する。すでに答えは手に入っている。


「では、族長の全員集まった訳ですし。話を始めましょう」


 玉座の間で私たちは対峙する。そう、今この瞬間に魔国で一番力を持つ9人の族長が顔を見せた。この玉座の間に入ることが出来る者9人。あの魔剣を掴み玉座に座ることが出来る者たち。昔はもっと数が多かったが。今はこの9人の代表者の下へと下ったのだ。新生勢力もある。


「では、会議を始めましょう。議題は………昨日に物騒な事件が起きました。それについてでしょうか? 兵を動かした人がいるのでしょうかね?」


 昨日、裏路地で傭兵の戦闘があり50名ほど大火傷を負った。その事について話をするために集まったのだ。私は検討はついているが知らない振りをして一人一人顔をうかがう。


 右隣1列目にはダークエルフ族長バルバロス。魔国の精鋭衛兵隊を纏める指揮官。姫様に負けてから彼は自ずからを鍛え直し衛兵も鍛え直して今の状況を作り上げている本人だ。そう………魔国首都の兵士は全て彼の傘下へ入った。精鋭だけを持ち込んでいる族長では敵わない。今の魔国イヴァリースの秩序を最低限守っているとも言える。よく短期間でここまで強くなったものだと舌を巻いた。


 左隣1列目には新しく夢魔と悪魔を纏めあげ、オペラハウスの実権を握っている仮面をつけた男の夢魔族長エリック。新生勢力だが、兵力は私を凌ぐほどに膨れあがった。古代兵器の持ち主となり。低級亜人ゴブリンの兵士を従えている。しかし低級は遥か昔の事。今では騎士のように戒律を重んじてあの治安が悪くなりそうなオペラハウスという都市を守り続けている。


 次に右隣2列目、トロールと言う巨人族の大きな体躯を持つ族長が昼寝をしている。昔に処罰を受けたが私の力で時効とし。自由に行き交い出来るようにした。トロール族の都市は田舎と馬鹿にされるぐらいだったが。今では聖樹都市ヘルカイトの中継地点だ。農場もあり、魔国の台所事情。小麦粉を生産する重要拠点の主である。


 今度は向かい側に視線を動かす。名をセレファと言う吸血鬼がニコニコしながら立っていた。彼は都市インバスの吸血鬼だが女神に魅せられ裏切り。しかし、ある事件を切っ掛けにその行為に協賛した吸血鬼と狼男の協力の元。都市インバスを短期間で制圧した化け物だ。マリオネット人形の聖なる霊を兵とし。吸血鬼の私兵を持ち。捨てられた人間の衛兵を持ち。狼男の兵隊を持つ。女神信奉の教会の権力者だ。


 右3列目。リザードマンの背中にトライデントという槍を持つ蜥蜴の王が立っていた。奴の名はリザードと言い。少ないが多くの種族の獣人族が跋扈していた魔国において力で全て彼の仲間へと下し。纏まりのなかった獣人族が一致団結し都市を持っている。砂漠の都市リザード。彼の名前の都市であり、そして全ての獣族の管理者がいる都市であり故郷だ。非常に屈強な砂漠の兵士を要している。しかしオーク族だけ別物なのだ。


 次に向かい側の3列左側はオーク族長。オークキングと言われる役を持ち。デュナミスと言う。オーク族とは豚の獣人族だが多種を孕ませられる繁殖力の力で数が多く。リザードの傘下に降らず。単種族だけで勢力を持つ屈強な部族だ。都市も魔国の隣に持ち。不浄地でも住めるほどの屈強な体でダークエルフ族と同じように不浄地に都市を置いている。


 最後に4列目。左右にいるのは女性の魔族長の代理だ。片方はオニヤンマと言う部族らしく。頭に触覚と背中に透明な堅い羽が生えている。滑らかな体を持ち。最近まで魔物だった奴等の集団だ。都市を持たず魔物の村を転々と持ち。多種の虫のような魔物が集まったようだ。滅びた標準的なアラクネの一人が族長となり。魔物に知恵を授け魔族へと昇華させたらしい。オニヤンマのカスガと言い。故郷兼まとめ役のアラクネ族長は都市ヘルカイトにいるらしい。そう…………都市ヘルカイトにいる。人間の夫を持つ優しき蜘蛛姫がそこを拠点に勢力が広がっているのだ。特徴は全員が胸が大きい。


 そして最後は妖艶な笑みを見せるが緊張してるだけのスキャラと言うタコの水棲魔族の代表者。スキャラ族長だ。彼らは魔国から西側海岸線が全て彼女らの領有であり。海に浸かった海中都市スキャラと漁業都市マーメイドがある。スキャラと人魚や半魚人など。水棲の亜人を束ね。海中海上は最強と思われている。だが……彼女は今最近になって族長となった者。その笑みは仮面だろうと思うのだった。このメンバーの中で何故なら震えているからだ。弱い。


 以上、自分を含め9人の最も力がある族長達。


「あの騒ぎは俺がした」


 その9人の中で一人が白状する。槍を持った蜥蜴の男が目を見開き話始める。


「お前が渡した資料を疑っている。ネフィアは死なないと聞いたが果たして本当か見定める」


 資料とは私が族長たちに手渡した魔王への推薦状のようなもの。内容は信じれるものではないが現実がそうだ。そして俺は一言。「もしネフィア様を姫様を殺せるならば。あなたが魔王です。従います」と付け加えたのだ。


「ガハハハハハ!! リザード!! お前がやったか!! はははは!! 確かにこれは全く信じれるものではない。まぁ抜け駆けは感心せんがな」


「なら、デュナミス。オーク族長らしくやればいい。我は我の自由にさせてもらう。では………行く」


 リザードが宣戦布告と取れる言葉を投げ玉座の間を去る。聞く耳を持たないと言うことだ。


「ククク。ならワシも今から準備をしよう。グレデンデ………そうすればネフィアはここへ来るのだな?」


「ええ、見ず知らずの誰よりも身内やそう恋愛事には首を突っ込んで来ます」


「くくく。なら俺はお前らの目の前。そう!! ここで力を示してやる!! ネフィアと言う女を殴り犯してな!! ガハハハハハ!!」


 筋肉隆々としたオークキングも玉座の間から去る。彼に案を授け。姫様をこの場に惹き付ける役目を喜んで受けてくれた。息子を利用して。姫様を魔王と判断は自分の目で見るために。


「結局残ったのはこれらだけか………スキャラ族長オクトパスはどうされま………」


「オクトパス殿。人魚とは美しい種族なのですね。オクトパス殿このあとどうでしょうか?」


「………私を人魚と間違うの。スキャラ族だ。私と一緒に何処かへいきたいの?」


「それは驚きました。スキャラ族ですか。この世にはまだあなたのような美しい女性が隠れていたのですね。人魚と間違い申し訳ありません。童話の美しい人魚姫を思い出したものですから」


「…………もしかして口説ているのね? ふふ、ダメよ。あなたを食べちゃったら狐に焼かれてしまうわ。ごめんなさい。やめてください……私が死んでしまいます。怖いです」


「知らなければ問題ありません。一晩どうでしょうか? 夢の世界へ誘いますよ」


「オクトパス。やめた方がいいわ。私も誘われたけど人の男を食べると厄介よ」


「カスガさまも。お綺麗でつい体が動くのです」


「あと。軽い男は嫌われるわよ。エリック」


「カスガさまを抱けるなら。嫌われようと手に入れましょうか?」


「力で押さえることも出来ると?」


「ええ。出来ますよ」


「……………エリック!!」


「ははは。冗談はこれぐらいにしましょう。カスガさま。オクトパスさま。何卒、よろしくお願いいたします」


 エリックが知らぬ間に口説いていたがはね除けられていた。気持ちはわからんでもないが。


「で、オクトパス殿は?」


「ふぅ。私たちはスキャラ族は誰が魔王になるかを見届けるだけね………なんで私の代でこんなことに………」


「中立と言うことですね」


「あなたよりのね。グレデンデ、エリック、セレファ、カスガ、バルバトス、そしてトロールの……お名前きいてませんわね。怖いよぉ~怖いよぉ~」


「オデ、トロール」


「トロールなのね名前。ここに残った者は皆、ネフィアさんの知り合いでしょう。私は敵にもなる気も何も干渉しないわ。だから………殺さないでね。早く帰りたい」


「ええ。中立というだけでありがたいですね」


 そう。実力者である残った私たちは皆が姫様の知り合いだ。カスガさんは違うが。アラクネ族長は親友である。


「じゃぁ、私は都市オクトパスに帰るわ。後で教えてね?」


「戴冠式の出席は?」


「出たいやつだけ残すわ。わたしは………男を探してる。いい人食べたいじゃない? 帰りたい帰りたい帰りたい」


 ネットリと舌を出す。スキャラ族長、かわいいですね。その見栄っ張りを演じるの。本心も漏れてます。


「では、私と一晩どうでしょうか?」


「あなたは既婚者よ。後腐れがあるの。やめて関わらないで」


「妻は置いてきました」


「……………まぁしつこい。スキャラ族よりしつこい」


「オクトパス様が綺麗ですから。襲いたいのです」


「ああ………しつこい。うぐぅ」


 オクトパスが逃げるように玉座の間を去る。後ろからエリックがついていき口説き続けていた。


「オデ、カエル」


「ああ、トロール。何かあれば呼ぶ」


「タタカイマカセロ」


「わかったよ」


「じゃぁ俺も衛兵の仕事に戻る。冒険者が多く治安が悪くなっている。騒ぎの後始末もやらないといけない」


「恩に着るよ」


「グレデンデ。戴冠式はいつやる予定だ?」


「オーク族長が動きしだいで変わる」


「了解した」


 ダークエルフ族長とトロール族長も間を去る。


「では、私も帰ろう。顔を見合わせてわかった。私たちはたまたまと言うにはおかしいほど顔見知りだ。そうだろうエルフ族長」


「セレファ殿。何ででしょうね」


「お前の報告通りなら姫様のせいだな。インフェと歩かないといけないので帰るよ」


「わかりました」


 また一人、族長が間を去る。そして残ったのはアラクネ族長の代理。オニヤンマのカスガだ。


「まとまりがないな。私も帰るとしようか」


「カスガさん。私とお茶でもどうですか? 少しお話を聞きたいですね」


「カスガでいい。何が聞きたいエルフ族長」


「アラクネ族長リディアさんはご自身を族長と思っては居なかったようですが?」


「エルフ族長。私たちはまだ人に慣れていない。お前らをまだ餌だと感じている。餌と一緒に暮らすには手引きがいる。そしてその手引きが出来る魔族は蜘蛛姫だけだ。時間の問題で私たちは人を愛せるようになる。モデルがいるからこそ…………手を取り合えるようになった」


「では、誰かを愛したいと想いですか?」


「思う。言葉を聞ける。喋られるのだから。エルフ族長……誘いには乗りましょう」


 体を撫でながら、自分たちも玉座の間を去る。結局誰も座ろうとせずにこの場を去った。


 そして私は心の底から笑みを見せる。9人のうち自分を含めて6人がすでに姫様の影響下にある。そう、既に魔王は彼女以外は無理な状況となってしまったのだった。顔を見合わせたとき確信する。


 自分の報告書の正しさを。






「マスター朝食お願いいたします」


「ネフィア様……ローブは?」


「身を隠して何になるの? バレている者が着ても滑稽よ」


「しかし、一応は命を狙われていると聞いています」


「それが? 身に降りかかる火の粉を払ってこそ冒険者よ。それに…………もう隠れもしない。かかってくるならかかってこい。ホットサンド一つ」


 私は狐の耳をピコピコしている獣族のマスターに朝食を所望した。ここのホットサンドは美味しい。


「かしこまりました。流石はネフィア様と言った所ですね」


 店の奥へと料理にしに向かう。それよりも私に視線がある方がおもしろい。皆が私を伺い見ている。懐かしい感覚が私を奮い立たせた。仕草にも気を使う。まるで劇場の上に立っているような気分だ。


「ふぅ………まぁ昨日はやりすぎたけど。でも殺してないから衛兵にも怒られないわよね?」


 わからない。バレたら治安を乱したと言うことでしょっぴかれるかもしれない。相手が悪いのにな。


「隣いいでしょうか?」


「いいですよ」


 私の隣に昨日、出会い傭兵を差し向けてきた蜥蜴の男が槍をカウンターに置いて隣に座った。


「遅い朝食ですね」


「昨日、魔力をたくさん使ったから~騒ぎが落ち着いてからここに顔を出したの。いきなり襲わないのは感心しますよ」


「そうですね。50人を殺さず無力化したその手腕はなかなかの物ですね」


「ムシャクシャシテヤッタコウカイハシテイナイ。ああ、トキヤには黙っててね。怒られるかも」


 騒ぎを起こしたらいっつも怒られていたから。あの生活をもう一度したい。あの…………幸せだった1、2年を。もう無理だろうとは思うが。


「はぁ、どうして………幸せだったのに………」


「何かあったが知りませんがいきなり落ち込まれてもですね………」


「ごめん。それよりも自己紹介してない。失礼よ」


「ネフィア様、ホットサンドができまし………!?」


 狐の頭の耳がピンっと真っ直ぐに伸びる。狼狽え、隣の蜥蜴の男を見る。ドヤと顔を偉そうに笑い。その仕草に私は………


「やった!! ホットサンド来た!!」


 何も感じなかったので両手を合わせて「いただきます」と言う。どうでもいいのである。


「お、う」


 隣の蜥蜴の男が体勢を崩したが気にしない。私は手をお手拭きで汚れを取り。両手でホットサンドをつかんで頬張った。


「おいしい!! ふふ」


「ネフィア様、左様ですか。それで族長殿は何か頼みますか?」


「…………うむ。同じものを」


「わかりました」


「で、食事中すまない。私の名前はリザード。獣族をまとめる長である」


「あら、お偉いさんですね」


「驚かれないのですね?」


「ヘルカイトや女神や世界樹を見てきた私を驚かしたいならトキヤをつれてくればいい」


「ほう。まぁ流石は女神に愛された御仁と言うわけか。質問いいか?」


「いいですよ?」


 ホットサンドをハムハムとくわえながら話を聞く。ワザワザ昨日の今日で顔を見合わせたんだ。何かあるのだろう。


「魔王になるおつもりか?」


「なるつもりはない。断りに来た。余は都市ヘルカイトで夫である勇者を置いてきている。家に帰り家事をしなくてはいけない」


「…………ほう。家事を」


「余は女であり。女は紅を塗って家で男を待つのがお仕事だ」


「ほう、では聞こう。魔王とはなんだ?」


「魔国の王。族長のまとめ役。しかし………一筋縄ではいかないでしょうね。次の魔王さん大変そう」


「もし、私が魔王になり傘下に降るならどうする?」


「傘下に降る? 魔王になれば自然と魔国民は傘下だ。それに上が変わっても一般生活変わらないのに気にする必要はない」


「そうか、実は悩んでいる。私は魔王を目指すべきかそれとも…………エルフ族長と共に推薦をするかを。ネフィア様を魔王に推薦をな。昨日のことで尚更悩んでいる」


「なっ!? なっ!? ええ、推薦!! 取り下げ!! 取り下げ!!」


 今、次の魔王は大変と言ったばっかりに自分がなるとか拷問でしかない。胸ぐらを掴み揺さぶる。


「げほ!! 落ち着け!! ネフィア様!!」


「落ち着けない!! 何とかしなさい!!」


「ま、まて。何とか出来ない状況なのだ。世代交代が終わり。既に9人の最高権力者の6人がネフィア様の息がかかった族長なのだ。私一人では勝てない」


「手を貸します。ぶっ潰してしまいしょう」


「ま、まて。これを動かしているのはエルフ族長のグレデンデだ。奴を止めればいい」


「今からカチコミに行きますよ」


「はぁ………傍若無人な振る舞いの女性だな。いや……元男なら普通か」


「あっ………ごめんなさい。私がしたことが取り乱しましたわ。ホホホ」


「今さら、女々しく振る舞っても無駄だぞ?」


「はぁ、何でしょうね。最近、ヤサグレてるんです。世界樹の友達も死んじゃいましたし。女神が私に隠し事はするし。トキヤとも会えないですし………ぐすん…………うぅぅ」


「お、落ち着け泣くな!?」


「トキヤに………トキヤに会いたい………」


 私はとうとう我慢出来ずに泣き出してしまうのだった。




 我は砂漠の王。リザード。多くの敵と戦ってきた私は非常に今、困っている。すごく困った。


 隣の魔王候補者のネフィア様が激しく怒ったかと思えば、泣き出してしまったのだ。まるで夕立。晴れていたのに大雨が唐突に降る感覚だ。


 さめざめと人目を気にせずに泣き出してしまい。マスターがどうしたかと狼狽えだす。


 私が泣かした訳ではないのに。視線が痛い。


「ま、まぁ泣くな。トキヤと言ったな? 大丈夫だ会える!!」


「ぐすん…………会えるかな」


「ああ、大丈夫会える。家があるなら帰れば会えるさ」


「うん………ありがとう。もうちょっと我慢して刺客を倒すよ」


「ああ」


 送っている本人だがなんとも。気が抜ける。しかしそれは絶対の自信があるという、あらわれでもある。小事で気にしないのだろう。そう………本気ではない。「本気を出すまでもない」と言っているのだ。


「刺客に狙われているなら何故、鎧を着ない?」


「綺麗な服を着たいと言うのは女の子の夢です。鎧もいいんですが。久しぶりにファッションを楽しみたいのです」


「そ、そうか………」


 全く感覚が違いすぎる。だが、不思議と嫌な気持ちにらずに世間話が出来る。益や損を考えないためか自然体で居られた。


 カランカラン!!


 店に小さな娘が現れた。猫耳が特徴の娘だ。綺麗な高級な服を着て私に駆け寄る。母似過ぎて全く自分の子ではないように見える。リザードマンの特徴はないが、男ならリザードマンで生まれてきただろう。私が族をまとめた結果、最近は混血が多い。


「ああ、イブナ。どうしたんだい?」


「お母さんがね。お父さんを探してって。お父さん………いつ帰るの?」


「さぁ………わからない」


 今は全く動きがない。妻は近衛兵から私が惚れ。求婚した猫族の女性。近衛兵のため一緒に来ているが。やはり長い間、都市を空けるのはよろしくないとも忠告していた。話があると言うのは。衛兵を雇った事についてだろうか。


「イブナちゃん。こんにちは」


「ん?…………お姉さん!! お姉さん、こんにちは!!」 


「お姉さんとは………もしや!? 服をくださったのは!? 白い鎧の女性と聞いていたが………」


「そう!! お父さん!! この人!! お父さんの知り合いだったんだ!!」


「ああ、まぁ………家に帰ったら教えてあげるから母にはネフィア様と謁見中と伝えてくれ」


「うん!!…………じゃぁねお姉さん!!」


「ええ。じゃぁね」


 ネフィア様が手を振る。「こんなことがあるのか」と俺は思いつつ。エルフ族長の報告書を思い出していた。背筋が冷える。


「イブナちゃん。可愛いですね」


「あ、ああ。可愛い一人娘だ」


「羨ましいです。子がいるのは………」


 報告書にそう言えば経産婦であると書かれていた。流産だったが。人との混血を生み出す事が出来るとの見解に俺は驚いたものだ。


「イブナに服を買ってくださりありがとうございます。我が子だとは………気付かれてなかったようですね」


「たまたま。店で羨ましそうに眺めていたのを見てね。気まぐれで買い。あげちゃったんです。ごめんなさい………勝手にあげちゃって。甘やかしてしまいましたね」


「いいえ、買ってあげられるほど裕福ではありませんから。贅沢よりも都市発展のために………家族には無理をさせています」


「素晴らしい王ですね。尊敬しますよ」


「尊敬できるには我が子が白昼堂々と過ごせるこの都市の治安の良さですがな」


「ダークエルフ族長のお陰ね。そう言えば砂漠の都市と言ってましたね?」


「ええ。場所は商業都市から東南です」


「…………帝国に一番近い都市ね」


「そうです。故に団結し、都市を護らなければならない」


「帝国は強いわ。きっと負けるでしょう」


「な、なに!?」


「今のままでは負けるでしょう。まぁ気にしませんけど。あの子の幸せのために………祖国を裏切るも方法です」


 私は「魔国が負ける」と言われ驚く。魔国には族長たちがいる。そう易々と負けるとは思えないのだ。しかし、ネフィア様は何かを見て知っているらしい。


「何故負けるか………ご存知で?」


「さぁ? ただ何となくです」


 私はホットサンドを口に突っ込んで水を飲み流し込んだ。焦り、焦燥が体をねっとり包み込み急かす。会計を済ませ。私は立ち上がった。


「失礼します」


「ええ、お疲れ様」





 自分は執務室でカスガさんをおもてなししている。フィアに紅茶とお菓子を頼み。それをカスガさんは美味しそうにいただいていた。黒目に白目の彼女は違和感があるが。それも次第に美味しそうに食べているのをみると慣れ。綺麗な女だと思う。


「グレデンデさま。お客様です」


「ん? 通していいよ」


「誰?」


「えっと。獣族長リザードさんです」


「「!?」」


 カスガさんと私は目が合う。そうこうしているうちに蜥蜴の男が入って来た。神妙な顔をした状態で。


「アラクネ族長代理もいるのか………エルフ族長。至急話が聞きたい」


「え、ええ。何でしょうか?」


「なんだ? 焦った表情で………」


「ネフィア様と会ってきた」


 それだけを言うと私は笑みを向ける。また一人………彼女に魅せられたか。関わらないといけなくなったようだ。


 確信する。これで…………中立含む8人目。最後はやはりと言うかオーク族長が立ち塞がるだろう。


 あと一歩を俺は確信する。


 魔王ネフィア・ネロリリスの誕生を。


























 




 





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