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聖剣を抜いた女神の女勇者は魔王城へ..


 涙を流しながらベットから起きるのは何度目だろうか。私はそんな疑問を持ちながら体を起こした。体に彼女の残滓を残しながら。


 淫魔は別名、夢魔。夢も操り快楽を貶める悪魔だが私はその能力で多くのものを知り得た。色んな方の人生を学べている気がする。いいや、いろんな物を貰っている。


「惜しい人を亡くしました」


 ベットから降り、剣出してテーブルに置く。


「名無しの剣を余が命名する。世界樹の聖剣(マナ)と」


 名無しの聖剣を『マナ』と私は名前をつけた。彼女の名前は永遠に語り継がれるだろう。そう願う。


「んんんんん!!」


トントン


 背伸びをすると戸が叩かれる音がした。ダークエルフの使用人が入ってくる。


「失礼します。朝食のご用意をさせていただきます。魔王様」


「パンとマーガリン。紅茶とイチゴジャムはある?」


「イチゴジャムはございます。木イチゴと言う少しイチゴとは違う種類のジャムもございます。お持ちしますね」


「ありがとう。じゃぁパンは薄切り2枚」


「かしこまりました。では失礼します」


 今日は注文してみたけどうれしい事にイチゴジャムはあるようだ。使用人が去り、私は魔力炉に火を入れて寝巻きを脱ぎ。全身鏡に体を晒す。


「………うん」


 背中には何もない。しかし、あのとき確かに翼があり驚いたのだ。確認しなくては。


「んんんんんん!!」


 炎で翼のイメージを作った魔法はフェニックスだったが今はトキヤと共にいる。なのでイメージは同じで作り上げようとした瞬間。


 バサッ!!


 普通に翼が開いた。まるで最初からそこにあったように翼が姿を魅せる。色は純白であり。悪魔の蝙蝠羽根と違い羽毛がある。ちょっと伸ばし触れるとすり抜け熱い。炎の形が翼を象っていることが分かる。そう………悪魔としての翼ではなく魔力の奔出が翼の形をしていただけであった。しかし、少しだけ浮ける。浮遊力があるようだ。


 いつか飛べそうと私は思う。そう、いつか。


「でも、白い翼かぁ…………黒くならないよね」


 念じても念じても黒くならない。光を吸収すれば黒いのに魔力を放出なため無理なのだろう。


「白い鎧だから、黒のが引き立つし………服も合わせやすいのにぃいいいい!! 白と白とかコーディネイトでは下の下!! 反対色で色を際立たせるのがいいのにぃ!! 髪も明るめだから………黒が欲しかった」


 いっそのこと高級品だが暗黒鋼(ダークスティール)の鎧でもお願いしようか。そうすれば黒い鎧に白い翼で綺麗に見えることだろう。ただ重々しくみえ。威圧感も凄いと思う。結論、可愛くない。ボツ。


「はぁ………ん?」


 翼が少しだけ変質した。触ると今度は透けずフカフカスベスベの羽毛の感触がして触れられている感触もした。一本抜くとプチっと音がし、床に落とすとゆっくりと魔力になって消える。


「じ、実体化した!?………マナ剣もそういうものだったから………影響があったのでしょうか? ああ、なりほど。マナの理論を体が覚えたのか」


 自分の新しい体に驚きながらも何故かクスッと笑ってしまった。


「トキヤさんのせいですね。変態ですね。天使がいいんですか? 悪魔なのにこんな姿を所望して………いいですよ。好きなんですよね」


 そして、私は一人で納得する。この体は薬と言うよりトキヤの感情を当てられて淫魔として叶えた姿だ。元々男の時からあまり顔の造形は変わってないけど。


「本当に………可愛いですね~私は………この姿ですでに経産婦ですもんねぇ………はぁ……」


 お腹を触る。優しく撫で目を閉じる。


「幸せ………でしたね」


トントン


「あっごめんなさい!! 今着替えてるのちょっと待ってね!! あああああ!! 翼で入んない!! しまえしまえ!!」


 なんとか翼を消し用意していただいた服を着る。エルフ族長が設計した部屋着らしい。着替えがスムーズで出来るようになっている。ブカブカで一人で着れるのだ。そこから、刺繍の花柄魔方陣に魔力を入れるとファスナーが一人でにあがり。キョッと服が締まったあと腰と胸のラインがしっかり出る。コルセット要らずであり、素晴らしい発明と言える。


「よし!! おお待たせ着替えましたよ」


「はい、失礼します。良くお似合いですね魔王様。さすがエルフ族長が魔王様をイメージし、お作りになった服です」


「そうなんだぁ~」


 有能な族長である。私は目の前で朝食が準備されていくのを見ながら魔国へ行って何をしようかと悩むのだった。







 中庭の芝生の絨毯の上で寝そべる。我らエルダードラゴンは寒さや暑さは全く苦にはならない。何処でも眠れるし何処でも休める。だが、色々と皆が気を使ってくれるので言わないでいる。好意を無下にしてはいけない。


「ワン様、おやすみの所申し訳ない」


「ん?」


 大きな体を起こし欠伸をひとつ。誰だろうか。


「こ、これは妖精姫様。みすぼらしいお姿をさらしてしまい申し訳ない」


 頭を下げる。雪の妖精姫がローブに身を包んで震えていた。


「欠伸の事なら仕方ないでしょう。それよりも聖獣ワン様。ひとつお願いがございます」


「なんでしょうか? それよりも聖獣ですか? ドラゴンですよ?」


「それについてはお願い事の途中でお説明します」


「わかった」


 何を望むのだろうか。我が用意できる物だろうが。


「モフらせてください」


「ああ、別に好きにするといい」


 尻尾や背中が一番毛が柔らかいだろう。横に寝そべり勝手にしてくれという体勢に移行する。


「ああ、暖かい」


「うおぉ………めっちゃ冷たい」


 恐ろしいぐらいに冷えている女性。ドラゴンは寒さに強いと言うがこれはすごく冷たい。


「さすが。世界樹様が言っておられた聖なる獣。ワン様。ユグドラシル様の聖獣なため手に入れることの出来ぬ物と言われたものですね。しかし……欲しいですあなたさまを」


「……………」


 自分は最近思うのだが。妖精種族などに好まれやすいのではないかと感じる。まぁ気のせいだろう。


「聖なる獣ですか…………ネフィア様の下で働けるならいつかそう呼ばれてもいいかもしれません」


「いいえ。すでにあなたの名前は広まってます。聖樹の守り手大地の王(ワン・グランド)と」


「ふむ。まぁ名誉な事だが。ネフィア様に撫でられることとどちらが名誉であろうな」


「…………はぁ。妬けますね」


「そうか焼けるか。熱いか?」


「…………あったかいです」


 俺は震えるぐらい寒くなるまで妖精姫を温め続ける。その事でネフィア様に誉められるまでずっと温め続けるのだった。






 私は鎧に身を包み中庭に顔を出した。綺麗な体を包むトキヤの剣とトキヤの鎧を身につけて鏡で一回転したあとに部屋を出る。荷物を背負い、中庭へ足を運ぶ。


 中庭ではホカホカの雪妖精姫と震えるワンちゃんに出会い。ワンちゃんを撫でて魔力を流し、火を焚いて温める。


「良く我慢したねワンちゃん」


「はい、妖精姫が喜んでいただければと」


 尻尾をブンブン振り回し、喜んでいるのはワンちゃんの方だった。撫でられるの好きだよねこの子。


「魔王様は魔王城へ?」


「もちろん。余が魔王ではないことを突き付けてくる。ワンちゃん行けるな?」


「ええ、体の震えも無くなり飛べます」


「そうですか………絶対にエルフ族長に会いましたら妖精国は平和とお伝えください」


「わかった。行こう!!」


 私はワンちゃんの背に乗り、手綱を投げそれをワンちゃんがくわえる。


「魔王様……ひとつ。陽の導きがあらんことを!!」


「ええ、陽の導きがあらんことを」


 ワンちゃんが勢い良く飛び上がり、翼を大きく広げて空を駆ける。高く高く舞い上がり。都市が小さく見える。そして幻影だったかのように姿が見えなくなり森が広がる姿へと変わった。隠される都市。思うにエルフ族長の権力の強さを垣間見る場所だった。


「ネフィア様。どちらへ」


「魔王城の族長どもを黙らせます。少しだけ………いざこざが長いです。帝国の方が纏まりがいいと思うほどに」


「そうですか。では………どちらへ行けばよろしいですか?」


「えっと………あっち」


「………本当にですか?」


「………と思う」


 私はコンパスを取り出す。すると赤い印が北を差す。


「あっちが北」


 火球を打ち出し方角を伝える。


「では、向こう側へ行けば自ずと見えますね」


「み、見えればいいね」


「ネフィア様………不安にならないでください。胃が痛いです」


「ごめんなさい」


「たまに格好いいお姿と思えば………しかし、それがネフィア様でしょうね?」


「格好いい?」


「ええ、魔女との戦いは素晴らしかったです」


「ワンちゃん。こっそり後ろに回っても良かったんだよ?」


「ええ。まぁネフィア様を信じてましたから空で待機してました」


「ありがとう。信じてくれて………そういえば聖なる獣と言われてましたね?」


「はい。ドラゴンですがね」


「うーん。ドラゴンに見えないし………獣言われた方がしっくりくる」


「…………そこは譲れません」


「あら?」


「ドラゴンです」


「そうですね」


 私たちはそのまま魔城を目指すのだった。








 魔国での自分の執務室。小さな水晶玉が机の脇に鎮座する。元々ここは四天王という問題児に用意されていた場所だったが姫様は問題児を退治し、それの操る者まで倒し、魔国をこっそり救ったのは言うまでもない。元々トレインがやろうとしていたことをそのまま知らずに行ってしまった。悪魔の血と肉の夜は未然に防がれていたのだ。


「まぁそれが姫様のいい所なんでしょうがね。ニンフさん」


「はい。そうでしょう」


 水晶玉は宝具であり、対となる水晶玉と声を届ける素晴らしい物だ。どういった原理で動くかもわからず未知な物だが。自国領の様子を伺うためにはちょうどいい道具だった。


 妖精姫ニンフは長く一緒に仕事をしている仲間みたいなものだ。過去のエルフ族長たちは彼女の生活をある程度保証する代わりに手を貸していただいている。しかし………損得だけだった関係にヒビが入る。そう、今では姫様の下へ集うもう一人の有志。仲間だ。


「魔王様は聖剣を抜きました。世界樹の言い伝えの通りですね」


「まさか『天使が抜きに来る』と言う予言が姫様だとは思いませんでしたよ。しかし………ああ見たかった。その抜く瞬間を!!」


「ククク!! 風の精霊が覗き見していましたよ!! 見たいでしょうね? 夢魔の奴隷さんと一緒に帰ってきたら見せてもらってください夢で。風の精霊はそれを見た瞬間。別の精霊に昇華し、大人になりましたので。お仕事を任せており……捕まればいいですがね」


 精霊が成人するには数百年は必要だ。それが一瞬で成人するのには大量の魔力がいる。それも………魔術士を越える魔力が。ネフィア様を見て変異したのだろう。


「ほぉ……さすがネフィア姫様(女神の祝福されし者)


「エルフ族長が仰った通りですね。私たちは彼女に逆らえません。そうですね………本来なら私のこの席。妖精姫の冠も彼女に渡すべきです」


「妖精姫程度で姫様は満足しないですよ。仕事をやめたいのでしたらその子を育ててみればいいじゃないですか」


「満足しないのではなく………妖精姫では位不足でしょう。ですのでまだ姫をしないといけないのですね。私は」


「ふむ。いいじゃないですか? 姫様に会えるポシジョンですよ?」


「妖精国につきっきりで会いに行けないじゃないですか!! 拝むのとか我慢したんですよ‼」


「よく。我慢できましたね」


「サインいただきました」


 ダンっ!!


 私は机を叩き水晶玉に顔を寄せる。


「どうですかぁ!! 希少価値高いですよ‼ 何故ならオペラ座女優ネフィア・ネロリリスです!! 彼女はあまりサインを書く前に消える事が多く。オペラ座の怪人の一部ではとも言われるほど謎だったんですが!! これです!! 魚拓です!! それも名前が書かれていないので価値は上がります」


「ほぉ………わかりました。羨ましいですが帰るのは当分先ですね」


「えっ?」


「オペラ座の怪人でも見て帰りましょうかな? 直接彼からチケット貰えそうですしね。ああ姫様にもお願いしようかな………配役を。淫魔族長も喜ぶでしょう」


「まって!? 権力乱用です!! みせてくれたり?」


「泣いてろ。妖精姫」


「鬼め…………ぐぎぎ」


「では、失礼。姫様が向かっていると言うことでやらなければいけないことがあります」


「ま、まって!!」


 水晶玉に魔力を送るのをやめ、席を立つ。目の前の客用に用意している席にダークエルフ族長が座る。


「終わったかい? 大人げないぞ、おまえ」


「終わった。許せるか?」


「いや………興味ないから」


「興味ないと? キョウミガナイト?」


「あっ……いや。あるけどそこまでじゃない。いやぁ~サインいいなぁ~はは………」


「畜生め………恐れ多いことを頼みで。俺も頼んでみるか?」


「姫様なら書いてくれるだろう」


「家宝にしよう。いや………いつか聖歌隊の褒美とするか」


「聖歌隊なぁ………もっと別の言い方を」


「衛兵隊よりマシだ」


「あん? 何がだ!? 誇り高き魔国を護る最強の兵だぞ!! 聖歌隊よりマシ」


「我が精鋭よりマシ? 姫様の祝福されし部隊だ!!」


「こっちは姫様の厳命による魔国を護る最強の兵だ!!」


 俺らは腕をまくし上げる。昔から反りが会わない所は反りが会わない。


「グレデンデ様、バルバロイ様…………喧嘩はやめてください。両方ともお強いと思いますし志は一緒でしょう?」


 部屋に酒瓶とグラスを持って現れる奴隷の女の子。その姿は麗しき姫様に良く似ている。私の隠し切り札だ。彼女が呆れた顔で部屋に入る。使用人の一人として身の回りの事をしてもらっていた。


「フィアの言う通りか。まぁお前の衛兵隊は恐ろしい」


「フィア殿、そうですね。いやいや、お前の聖歌隊も恐ろしい士気の高さで怖いよ」


「それで………姫様は?」


「ああ。フィア………来るそうだよ。間に合いそうだ」


「それはよかったですね!!」


「ええ、よかった」


 私は机に座り今後の話をダークエルフ族長と話し合い。その後にまた誰かがこの部屋に訪れる予定だ。来るまでも入念に準備をする。そして、思う事がある。確信がある。


 もし、姫様の能力がそれであるなら………きっと。玉座に来ることだろう。


「さぁ、オーク族長との賭け事ですよ」


「俺もベットしているんだ。勝ちたいな」


 今一番魔王に近い種族を思い浮かべ。そして、鼻で笑う。トレイン以上の逸材だろうと姫様には敵うまいと。









 

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