表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
136/732

都市ヘルカイト⑳⑩ 女子会後..


 私たちは今、都市ヘルカイトに来ています。姫様に会う理由と新しき宗教を広めるための拠点造りをいそしんでいます。宿屋の一室で今日もエルフ族長はお疲れなのでした。


「お疲れさまですご主人様」


「ああ、疲れた。湯治を行いたい所だが………やるべきことが多く大変だ。すまない………まだ君を扱え……いいや。仕事を用意出来ないようだ」


「お気になさらずに」


「そうか………すまないな」


「そこは……ありがとうございますっと言っていただければ喜びます」


「………ありがとう」


「はい、ご主人様」


 私は、ご主人様のためになんだってお手伝いしたいと思っている。だが………今はそのときではないらしい。


「女子会だったと聞いている。姫様はどうだった?」


 エルフ族長はいつもいつも姫様の事を気にしており、尊敬し、身を粉にしながら裏で姫様を魔王の座に上げようと企んでいる。


 だからこそ………私は拾われたのだろう。でも、良かったと思っている。この容姿になれたことはきっとエルフ族長に出会うためだったのだと前向きになれた。


「姫様はいつも通り、皆の中心で話を振ってました。お腹もすべすべでした」


「そうかそうか………ああ、麗しい姫様にお会いしたい」


「………」


 しかし、盲目的な盲信者なのでいつも姫様、姫様と崇める。そこはムッとする。


「………あの」


「なんでしょうか?」


 ムッとする理由は簡単だ。


「泣きホクロ取っていいですか?」


「やめたまえ。姫様と区別するために残すべきだ」


「他でも区別できます」


 色んな所で差違があり、ホクロ一つで変わると思わない。しかし、エルフ族長は嫌がる。


「泣きホクロは女性として素晴らしい物です。姫様にない長所です」


 姫様に教えられて実行した。エルフ族長は泣きホクロがたまらず好きらしい。だからこそ………私には泣きホクロがあるのだろう。


 拾われたから。私にはご主人様しかいない。だからこそ………捨てられないように好意を向ける。


「はい!! ご主人様の夢のためにフィア!! がんばります!!」


 ご主人様のために。





 私は広い家で夫の帰りを待っていた。ご飯を用意して。


「ただいま、リディア」 


「おかえりなさい」


「なんとかギルドは落ち着いて運用できる所まで来たよ」


「お疲れさまです」


 夫であるランスロットはギルド長であり、ギルドの運営を任されている。大体は事務仕事らしく。他の二人ほどギルド長がいるが、彼らが実働として仕事をこなしているらしい。


「冒険者も少なくなってきたから扱いやすいね」


「えっと………それは喜んでいいんですか?」


「弱い冒険者は淘汰されただけとも言える。使えるか使えないかだけですよ」


 行方不明の冒険者は多い。未開地が多かったためと野良のドラゴンにやられる人たちが多いからだらしい。都市は安全だが……山を登れば魔境である。


 広いリビングに私たちは腰をかける。用意した夕食をいただき。私は絨毯に座った。足を広げて。


 からだが大きくこうしないと身長差で困るのだ。


「ん? 今日は早いね?」


「今日はすぐに欲しいです」

 

 ペタッと絨毯に体をつけて上半身をちょうど夫の身長に合わせる。すると、夫が私を抱き締めてくれる。


「んん」


 ギュッとする。この感覚は何故か癒され幸福感に包まれる。幸せを噛みしめる。そして、優しい夫は胸をマッサージしてくれる。


「いつも、ありがとう」


「え、ええ、ただ揉みたいだけです」


 大きい胸は揉まれる事で気持ちよくなれる。不思議に感じながらその感覚を楽しむ。


「えっと、今日ね。女子会だったんです」


「聞いていたよ。楽しかったかい?」


「もちろん!! 人の気持ちとは色んな形があるんですね。魔物は食べて寝てを繰り返すだけでしたから」


 料理とか実際。こんなに美味しい物と思えるのは知ったからだろう。今は昔の食生活に戻れはしない。


「ネフィアお姉さまのお腹。羨ましいです」


「………」


 私たちは異種族。出来ないだろうと思う。だけど…………考えてしまう。


「ランスロット………子供欲しくないですか?」


「無理だと思います」


「…………ん」


「だけど、わかりません。こればっかりは調べてますが」


「えっ?」


 調べる。調べるとはなんだろう。


「全く、人と多種族の交配はチラホラあるようですが。さすがに私たちの事はないです」


「調べてくれてるの?」


「…………リディアとの子ぐらいは考えてますよ」


 私は夫に甘く噛みつく。あまりの嬉しさに我慢できなくなった。


「い、いたいですよ!?」


「んんんん!!」


 もう、食べちゃいたいぐらい愛している。


「あっ………まぁ血を啜るぐらいなら」


「ごめんなしゃい………ズルルル」


 美味しい。


「はぁ、ほどほどに吸ってくださいね」


「ひゃい」


 魔物なんだけど…………魔物を我慢できなくさせる夫が好きだ。




 隠居している家。迷った旅人がたまに泊まるぐらいは大きい。その家に帰ってきてからため息ばかり吐く。


「竜姉、頭かかえてどうしたの?」


「あ、ああ。デラスティ………少しね。ショックな事があって」 


「………竜姉がショック」


「デラスティ、その意外そうな顔をやめなさい」


「ごめん………意外だった。何で悩んでるの?」


 声をかけてくれる子は飛竜の竜人デラスティ。少年のまま大きくならない可愛い子だ。声も幼い。そんな子が私を慕い、顔を覗かせて心配してくれる。


「ああ、ちょっと歳の事でね」



「歳?」


「ええ、誰よりも歳の上なのよ」


「竜姉だからでしょ?」


 キョトンとして私を見る目は悪意はない。ああ、清い。私は手を伸ばして寄せる。


ギュウウウ


「竜姉? どうしたの?」


「大人になっちゃダメよ」


「………ええぇ~いやだなぁ」


「ダメ」


「それよりも………ワイバーンでは大人なんだけど………」


「そうじゃないの………いいえ。なんでもない」



 私も、変な感じなのだ。これは母性なのか、ただの愛なのか………わからない。


「竜姉~年取っても竜姉ぇは姉ちゃんだよ。見た目若いし」


「見た目だけかぁ~」


「いたい!! つねらないで!!」


 かわいい。頬っぺた柔らかい。


「ヒリヒリする」


「女性に歳は聞いちゃだめよ」


「竜姉何歳なの?」


「聞いちゃだめっていったそばから!!」


「へへ~ん!! あたたた!!」


 全く、やんちゃで可愛いんだから。





 領主の住まう屋敷。無駄に広い屋敷に私はヘルと同じ寝室にいる。


 実は今日。お誘いしたい。お誘いしたいのだ。


 酒を飲み合い。女子会であったことを話していた。そしてそろそろ寝るかっとする時間まで延びてしまった。戦いでは飛び込める。だが………ヘルの胸へ飛び込むのは難しい。昔なら体当たりで攻撃したが。今は勇気がいる。


「ヘル……もう寝るか?」


「寝る」


「ヘル……………もう寝るか?」


「………おい。ワシに言いたいことがあるなら言え」


「……………」


 言葉が窮する。


「おい!! ワシは眠い!! 明日は休むが………眠い」


「そ、そうだな………えっと。こう!! ムラっとしないか? あああああああああああ!! 違う!! もっと可愛く言いたい!! 昔の男っぽい口調じゃなくて!!」


「…………ふっ」


「わ、わらうな」


「いや、あの死んでも死んでもしつこいドラゴンがモジモジと弱っちい姿でな」


「仕方がない………女なんだから」


「ふぁあ~寝るとするか」


「ま、まって!!…………ヘル…………」


「一緒に寝るか?」


「寝る。いや、違う!!」


「………ワシ眠い」


「…………ヘル。寝る前にお願いがあるの」


 私は顔を伏せて、服に手を伸ばす。


「女を感じさせて」


「はやく言えバカ………1回だけな」


 スッと、彼は私を抱き抱えてベットに投げられる。骨が折れそうだったが……気にすることではなかった。





「あなたすごいわ~」


カチャカチャ


「女神さま。食器を洗ってる途中で声をかけないでください」


 食後のつけおきしていた食器を洗う途中に頭の中で女神の声が響く。昔は少し聞こえるだけでありがたかったが。今は聞こえすぎである。ありがたみがない。


「ごめんなさい……でも褒めてるんですよ?」


「食器洗いは妻の嗜みです」


「ち、ちがうわよ!!…………あなたの友人の話」


「んぅ?」


「あなたが関わった人は必ず誰かを好きでいるわね」


「そうですね?」


「たまたまでも凄いと思うわ」


「うーん………そうですね。皆さん幸せになっていただければそれでいいです。関係ないです」


「………ふふ。もっと愛をちょうだい」


「勝手に吸っててください」


 私は女神の声を遮る。五月蝿いので。


「ネフィア~」


「はいはい、なんですか旦那さま」


「お腹さわらせてほしい」


「ふふ、仕方ない方ですね~あっ!?」


「どうした?」


「い、いま………」


 お腹をさわる。小さな衝撃が内から感じ取れた。


「………蹴った」


「!?」


 トキヤがソファから立ち上がり駆け寄る。


「本当に?」


「うん………こう、なんかぐにぃ~って」


「そっか~」


「嬉しい………元気に育ってる」


「………そうだな大きくなれよ」


 旦那が優しくお腹を擦り、愛おしい声で子に問いかけるのだった。









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ