都市ヘルカイト⑳⑥ネフィアの日記..
私の旦那様が私に妊娠日記をつけるように言われた。高い紙のメモ帳。綺麗な皮のメモ帳だ。
妊娠中の事を記入するらしい。「自由にしていい」と言ったがそれも困ると言うもの。
何を書こうか悩んだ末にその時その時の事を書こうと思った。妊娠日記なんだからお腹の子を書こうとも思う。
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4月××日。暦は人間が作った物を扱う。
最近、眠気がひどい。家事の途中等でもすぐに眠気が来る。夜も寝ているのに。
ソファーで横になったら起きたら旦那様が帰っていた。「ご飯も何もない」と言って泣いてしまう。涙腺も緩い。そして旦那様が酒場から買ってきていた物をいただいた。気付いてたらしい。
旦那様は優しく本を買ってきた。たくさんの妊娠考察本。実話を買ってきた。二人でソファーに座って読んだ。眠気が来るのは妊娠初期らしい。
その日、キスは4回だった。
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今日はつわりと言う吐き気がすごく大変。花を摘みに行く回数も多い。胃液も何もないのに吐き気だけがあり。出ないものを出そうとする。無理にご飯を食べても吐いてしまう。
辛いが旦那様も仕事を頑張っている。旦那様に私は子を託されてる。頑張らなくちゃ。日記を書いてる途中。気をまぎらわせられる。吐き気は治まらず。ソファーで横になった。だるい。
これも症状らしい。辛い症状が多いけど、何故か我慢出来る。嬉しいからだ。お腹を今日は何度も何度も撫でた。吐き気やだるさは全て体が変わる事を理解してる。婬魔だからこそ変化は鋭い。
今日も夜まで寝た。吐き気は治まり。ご飯を詰めた。
回数も2回と少ない。
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今日もつわりが酷い。でも、夜は治まるので助かっている。
トキヤは今日は仕事を休んだ。皆に心配されてだ。祭りが明後日執り行われる。一生懸命稼ごうと働いている。危なげに。
トキヤは頭を掻きながら落ち着かない様子だった。私の方が落ちついてる。そのためか家事を全般やってくれた。真っ赤に染まったナフキンで不安になっていたが。洗い忘れなだけでカピカピ。もちろん捨てる。妊娠初期の出血だ。あれ以来生理はない。
トキヤは頑張る。本当に自分を顧みずに頑張る。
昔からそうだ。勝手に恋して頑張って、力を欲して色々な事を調べ。風の魔法を修練し、戦場の前線で戦い続け、禁術にも染めた。暗殺が得意な後方の人物なのに無理して通した。
勇者らしくない。何も持たずに誰よりも強くなろうとした。結果、私の旦那様。私の王子様になることが出来たという。
皮肉なものです。女神から能力もらったどの転生者より強くなってしまった。女神もさぞ悔しいでしょうね。
今日は回数が多い。上下会わせて10回。
貯まっているだろう物を私は戴いた。白くべたつくなにかを。
婬魔だからなのか、それとも愛しい旦那様の物なのか苦味や臭いはあるが飲み込める。すごく美味ではないが愛おしい。
子供もわかってるのかな。おとうさんのお味。
美味ではないが大好きだ。好きに調教されたとも言う。懐かしい…………最初は全てに嫌悪感を抱いていたのに。
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今日はつはりはない。イチゴジャムが無性に食べたくなった。何故か一瓶丸々。抑えようとするが何故か美味く感じない。でも「食べないと」と言う変な気持ちで食べていた。謎である。
それよりも、最近。トキヤが家事を行う使用人を雇った。その使用人はささっと家事を済ませてしまう。
暇である。なので、悩む。何をしよう。
結果、日記を書くことにする。今日あった事は書いた。今度は色々と思い出したことや考えを徒然なるままに書いていこうと思う。
3回、朝、夕、夜
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今日はつはりが酷い。蛇男のヤブという名医者が来た。初対面だが、実は知っている。ユグドラシルの母親やオークのトンヤの知り合いだ。お腹の様子を見に来たらしい。トキヤがスカウトした医者だ。
なんの魔法か中を確認し問題なく成長しているとのこと。うれしい。確認後、医者は帰った。
旦那様に報告すると。喜んでいた。
今日は6回。
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今日は順調。調子が良くてなれてきたと思う。
書くことも決まった。旦那様の事を書こう。
トキヤ・センゲ。自分が知り得た情報で東方の名前で千家時也と思われる。父親は東方の出と言っていたが名家であり予想では家を捨てたのだろう。
冒険者の両親。きっとすごい恋愛の末で結ばれた筈だ。それにしても運が悪い。両親を同時に失うなんて。私も人のこと言えないが。しかし、両親も両親で冒険にでずっぱりなのは如何なものか。
トキヤもその変な所は受け継いでる。普通に占いでの幻視でここまでするのは変を通り越して狂人だ。感謝してる。
トキヤの人生は凄い。憧れの黒騎士入団から魔法使いをやめ剣士修練し、戦争で実地で鍛え。冒険者で鍛え。一人で戦うことを強いて結果。禁術も行い。勇者となった。化け物である。愛してる。
それからも結構変。私を女にし、自己犠牲を徹底させる。これからもだろう。意思が強い。愛してる。
とにかく、書いてわかったことは私の旦那様は変態ドMのイケメンで狂人の化け物だ。
まぁそれ含めて愛してるから。お腹の子がいるのがうれしいのだけれど。
今日は3回普通だったが。深い深いキスだった。
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今日は誰について書くかは決まった。私たちの出会った事柄を思い出して書こうと思い付いたのだ。
私が女性になり。全ての事を母のように教えてくれた人物。生きた英雄。エルミア・マクシミリアンについて書こうと思う。夢で知り得た情報を今さらまとめる。
マクシミリアン家とは。帝国に唯一無二の自国領統治を許された名家の中の名家である。規律正しい騎士の教えが古くから伝来されている。帝国に並ぶ古い騎士団を要し、昔は帝国と並ぶマクシミリアン王国を築いていた。
マクシミリアン王国の滅亡は壁による保護を行っていなかった事による魔物の襲撃。帝国もその時甚大な被害を出したらしい。城のみが堅い。しかし………民無くしては国は在らず。一部の逃げた人間を残し全滅した。
書いてて思う。エルミア姉さましゅごい。何故生き残ってる。
エルミア姉さまは当時から美しさを買われマクシミリアン王の慰め物だったらしいが子を宿したと言う。奇跡と言えばいいが逃げた正室も側室も皆、子供は餓えと共に死んだと言う。その中で、帝国に身を潜め子を育てたのだから凄い。草を食いながらも出産し、体を売って金とご飯を手に入れていたらしい。中々売れが良かったのかマクシミリアンから逃げてきた騎士のご飯も用意していたようだ。
今の私には無理だ。つわりだけで死にそうになってる。
そのあとも、今度はエルミアは剣一本でも強さを発揮してマクシミリアン王国の跡地から近い所へ戻ったと言う。マクシミリアンの逃げた騎士も集まり。今の壁を要したマクシミリアン騎士団の駐屯地が出来たときく。女の子が母になり剣を握る。また子も大きくなり母の背を見て一人前の剣士となったらしい。
そんな時期に帝国が魔物の襲撃から復活。占領地を広げ、復活したマクシミリアン騎士団は領地とされるのを拒んだ。というよりも上から押し付ける体制に反発し。戦争となった。
その時の騎士団長はなんと。エルミア・マクシミリアンだったと言う。もちろん、我が子の首を差し出し和解し領地の委任任命権を取った。孫はいたが、その決断はどれだけ痛みを伴ったか、怨恨残す結果になっただろう。
それから、長い年月をかけて今のマクシミリアン統括地っというのが出来たらしい。
書いてて気がついた。トキヤが持ってきた本を題材にした亡国の姫君があるけどあれのモデルだ。「やばい!! 一番始めに出会ったハイエルフ!? なに!? この人!?」と声に出してしまった。
昔の私に言いたい。お前のバカにしてる女性は生きた英雄様だぞっと。
今日はトキヤさんにお願いしていつか謝りに行こうと提案した。穴があったら入りたい。
4回
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最近すこぶるトキヤが優しくて怒って泣いてしまった。
トキヤが凄く無視して優しいのは嫌だから泣いてしまった。
昔のように普通に接して欲しい。
そんなワガママで旦那様を困らせてしまった。情緒不安なのだ。
でも、泣いたら落ち着いた。
いっぱいいっぱいキスしてくれた。20回
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昨日、反省して旦那様をお見送りをした。色んな人にお腹の子の話をした。
帰ってきた時、お腹の子に不思議な気分になる。
昔は孕むのも嫌がっていたのに。そう、嫌がって………天罰かな。誰かに捕まって部屋に閉じ込められた。あのときトキヤが助けてくれたのは嬉しかった。何度も何度も感謝しよう。
ありがとうトキヤ。ありがとう旦那様。今日もいっぱいキスするぞ。
イチゴジャムは逃避行中に食べさせて貰ったかな。あれが………麻薬になるとは。
それよりも………遠慮無くボコったよねぇ~スパルタ方式だったけど。今では耐久力に自信が出た。ヘルカイトの一撃耐えたなぁ
色々、あるね。思い出して書いてこ。あとトキヤやっぱり昔から格好よかった。
逃げた先も私を気を使ったルートだった。うん………やっぱり思い出して書くのは楽しい。
今日のネフィア軍。トキヤの唇を6回陥落させる事に成功。




