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都市ヘルカイト⑰大浴場設営..


 ネフィアが本の世界から目覚めて数週、ネフィアの連れ去り事件が起きて数日後。俺はある依頼を受けることになった。依頼の一環で金色の回数券を手にする。なんでネフィアはあんなにも事件に巻き込まれるのか疑問に思いながら玄関をくぐった。


 金色の回数券は俺らが掘り当てた温泉での大浴場が出来たらしい。聞けば露天という屋外の風呂。先に作ったとのこと。


 依頼者はお客の感想を聞くためにテストとしてギルドのメンバーに依頼をしたのだ。ついでに言うなら………俺らだけVIP対応らしい。金色の回数券は使いきりではない。何度でも入れるとの事だ。


「まぁ、無料ほど怖いことはないけど。ありがたく貰うか」


 温泉狂いの竜人に押し付けられたとも言う。「意見を絶対尊重するから入ってみてくれ」と言っているらしい。何故か恩を感じているらしいが依頼でやっただけなのにとも考える。色々……ブツブツと考えながら玄関の大きい戸を開けた。


「ただいま~ネフィア~」


トタトタトタ!!


「は~い。おかえりゅ…………」


 リビングから駆け足でお出迎えしたネフィアは言葉を噛んだ。俺は言葉を失う。


「………」


「………」


 ネフィアが目線を泳がせ照れながら人指し指を一本立たせた。噛んだ事を恥ずかしいがりながら。


「もう、1回い~い?」


「ああ」


 肯定。ネフィアがリビングに体を隠すまで俺は無言を貫く。リビングに隠れた瞬間、口を押さえて悶える。噛むのも、もう1回って言うのも可愛すぎるだろ。


 叫びたい気持ちを抑え。彼女はもう一度言う。


「ただいま!! 俺の可愛いネフィア!!」


 先に……つい、口に出てしまった!!


「ひゃ!?…………えっと。ただいま」


 今度はリビングから顔を出して挨拶する。唐突の本心を言われ恥ずかしいらしい。俺は………とうとう耐えられず。その場にしゃがんだ。





 珍しい、ここでは本当に珍しい、お米というものを食べた。ネフィアが買って来たものだが極上の美味しさだった。


 ほかほかを一口含むと何故か懐かしさで心が満ち足りた。涙さえ滲み……何故か魂が震える。


 「銀シャリ」と言う魂の言葉を思いだしている。その食後。緑茶っというものをいただき一服する。


「ユグドラシル商会けっこう揃うね。腐竜も趣味で変わったの育ててるし凄く料理レパートリー増えて嬉しい」


「よかった~そうそう、これ」


 金色の金属プレートを机に置く。


「冒険者ギルドカード?」


「違う、大浴場の入場カードだ」


「大浴場?」


「温泉出来たんだって」


「ふーん………あっ入場回数無限って。そんなに恩を売らなくても」


「転売してやろうかな?」


「だーめ。好意は売っちゃいけません」


「…………変わったなお前」


「変わったでしょ~これも愛の力に致すところ」


「はいはい……」


「愛をバカにするなかれ………愛を覗いているとき。また愛も見ているのだと」


「…………深淵かな」


 ちょっと妄信ですね、ネフィアさん。だから回復魔法は魔力流すだけで発現するレベルまで至ったとも考えられる。元魔王、聖職者になる。うん変だな。いや……目の前にいる。普通だな。


「どうしますか? 行きますか?」


「明日、重役をお迎えして確認するんだ。そのメンバーに俺たちはがいる」


「なんでぇ~?」


「重役はギルドランクがダイヤを越える者対象だ。俺とランスにリディア、お前にデラスティ。あと他に数人だけだな。他は領主とユグドラシルトの重鎮たちとエルダードラゴンぐらいか?」


「ワンちゃん行くか聞こうかな?」


「残念、ワンちゃんはユグドラシル家だ」


 小屋、最近空な事が多い。居てもユグドラシルと一緒に寝ている。まぁ治安維持にも貢献してるし大丈夫だろう。軽装の女騎手としてユグドラシルが話題になっているのは少し心配だが。


「どうします? トキヤは行くんですよね。覗きはダメですよ」


「覗く必要ないだろ…………言えば覗かせてくれるそうなの目の前にいるし」


「チョロくないです」


「一緒に入ったな」


「あれは………強引に」


「嬉しそうに腕を首に巻いてたなぁ……」


「ああああ!! はい!! チョロいです、チョロいですよ!! 満足ですか!!」


「満足」


 恍惚な笑顔で言ってやる。


「はぁ……もう。酷い人ですね」


「でも、好きと」


「大好きですよ!!…………何言わせるんですか~もう」


「じゃぁ行くでいいな。準備しよう」


「はーい」


 緑茶を一気に飲み干して席を立ち寝室へ向かった。





 次の日。堀当てた場所へ行くと強固な壁に護られていた。壁の中に入ると驚いたのは繁華街のような建築を行っている途中だった。奥には湯とかかれた大きな看板が立っている。


 硫黄の匂いが鼻孔を撫で至るとこに湯気が立ち上る。自分以外も今の現状を確認している人が多い。ここが観光資源になると踏んでいるようだ。卵が湯気で蒸してあった。ドラゴンの無精卵だろう、大きい。


「うわぁ!? 温泉街になってる!?」


「1月ちょっとでここまで!? 流石商会。金に物を言わせてるな」


「ええっと確か奥だよね。あの建物かな?」


 湯の看板を指を差すネフィア。早く行きたいのか俺の袖を引っ張る。その小さい仕草が本当に可愛い。


「まーだ、全部できてないが露天風呂だけはあるらしい」


「行ってみよう!!」


 温泉街を歩きながら周りを見るとドワーフやゴブリンなどの多種族がしっかり怒声を出しながら働いていた。


 ちょっと申し訳なくなるがこれも仕事。しっかりと堪能しようではないか。


 綺麗な竜人の受付嬢に受付をする。魔法の鍵を貰い使い方の説明を受けたのちに風呂が3つあることを聞いた。竜も入れるように大きい釜湯もあるとの事。ひとつ男湯。ふたつ女湯。みっつ混浴。


「あっ………混浴あるね」


「混浴あるな」


「人気ですよ!! 夫婦に!! ヘルカイト夫妻もいます」


 知り合いが既に来ているらしい。


「まぁ………家で混浴入れるし」


「そうですね」


 ネフィアが肯定し女風呂へ向かおうとする。俺は唖然となりながら手を掴んだ。


「どうしたの?」


「お前、男湯とか混浴とかに突っ込まないの?」


「元から突っ込んでないでしょ‼」


「………えーと。そうだったなぁ女湯に入ってたな」


「でしょ? どうしたの?」


「いや、混浴がちょうどあるから………誘うだろうと思って」


「…………トキヤが自分で『家でも入れる』て言ったよね?」


「言った」


「………ねぇ? 入りたいの一緒に?」


「あっ……いや」


「…………仕方ないなぁ~背中流してあげる」


「ごめんな。俺から誘えばいいんだけど外だから………ええっと」


「トキヤ。もうそれ『誘ってる』て言うんだよ。…………私、混浴入りたいなぁ~」


「いいぞ!! 入ろう」


 なんとも優しく察してくれる奥さんか。俺たちは混浴の暖簾をくぐるのだった。





「す、すごい」


「おおお!?」


 脱衣場で嫁の生着替えにムラっとしながら浴場に足を踏み入れる。丸い石を隙間なく敷き詰め。大きい石を並べて風呂桶を作る。木ではなく石の重ね合わせだけで自然な天然な風呂に見えた。


 空は解放され肌寒いが、それ以上に解放感は抜群だ。何人か湯船に浸かっているのが見える。湯気が立ち………気持ち良さそうだ。フワフワの大きい職人技が光る布タオルでネフィアは大事な所を隠しながら湯に近付く。


 自分の嫁は背後から見ると本当に綺麗な体をしている。隠しているのが余計にそそる。


「トキヤ………鼻伸びてる」


「ばっか早く!! 入るぞ!!」


 近くに木桶があり、それでネフィアが体に湯をかける。


「ネフィア? 入らないのか?」


「トキヤ、打ち湯と言って先ずは湯をかけて綺麗にしてから入るんだよ? 寒いけど………東方のルール」


「お、おう………詳しいな」


「詳しいよぉ~本当はタオルも入れちゃダメなんだけどね」


「どうして?」


「汚れるから」


 ネフィアの真似して体を浄めてから、ゆっくり入る。ネフィアは恐る恐る。体を慣らしながら入った。綺麗なちょっとふとましいともふとましくないとも言える足を入れて熱さを確認する。


「ひゃぅ……」


 可愛い声をあげながら。風呂に入り肩まで浸かる。


「ふぅぃ~」


 だらけた声も可愛い。


「ちょっと端で浸かろう」


「うん」


 ネフィアと一緒に広い風呂を泳いで端につく。見覚えのある二人がイチャイチャしていた。


「……ヘルカイト」


「ナスティさんヘルカイトさん、こんにちは」


 大きな体の屈強な男はここの領主ヘルカイト。そしてヘルカイトが胡座をかいている上に座っているツギハギの体を持つのが腐竜ナスティだ。


 ナスティはタオルを巻かず細い体を見せつける。腰はヘルが力を入れれば折れるように細く、胸もあまり大きいとは言えない。だが…………継ぎ目があるが綺麗な体型である。気持ち良さそうに彼に体を委ねるドラゴンゾンビ。


「…………二人さん仲がいいことで」


「がははは!! そうか? いつもこんな感じだぞ!! がははは!!」


「い、いつも。揉まれてるんです!?」


「ん? ああ、こいつがこうしろああしろ五月蝿いから従ってるんだ」


「ヘル……言わないの」


 照れながらも。やめさせない辺り度胸が座っている。あと、ヘルカイト領主よ。操られてる。


「………トキヤ」


「やらない」


「………座るだけでいいから」


「ああ……それだけなら。位置変えよう。こっちが恥ずかしいわ」


「だね~」


 場所をまた変え、自分の目の前に嫁を座らせ抱き締める。抱き締めた瞬間の柔らかさを感じながらネフィアは俺に体を預けてくる。


「気持ちいい………」


「ああ、気持ちいいなぁ」


 二人でのんびりしていると。脱衣場から二人新しい面子が見えた。


「こ、こら!! デラスティ!! 走らない!!」


「みて!! 竜姉!! 昔行った山の風呂みたい!!」


「デラスティ!! 飛び込まない!!」


「…………ごめん。つい!!」 


 小さい少年と親子のような感じでこれまたエルダードラゴンが入ってくる。幼く見える少年はデラスティと言うワイバーンの竜人であり。ギルド長の一人だ。ランクは竜狩り。ワイバーンの天敵を一人で倒せる強者と。それを一から育てた火竜ボルケーノが入ってくる。


「竜姉!! 胸ちょっと大きくなった?」


「き、きのせいじゃい!! 変なところ見るな!!」


 タオルで隠しながらモジモジする。歳食った婆さんらしいが姿や仕草は若くなっている気がする。


「触ってもいい?」


「ダメ!! 乳離れしたでしょ!!」


「ちぇ~」


 マセガキの少年だが。一応ワイバーンでは成人である。


「ん? ああ!! ネフィア姉さん。トキヤ兄さん!!」


「よっ!! デラスティ!! 姉ちゃんと一緒に入るんだな。報告書どうする?」


「気持ちいいじゃダメだよねぇ………」


「だなぁ~悪いところをさがさないと」


「あとで集まろう。ランス兄さんも来るし」


 混浴に来るとは限らないがな。ムッツリスケベだしな。にしてもこの少年だが。仕事はしっかりとこなす。俺はボルケーノを見る。


「こんないい子にどうやってお前みたいな奴が育てられるんだろうなぁ」


「五月蝿いぞ!! わかっている………まぁ………気の迷いだ」


「竜姉優しいけどなぁ~。うん、僕にだけ優しいのかもしれないけどね」


「…………ふん」


 火竜ボルケーノが顔を隠し震える。嬉しいようだ。


「ねぇデラスティくん………私の胸、揉んでみない?」


「ネフィア姉さん!?」


「ネフィア!?」


「お、おまえ!! そんな淫乱な事を教えるなぁ!!」


「揉みたい!! ネフィアお姉さんの!!」


「デラスティ!? や、やめなさい!! 汚れるわ!!」


「汚れるって失敬な!!」


「ええぇ………だって」


 俺は見逃さなかった。デラスティの瞳の奥が笑ってない事を。アイコンタクトでネフィアに何かを伝えていることを。こいつら、確信犯か。


「竜姉………揉ましてくれないし」


「そ、それはだな………ああええっと………こ、こう何人も子を産んでる身だ。き、きれいではないし………大きい訳でもない………まぁ腐竜よりはあるが………いや………あいつは男だったな………はは」


「ネフィア姉さん~揉まして~」


「いいよぉ~」


「だめええ!!!」


 ボルケーノが赤くなり叫ぶ。ちょっと火を吐いて俺の顔とネフィアの顔に当たった熱い。


「あっつ………」


「あついねぇ」


「す、すまん。だがダメじゃ!! ダメじゃ!!」


「デラスティ良かったね。竜姉揉ましてくれるらしいよ」


「やった!! 竜姉!!」


「そんなことは一度も!!」


「竜姉すきぃ!!」


「…………す、すこしだけだからな」


 俺は驚く。あの怒り狂ったババァでも可愛くなれるのかと。


「か、岩影でこっそりなデラスティ」


「うん!! ありがとう………ネフィア姉さん」


「ええ」


 岩影へ二人が移動する。俺は、こっそりネフィアの胸を揉んでみる。弾力がある。


「トキヤ?」


「揉んでもいいだろ?」


「いいよぉ~」


 しばらく、ランスロットが現れるまで丁寧に揉んでみたのだった。ランスはムッツリから普通のスケベへと昇進した。







 デラスティが報告書について話があると言うことでギルドメンバーで集まった。プラス領主だ。


「ランスケベ。報告書どうする?」


「名前を普通に呼んでくれ………」


「ランス報告書どうする?」


「難しいですね。このまま開店は問題ないでしょう。広く、湯も深いですし。向こうは巨体用の風呂もあります。問題はない筈です」


「だよなぁ………アラを探すってもなぁ~」


「僕も困ってる。あっ!! 良いところならいっぱい書けるよ!!」


「おう!! ワシも難しいことは書かないぞ」


「…………トキヤは?」


「おれは………評価が良いことを書こうと思っている」


「評価が良いこと?」


「ああ、こう言う場所の細かな所を書くんだ。見たまんまじゃ客はわからない。絵を描き、中の風景や地図。ルールを事細かく情報を提示する。そして入っていただくようにすればいい」


「なるほど!! それに付け加え、領主の意見を書けば!!」


「宣伝として最高だ。報告書は合同で書こう」


「わかった。これで仕事の話は終わりだな」


「ああ、じゃぁゆっくり入るか」


「ワシは、気になるがお前の嫁さん………普通だな」


 ヘルカイトがネフィアを指差す。


「普通とは?」


「乱れるかと」


「ええ、僕もここで致すのかと」


「僕も」


「お前ら………一応言っとくが混浴に入ろう言ったのは俺だからな? あいつ女湯へ行こうとするの止めて」


「「「!?」」」


 全員立ち上がる。驚き過ぎだ。


「お前から? てっきり………ネフィアからと」


「ネフィア姉さんのわがままかと」


「ええ………いったい何が………」


「淫魔だからって淫れてなんかないぞ」


 まぁ、家では入ろうっと可愛く誘惑してくるがな。黙っておく。


「外では確かに触れる事は多いが、まだ最低限の分別ついてるよ。あと………俺がいない所ではしっかり令嬢のような感じだしな。お前らは心が知れてるから内面を見せてるんだよ」


「そうだったのか」


「ああ、それより………今、女性陣に近づくのやめた方が良さそうだ」


「何故です?」


「女子会に突っ込むバカもいないだろ?」


「うむ。では期を見てわしらは先に上がろう」


 皆が頷き肩まで浸った。




 トキヤがお仕事の話をしに離れていってしまった。男たちで集まり真面目に話し合っている。「邪魔せずに」と言うことで結果。女子会のようなメンバーとなった。風呂でお茶会を開催してもいいかもしれない。


「ふふ、ネフィアさん。タオルなんてつけて………」


「ナスティさん、羞恥を持たないのはダメですよ」


「そうよ!! あなた元男でも!! 今は女性でしょう!!」


「そういえば、ネフィアお姉さんは元男性でしたね」


「羞恥って言葉を貴女から聞くなんてね~もっと激しくトキヤくんと絡むかと思ったわ」


「…………フフ。実はもうすでにお腹がいっぱいなんです。ナスティさん」


「ネフィア姉さん昔に何かありました?」


「最初、女湯に行こうとしたんです」


「「「!?」」」


「うん。その反応ちょっと癪に触りますがいいでしょう」


 全員空を見上げる。失礼な……雪は降らない。


「じゃぁどうして混浴に!?」


「トキヤは焦った表情で手を掴んだんです。で、何も言わないんですよ………恥ずかしくて」


「う、うん。で? ネフィア姉さんは?」


「もちろん、『私から入ろう』て言いました。一騎当千の強者なのにこんなところで言葉がでないなんてって可愛いと思いました」


「いいですね。ヘルは渋々でした」


「私もランスは普通に悩んだあとに『私と入りたい』と言ってくれましたよ」


「わ、私は………男湯で一人で入るのが不安だったから!! こっちに」


「ハイハイ………一緒に入りたかったのね。ボルケーノおばあさん」


「ぶちのめすぞ!! ネフィア」


「わーい!! わーい!! すっごーい!!!」


「危ないユグドラシル殿!! 走ってはいけない!!」


 ボルケーノの声を書き消すように少女が入ってきた。ドリアードのユグドラシルとドレイクのワンちゃんが大きい種族用に向かっていく。きっとワンちゃんを洗ってくれるのだろう。


「………あれ。誰?」


「ボルケーノ。あれは都市ヘルカイトの聖樹ユグドラシルよ。ドリアードね」


「本当に1年ぐらいの女の子なんですか?」


 皆が彼女の豊かな胸を見る。そして、エルダードラゴンの二人が見比べ………ため息を吐いた。リディアは「形がいいなぁ~」と言う。


 流石、大樹のドリアード。実りが大きいと思うのだった。





 帰宅、トキヤは先に風呂に上がって報告書を用意したので一緒に帰ってこれた。


「ただいまぁ~」


「おかえりなさ~い」


「ははは。一緒に帰ってきたのにな」


「……トキヤ」


 私は笑うトキヤの首に腕を回し軽く唇を奪う。


「おかえりのキス………今日は楽しかったよデート。ありがとう」


「………うんぐ………玄関でそんなことするな」


「リビングまで待てなかった」


 家ではやっぱり、とろけてしまう。玄関からリビングに移動し。まだ冷えるため暖炉を焚く。帰る前に冷えてしまった。ちょっと遠い。


「トキヤ、紅茶淹れるね」


「おう」


「皆、綺麗だったね」


「………お、おう。見てないからな!!」


「見てたでしょ?」


「…………まぁ」


「いいんですよ」


「何だよその余裕は?」


「正妻の余裕です。だって………一番好きでしょ?」


「………………そうえいば。イチゴ牛乳無かったな」


 恥ずかしいのか話を変えてきた。今日のトキヤは攻めが弱い。


「無かったですね。残念です。イチゴジャム食べます」


「………瓶の半分までな」


「…………」


「返事!!」


「はい………」


「全く………なんでそんなに好きかなぁ?」


「初めて元気になってほしいってくれた果実でした。旅の途中も………責任とってくださいよ。好きにさせたんですから。トキヤだって好きでしょ?」


「ああ、好きだな。だけど」


「だったら気持ちわかるでしょ?」


 トキヤが真っ直ぐ私を見る。


「何よりもお前が好きだから全部我慢できるんだ」


 私は顔を手で隠し、へたり込んで何も言えなくなったのだった。












 









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