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都市ヘルカイト⑦魔国の呪物..


 年末年始が迫ったある日のこと。2通の手紙と呪いの品が届いた。それを私はリビングで確認する。


 1通目は魔王の嫌み。この前は言葉が制限されたりと大変だった。2文字しか喋られない呪いは本当に大変だった。2通目はエルフ族長が呪いの品についての話。


「囚人の枷?」


 木箱を開けると中には「囚人の手枷」と思われる鉄の輪が二つ入っていた。一個一個は繋がっておらず変なオーラを纏っている。


「うーん繋がる所がないから手枷にならないよね………これ」


 トキヤに鑑定をしてもらおうと思ったが今日はギルドに顔を出して家にいない。


「仕方ない。洗濯干してから確認しよう」


 外はちらほら雪が降り寒いため部屋に入れて部屋干ししている途中だった。それを干してから再度確認しようと思う。


「…………助けて。痛い痛い」


「はいはい。洗濯物干してからね。ワンちゃんもいないし。変な声を出さない」


 ワンちゃんは今日もユグドラシルと遊びに出掛けてしまった。ユグドラシルちゃんは見た目より遥かに幼い。だから遊び盛りなのだが、お父さんは仕事で忙しいから我慢していたのだろう。最近はユグドラシルとワンちゃんの仲のいい目撃情報が増えている。竜と木は相性がいいのだろう。

 

「よし!! 干せた!!」


 トキヤが帰ってきたら換気をお願いしよう。部屋干しは匂うのだ。だから風の魔法がいい。


「さぁ、一枚うっかり洗濯をし忘れた下着が一枚」


 もちろんトキヤのである。


「今日もお願いします」


 トキヤが居ない時、こっそり下着を嗅いでいる。甘い香りが鼻腔をくすぐるので大好きなのだ。変態な趣味だろう。だけど夢魔は婬魔。何もかもが好きになる呪いのような所まで落ちるのだ。しかも、いろんな所が回復する。肌艶さえよくなる。


「う~ん!!」


 私は自分の容姿を知っている。令嬢な雰囲気を出せる。外では真面目な奥さんで通っている。だがら、その背徳感からの倒錯的な気持ちがたまらず。堕ちていく。


「こっそり嗅ぐのがいいの!! んんんん」


 トキヤの生の体臭も好き。下着についている仄かに残る体臭も好き。女になってから匂いが好きになったのだ。いや、トキヤが好きで全てが好きなのだ。全はトキヤ、一はトキヤなのだ。婬魔はこうなる運命なのだろう。


「さすが私。婬魔ですねぇ……」


 そう、これは種族のせいだ。こんな忌ましい事がたまらない理由。


ガタガタ!! フヨォ!!


「ん?」


 テーブルの上に置いた箱が一人でに震えだす。箱の蓋が勝手に開き、中から4つ鉄の輪が飛んでいる。2つは箱の底におが屑があり埋もれていたみたいで私は4つあることを知らなかった。


「えっ!? いやああああああ!!」


 私はあまりの光景に悲鳴をあげる。幽霊だ。


「幽霊!? そ、そんな!! いや!! 来ないで!!」


 腰を抜かした私に4つの鉄の輪がフヨフヨと浮かぶ。


「幽霊怖い!! トキヤ!! 助けて………」


 鉄輪が私に向かって飛んで来る。恐怖で体を丸め目を閉じ、あまりの恐怖で気を失った。





 俺は冒険者ギルドから急いで家に帰ってくる。ネフィアの悲鳴と俺を呼ぶ声が聞こえたからだ。「聞こえた」と言ってもネフィアが魔法で助けを呼んだからであり。皆が悲鳴を聞いているほどに大音響で五月蝿かった。異常事態だったので俺が緊急で帰宅する。周りには俺の報告待ちである。


「ネフィア!!」


 家の扉を開け部屋に乗り込む。リビングでネフィアが倒れていた。両手両足に鉄の輪のような物がつき。彼女の体を両手両足を拘束している。


「ネフィア………大丈夫か?」


「う、ううん…………あれ? トキヤ………トキヤ!!」


 ネフィアが起き上がろうともがく。しかし、縛られているみたいに動けない。


「うぐぅ……これは一体なに? 幽霊かと思ったのに」


「いや、おれが聞きたい………ん?」


 俺はテーブルの箱と手紙を見つけ読む。「呪いの枷だから頼む」と書かれた内容を読んで納得する。


「えっと………呪いの装備で死ぬまで外れないか………拷問で殺したり処刑したりするための呪縛枷だな」


「そ、そんなぁ~」


「お前も我らと同じ苦しみを………」


 枷からフワッとした骸骨が見え、ネフィアが涙目になる。かわいい。


「と、トキヤ!!」


「ああ、どうした?」


「ゆ、ゆゆ」


「湯?」


「ゆ、ゆうれい………あそこにいる」


「うーん………俺には見えないなぁ」


「えっ!? い、いるの!! 本当に!!」


「我らと同じ苦しみを………くるじい………助け………死にたくない」


「いやぁ~見えねぇわぁ~。それより取れる方法考えるから」


「お願いします!! はやぅ!! はやく!!」


「わかった。焦るな。動けないだけだろ?」


「見えてる!! 見えてるの!! 幽霊が!!」


「都市インバスでしこたま見たじゃないか?」


「あれは聖霊!! これは幽霊!!」


「一緒なんだけどなぁ~」


 過去にトラウマがあったようだ。まぁ…………怖がる彼女はスゴくかわいい。


「いやぁ~何にもないのにビビるお前。めっちゃかわいいなぁ」


 しゃがんで観察する。


「ごめん!! 嬉しいけどそれどころじゃない!!」


 骸骨の幽霊が顔以外の体や腕を手に入れて大きくなって這う。剣も装備する。


「やぁあああ!! もう!! いやぁあああ!!」


「ははは、面白」


「トキヤ!! 後で絶対ぶん殴ってやる!!」


「ははは。かわいいなぁ本当に~」


「和んでないで!! 幽霊が、幽霊が!!」


 骸骨が這ってくる。そして、ネフィアの綺麗な生足に触れ掴んだ。俺はそれだけは許さない。


「ひぃひいい!! トキヤ、幽霊が!!」


「………ああ。今見えた」


「えっ?」


「人の嫁を気安く触ってんじゃねぇよ!!」


 骸骨の頭を掴み家の壁へ投げ飛ばす。壁には当たらずすり抜けて外へ抜けた。


「と、トキヤ!! うわぁあああん!! 怖かった!!」


「おお。怖かったなヨシヨシ」


 いやぁ~楽しかった。まぁまだ楽しめそうだなあの道具。


「まぁ仕事も明日にして。今日は一緒にいような」


「や、やさしい。嬉しいけど何か企んで………んひゃああああああああ!?」


 俺はネフィアの太ももを触る。動けないを良いことにねっとり触る。スベスベの肌は握ればむにゅとした包み込むようなやわらかさがある。ついでに問題無いことを報告を入れた。


「えっ!? まって!! 動けないのに!! んあぁ!!」


 服の上からブラが邪魔なので外し、そのまま服に手を突っ込み下から揉みあげる。


「ト、トキヤ!! だめ!! 動けないからね!? ね!?」


「動かなくていい。おれが気持ちよくさせる」


「だめ!! まだ、仕事でしょ!?」


「仕事は明日でいい。今はお前をいただく」


「トキヤ!? スイッチ入ってる!?」


「ネフィア愛してる」


 動けないネフィアの口を無理矢理塞ぐ。深く舌を押し込んだ。離れた瞬間、優しい笑みを向けた。ネフィアはもう、目が潤んでいる。これは………うまそうだ。


「ト、トキヤ………切ない」


「よし、まだ明るいがいいな」


「苦しい、助け………」


「今、いいところ」


「ごめんなさい。今、それ所じゃないんです」


「……………………」


 動けないネフィアを姫様抱っこし寝室へ持っていく。変な声を無視して。





 朝、呪いの手枷を私は外した。オーラもない。視線を沢山感じたがもうそれも感じれない。羞恥の中での逢瀬だった。


「呪い無くなった?」


「残念………中々、楽しかったのに」


「何で呪い解けたんだろ?」


「さぁ………俺は最終手段で鉄輪を切り落としたり。炎で溶かしたりして終わらせようと思ったんだけどなぁ。生気に当てられるのを嫌がるのもいるし、それかもな」


「うーん。なんで?」


「まぁ………いいんでない?」


「でっ、仕事は?」


「行くよ」


 いつもの皮の軽装を身につけるトキヤ。剣を担ぐ。


「ねぇトキヤ。ありがとう………来てくれて」


「おめぇの悲鳴が聞こえたら何処へでも駆け付けてやるよ」


「ふふ、格好いい。ご飯作るね」


「ああ、たのむ。昨夜から何も食ってないしな」


「うん。何がいい?」


「食パンでもいいなぁ」


「イチゴジャムあるよ」


「じゃぁそれにしよう」


 呪いの輪に触れる。触れて感じるのは「やり直し」の意識。結局、皆………幸せになりたかっただけなんだ。


「あっ……成仏したんだこれ」


「へぇ~まぁ俺が魂を壊すより健全だな。最初に帰ってすぐに悩んだが………まぁ可愛さに負けてな~」


「……………最初?」


「そう、最初………あっ!?」


「ねぇ、思い出した」


「す、すまん!! お前のあまりに泣き叫ぶ姿が可愛くて可愛くて!! 出来心なんだ!!」


「……………トキヤ」


 私はベットから降りトキヤの迫る。トキヤが狼狽え角に追い込まれる。


「わ、悪かった!! いや、ごめんなさい!!」


「………ゆるす」


「えっ!?」


「ゆるす」


 私は彼の首に巻き付き笑みを向ける。拍子抜けしたのかポカーンっとしたトキヤ。


「確かにすぐに助けなかったのはマイナス1。でも、すぐに助けに駆け付けたのはプラス1。私が触わられた時に怒った事がプラス1。そして…………私を女として愛してくれる事で絶対マイナスにならないよ」


「ズルいなぁ………本当にズルい。その緩急が俺を惑わす」


「ふふ、駆け付けたくれたの格好良かったよ。私の勇者様」


 私は想いを乗せて彼の頬にキスをした。






 










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