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お絵かき好きの異世界道中  作者: 昼夜紀一
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フィナちゃんとスキル

第六話です

フィナちゃんが再起動して、俺は質問攻めにあっていた。


「クズキタさんは魔法が使えるのですか!?」


「クズキタさんは魔法使い様ですか!?」


「さっきのはどういう魔法なのですか!?」


すまんフィナちゃん。俺もわからん。


でも、できる限りの範囲で答えてみる。


うーん……俺のここまでの経緯も包み隠さず話すことにするか。


これからやろうとしていることは、命懸けだ。

そして、フィナちゃんの力を借りないと無理だ。


それに、彼女の里の仇敵は、俺だけの力で倒すべきではないと思う。


5年間逃げ切ったこの子なら、きっとものすごい助けになる。



俺の話を真剣に聞くフィナちゃん。マジいい子。



大体話終わったところ、フィナちゃんはしきりに頷いていた。


「なるほど。クズキタさんがあの場所にいらっしゃったことも、これで納得できます」


「?」


「ここは私の里から10日ほど離れた場所にあります。南の村までは3日も歩けば付きますが、この森に入る方はいないでしょう」


南の村まで森抜けてから半日って話だったが、森抜けるのに2日半もかかるんかい!


「ここに巫女以外の人がいたことなど、ラルウァを八代前の巫女が誘導して以来初のことだと思いますから」


「ラルウァの脅威は、この森を知っておられる方なら十分分かっていらっしゃるでしょうし、実際巫女以外が遭遇すれば、死は免れません」


なるほど。怪しすぎるな俺。


「ラルウァを倒していいなら、俺とフィナさんが力を合わせれば可能だと思う」


「でも……ものすごく危険ですよ。昨日会ったばかりの方に、そんなことをさせるわけには……」


うつむくフィナちゃん。まあそうだよな。


いきなり現れて、倒してやるなんて意味わかんないよな。


でも。


「俺は昨日フィナさんに命を助けてもらった。その恩を返したいという気持ちもある。」


「でもそれ以上に、できることがあるのにやらないなんてことはできない。助けられるかもしれないのに見殺しになんてできないんだ。」


「俺がここで何も明かさずに、フィナさんが逃げている間に森を抜けたとしたら、俺は一生自分を許せない。」


「だから、俺のためにも、協力してラルウァを倒してほしい」


自然と頭が下がった。日本人の困った性だな。


フィナちゃんには悪いが、俺と出会った運を嘆いてくれ。


「……分かりました!私はどうすればいいですか」


ここにクズキタ・フィナ共同戦線が幕を開けた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


フィナちゃんの身体能力だが、ちょっとすさまじい。


追いかけっこと聞いて、地面だけを走るものと思い込んでいた。

でも違った。完全に立体起動だ。


木の上まで一気に跳び上がったり、逆に、かなりの高さから飛び降りてもケロッとしていた。


若さって怖いわ。いや、若さ関係ないか。


作戦を立てる上で、彼女の身体能力がどれぐらいか見せてもらったのだが、予想をはるかに超えていたわけだ。


フィナちゃんには悪いが、ちょっと描かせてもらおう。

どんなステータスなのか気になる。


「えぇっ!絵のモデルですか!?」


真っ赤になって恥ずかしがっていたが、何とか描くことができた。




名前:フィナ・ロール


年齢:18


職業:妖精族 沈静の巫女


HP:120


MP:530


力:100


知力:300


スキル:逃走術 隠ぺい術 算術 加速 跳躍 持久 罠猟 気配察知 遠視


説明:出身はグランデ山の麓の里。13歳で鎮静の巫女となった。現在までラルウァと呼ばれる怪物を深緑の森に隔離するため、自身を囮にし続けている。性格は温厚。


弱点 対人コミュニケーション 辛い物 



本名フィナ・ロールっていうんだ。18歳……。ちょうど俺と10違うのな。


って、


よ 妖精族……


いや、もうこれくらいじゃあ驚かないぞ。異世界だもの。いろいろいるさ。


天使かと思ったら妖精だった。それだけだ。



HP、MPに力・知力なんかは比較対象が無いから何とも言えないな。


身体能力の高さと、里で一番優秀だったというフィナちゃんの証言からいって、高めのステータスであることは間違いない。


自分のステータスって見れないのかな。ちょっと興味出てきた。


でも鏡無いと描けないしなぁ……。




情報を上から目で追っていく。


ん?スキルって初めて見る。ずいぶんいろいろあるが……


気になって、逃走術と書いてある部分に何気なく線を引いた。

すると、


「お!?」




逃走術

逃走に関して極めたものに与えられるスキル。

どんな場面でも逃げ切れる可能性を持つ。




スマホでタップした時のように、下に情報が追加された。


なんだこれ。こんな機能あったのか。


「あの、できましたか?」


石の上に腰かけたフィナちゃんが声をかけてくる。


モデルをしてもらったが、自由に動いていいということにしていた。本当は動いてほしくないけど、数十分も動くなというのは拷問に近い。


楽にしててくれといったものの、頑張って動かないようにしているフィナちゃんだった。



萌える。



「ごめん。できたよ。」


「わあっ!見せていただいていいですか!?」


ふふ。見るがいい。俺のスケッチを!!

モデルがいいと筆も捗るぜ!


「す、すごい!お上手です!!」


一般的なレベルよりも上な自信はあるが、目の前で褒められると弱いのだ。


「ま、まあね。」


多分今の俺は気持ち悪い顔をしていることだろう。


にやけるのを必死で堪えているもの。




さっきの説明で、クロッキー帳の機能で分かっていたことはあらかた話しておいた。

たった今新情報が追加されたんだけど。


ちなみに、先ほどフィナちゃんにもクロッキー帳にスケッチしてもらったが、情報は出てこなかったし、消しゴムで消しても何も起こらなかった。


今のところ、俺にしか反応しないようだ。


「これは何と書いてあるのですか?」


説明するときに情報も見せたが、フィナちゃんは日本語がわからなかった。


まあそうなんだろうな。じゃあなんで言葉は通じているんだろう。


不思議だ。



フィナちゃんに情報に描いてあることを説明しながら、スキルについて聞いてみた。


「スキル……ですか?」


「あらら、スキルって聞いたことない?」


うーんと腕組みするフィナちゃん。


「ごめんなさい。聞いたことないと思います。」


スキルって一般的じゃないのか?


もしかして、この世界の住人がスキルの存在を知ったのが、今この瞬間だったりして。


どうなんだろう。後々調べてみたほうがよさそうだ。



スキルは技術とか技能にあたるというと、なるほどと頷いていた。情報に書かれているフィナちゃんのスキルを読み上げていくと、その内容と多さに大喜びだった。


微笑ましいわ。こんな子がいつ死ぬかもわからないなんて、やっぱだめだな。

悪いが怪物よ、弱肉強食の掟に従ってくれ。


お前はこのクロッキー帳にはかなわない。


多分。


こっそり決意を新たにした。


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