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お絵かき好きの異世界道中  作者: 昼夜紀一
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俺のステータス

帰ってきたフィナちゃんにラルウァの様子を聞いた。


「昨日の様子からはかなり落ち着いて見えました。ただ……いつもなら私が姿を見せてから追いかけっこが始まるのですが、警戒されているのか、私が森に入ってすぐラルウァが襲ってきました」


えぇ!?


「だ、大丈夫だったの?」


「はいっ。森の中なら隠れる場所もたくさんありますし、平気でした!」


そ、そうなんだ……。


とにかく、ラルウァの警戒度は上がっているようだが、フィナちゃん的には問題無い様だ。


マジか、と思わないでもないが、何度も繰り返すがここはフィナちゃんを信じよう。


「明日からまた作戦開始ですね!」


「……わかった!無理しないようにお互い頑張ろう!」


フィナちゃんはきっと無理しているだろう。限界を超えないように、俺がしっかりしないとな。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「え、クズキタさんって28歳なんですか!?」


「え、もっと老けて見える?」


日も暮れ、晩飯を食べながらフィナちゃんとお話タイムだ。


「いえ、えーっと……てっきり私と同じくらいだと思ってました」


フィナちゃん18歳だよな。お世辞かな。


「本当?確かに俺の住んでた国の人は若く見られがちだったけど」


外国の10代なんて日本人の30代くらいに見えることあるしなぁ。


「18歳くらいか……もっと若くも見えます。なので、昨日のお話でお仕事を6年、それも先生をされていたとおっしゃっていたので、とてもびっくりしたんです」


あの時のポカンとした顔は、こいつ何語りだしてんだっていうのだけじゃなく、そういう驚きも入ってたのか。


そういえば、髭があんまり生えないんだよなぁ。疲れにくいし、言われてみると違和感はあった。


こっちに来て色々ありすぎて、気にしてる場合じゃなかった。


あの神様……もしかしたら俺を若返らせたのかな。といっても10歳くらいっぽいけど……


有難いんだけど、もしそうなら説明くらいしろよ……。


「もしかしたら、こっちに転移してきたときに若返ってるかもしれないから、明日湖で自分の顔確認してみるよ」


「あ、鏡ならありますよ?」


あるんかい!




晩御飯を食べ終わってから、フィナちゃんが寝床からA4サイズくらいの鏡を持ってきてくれた。きれいな金属の縁取りがしてある。これは銅かな。花の意匠でずいぶんオシャレだ。


日本でも稀に発見される古代の銅鏡のような金属を磨き上げたものではなく、ガラスを使った鏡だ。どうやら、ガラスを製造する技術はあるらしい。


ということで、自分の顔を確認してみると、確かに若い。これは若返ってそうだ。


「もう少し鏡借りててもいい?自分を描いて見たいんだけど」


フィナちゃんの了承を得て、自分を描く。顔だけ描いてもステータスが得られるのはフィナちゃんで実験済みだ。鏡のサイズ的に全身像はかなり描きづらいのでよかった。


自分の顔といっても、いつも鏡で見ていたはずなのに、描くたびに新しい発見がある。


元の世界でも、描くものに困ったらとりあえず自画像を描いていた。


やはり、生のモデルが一番人体を描く上で勉強になるからだ。


人体というのは知れば知るほど複雑かつ合理的にできている。非常に奥深い。


絵というのは、対象を理解する過程が必要不可欠なのだが、人体は底なし沼と一緒で、特に筋肉や骨格、その一連の動きなどを1から10まで把握しようとするとドツボにはまる。


なので、俺の場合、人体を描くときは必ずモデルを参考にしながら描いていた。


想像上でもある程度は動かせるのだが、どうしても迷いが出てしまう。迷いが出たまま進めるとロクな絵にならないので、モデルは必須だった。


今はネットで理想に近い体勢のモデルを見つけられたり、ポーズ集なども出ているのでそれを参考にしたりできるので非常に助かる。


いや、助かっていた、か。


ああ、我が母国が恋しい。




大学では裸婦デッサンの授業があったりして楽しかった。


大学が専門のモデルさんを雇って、授業として裸の女性がポーズをとったものをクロッキーしたりするわけだ。


最初裸婦と聞いて、俺や男友達はテンション上がりっぱなしだったが、授業が始まってみると、もうモデルとしか見えなくなるのは不思議だった。


モデルさんのプロ意識もすごく、大体20分区切りでポーズをとってもらうのだが、本当に微動だにしない。


やってみれば分かるが、20分動かないというのはめちゃめちゃ苦しい。拷問だ。


描く対象が人であったし、モデルさんの振る舞いも相まっていい緊張感が生まれていたのも、今思えば気持ちが浮つかなかった理由かもなぁ。


まぁ、周りに女の子が沢山いて、その中で鼻の下伸ばせなかったのが一番の理由かもしれんが。


ちなみに、美術科は男女比が3:7くらいなので、周りは女の子ばっかりだった。




「よし、できた」


ここまで、と思った瞬間情報が出てくる。ホントどうなってんだ。



名前:葛北 飾


年齢:18


職業:絵描き魔法師


HP:100


MP:30000000000


力:15


知力:50000


スキル:お絵かき魔法 空間把握 遠視 成長促進+ 魔法の素養 魔力充填


説明:出身は日本。お絵かきの神様による転移でアークへとやってきた。絵に関して未知数の可能性を秘めている。現在、道すがらであったフィナ・ロールに惚れている。


弱点 神様 セロリ 想定外の状況



おいおい……何だこりゃ。


色々ツッコみどころがありすぎる。


まず職業。絵描き魔法師……。なんだそれは。


MPもなんだこれ。バグってんのか?俺の目が確かなら300億もあるんですけど。


そして知力が5万……


どちらもフィナちゃんを基準にして考えると、ちょっととんでもない。


フィナちゃんが低すぎるのか……いや、違うよな。俺がおかしいんだ。


その証拠に、HPと力……ひ、貧弱ぅ。



スキルにお絵かき魔法とある。これがクロッキー帳に出てくる情報や、傷つけたり元に戻したりっていうアレのことだろうな。


空間把握はそのままかな。絵で立体感出したり、奥行きを作ったりすることに関係あるんだろうか。


試しに下線を引いてみる。



空間把握

自分の視界範囲を把握する能力が飛躍的に上昇する。



うーむ。俺の視界内でのみ空間を把握しやすくなるのか。できたら気配察知とかの方がよかったな。


ラルウァが視界に入ったときには、多分俺もう逃げられないし。



お絵かき魔法も見てみる。



お絵かき魔法

熟練した絵の技術と、魔法の素養が備わったもののみ使える特殊魔法。魔法の根源である想像力が豊かであるほど、豊富な魔法を操れるといわれる。また、絵の技術の高さや完成度によって、魔法の及ぼす効果が変わる。



なるほど。描いた時間で効果がが変わるのは知っていたが、技術レベルでも変わるのか。


っていうか、俺はクロッキー帳に魔法がかかってるのかと思ってたが、もしかして俺自身が魔法を使ってたのか?これは後で実験せねばなるまい。


想像力が豊かであるほど、という部分が気になる。


今確認しているのは、対象を描くと情報を得られる、描いた対象の絵を消すことで傷つけ、加筆することで修復できる、の3つだ。


まだほかにできることがあるのだろうか。


早く見つければ、それがラルウァ攻略に役立つかもしれない。いろいろやってみよう。


「クズキタさんできましたか?」


フィナちゃんはちょっと用事が、と言ってどこかへ行っていたが、帰ってきたようだ。


髪が濡れているので、風呂にでも入ってきたのかな。


……え、風呂あるの。


「うん、できたよ。いろいろ分かったからあとで教えるね」


「はいっ」


「そ、それより……」


風呂について聞いてみると、なんと近くに温泉があるという。マジか。


フィナちゃんはたまたま見つけ、大好きになったらしい。


フィナちゃんの故郷では風呂に入る習慣がなく、特に男はたまに川に飛び込むくらいしかしなかったそうだ。



汚ねぇわ……ゆうて俺はきれい好きな日本男児やぞ。



フィナちゃんはまさか俺が風呂に入るとは思ってなかったらしく、驚きながらも案内してくれた。


「あ”ぁ~」



温泉、最高でございます。


数日ぶりだったし、風呂はやはり素晴らしいものだ。


俺やっぱここに住もうかな……



いや、冗談です。




読んでいただきありがとうございます

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