ソース
目が覚めると、わたしは暗くて柔らかい、少し狭い部屋にいた。
いつからここに居たのだろう。寝起きの頭で曖昧な記憶を探る。
わたしが生まれた時には、ここよりもっと狭いところにいたはずで。
何日かかけて、やっとここに辿り着いて、ここの柔らかさに安心したらなんだか眠くなって、それで今まで寝ていた、で、大体あってる気がする。
せっかくこんな寝心地のいいところに来られたのだから、まだ寝ていようか、どうしようか。
と思っていると、なんだかここの様子がおかしい。
揺れている、気がする。
このままでは危ないかもしれない。
「もう、君は死んじゃうんだよ」
どこからか声がきこえてくる。
わたしが死んじゃうってどういうこと?
まだうまれたばかりなのに…。
「ごめんね、もう君にここに居てもらえない」
またきこえてきた。
なにか返事をしなくちゃ。
でも、だんだん揺れは強くなる。
どうなってしまうのだろう。
怖い。
そう思った瞬間、柔らかかった床が剥がれて、わたしを呑み込んでどこかへ流れていった。
「痛い痛い痛い痛い……」
さっきとは違う声がきこえる。
「いつまで続くの……」
だれ……?
「早く終わればいいのに……」
何の話をしているの?
「もう嫌……」
「薬をのんでも効かなくなっちゃった。お腹痛いの治らない。病院行かなきゃ駄目なのかな」
そこで『わたし』は自分がなんなのかを思い出した。
わたしは、『運命の人』には出会えなかったんだ。
残念。