それは、最初の戦い。
ノリと勢いと脳内補完でお願いします・・・
「・・・う・・・ぁ・・・」
目の前の少女は今にも息絶えそうなほど衰弱していた。リオンは少女に這って駆け寄る。
「おい、大丈夫か!?」
「・・・ぁ・・・」
「おい!」
少女の反応は薄い。助けなければ、という気持ちだけが先行して、方法が浮かばない。リオン自身、少女を抱えて逃げるだけの体力は既に無い。自分一人ならまだ逃げ切れる可能性はある。しかし、出会ってしまった以上、目の前の少女を見捨てることはできない。詰み。完全に詰んだ。
「見つけたぞ!」
奴隷商人達が追いついてきた。リオンはこれでもかという位奴隷商人を睨みつけた。
「逃げるたぁいい度胸じゃねえか・・・お?ガキ、後ろのはなんだ?」
「・・・」
「おお、怖い奴だ、衣食住を提供してやった主人に対してこの態度とは・・・お前には今まで生かしてやった分の料金を払ってもらわなきゃいけないんでな、逃がすわけにはいかんのだ。どうだ、後ろの奴を見せてみろ」
「いやだ!!」
「てめえの許可は聞いてねえ、おい、やれ」
「ガキ、どけ」
奴隷商人の付き人がリオンに迫り、抵抗するリオンの首根っこを掴んで放り投げる。
「ぐっ・・・ああああ」
奴隷商人が少女に眼を向ける。
「おお・・・コレはなかなか上物ですねぇ・・・どこの種族かは知りませんが、追いかけっこをしたかいがあったというものです」
奴隷商人が少女を見て声を上げる。このままではあの少女が連れ去られてしまう。絶対に助ける。そう覚悟を決めると何とかリオンは身体を持ち上げることができた。
「おおおおおおおお!」
リオンは奴隷商人に向かっていく。
「あのガキを抑えなさい!」
付き人が二人、リオンを捕まえようと手を出す。それをリオンはすんでのところでかわす。そして少女を抱え、奴隷商人から逃げ出そうとする。
「どこからそんな力が・・・仕方ない、これはあまりやりたくなかったのですが・・・逃げられるよりはマシですね・・・」
奴隷商人はブツブツと何か言っている。今の状態なら逃げれると思ったリオンは、茂みに飛び込もうとする。隠れることができれば、何とかなるかもしれない。そう思ったからだ。しかし。
「逃がしません!”熱の力を持って焼き尽くせ!ファイア!”」
火球が奴隷商人の手から飛び出し、リオンに直撃する。
「ぐあああああああああああああああ!!!!」
咄嗟に少女を庇ったリオンは、奴隷商人に背を向け倒れる。
「死んではいないでしょうね・・・?」
奴隷商人が近づいてくる。もうリオンは動けない。少女を守るようにしているが、意識が落ちそうになっている。
「くっそぉぉ・・・!」
リオンの口から言葉が漏れる。お終いだ。今度こそ、何もかも。全てを諦めよう。そしてリオンの瞼が閉じる。
「・・・?」
アクションがない。殺すにしろ、奴隷生活に戻すにしろ、何かアクションが起きるはずだ。なぜだろう。そして何か暖かい。瞼を開ける。
「・・・!?」
リオンは驚いた。自分の体が光に包まれている。そして力が漲っている。ふと目線を下げると、少女が自分の手を握って、こちらに微笑んでいた。この少女が力を与えてくれているのだろうか。しかし今はそんなことどうでもいい。
「なんだ!?何が起こっている!?」
奴隷商人は突然の事態に混乱している。なぜこうなっているのかなんて、リオン自身が分からないのに他が分かるはずがない。
リオンは少女を抱え、立ち上がって奴隷商人に向き直る。そして呪文を唱える。呪文は使えなかったはずなのだが、今のリオンには全くそのことは気にしていなかった。できるという確信があった。
「「自然の驚異よ、俺(私)にその力を貸してくれ(ください)!!」」
リオンの詠唱に少女が合わせる。
「「ライトニング!!」」
唱え終わると同時に暗い空が更に暗くなる。そして刹那、光に包まれる。
光が消えると、そこにはプスプスと音を立てて倒れている人間が三人いた。
「・・・終わった、のか?」
危機が去ったことを確認すると、どっと疲れが押し寄せてきた。
「あー・・・」
リオンは少女を降ろし、一息すると、力が抜けてその場に倒れこんだ。
「・・・おやすみ」
少女の声が聞こえた気がした。そういえば名前を聞いてなかったな、聞いておかなければ・・・と、そんなことを思いながら、リオンの意識は闇に沈んでいった。
少女の名前はまだ出てきません!