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嫌われ者始めました〜転生リーマンの領地運営物語〜  作者: くま太郎


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ジョージの決断

色々ありますが、今は書くしか出来ないので‥前半最大の山場に突入です

 九月になったとはいえ、残暑はまだまだ厳しい。ついでに学校の生徒からの視線も厳しかったりする。

 原因はオリ中新聞だと思う。新聞部は何をとち狂ったのか、俺の特集を組んでくれたのだ。内容は割と肯定的な内容で、安心して読む事が出来た。

 しかし、それが面白く思わないのがマリーナ派を初めとした各派閥。新聞部に直接赴いて『次回はマリーナ様の特集を』『前々回がマリーナだったから、次回はヴァネッサ特集だ』等と騒いでいるらしい。そんな事をして載せられたら、良い恥晒さしだと思うんだけど。

 昼休み、いつものメンバーで弁当を食べていた。夏休みより学校にいる方が、のんびり出来るのは皮肉としか言いようがない。出来る事なら、これ以上トラブルに巻き込まれたくないです。


「ジョージ様ー。親父が『フライングシップの解析が終わったから放課後、工業ギルドに来てくれ』だってー。それとスラ太郎が分裂したから、実験を始めるねー」

 最初、リリルがトラッシュスライムにス○リンと付けようとしたが、全力で阻止させてもらった。


「ジョージ様、畑の作物の成長は順調だよ。でも、雀が増えている感じがするだ」

 

「雀が増えているって事は、餌になる虫が増えているのかもな。ドンガ、ありがとう」

工業ギルドの炭担当職員に頼んで木酢液を増産してもらうか。木酢液で死んだ虫を鶏に食べさせても大丈夫なんだろうか?……こんな時にネットが繋がっていたら、質問出来たのに。


「虫が増えているだか?うちの畑にビーンズモスが来ないだかねー」

 ドンガは昆虫食に抵抗がない。前に畑を視察に行ったら『ジョージ様も食べてみないだか?』と蝉の丸焼きを差し出された。あの時は腹がいっぱいだって誤魔化せたけど、次からはどうしよう。


「ビーンズモスが住むのは深い森の中ですよ。ジョージ様、ドラ糞の追加受注をお願いしたいんですけど」

 ちゃっかりしていると言うべきかさすがと言うべきか、ヴェルデはドラ糞が売れると分かった途端、手のひらを返したように販売に力を入れだした。


「この時期に追肥する作物があるだか?」

 ドンガは畑を手伝っているだけあって、作物に詳しい。日本の本屋に連れて行ったら、園芸コーナーにどはまりすると思う。

 

「ドラ糞は堆肥としても人気がありますが、獣除けとしての需要も高いんですよ。カッパー子爵領で鹿や猪の被害が深刻になっているみたいでして……それと、これはまだ確認が取れていないのですが、ゴルド公爵お抱えの冒険者がドラゴンを探しているみたいです」

  

「ゴルド公爵とは直接の接点がないけど、気を付けておくよ。カッパー子爵ってゴルド公爵の分家だよな?」

 確か数代前に手柄を立てて独立が認められたって聞いた事がある。本家に遠慮して(カッパー)と名乗ったそうだ。確か、領内で宝石が採れているから財政は豊からしい。


「カッパー子爵のお孫さんが、ある派閥に入ったらしいんですよ。その派閥が動物保護を唱えているそうでして」

 妙にヴェルデの歯切れが悪い。それにチラチラとコニー・ラパンの方を見ている。


「そのお嬢様は、ピーター派に入ったそうなんです。随分とお気に入りらしく、放課後に良く会っているみたいですよ」

 ピーターはその爽やかな弁舌とルックスが一部の女子に人気となり、ピーター派なる物が出来たのだ。ちなみにラパンさんはニコニコ笑いながら話しているけど、その笑顔がめっちゃ怖い。

(ヴェルデとしては微妙な立場だよな。恋敵のピーターの事は、あまり悪く言えないし)

 昔の男の方が断然にイケメンだってのは、結構きついと思う。


「ルビー・カッパーか……アタイは、余り関わりたくないね。あそこの一家の話は聞きたくないんだ」

 カリナの顔にありありと嫌悪感が浮かんだ。俺としてもゴルド公爵の親戚とは関係を持ちたくない。


 神様、俺は何か悪い事をしたんでしょうか?折角、フライングシップを手に入れたのに、ワノ国に行けないなんて。


「ハンマーさん、何とかなりませんか?」

 このままでは味噌と醤油を手に入れる事が出来なくなってしまう。


「こればっかりはジョージ様の頼みでも無理ですよ。あのフィルターが何で出来ているのかも分からないですから」

前にリリルが『大体の所はオッケーなんだけども、煙突に付いているフィルターだけが何で作られているか分かんないねー』と言っていたフィルターである。あのフィルターは数か所に設置されていたんだけども、煙突に付いていたやつ以外は汚れが付着し過ぎて役に立たないらしい。


「魔物から取れた魔石を使うとエンジンが壊れるんですよね」

 つまり、現地調達した魔石は使えないと。


「ええ、魔物から取れる魔石は不純物が多いので。でも、マナプラントから取れた魔石なら問題ないですよ」

 あのフィルターは、エンジンに不純物が付着しない為の物だそうだ。マナプラントの魔石は不純物が混じっていないから問題がないらしい。ちなみに煙突に付いていたフィルターは余計な物を外に出さない為の物との事。排ガス規制ならぬ排魔力規制でもあったんだろうか。


「燃費を計算してみたら、フライングシップに魔石を積めるだけ積めばワノ国まで行ける筈なんですけど」

 計算式を書いた紙に目を落とす。そしてハンマーさんをチラ見する。領主がチラ見しまくれば、折れてくれるかもしれない。


「帰りはどうすんだよ、帰りは。それに水や食糧も積む必要があるんだぞ。ワノ国行きは却下だ。文句があるんなら、水と食料の重さやスペースを入れた新しい計算式を出せ」

 でも、俺のプレッシャーなんかじゃ絶対に折れない狼人(ボルフせんせい)から却下された。ボルフ先生は学校で学んだ事がないらしいが、サンダ先生に色々教えてもらい今では高卒レベルの学力を持っている……食糧と水を加えたら、アウトだっだからわざと省いたのに。正に机上の計算ってやつだ。

 

「水と食料は、どこかの港に寄って行けば何とかなるかと……」

 翻訳機能で外国人とも会話が出来るから、問題ない……と思う。


「ジョージ様のフライングシップは独特の形をしております。領海内に入ったら直ぐに警戒対象になってしまいますよ」

 サンダ先生からも反対意見が出されました。ゲームではどこに行っても、ノーチェックで寄港出来たけど現実はそう甘くないらしい。


「ええ、サンダ先輩がフェルゼンにいらした時も『怪しい船を発見しました。追跡を開始します』と連絡が入っていましたので。ジョージ殿の事を知らない国だと、フライングシップは強制接収ですね」

 そしてミューエさんが、すかさず援護射撃。このままでは、醤油と味噌が手に入らないではないか。ジャポニカ米も欲しいのに。


「分かった。オデットを説得してみろ。そうしたら、話を聞いてやる」

 オデットさんを説得……無理だ。理路整然と駄目だしをされて終わりだと思う。それにお説教モードのオデットさんはがちで怖い。


「と、取りあえず、この話は保留とします。ハンマーさん、トラッシュスライムはどんな感じですか?」

 場の空気が悪くなりかけたら、話題を変えるのが基本です。


「実験の結果、空気に触れて数十秒で固まり始める事が分かりました。水漏れもせず気体も通さないので、充分パッキンの代わりになると思いますよ。ただ、トラッシュスライムは成長が遅いので、大きな部品としては使えないかと」


 成長が遅い原因はトラッシュスライムの生態にあった。主食は鉱物全般で、その辺に落ちている石でも良いらしい。ただし、消化にかなりの時間が掛かるとの事。そしてある程度、養分が溜まったら分裂をして半分以下の大きさになってしまうそうだ。

 早い話が自然界で最弱に位置するトラッシュスライムは増えまくる事で、生き残ってきたのだろう。

トラッシュスライムは攻撃方法を持たない。攻撃されたらトカゲの尻尾のように体を分裂させて逃げるそうだ。そして核が残っている方が新たな本体になるらしい……ただし、大きさが半分以下になると直ぐに死んでしまうそうだ。さらに栄養状態が悪い時に分裂した時も死んでしまうらしい。


「つまりトラッシュスライムの個体数が増えるまでは、削ぎ落とすくらいの量しか取れないんですね」

 でも無暗に餌を与えたら増えすぎてしまうと。育成用スライムと素材用スライムに分けるべきか。


「はい、タイミングを見てパッキン用の素材を取っておきますので」

 トラッシュスライムは、ドラ糞と違って商業ルートに乗せるのが難しいかも知れない。

 十一月、実りの秋を迎えホッとしていたのも、つかの間今年も恐怖のお誘いがやってきた。そう、太陽生誕祭の招待状だ。

 魔物との戦闘を重ねた所為なのか、はたまた成長期だからなのか去年のスーツはパッツンパッツンになってしまった。


(もったいないから、去年のスーツを仕立て直すか)

 仕立て屋を呼んでもらうか考えていたら、タイミング良くボルフ先生がやって来た。ボルフ先生は、わざとらしく何かを背中に隠している。


「ジョージ、喜べ。良い知らせが届いたぞ」

 この時点で嫌な予感しかしない。ぱっと見ただけでボルフ先生が笑いを堪えているのが分かる。


「一応、念の為だけに聞いておきます」

「ヌボーレ伯爵から、お前宛てに新しいスーツが届いた。この間のお礼らしいぜ……これが今年の流行らしいぜ」

 ……まじっすか。ボルフ先生が取り出したのは、乙女ゲーのキャラが着ていそうな純白のスーツ、シャツも白でそこかしこにフリルが付いている。何の嫌がらせかネクタイだけが薄紫だ……ヌボーレ伯爵に言いたい。これ、イケメン限定ですよって。


「これ、着なきゃ駄目ですか?」

 着る人が着たら絵になるだろうけど、俺が来たらコントに出てくる馬鹿貴族だ。


「当たり前だろ、相手は伯爵様なんだぜ。ヌボーレ伯爵は贈ったスーツを生誕祭に着て来てもらう事で、この間の件で私達に溝は出来ていませんよって、王族にアピールしたいんだよ」

 確かにヌボーレ伯爵の贈り物をないがしろにするのは得策ではない。しかし、デメリットもあり過ぎる。下手すりゃ、俺は奴隷保護派のヌボーレ伯爵と仲が良いなんて噂を立てられかねない。溝は作りたくないが、ヌボーレ伯爵とは一定の距離を保ちった方が安全だ。

 

「生誕祭って、地味に長いんですよね。こんな真っ白な服を着ていたら、汚れるのが怖くて何も飲み食い出来ませんよ」


「テーブルマナーを、きちんと身に付けていれば問題ねーよ。自信がないなら、空腹を我慢するしかねーな」

 しかし、腹の虫がなったら、もっと恥ずかしい訳で……生誕祭にはアミも来る。服が汚れたらシャイニングボディで誤魔化そう。

 不幸中の幸いとでも言うべきなのだろうか。ヌボーレ伯爵が贈ってきた服は本当に流行っているらしく、思ったよりは目立たなかった。似合わないって意味では、俺が断トツで目立っていたけど。

(アミは未成年者ブースか。寂しいけど、この恰好を見られるよりはましか)

 愛想笑いで『お兄様、とってもお似合いです』とか言われたら、絶対にやけ酒をしてしまう。

 そんな事を考えながら他領の領主と談笑していたら、遠くから悲鳴が聞こえた来た。


「未成年ブースで誰か倒れたぞ‼」「アコーギ家のアミ様だ‼意識がないぞ」

 ……アミが倒れた?マナーなんて糞くらえとばかりに人をかき分けて突っ込んでいく。睨まれようが、舌打ちされようが関係ない。ただひらすら走る。


「アミッ‼」

 野次馬をかき分けて行くと、俺の最愛の(アミ)がいた。顔は真っ青で、息も絶え絶えだ。


「離れて下さい。宮廷医師が通ります……先生、どうですか?」

 恐らく宮廷医師であろう初老の男性がアミを診察し始める。


「腹壊れだ……残念ながら、手の施しようがない」

 全身の血の気が引いていくのが分かった。涙がとめどなく、溢れ出す。

(どうしてアミが……腹壊れってなんだよ⁉)

 運命の理不尽さを呪いながら、レコルト基礎知識にアクセスする。

腹壊れ、盲腸の別名。外科手術が発展していないレコルトでは死の病とされている。

 回復魔法がある所為で、レコルトで外科手術はタブーとされている。


(何が転生者だっ‼妹一人救えないのに……そうだ‼ミケに頼めば)

 ただひたすら人気のない場所を探して走る。どこをどう走ったか覚えていない。気付いたら真っ暗な空間にいた。上下左右、全てが真っ暗だ。


「なんや?儂にようか?」

 聞き覚えのある声がしたので、見上げるとミケが俺を見下ろしていた。


「アミが倒れたんだ。このままじゃ命があぶないんだよ‼頼む、何とかしてくれ」

 恥も外聞もない、床に頭を擦り付けてミケに懇願する。


「方法が一つだけあるで……マナプラントで育っとる巨大魔石を使ってアミちゃんを日本に連れて行くんや。そして手術を受けさせたらええ。ただし、因果律が歪み過ぎるから、これをやったらお前は二度と日本は帰れんで……完璧にジョージ・アコーギになるんや」

 日本に帰るのが、俺の最終目標だった……でも、答えは決まっている。


「アミを救えるなら、なんでもする。詳しい方法を教えてくれ」

 例え、一生嫌われ者になるとしてもアミを救ってみせる。

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