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嫌われ者始めました〜転生リーマンの領地運営物語〜  作者: くま太郎


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そしてジョージは嫌われる

 やばい泣きそうだ。公共事業の資料作りに没頭していたら、夏休みが残り僅かになっていた。今年の夏の思い出、外国に行ってストレスを溜めて帰ってくる。後はひたすら領主家業に邁進……もう夏に過度の期待をする年ではないけど、なんか寂し過ぎる。

 不幸中の幸いなのは、宿題は全て終わらせている事くらいだ。ちなみに自由研究は、ドラゴンの糞を堆肥として利用した結果と考察である。

 ドラゴンの糞を肥溜で一年放置し、光の魔石を利用して殺菌消毒する装置に掛けた。

 作物の育成が順調になるだけでなく、魔物どころか動物も近寄って来ない素晴らしい肥料になった……でも、ちょっとだけ臭いがきついのが難点だ。ビニールにそっくりな素材なんかが異世界にある訳もなくギリアム商会でも、取り扱いに難色示している。課題に選んだのは、少しでもドラ糞の効能を見てもらう為である。


(こ、これで連休が一週間は取れるぞ。絶対に夏休みを満喫してやる)

 ミューエさんがボーブルに来てくれたお陰で、サンダ先生がフェルゼンへの旅行を取り止めてくれた。お陰で、事務処理が捗り俺の連休が増えたのだ。

 キーボードを打つ手を休め、一息ついていると、慌てた様子のロッコーさんが部屋に飛び込んできた。腹黒エルフのロッコーさんが、感情を露わにする事は滅多にない。もう、嫌な予感しかしません。


「ジョージ様、王家からアーシック領で行う公共事業を直ぐにでも開始して欲しいとの連絡が来ました」

 今回、俺が提案した公共事業は三つ。アーシック領の土壌改良、イグニアの地下水路の整備、コーカツ領とフェルゼン帝国を繋ぐ高速道路の建設。どれもボーブルが誇る作業ゴーレムがあってこその事業である。ちなみに国が六割を負担し、残りの四割を該当地域の領主が負担する仕組みだ。

 一部の貴族から茶番だとか談合だとか言われているらしい。悔しかったら、うちと同じ納期、価格でやってみろってんだ。


「その事業は来月からの筈ですよ。それはホートー様も了承してくれた筈では?」

 このままでは、夏休みがおじゃんになってしまう。フェルゼン帝国の戦争を回避した立役者に対して、それは酷くないか?第一、準備が半端だから良い結果が出ない可能性がある。下手すりゃ、公共事業の話その物がなくなってしまう。


「アーシック家の当主ランドがごねたらしいぞ。このままでは、アーシック領の民が餓え死にしてしまう。一刻も早く土壌改良を始めて欲しいってな」

 ランドは良く言えば豪快な性格、悪く言えばお人好しで騙されやすい。誰かにそそのかされて、その気になったんだと思う。しかし、誰が焚き付けたんだ?俺の足を引っ張りたい勢力と言えばお約束のゴルド公爵かイリスさんの件で、大損害を被ったナイテック家辺りが妥当な線である。特にナイテック家は、サージュが処刑された上に王家から叱責されたから、俺を逆恨みしていてもおかしくない。

(でも、アーシック家はサージュに多くの領民を奴隷にされているから、快く思っていない筈。それにゴルド家の王家への忠誠心は厚い。王家の決定を蔑ろにする可能性は低い)

 他にも俺を嫌っている奴は多いが、ランドに進言出来る奴なんていたか?


「恐らくマリーナ様とフレイック家の小娘が、ベル・アーシックを扇動したのでしょう。三人共、ジョージ様が奴隷を買ったと王都で大騒ぎしておりましたので」

 それなら納得だ。ランドは一人娘のベルの事を目に入れても痛くないくらいに可愛がっている。ベルの進言なら、無条件で受け入れるだろう。ちなみにアニエスは父親のリップルから、絶対に騒ぐなと厳命されたそうだ。


(失敗すれば俺の株は大暴落。成功すればアーシック領の危機を回避出来る。どっちに転がっても、マリーナ達は良いって事か……それなら、逆にこの事態を利用してやる)

 こっちは休み返上で仕事をしている元サラリーマンの領主様だ。仕事で中学生になめられる訳にはいかない。


「ボルフ先生、ロッコーさん、これから指示書を作るんで協力をお願いします。それとサンダ先生とミューエさんに連絡を取ってもらえますか?ミューエさんの顔見せを兼ねて工業ギルドに行ってきます」

 必要な書類をパソコンに打ち込んでプリントアウトしていく。日本にいた時はインクやコピー用紙を気にせずに仕事が出来る事が、こんなに快適だとは思わなかった。


「ジョージ、ミミズを一匹十ストーンで買取るって、本気か?」

 期間は三日間に限定。百匹捕まえてきても、千円である。土造りにミミズ君は不可欠なんです。


「ええ、ただしボーブルに住む学生限定ですけどね」

 夏休みで散財した学生への粋なプレゼントだ。無論、ミミズ代は必要経費としてあげてやる。

 ◇

 空気が重い。工業ギルドでこれまでの経緯を説明したら、全員が険しい顔になってしまった。


「ジョージ様、申し訳ありません。ランド様はベル様に頼まれると嫌と言えないんですよ」

 リリルの父アイゼンが申し訳なそうに謝ってきた。当然だがアイゼン達ドワーフにとって今の領主は俺である。普通なら、俺に重きを置く筈。しかし、長年仕えて来た領主への忠誠心は簡単に捨てられないらしい。きっと中にはアーシック領に戻りたいドワーフもいると思う。


「そこはまだ噂の段階ですし。取り敢えず、王家から許可が降りたら準備をお願いします。俺も準備が整い次第、フライングシップで向かいますんで」

 フライングシップと言った瞬間、何者かが俺の傍に駆け寄ってきた。


「ジ、ジョージ様。じ、自分もフライングシップに乗りたいです。駄目ならせめて調べさせて下さい。それが駄目なら見るだけでも……いえ、臭いを嗅ぐだけでも構いません‼」

 駆け寄ってきたのは、グリグリ眼鏡を掛けた残念エルフのヘゥーボである。マジックアイテムオタクのヘゥーボにしてみれば、フライングシップは垂涎の的なのだろう……でも、みんなの前で縋り付くのだけは止めて欲しい。


「分かったよ。そういやお前は攻撃魔法を、どこまで使えるんだ?」


「自分、水属性なら中級まで使えます。それに初級の風属性魔法も使えるので、氷雪系もばっちりですよ。だから、自分もお供させて下さい」

 ゲームの時から思っていたけど、ヘゥーボはマジックアイテムを作る才能より魔法の才能の方が優れている。宝の持ち腐れってやつだ。


「ああ、テッラ台地にも行きたいから頼むぞ」

 テッラ台地に出る魔物は防御力が高く、直接攻撃が効きにくい。逆に魔法抵抗力が弱いから攻撃魔法は必須だ。だからと言って戦士職が不要と言う訳ではない。

 テッラ台地には野良ゴーレムやロックボアのような攻撃力が高い魔物が多く棲んでおり、壁役も必要になってくる。特に野良ゴーレムの攻撃は素手でも鈍器並みの破壊力があり、頭に喰らったらリアルサスペンス劇場になってしまう。


(格闘系のカリナは土属性の魔物と相性が最悪だ。壁役はサンダ先生かドンガに頼むか……となると俺の攻撃手段だよな)

 もう少し余裕があれば憧れのパイルバンカーを開発したんだけども……いや、工事じゃないんだから完全に砕かなくても良いのか。そうと決まれば早速注文だ。

 ◇

 アーシック領における俺の好感度は最低らしい。そりゃそうだ、札束積んで親戚や友人を引き抜いたようなもんだし。


「あのジョージ様、本当にこれを運ぶのですか?」

 サンダ先生が荷物を見てドン引きしている。最初はついて行くと息巻いていたボルフ先生も荷物の臭いでギブアップ。


「これがなきゃ今回の土壌改良が上手くいきませんから。民家のないルートを選びましたけど、慎重に運ばないとまずいでしょうね」

 荷物と言っても量が多すぎて、フライングシップに積み込めないので、荷物を網で包んで運ぶ事にした。


「ジョージ様ー、お待たせー。僕も乗ってくね」

 アイゼンさん達は先発隊として既に出発している。そこでアーシック領生まれのリリルに同行を頼んだのだ。リリルはハンマーを武器として使うそうなので、テッラ台地でも活躍してくれるだろう。


「こ、これが伝説のフライングシップなのですか‼自分は感涙で前が見えません」

 ちなみにヘゥーボは、フライングシップを見て号泣している。


「もうー、ヘウは大袈裟だなー。はい、ハンカチ」

 仕様がないわねと言った感じで、ヘゥーボにハンカチを渡すリリル。


「リリ、ありがと」

 そしてそれを自然に受け取るヘゥーボ……ドンガを、誘わなくて良かった。今回、アーシック領に行くのは俺・サンダ先生・ミューエさん・ヘゥーボ・リリルの五人。領主なのに俺の邪魔者感が凄い。


「ジョージ様、樽の積み込みが完了しました」

 さすがはサンダ先生、中身が入った樽を悠々と積み込んでしまった。パッキンが壊れた所為で、フライングシップの水道が使えなくなってしまい、飲み水は樽に入れて持っていく事にしたのだ。


「ありがとうございます。ブレイブ・アイデックみたいに何でも入るカバンがあれば良いんですけどね」

 ゲームでも主人公の家には、先祖伝来だと言う容量無制限のカバンが伝わっている。何で盗まれないのとか、何で重い物が入っているのに平気で担げるのとか突っ込んではいけない。余り、リアルに拘り過ぎるとユーザーに敬遠されるのだ。


「無限バッグですか‼自分作ってみたいです。是非、作らせて下さい……あれをこうして、こうすれば……クフッ、グフフフ」

 どうやら、俺はヘゥーボの押してはいけないスイッチを押してしまったようだ。

 ◇

 幸いな事に先発隊の工事は無事に終わっていた。


「しかし、作業ゴーレムの王都通行許可なんて良く降りましたね」

 未だに王都へのゴーレム馬車乗り入れは許可されていない。それを考えれば破格の条件だろう。


「公共事業には作業ゴーレムは必須ですからね。デモンストレーションも兼ねていたみたいですよ。それにアーシック家の我が侭が原因なんですから、これくらいを許可してもらわないと。それじゃ作業を始めますから、退避命令を出して下さい」

 全員退避したのを確認してフライングシップを浮上させる。今回は作業の都合上、低空だ。


「それじゃ、いきますよー」

 俺がスイッチを押した瞬間、リリルの絶叫が聞こえて来た。


「姫様ー、危ないですから行かないで下さーい。何も怪しい事はしませんからー」

 ベルはリリルの制止を振り切って、作業現場に突入にしてきた。作業ゴーレムにより掘り起こされた土は足場が悪く中々進めないようだ。

 言い訳させてもらえば、スイッチを押してから、ベルが入って来たのだ。だから、俺は悪くないと……思う。


「僕は騙されないからね。マリーナが言ってたもん。ジョージ様は平気で騎士道にもとる事をするって……お空から土が降ってきた?それにミ、ミミズー‼それにこの土くさいよー。もう、いやだー」

 こうしてベルはドラ糞とミミズのシャワーを浴び、俺はまたしてもヒロインに嫌われたのだ。


活動報告にサンダ先生、ボルフ先生のイラストがあります。

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