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嫌われ者始めました〜転生リーマンの領地運営物語〜  作者: くま太郎


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81/199

真相は

短いですが、ようやく書籍化の正式発表が出来るので

 ミューエさんの協力もあって、今回の事件の裏付けが取れた。

 事の発端は、ファルコ伯爵がイリスさんの婚約を独断で決めた事に始まる。貴族の婚約は親や一族の長が決める事が多いから珍しい話ではない。


「イリス嬢の婚約者は、コエルシオン公爵の次男ベガル殿だ。身分的に申し分ないし、ベガル殿は人としても軍人としても優れている。イリス嬢の婚約者としては申し分ない人物だ」

 年はイリスさんの十歳年上、武に優れ誰にでも優しい人らしい。そうなると、ある疑問が発生する。何故そんな好条件な人物が今まで独身だったのか。


「少年時代に婚約を破棄され、その鬱屈を晴らすように武に打ち込んだんですね」

 ちなみに婚約破棄の理由は、ベガルの容姿が関係しているそうだ。さっきベガルさんの絵姿を見せてもらった。岩のようにごつい体型に弁当箱みたいな四角い顔、下顎が出ており、日本だとフランケンってあだ名が付いていてだろう。


「しかし、容姿だけで婚約破棄が出来るんですか?」

 もし、出来るのなら是非と参考にさせてもらいたい。


「ベガル殿は生真面目な性格が多いフェルゼン人の中でも、群を抜いて真面目で、その上極度の恥ずかしがり屋なんだよ。何しろ同い年の女性の前に立つと、耳まで赤く染めてまともに会話が出来ないんだ」

 その上、会話自体が苦手で男相手でも単語で返すのが常らしい。婚約者の女性の家族は、まともに会話すらしないなんて馬鹿にしていると理由を付けて婚約を破棄したそうだ。でも、娘がベガルの容姿を嫌がったのが実情らしい。


「会話が苦手で婚約者に嫌われるか。そういや、喋りは達者でも婚約者に嫌われている奴がいたな……探りを入れたら庭師の小僧は実家で軟禁されていたぜ」

 ボルフ先生、それは誰の事でしょうか?そして、さすがスモークアサシンと言うべきか。ボルフ先生は、単身ファルコ伯爵領に忍び込み、色々と探ってきてくれた……闇夜に紛れてフライングシップで送り迎えはしたけど。


「そりゃ、婚約者のいる領主の孫娘と恋仲になっていたら、家族は軟禁するでしょ。下手したら、一族全員処刑されますし」

 そう、お約束のようだがイリスさんには恋人がいた。屋敷で庭師として働いているネルケと言う少年だそうだ……物語でたまに聞くパターンだけど、貴族社会に身を置いてみると、これはとんでもない話なのだ。もし結婚したら、庭師の一族はファルコ伯爵の縁戚になる。そして少年は貴族の一員となり、場合によっては軍を率いなくてはいけない。平時でも貴族らしい立ち振る舞いが求められる。そして少年の失態はファルコ家の恥になるのだ。


「それでイリス様はシャルル様に相談をしたと。お前がカリナの嬢ちゃんから聞いた話と矛盾しないな」


「ジョージ殿、良かったら話の内容を教えてもらえるか?……サンダ先輩、あのお二人の関係は、とても主従とは思えないですが。問題はないのでしょうか?」


「ボルフさんも、公的な場所では言葉遣いを変えていますよ。でも、この部屋にいるのは私達主従とミューエだけですから。私がミューエを信頼しているから、二人もミューエを信頼して何時の口調で話しているんですよ。ジョージ様、お願いします」

 ちなみにミューエさんは、今日もサンダ先生の隣をキープ。自らサンダ先生のお茶を淹れる等、何とも甲斐甲斐しい。


「相談を受けたシャルル様は、イリス様の身柄を自分の屋敷に保護したそうです。イリス様は伯爵にかわいがられていたので、婚約を嫌がって家出したと言えば伯爵が折れると思ったんでしょうね」

 事実、ベガルは一度婚約を破棄されている。しかし、前の婚約者は王族の娘で、向こうの方の家格が上だったらしい。


「その婚約の仲介を裏で取り持ったのが、ロカ・ペタロらしいぜ。最初から、イリス様が難色を示すのを分かっていて、婚約の話を勧めたんだろうな」

 正確に言うとブリスコラがロカに指示したんだろう。ブリスコラは話が上手いだけでなく、不思議なカリスマがある。


「ファルコ伯爵の怒りを恐れたシャルル様は、ロカに相談したんだと思います。そしてロカに代わってブリスコラが答えたんでしょう。“まずイリス様を一度奴隷にしてオリゾンの奴隷商に売ります。心配しないで下さい。ネルケ君以外に売らないように、手筈を整えていますので。そして、お二人をランドルに逃がして、誰にも邪魔されない生活を送ってもらうのです”とか答えたんでしょうね」

 隷属の首輪を付けたイリスさんに何があっても動くなと命じれば、馬車の床下にも隠しておける。事実、イリスさんは暗く狭い場所に閉じ込められたと言っていたそうだ。そしてシャルルさんからは、必ずネルケ君が助けに行くから待ってなさいと言われたらしい……しかし、待てど暮らせどネルケ君は来ない。


「皇帝に国境の警備を厳重にするよう進言したのはロカだ。でも、なんでシャルル嬢は黙っていたんだ?」


「ボルフ先生がシャルル様の屋敷に潜入したら、面白い物を見つけたそうですよ。これが、その写しです」

 一枚の紙をミューエさんに手渡す。ちなみに印刷に失敗してメモ用紙にしている紙だと言うのは内緒にしておこう。


「親愛なるお姉様へ、お姉様のお陰で私はネルケと幸せな生活を送っています。でも、この事はお父様にもお爺様にも言わないで下さい。言えば私達は連れ戻されますし、お姉様もロカ様と離れ離れになってしまいます。確かにイリス嬢の筆跡だ……隷属の首輪を付けた後に、命じて書かせたのか……この状況ではネルケが真っ先に疑われる。家族は、絶対に軟禁を解かなくなるな」

 下手したら殺されてもおかしくない。

 

「ベガル様って女性に人気はないですけど、男には好かれているそうですね。兵士養成所の所長をしていたから、兵士には絶大な人気がある。そんなベガル様の婚約者がオリゾンに奴隷として売られたとなれば、戦意はおおいに上がるでしょうね」

 愛しのベガル様助けて下さいって書かれた手紙を渡せば、ベガルは発奮するだろう……実際、書かされていたみたいだし。


「こちらの手筈は整っています。ミューエ、後は頼みましたよ。私は貴女の国と戦をしたくありません」

 後はミューエさんがファルコ伯爵に説明をすれば、ミッションコンプリートだ。細かい話はホートーに丸投げしよう。俺に他国の王様と会う資格はないんだし。


「はい、サンダ先輩お任せ下さい。これから皆様が皇帝と面会出来るようにしてあります……ジョージ殿、頼んだぞ」

 あれ?そう来る……ミューエは、中学生にそんな無茶振りするキャラじゃないんだけど……。


「サンダ先生ー、俺の事を話しましたねー」

 こんな事でもなければ、俺とミューエが絡む事はなかったし、ミューエがジョージ・アコーギは前世の知識を持っていると言っても白い目で見られるだけだ。それにミューエがサンダ先生の不利になるような事はしないだろう。


「ボーブルの話をしたら、ミューエが喜んだので……ミューエは口の堅い女性ですから大丈夫ですよ」

 多分、俺の話が多くなったから、ミューエが変な妄想をしたんだと思う。


「ジョージ殿がどんな知識を持っていようが関係ない。貴殿がサンダ先輩の教え子だから信用するのだ」

 もう、ごちそう様しか言えないっす。



ファミ通文庫様より出版となります。詳しい話は活動報告に書きました

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― 新着の感想 ―
ベガルをふった最初の婚約者の、その後を知りたい気がします。 容姿に優れた男性と結婚して、円満にやっているのか。ベガルが多くの名誉や地位を手にするにつれ、「逃がした魚は大きかった」と後悔したのか。
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