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嫌われ者始めました〜転生リーマンの領地運営物語〜  作者: くま太郎


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ぼっちドライブ?

 胃が痛い……そのうち、俺は胃潰瘍になってしまうかも知れない。

 なんで王族ってやつは、どいつもこいつも高貴なオーラを放っているんだろう。今は貴族をしているけど、俺は庶民生まれ庶民育ちの一般人。どうしても、ホートーとラフィンヌさんの王族カップルに気後れしてしまう。ラフィンヌさんもフェルゼン行きを承諾してくれた。何でもイリスさんやシャルルさんとは顔見知りだそうだ。


「ホートー様凄いですよ。(わたくし)、こんなに速く走れる馬車に初めて乗りましたわ」

 俺の胃痛を知ってか知らずか、ラフィンヌさんはゴーレム車の窓から顔を出して無邪気にはしゃいでいる。


「ラフィンヌ殿、窓から顔を出していたら危ないですよ……ところでジョージ殿、今回の旅には誰を連れて行くんだ?」


「まずはフェルゼンに友人がいるサンダ・チューロー、護衛としてボルフ・ルードウ。そしてギリアム商会のヴェルデ・ギリアムを考えています」

 問題は身の回りの世話をしてくれる人だ。ホートーの身の周りの世話なら俺と先生達でも可能だ。さすがにイリスさんやラフィンヌの見回りの世話を、野郎がするのはまずいと思う。


「おいおい、男ばっかりじゃねえか。今回は女性を連れて行かないとまずいぞ」

 ホートーの言いたい事は分かる。しかし、適任者が思い付かないのだ。秘密を守れてなおかつフェルゼンに同行してくれる女性。一瞬カリナの顔が浮かんだが、彼奴をこれ以上巻き込む訳にはいかない……本人(カリナ)に聞かれたら十分過ぎる程巻き込んでいるだろって、突っ込まれそうだけど。


(わたくし)ぴったりの方を知っていますわよ。カトリーヌ様はフェルゼンの社交界にお知り合いが多いと聞いてますわ」

 ……この、小娘は何を言ってやがる。母親同伴で、旅をしろって言うのか。さすがに恥ずかし過ぎるぞ。第一、表向きの理由はホートーとラフィンヌさんの婚前旅行なのだ。赤の他人の母さんが一緒に行く筋合いはない。


「カトリーヌさんか。確かに、コーカツ領はフェルゼンと隣り合っているな。報告書にもイリス嬢はカトリーヌさんに懐いていると書いていた……ジョージ、カトリーヌさんと報告書に書いてあった獅子人の娘を連れて行くぞ」

 勘弁してくれ。この年で母親同伴はきつ過ぎるぞ。しかも同級生の(カリナ)も一緒なんてリアルの中学生だったらばっくれてるぞ。


「しかし、今回はホートー様とラフィンヌ様の婚前旅行を名目にしていますので、母を連れて行くのは不自然ですよ。残念ですが、他の女性を探しませんか?」


「あら?(わたくし)達の婚前旅行はあくまでフェルゼンの目を誤魔化す為の方便ですのよ。正確には貴方は副代表。未成年の貴族が外国に特使として赴く場合は、その親が同伴するのが当たり前ですわ」

 意外な切れ者が潜んでいた。ただのお嬢様と侮っていたら、とんでもない目に遭うかもしれない。


「男の随伴員はジョージが決めて、女性の随伴員はカトリーヌさんに任せた方が良いな。ジョージ、これは命令だ‼カトリーヌ・アコーギも同道させるぞ……仕事も大事だけど、たまには親孝行もしろよ」

 危険な旅に同行させるのは、親孝行とは言えないと思うんだけど……でも、王族に命令されたら逆らいようがない。まあ、母さんが付いて来てくれたら、チートメイドのオデットさんも一緒に来てくれると思う。オデットさんがいたらリアルに百人力だ。

 ◇

 俺のフライングシップはある意味、高性能なのかも知れない……ただし高性能なのは快適さだけ。

「ここは食糧庫ですね。水の魔石を入れると部屋の温度が下がるみたいですよ。照明やライトには光の魔石、調理室には火の魔石と水の魔石を使うみたいですね」

 ただ今、フライングシップの点検中です。ステイタスで言うと快適さに極振りしたんじゃないかってくらいに設備が充実している。攻撃力ゼロ・速さ一・防御力二・快適さ五って感じだ。

「これが噂のフライングシップですか……こいつは凄い‼古い書物にしか載っていない道具が現役で動いている。リリル、そっちはどうだ?」

 ハンマーさん、テンションが上がって興奮気味です。カーテンの備え付けとフライングシップのメンテナンスの為、工業ギルドの人達に来てもらったのだ。


「大体の所はオッケーなんだけども、煙突に付いているフィルターだけが何で作られているか分かんないねー」

 さすがはドワーフと言うか、ハンマー親娘は軽く見ただけでフライングシップの構造を理解したらしい。ただし、エンジンや可変機能に関してはお手上げらしく、現状維持が精一杯との事。


「それじゃ、荷物と食糧を積み込んでくれ。工業ギルドは内装とカーテンの備え付けを頼む。旅は準備が肝心だ‼しっかり頼むぞ」

 王族が来ているので、ここぞとばかりにリーダーシップをアピールする。出来る俺を見たホートーが、王様に爵位を授けるように進言してくれる事に期待しているのだ。


「ジョージ‼何しているの⁉早く着替えてらっしゃい。部下(ひと)に指示しておいて、自分が何も準備をしていないなんて恥ずかしいって思わないの?」

 そこにいたのは旅支度を終えた母さん。母さんは、あっさり同行を了承してくれた。俺が未成年というのもあるが、イリスさんの事が心配で放っておけないとの事。でも、部下の前で叱責するのは止めて欲しい。


「ジョージ様、よろしかったら私がお着替えを手伝いましょうか?……あんたもカトリーヌ様には頭が上がんないだね」

 見るとメイド服に着替えたカリナが、こっちを見てニヤニヤしていた。母さんが随伴員に選んだのはオデットさんとカリナの二人だった。オデットさんは護衛兼メイド、カリナは調理員兼イリスさんの話し相手だそうだ。カリナはラフィンヌさんの侍女って設定にするらしい。そうすれば、何かあってもフェルゼンはカリナに手を出さなくなる。


「カリナ、丁度良かった。調理室を見てもらえるか?」

 調理室の設備も整っていたけど、使う本人に見てもらえれば足りない物が見つかるかもしれない。


「こりゃ凄いね。下手な店より充実してるね。何個か使い方が分からない物もあるけど、これなら何とかなるよ」

 まあ、ミキサーとかはレコルトにないから、使い方が分からなくても仕方がない。スチームオーブンなんて俺も使った事がないし。


「それなら大丈夫だな。結構な人数だけど大丈夫か?」

 今回フェルゼンに行くのは、ボーブルから俺、母さん、オデットさん、サンダ先生、ボルフ先生の五人。王都からホートーとヴェルデ、カリナの三人。それにイリスさんとラフィンヌさんを加えた合計十人である。


「十人だろ?それくらいなら余裕だよ。腕によりをかけて料理するから、楽しみにしてな……これ、あたいから聞いたって言わないでもらえるか?」

 イリスさんと親しくなったカリナは色々と打ち明けられたそうだ。お陰で事件の概要が掴めた。

 これが主人公なら、イリスさんを励ます言葉を思い付くんだろうけども、俺は腫れ物として接するのが精一杯だ。年を取ると、無責任な慰めの言葉が言えなくなるらしい。どんな言葉も綺麗事に思えてしまい、お前に何が出来るんだって自分で自分に突っ込んでしまう……いや、きっと俺は責任を取りたくないだけなんだろう。

 ◇

 フライングシップの簡易改修も終わり、後はヴェルデが到着次第フェルゼンに向けて出発となる。


「ジョージ、空を飛んでる時って下から見たら結構目立つのか?」

 ボルフ先生は元がアサシンだからか、無駄に目立つ行動を嫌う。

「微妙ですね。人間って視界に入っていても気に留めない物は無意識でスルーしますから……でも、頭上に影が出来たら絶対に気になりますし」


「町にいる時は、雨でも降らない限り空を見上げる事なんて滅多にないからな。でも、街道を歩いている奴らは山や木を目印にしているぞ」

 山を見ようとしたら、船が空を飛んでいたら確実に大騒ぎになってしまう。海まで出てしまえば、誤魔化しがきくんだけども……待てよ、海か。


「シャイニングボディ。対象はフライングシップ、選択色はスカイブルー」

 フライングシップの船体が爽やかな空色に変わった。今日は雲一つない晴天、空色なら保護色になって目立たない筈。操船中にジワジワ魔力が減っていくが、背に腹は代えられない。


「ジョージ様、お待たせしました。積荷の選別に時間が掛かってしまいまして」

 ヴェルデが乗ってきた馬車には様々な商品が積まれていた。商売より協力しているって名目が大事だと力説していた癖に、ちゃっかりと売れ筋の商品を選んでいやがる。


「うっし、商品を積み込んでくれ……ってラパンさん?」

 なぜかコニー・ラパンがヴェルデの乗って来た馬車から降りて来たのだ。


「最近、僕の商売に協力してもらっているので、今回だけ連れて行かないのも不自然かなって思いまして……」

 このエロ狸、雇用者の権力を私的に使いやがったな。話を聞いてみると、ラパンさんは文学少女なだけあり、様々な分野の事を知っていてヴェルデの商売に役立っているそうだ。


「おっ、コニーじゃないか?あんたってエディ・コナリーって作家知ってるかい?」

 性格は真逆だけど、カリナはラパンさんと仲が良い。ラパンさんが俺達のグループに入るようになってから、話す機会も増えたそうだ。


「はい、エルフの歴史作家ですよね。ウィル・ロッシュの悲劇が代表作ですよ」

 エルフの歴史作家って反則じゃないか。資料が頭の中に入っているようなもんだぞ。ラパンさんの話によると、エディは知名度こそ高いが、その顔を知っている人はごく僅からしい。エルフの隠れ里に住んでいるって都市伝説もあるそうだ。


「ジョージ、コニーを一緒に連れて行けないか?イリス様は本の話を良くするんだけども、あたいにはチンプンカンプンでさ」

 確かにカリナ一人でイリスさんの話し相手をするのはきつい。ギリアム商会の所属にすれば危険は回避出来るだろう。

 でも、人数が増えれば秘密が漏れる確率も高くなる。メリットはヴェルデの恋をアシスト出来る事だろうか。

(ヴェルデの恋は叶えてやりたいけど、コニー・ラパンがヴェルデの恋人に相応しいか見極めてからだよな)

 ただの中学生の恋なら手放しで応援出来るけど、ヴェルデはその商才を活かしてかなりの金額を稼ぐようになっている。人は贅沢に弱い。今は真面目な文学少女でも、一度豪奢な生活を覚えてしまえば性格が変わる可能性が十分にある。危険を冒しても、ヴェルデに付いて来る根性があれば安心なんだけど。


「強制は出来ないぞ。色々と面倒な旅だからな……小遣い稼ぎとは訳が違うんだぜ」

 取り敢えずオデットさんにラパンさんがヴェルデの相手に相応しいか見極めてもらおう。

(でも、こういうのって相手が断って取り越し苦労に終わるんだよな)

 そうしたら、ヴェルデにも『お前を凄い奴にしてやる』と元気付けるのも俺の役目である。これが大人の渋さってやつだ。


「それは心配いらないよ。コニーの奴がギリアム商会でバイトしているのは、小遣い稼ぎだけが目的じゃないんだぜ」


「ジョージ様、私も旅に連れて行って下さい。ヴェルデ君と一緒に働いて分かったんです。本から知識を得るより、実際に見て聞いて触れた方が何倍も自分が成長出来るって」

 ラパンさんの目は真剣その物だ……どうやら、渋い大人の出番はなかったらしい。こうなると問題はボッチになる熊坊主(ドンガ)のフォローだな。

 ◇

 航路は、一端沖まで出てフェルゼンを目指す事になった。なんでも沖合まで出る舟はあまり多くないらしく、その分発見される可能性も低いそうだ。


「ジョージ様、イリス様が奥の部屋に入られました」

 簡易的ではあるが、カーテンを使って船室を三つに分けた。奥は男性陣立ち入り禁止の女性専用の部屋。真ん中はホートーに過ごしてもらう為の部屋で、俺以外の男は主にここで過ごす事になっている。そして俺が多くの時間を過ごす操船席(コクピット)の三つだ。ちなみにコックピットが一番狭く、俺の直ぐ後ろがカーテンだったりする。


「オデットさん、ありがとうございます。全員が乗り込んだのを確認したら離陸します」

 爵位で言えば俺はホートーやラフィンヌさんより低いが、船で一番偉いのは艦長(キャプテン)だ。そしてこのフライングシップの艦長は発見者であり、唯一操縦を出来る俺こそが相応しいと思う。

 窓に肘を突き、ぼんやりと乗り込み終了の合図を待つ。大空の支配者、キャプテン・ジョージの船出が、刻一刻と迫っていた。


「ジョージ‼窓に肘を突くんじゃありません。もう、寝癖が取れてないわよ」

 俺が大空を旅する妄想に浸っていたら、母さんの叱責が飛んできた。母親に手櫛で寝癖を直される艦長って、しまらなすぎだろ。


「母さん、寝癖は自分で直すって。どうせ、誰とも顔を合わせないんだし」


「身嗜みを整えておかないとカリナちゃんに嫌われるわよ……はい、終わり。ボーッと空を見て何を考えていたの?」

 言えない、母親に向かって大空の支配者キャプテン・ジョージとして、大活躍する厨二病過ぎる妄想をしていたなんて。


「無事にフェルゼンに着けても、イリス様の心の傷は癒えないんだよなって思ってさ」

 イリスさんを傷付けたのは異母姉のシャルルさんだけじゃなかった。傷の深さで言えば、もっと深く傷付けた奴がいたのだ。しかし、そいつを責めるのは酷だ。早く黒幕の正体を突き止めて、責任を全部押し付けないと休みが台無しになってしまう。

 空を飛ぶ乗り物はゲームにも数多く登場する。子供の頃、あんな風に空を自由に飛べたら楽しいだろなって、妄想していた。

 そして実際に自分が飛んでみた感想は……

「ね、眠い……暇だしこれは辛いな」

 モニターに映るのも、ガラス越しに映るは真っ青な空だけ。眼下に広がるのも真っ青な海。モニターも青一色、ナビはひたすら直進をしめしている。そして道路と違って空にはカーブがないから、ひたすら直進するだけなのだ。

 暇つぶしに面舵いっぱいとかネタに走りたい所なんだけど、ただ今女性陣はお茶会の最中。紙コップに入った水を溢さずにドリフトを決める腕なんてないから、ひんしゅくを買うのは確実だ。

 ちなみに先生達とヴェルデは、ホートーの話し相手をしているから、俺は一人ぼっちで運転している。俺の相手は素焼きの壺に入った蜂蜜水だけだ。

(ドライバーは二時間毎に休ませて、誰かが話し相手になるってのがマナーなんだぞ)

 そうは言ってもレコルトにドライブマナーって概念そのものが存在しないし、下手に騒いで母さんが助手席に座ったら、それはそれで地獄になる。きっとここぞとばかりに俺の世話をしまくると思う。


「ジョージ様、疲れていませんか?」

 どうやらサンダ先生は、俺の体調を心配して様子を見に来てくれたらしい……ぶっちゃければ、疲れより眠気の方が深刻です。


「まだ何とか……そう言えば協力してくれるお友達って、レオさんって言うんですか?」


「聞こえていたんですか、お恥ずかしい。ミューエ・レオパルド、レオパルド伯爵の次女ですよ」

 ……サンダ先生の友人って、ミューエだったの⁉驚きの余り、一気に目が覚めた。


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