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嫌われ者始めました〜転生リーマンの領地運営物語〜  作者: くま太郎


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ジョージとウィンターギフトデイ(中1)

 夜中から降り続いた雪は王都を一面の銀世界へと変えた。新雪を踏みしめる度にキュッキュッと鳴いて、なんとも懐かしい気持ちにさせられる。


「寒いだよー。ジョージ様は、そんな薄着で平気なんだか?」

 モコモコに着ぶくれしたドンガが、信じられない様な目で俺を見てきた。


「お前こそ毛皮の上に、そんなに厚着をして暑くないのか?」

 前世が雪国生まれの雪国育ちだから、寒さには慣れている。それに熟練度を上げる為に、普段からシャイニング・ボディを使用しているから薄着でも平気なのだ。


「そんなの熊人差別だー。毛皮があっても寒いものは寒いだよー」

 ドンガはそう言うと、腕を組んでブルブルと震えだした。同時に先輩女子から湧き上がる“ドンガ君可愛い”の声…この年上キラーグマめ、お前にはシャイニング・ボディは使ってやらん。


「ったく、子供は風の子だろ?放課後に外で遊べば寒さに慣れるんじゃないか」

 俺は大人だからヌクヌクした部屋で執務をしてるが。

 

「そんな事して風邪をひいたら困るだよー…そう言えばもう直ぐウィンターギフトデイが来ますだよ。ジョージ様は誰からか貰えそうだか?」

 ウィンターギフトデイは、日本で言うバレンタインみたいな行事。その昔、勇者ブレイブ・アイデックに幼馴染みの少女が冬の冒険で風邪をひかない様にと、手編みのマフラーを贈ったのが始まりだと言う。余計な事をしやがって。


「母さんとアミかな。お前はどうなんだ?」

 毎年、俺にくれるのは、身内のみだ。ウィンターギフトデイには、心の篭った手造りの物を贈るのが慣例である。つまり、かなり親しい仲にしかもらえないのだ。


「うー、ジョージ様どうすればウインターギフトデイに、女の子からプレゼントを貰えるだか?」

 この年上キラーグマ、非モテの俺にそれを聞くか?


「勉強をしなきゃ、テストで良い点を取れないだろ?それと一緒で、今から慌てふためいても遅いよ。普段から女子と仲良くしていれば貰える可能性も高くなるさ…義理はな」

 あくまでポイントを稼いでおけば義理は貰える可能性があるって話だ。まあ、イケメンはそんな事を、しなくても貰えるらしいけど。ゲームでもジョージはマリーナから貰えていなかった…俺も一度も貰ってないし。


「義理でも良いから、ウォールナットさんから貰えないべかー」

 そう言えば、俺もドンガ位の年の時は好きな子から貰えたらって妄想したもんだ。


「期待しないで待ってろ。見ててくれる人は、見てるよ…多分」

 ちなみに俺はウィンターギフトデイ当日はギリギリに登校して、速攻帰る予定だ。でも、あくまで仕事が詰まっているからだ。貴族の奥様から頼まれた女性が楽しめる施設。突貫工事に次ぐ突貫工事で、今年の夏には完成予定である。そこで働いてもらう従業員の募集をしなきゃいけないし、何より独立にむけて時間に余裕がないのだ。言い訳って便利。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 放課後、俺はボルフ先生と合流して冒険者ギルドに向かっていた。

 冒険者ギルドはゲームにも出てくる。主人公は冒険者ギルドで依頼を受け、お金を稼いだり経験を積んでいく。依頼を多くこなすと、名声値が高まる。そうすると、高ランクの依頼を受ける事が出来たり、強力な仲間をパーティーに加えれる様になるのだ。

 でも、俺が冒険者ギルドに来たのは依頼を受ける為ではなく、依頼を出す為だ。ちなみにボルフ先生に付いて来て貰ったのは、冒険者が貴族を嫌うからである。

 ボルフ先生はアサシン時代、怪しまれずに目的地へ侵入する為に冒険者をやっていたそうでギルド慣れしているとの事。


「まさか、またここに来るとはね」


「ボルフ先生の冒険者ランクは何だったんですか?」

 冒険者ランクの最高位はレジェンド。そこからS・A・B・C・Dとなっている。ゲームでレジェンドクラスになれるのは、クリア後。そうすると隠しダンジョンに挑める様になる。ちなみに隠しダンジョンに出てくるボス“記憶を無くした冒険者”は鬼畜仕様。直接攻撃をすると“カウンター・絶”が発動する。本当は何ターンかに一度“ドミネート”と言うスキルを使い、仲間を操るって設定だったが、余りにも反則過ぎて中止となった。


「俺のランクはCだよ。依頼を受けるのは、目的地に行く為の方便だったからな」


「そうですか。ギルド長に会う事は出来ますかね?」

 ここでCランクを弄ったりしたら、地獄の特訓が待っている。華麗にスルーした方が安全だと思う。


「良い加減自分の立場って、やつを自覚しろ。自分で依頼に来る貴族なんていねえぞ」

 普通は執事や騎士が依頼に来るそうだ。でも、今回は交渉をしなければいけない…何より異世界転生では、お約束の冒険者ギルドを見てみたかったのだ。


「立場って言われても爵位すらない、なんちゃって貴族なんですけど」

 良く考えたら、こんなに立場の逆転した主従もいないと思う。

 

「さて、着いたぜ。ここが冒険者ギルドの総本部だ」

 それは要塞にも見える堅牢な建物。入り口付近には、チンピラみたいな人達がたむろしている…あれは営業妨害にならないんだろうか。

 …おかしい、ゲームではビキニアーマーのお姉さんや元気な獣耳少女が沢山いたのに、ギルドの中は閑散としていた。


「随分、人が少ないですね」


「新しい依頼が貼られるのは、午前中だからな。今いるのは依頼を達成した奴か、入り口にいた連中みたいにたかり目的の奴だけさ」

 ああ、依頼を達成した人に飯や酒を奢ってもらうのが目的なのね。


「おや?犬っころじゃないか、珍しいな…おっと犬臭くなるから話し掛けるなよ。俺と話したきゃAランクになりな。…隣にいる生意気そうな餓鬼は護衛対象者か?」

 話し掛けてきたのは猿人の男性。冒険者ギルドの受け付けは、ランクによって違うそうだ。高ランクを担当する職員は、変なプライドがあり下位の冒険者を見下す。ゲームでも上位の担当者に話し掛けると“お前はあっちだ”と追い払わられる。その代わり自分の受け持ちには親身になって接するらしい。


「初めましてボーブル領領主ジョージ・アコーギです。それとボルフはうちの騎士なので、立場を弁えた言葉を使って下さいね」

 なんだかんだでボルフ先生には世話になりっ放しである。これ位のDQN返しはしておきたい。


「ジ、ジョージ・アコーギ…ローレン公爵のお孫様がなんで」

 …アラン・アコーギの息子じゃなくローレン公爵の孫か。


「ギルド長はいますか?依頼に来ました」

 俺が出したのは護衛依頼。但し女性冒険者限定である。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 ウィンターギフトデイ当日、教室ではみんなソワソワと落ち着きがなかった。男子は女子の動きに一喜一憂しているし、女子もプレゼントを渡すタイミングを今か今かと見計らっている。


(やっぱり中学生になると、急に色気づくな…うん、青春、青春)

 しかし俺は青春とは縁がないらしく、何もないまま放課後を迎えてしまった。


(だ、大丈夫俺にはアミがいる)

 きっと城にはアミからのプレゼントが届いている筈。仕事も詰まってるから、直ぐ様玄関に直行。ドンガ達はもう少し残っていくそうだ。


「ちょっと、待ちなよ…はい、プレゼント。か、勘違いするなよ。義理だぞ、義理。いつも世話になってるから、親父達がもっていけってうるさく言うからさ…」

 顔を真っ赤にしたカリナが差し出してきたのは、不恰好な手袋。俺は格安で食材を渡してるし、食堂の常連だ。親父さんが気を利かせたんだろう。


「あ、ありがと。嬉しいよ」

 やばい、義理と分かっていても勘違いしそうだ。

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