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嫌われ者始めました〜転生リーマンの領地運営物語〜  作者: くま太郎


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ジョージの夏休み2。寂しい夏祭り?

 夏祭りの開催を間近に控えたボーブルは、いつも以上の活気に包まれていた。街道脇では出店の準備が着々と進んでいるし、招待席や迷子センターは既に出来上がっている。

 きっと騎士や領民が入り混じり、皆一丸となって準備に勤しんでいるだろう。昨日まで、一緒に作業をしていた俺が言うんだから間違いない。だけど今は執務室に軟禁状態である。なぜなら昨日よりボーブルの法の番人の異名を持つサンダ先生が、業務に復活したのだ。アンヌさんなら、領主(おれ)への遠慮があるから、業務中に抜け出すのも容易だったが、サンダ先生が見逃してくれる訳もなく朝から書類と格闘していた。


「ジョージ様、広場で行うイベントのタイムスケジュールが出来上がりました」

 サンダ先生はそう言うと、一枚の紙を差し出してきた。今回は人集めの為、吟遊詩人や大道芸を呼ぶ事にしたのだ。オリゾンの祭は飲み食いが中心らしく、エンターテイメント性はあまり高くないそうだ。お陰でボーブルの夏祭りは、他領からも注目されている。


「ありがとうございます。ボルフ先生、宿の予約状況はどうですか?」


「全部の宿が予約で埋まってる。それと言われた通り、コーカツ領とウィートからシャトルゴーレムバスが出る様に手配しといたぞ」

 折角来てもらって宿がなく祭をちゃんと楽しめなかったなんて言われたら、来年からの祭の人手に悪い影響を与えかねない。それにボーブルが一人勝ちしてしまうより、周りに経済効果を波及させた方が最終的にはプラスに繋がるだろう。

 城に人を泊める事も考えたが、警備の問題とある企画を思い付いたので中止にした。


「分かりました。それとこれから、マナプラント植林場に行くんで一緒に来て下さい。新しい防衛システムが完成しましたんで」

 マナプラント植林場は今やボーブルの重要拠点だ。屑魔石の処理量は右肩あがりで伸びており、ボーブル城の経済を潤してくれている。それにドラゴンと契約を結べたお陰で、他領や王侯貴族からの干渉が激減した。ゴブリンの侵入なんて些細な問題である…サンダ先生にはめっちゃ怒られたけど。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 

 マナプラント植林場は、タスク山の麓にある森の中にある。所謂、木を隠すなら森の中ってやつだ。屑魔石を運ぶ都合上、太めの道を何本か作ってある。

 その内の一本を進んでいくと、灰色の塀が目に飛び込んできた。高さ約5m厚さ約3m、鉄筋コンクリート製の巨大な塀だ。


「またでかい塀を作ったな。でもこれよりもでかい塀はいくらでもあるぞ…サンダ、どうした?」

 悪態をつくボルフ先生と違い、サンダ先生は口をあんぐりと開いて驚いている。


「流石はサンダ先生、気付きましたか」


「この魔力波動はゴーレムの物…この塀自体が巨大なゴーレムなんですね」

 流石はオリゾン有数の頭脳を持つオーク、パッと見ただけで分かってくれた。


「ええ、防衛能力を持たせたゴーレム塀です。入り口は魔力認証をパスしなきゃ開きませんし、よじ登ろうとすれば各所に仕込んだ防衛機能が働きます」

 塀の一部が突き出て侵入者を吹き飛ばしたり、上から石が落下したりする。

 ぶっちゃけ工場にある産業用ロボットの発想を、まんまパクりました。産業用ロボットが二足歩行をしない様に、ゴーレムも機能を限定する事で実用的に使える様にしたのだ。  


「魔力はどうしてんだ?こんだけ、でかいと使う魔力も凄いんじゃねえのか」


「マナプラントって屑魔石を取り込む時に微量ですけど魔力を放出してるんですよ。塀の内側にマジックドレインの術式を刻み込んで、それを吸収出来る様にしました。お二方の魔力も登録したいんで中に入りますよ」

 塀に埋め込んでいる魔石に、俺の魔力を流す。一拍置いて低く重い音が周囲に響いた。


「魔力に反応して扉が開くんですね」


「これだけでかい扉だと、魔物でも開けれませんから安心でしょ?ちなみに上空はドラゴンの皆様が定期巡回してくれています」

 ちなみに巡回してくれたドラゴンには、別途で魔石を渡している。面白い事にドラゴンにより好みの魔石が違っていた。


「…もしかして、これを砦や門にも使うんですか?」


「ええ、普段は普通の砦や門として運用して、敵が攻め込んできたら備えつけの手で攻撃させようかと」

 もしも、乗っ取られた時には崩壊して、中の敵を巻き添えにするシステムも考えている。合体ゴーレムや変形ゴーレムも作ってみたい…六身合体G(ゴーレム)マーズとかアウトだろうか。


「久し振りに来たけど、随分とマナプラントが増えたな。こんなに増やして大丈夫なのか?」


「マナプラントって与えた魔石で属性が変わるんですよ。水属性のマナプラントは難燃性になるから建材向きですし、闇属性のマナプラントは魔力抵抗が強いから盾や鎧に加工しようかと」

 木製のバックラーなら魔法使いでも持てるから、需要はあると思う。


「こうして見ると小さい実もなってますね。あれは破棄するんですか?」

 確かに作物なら実選(みすぐ)りした物は破棄してしまう。


「とんでもない。小さくても魔石が入ってるんですよ」

  

「屑魔石が売れないのと一緒で、小さい魔石なんて売れないんじゃねえのか?」

 確かに屑魔石には値段が付き難いし、ドラゴンにも見向きもされない。しかし、マナプラントから取れる魔石にはある特徴があるのだ。


「マナプラントから取れる魔石は色が澄んでるから、宝飾品に使おうと思ってます。それと実は蜂蜜に浸けてマジックポーションの代用品にしようかと」

 糖分は脳の疲れを癒すしマナプラントの実にも魔力があるから商品化は可能だと思う。生産量が増えなければ兵糧に使おうと思う。


「しっかりしてると言うべきかせこいと言うべきか…そういや、あのでかい実はいつまで成らしておくんだ?」

 ボルフ先生の指差す先には、一際大きなマナプラントがある。マザーツリーとも呼ばれる巨大なマナプラントには、これまた大きな実が実っていた。


「あれはどこまで大きくなるか実験してるんですよ。大きな魔石は好事家に高値で売れますし」

 …嘘だ、あれはいつの日か日本に帰る為の触媒である。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 日が落ちボーブルにも夜の(とばり)が降りた。何時もなら、夜の街を賑わすのは酔っぱらいの大声位である。しかし、今日は違う。街道は家族連れや恋人で、ごった返していた。


「お兄様、凄い人ですね…それにみんな楽しそう。私のお友達も楽しみにしてるって言ってましたよ」

 アミは盛り上がっている祭を見て若干興奮気味らしく、ギュッと握られた拳を勢い良く動かしている。


「それは有難いな。今度、お礼を言っておいてくれ」

 平静を装いながら応えてみせるが、正直に言うと人が来てくれてホッとしている。あれだけ準備して閑古鳥が鳴く状態だと大赤字になるし。


「分かりました。お兄様、早くお祭に行きましょう。私が行く前に終わったら嫌です」

 そこは開催者の権限で時間を延長してやる。


「大丈夫だよ。まだ祭は始まったばかりだし」


「でもお兄様はお客様をお持て成ししなくてはいけないんですよね」

 アミがジト目で俺を見てくる…領主と言う立場上、招待客を持て成すのは最低限の礼儀。アミとのデート?も見回りと言う名目があってこそ捩じ込めたのだ。


「分かったよ。さあ、行くぞ」

 アミの様な立場になると自由に買い物する機会が少ない。ましてや庶民の屋台なんて初体験なんだろう。


「お兄様、お兄様‼この揚げたジャガイモさん凄くおいひいです」

 その為か、口に物が入ってるのを忘れて喋っていた。そして空いた手には、焼き鳥の串をしっかりと握っている。


「このかき氷もうまいぞ。これは、アミの為に準備したんだぞ。でも、急いで食べると頭が痛くなるから気を付けろよ」


「うっわっ‼お兄様、甘くて冷たくて美味しいです」

 マナーも忘れてはしゃぐ(アミ)を見てると、夏祭りを開催して本当に良かったと思う。

 アミを見て癒やされてると小さな熊人の女の子が近づいて来た。


「あっ、りょうちゅしゃまだー」


「ココ、や止めるだよ。ジョージ様に失礼だ」

 遅れて追って来たのはドンガとその弟と妹達、どうやらドンガは子守りを任されている様だ…ケインとウォールナットがデートしていた事は内緒にしておこう。


「構わないよ…みんな何か食べたい物はないか?領主様がご馳走するぞ」

 これは普段のドンガへの感謝であり、決してケイン達がデートしていた事を内緒にしてるのが後ろめたいからじゃない。

 

「ジョージ様、すまないだよ」

 

「祭りだ。気にすんな」

 次いでにヘゥーボがリリルの親父さんの店を手伝っているのも内緒だし、ラパンがヴェルデの店でバイトしてるのも内緒だったりする。

 ドンガ兄弟に贖罪?の食べ物を渡し、俺とアミは再び祭へと足を向けた。


「あっ、アミちゃんだ」「一緒に遊ぼう」

 声を掛けてきたのは、アミの友達らしい…そしてアミは俺をチラチラと見てくる。


「アミ、俺はそろそろ仕事(せったい)に行かなきゃいけないから、友達と遊んでおいで。皆さん、妹をお願いします」

 アミももう小学6年生だ。家族より友達と遊ぶ方が楽しいだろう。


「お兄様、いいんですか?」


「うん、楽しんでおいで。はい、お小遣い」

 無論、ナンパ防止のガードマンにこっそり後を着けさせるけど。

 アミと別れて一人雑踏を歩く。周囲の喧騒とは逆に俺の周りだけ静かだ。


『折角の祭にぼっちか。寂しい領主様やのー』

 そんな俺に話掛けてきたのは神使のミケ。ミケは姿を消しているから、声を出したら痛い領主様と認定されしまう。


『これが俺のあるべき姿だよ…領主なんてのは仮初めの姿なんだし』

 俺はプログラマー榕木丈治であり、ボーブル領主ジョージ・アコーギではない。本物のジョージの立場を乗っ取っただけの偽者なんだ。


『やっぱり元の世界に帰るつもりなんか?』


『ああ、魔王が倒されるか、ジョージでも運営していける位に領地が安定したら日本へ帰る』

 確かに榕木丈治の人生はパッとしない。だけど、それが俺の人生なんだ。このまま、ジョージ・アコーギの人生を享受するのは親や友人、支えてくれた人達を裏切るのと一緒だ。


『随分硬い考えやな』


『今の俺は紛い物だからな。見た目はジョージ・アコーギでも中身は違う。あんまんの振りをしてる肉マンみたいなもんさ』 

 色々努力をしてるから、あんこ味の肉マンになってるかも知れないけど…あんこ味の肉マンって、きついな。 

 夏祭りは盛況のまま終わった。そして俺は騎士や兵士を集めて、城の前庭にいた。


「皆のお陰で夏祭りは無事に終わった。城の警備はタスク山のドラゴンに頼んである。俺の奢りだ、好きな分食べて飲んで明日からまた頑張ってくれ」

 流石にドラゴンに警備された城に来賓客は泊めれないし、城の人間が休めなくなる。これはリーマン領主のせめてもの恩返しなのだ。

東京にお住まいの方や詳しい方がいましたら、活動報告に協力をお願いします

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