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ジョージとアミちゃん御一行?

 アミとの待ち合わせ場所は、ボーブル領とアコーギ本領の境界にある町ウィート。元は何の名物もない辺鄙な田舎町だったが、ボーブル経済の発展に伴い活気の満ちた宿場町へと姿を変えた。俺はアミのお迎えの為にウィートへと向かっている。


「まだゴーレム馬車の乗り入れの許可は出ないんですか?」

 サンダ先生の言う通り、アランはアコーギ本領へのゴーレム馬車の乗り入れを許可していない。その為、途中でゴーレム馬車から馬車に乗り換える必要がある。


「建前では御者等の馬車に携わっている人達の生活の保護と言ってますが、馬車協会から結構な献金を貰ってるみたいですからね。それにアランご自慢の騎兵隊は馬つまり牧場があって始めて成り立つ物ですし」

 アランに仕えている騎士の中には、ゴーレム馬車等騎士道に反するとあからさまに反対している人もいるそうだ。


「ゴーレム馬車、便利なんですけどね。ボルフさんは夏期休暇を利用して、彼女さんとコーカツ領へ旅行にいってますよ」

 爺ちゃんの(ところ)でも、ゴーレム馬車を導入してくれたお蔭でコーカツ領へのアクセスが便利になった。


「サンダ先生は夏期休暇をどう過ごすんですか?」

 休みまで、研究に勤しむと言いそうで心配だ…夏休みに仕事をする俺に言われたくないだろうけど。


「大学時代の旧友を訪ねるためフェルゼン帝国へ行く予定です」

 オリゾン大学には大陸中から学生が集まってくるので、サンダ先生にフェルゼン出身の知り合いがいてもおかしくない。問題はゲーム上でのフェルゼンの扱いをおしえるかどうかだ。


(言った所で分領の小倅の妄想と思われるのが、オチだよな)

 第一、お前の国は滅ぶなんて言ったら、国の関係が悪化する可能性だってある。


「そうですか。それじゃ、ゆっくり旧交を暖めて来て下さい」


「ジョージ様こそたまにはゆっくりして下さいね」 そんな事言われても、10日以上の休暇は苦痛でしかないんだけど。


____________


 ウィートに入ると町長自ら出迎えに来てくれていた。俺は領主の息子でウィートはボーブルのお蔭で発展した様な物だから、この扱いは不自然ではない…ないけどいまだにVIP待遇には慣れない。


「わざわざ出迎えご苦労さ…アミは到着してるか」

 次いでに偉そうな話し方にもいまだに慣れない。今思わずご苦労様です、と言いそうになってしまった。


「はい。アミ様はジョージ様にお会い出来るのが、余程お嬉しいのか早朝にお出でになりました」

 きっと町長はアミも出迎えたんだろうな。お偉いさんの息子と娘が一度にやって来たら、俺ならストレスとプレッシャーでお腹を壊すぞ。町長の目に隈が出来てるし。


「それは苦労を掛けたな。妹も一人で不安だろう。早速、案内を頼む」

 そして町長を早く休ませて上げたい。


「大丈夫で御座いますよ。ルミア様もご一緒ですから」

 …はい?ルミアさんって、アランと海外にバカンスに行ったんじゃないの?ルミアさんがいたらアミを甘やかしまくれないじゃないか。何より正妻(かあさん)第二婦人(ルミアさん)が一つ屋根の下なんて、俺の胃がもたないぞ。


「いや、頼む。この後用事が詰まっているんでな」

 そうだ、ルミアさん俺に挨拶に来ただけなんだ。きっとそうだ、俺に挨拶したらアラン達と合流するに違いない。


「そうでしたか、それではこちらへ」

 案内されたのは、ウィート一の高級宿屋。シンプルな木造建築だけど、造りは丁寧で貴族の間でも評判が良いらしい。

 そして宿の前には兵士が5人…?


(おかしい?ルミアさんとアミがいるのに護衛の兵士が少ない)

 いくらアランが自領の治安を過信していたとしても少な過ぎる…俺の時はアホ一人だけだったけど。


「案内ありがとう…ジョージ・アコーギだ。アミはいるか?」

 とりあえず、宿の前にいる兵士に声を掛ける…一応、自領の跡継ぎなんだから顔見て気付いて欲しかったな。


「ジョージ・アコーギ…?ジ、ジョージ様‼も、申し訳ありません。ジョージ様とは気付かずご無礼を…今、姫様にお伝えしますので」

 気付いてなかったのかよ?ロッコーさんかギリルさんがいたら、小一時間説教になるぞ。

 兵士Aが大慌てで宿に入ったと思ったら、大声が聞こえてきた。


「姫様、いけません。外に出られるなら、一度安全を確認してから」「嫌です。お兄様がいれば安全だから平気です…そこを退いて下さい」

 兵士Aよ、さっきの無礼は許す。アミの我が儘を許せば職務怠慢でアランに叱られるもんな。そのアランは海外バカンス中。当然、出世街道の主流にいる奴等は同行しているだろう。


「アミ、はしたないわよ。立派なレディに成長した姿をジョージ様に見せるのでしょ」

 続いて聞こえきたのはルミアさんの注意…嬉しいが出迎えるリアクションが取り辛いです。

 アミが出てきたのは、それから3分後。真っ青なサマードレスを着ており、余りの可愛さに見ただけで激務の疲れが吹き飛んだ。


「あんまり綺麗になったから、一瞬誰だか分からなかったよ」

 アミ位の女の子は背伸びをしたがる年。可愛いより綺麗と言った方が喜ぶと思う…さっき、レディとか言ってたし。

 ただし、身内以外に言う時は注意が必要だ。相手を選ばないとセクハラ扱いされてしまう。冗談の通じる相手、年齢が対象外(思いっきり年上か保護者が近くにいる子供)、仕事でゴマをする時だけにしておくのが賢い。

この台詞 俺が言ったら セクハラだ 鏡見ろ 台詞も服も 合ってない 以上丈治自戒の句


「お兄様、ありがとうございます。それとお母様も泊まって良いですよね?」

 …今、何と言った。お母様も泊まる?


「それは何泊の予定?」

 泊まるのは二人だけではない。二人のお付きの侍女やメイドも付いてくると思うから、ちょっとした小集団になる。無論、予算も段違いだ。

 一番の問題はルミアさんの扱い、アミは俺の妹だから問題ないが、ルミアさんをもてなすのは、母さんの役目となる。本人同士は何とも思ってなくても、一部ではルミアさんが母さんをアコーギ城から追い出したなんて言ってる事情通(自称)もいるそうだ。長引く程、予算が膨れ俺のストレスも増え続ける。


「夏休みの間ですけど駄目ですか?」

 兵士Aを見るとあからさまに目を逸らされた。…彼を逆恨みするのは止めよう。兵士Aは貧乏クジを引かせられた被害者だ。


「ちょっと待って。侍女長を呼んでもらえるか?泊まる人数によって色々準備が必要になるから。それとアミはルミアさんと一緒に出掛ける準備をしてね」


「分かりました。ちょっと持ってて下さいね」

 小走りで駆けていくアミは可愛いが、お兄様の胃はシクシクと痛んでいます…とりあえずこれでルミアさんを足止め出来る。


「ジョージ様、ルミア様お付きの侍女長をしてるアンヌ・ジェシカートでございます」

 アンヌさんは潔癖そうな中年女性。PTAに所属していてテレビ番組にイチャモンをつけてそうな感じだ。

 

「泊まるのはアミ一人と聞いていたが」

 この手のタイプに弱気を見せたら負けである。


「領主様がアミ様だけでは心配だと仰有いまして…」

 おかしい?あの女好き(アラン)がルミアさんを同行させないのには、理由が弱すぎる。


「それを補うのが配下の役目であろう?…同行する人数は何人なんだ?」


「全部で20人になります。それとアラン様からお手紙を預かっております」

 手紙には一言こう書いていていた。もてなしの勉強をさせてやると…


(あのクソ親父‼もてなせって事は金は持ってきてない可能性が高いな…下手したら接待係に利用されまくるな)

 稼ぎの良い分領(ボーブル)の予算を減らすつもりなんだろうか?


「城の留守は誰がしている?それと父上のバカンスには誰が同行したのだ?」


「留守は騎士団長が勤めます。旅にはアデリーヌ様と…その数名の女性が同行しております」

 アンヌさんは顔を赤くしながらそう伝えてきた。そりゃそうだ、中学生の餓鬼相手にお前の親父、おかんと愛人を連れて旅行に行ったよって内容だもん。


(だからルミアさんをうちに寄越したのか…もう下半身で考える年じゃねえだろ)

 アミが同行をしないのをこれ幸いと愛人をバカンスに同行させたんだろう。バカンスにも留守役にも人数を割かなきゃいけない…だったらルミア一行はジョージに任せよう。正にお貴族様の考えそうな事である。

 立場上無理だけどアンヌさんに謝りたいです。


「分かった。何分急な事なので、十分なもてなしは出来ないと思うが、ゆっくりしてくれ」

 むしろこの人達を味方に付ける位の度量を見せてやる。


「ジョージ様、大丈夫なんですか?」

 声を掛けてきたのはルミアさん。清潔感の溢れる真っ白なドレスを着ている。

 

「ルミアさん…ですか、お任せ下さい」

 ルミアさんは色気に磨きがかかり色々とヤバい。とりあえず海水浴が楽しみだ。それ位の楽しみがあっても罰は当たらないと思う。チラ見はガン見それを忘れない様に気を付けて。


__________


「お兄様、凄いです‼これが噂のゴーレム馬車なんですね。二学期になったら友達に自慢しちゃいます」

 ゴーレム馬車に初めて乗ったアミは大はしゃぎでお兄様大満足です。


「ジョージ様、ボーブルではゴーレム馬車が普及してるんですか?」

 ルミアさんはボーブルの発展に目を丸くして驚いている。美人の驚きは目の保養でございます。


「ですね。母さんも自ら運転してますし」

 ボーブルに来てから母さんはアクティブになり、料理を習ったりゴーレム馬車でドライブしたりと何かと忙しい。なにより腰が強くなって俺を叱ってくる。


「…羨ましいですね。籠の鳥みたいな私とは大違いです」

 籠にいるから餌を貰えるし安全なんですと、突っ込んじゃいけない。


「とりあえずボーブルにいる間はゆっくりして下さい。夏祭りや海水浴を考えてますんで。アミ、美味しいスイーツもあるぞ」

 

「お兄様、皆様笑顔で手を振ってくれます」


「皆様、暖かい笑顔ですね。ジョージ様が慕われている証拠です」

 たまにはこうしておだやかな時間を過ごすもワルくない。

お陰様でmf文庫一次突破しました。ネットの下馬評で噂にもならず二次は微妙でしょうか

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