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嫌われ者始めました〜転生リーマンの領地運営物語〜  作者: くま太郎


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32/199

ジョージと娼館?

色っぽい展開は皆無です

 領主になれば上司からの無茶振りとは無縁になる…そう、思っていた時期が俺にもありました。


(マジかよ、封開けたくねーよ)

 執務室に届いたのは立派過ぎる封書。そこに書かれているのは六色の珠に囲まれた黄金のドラゴン。


(黄金のドラゴンを使えるのは王家だけなんだよな。俺、何かやらかしたっけ)

 領地召し上げ、兵役、何かを作れ、嫌な指示ばかりが頭をよぎる。


「四枚羽のドラゴンですか。多分、元王の甥か姪に当たる方ですね」

 サンダ先生の話によると羽がない黄金のドラゴンは王様だけが使える紋章で一枚羽は王妃や正嫡のみに許される紋章。二枚羽は王の兄弟や正嫡以外の子供。そう言う風に等親が離れる程にドラゴンの羽が増えていくらしい。六枚以上は銀のドラゴン、銅のドラゴンと色が変わっいくそうだ…銀のドラゴンを三枚集めても応募は出来ないけど。

 ちなみに爺ちゃんの銀狼は様々な功績が認められて許されたオリジナルの紋章らしい。俺だと神使(ミケ)を紋章にしなきゃいけないんだろうか?


「それなら無茶振りはありませんね」

 ボーブルを見学したいからお前の城に泊めろとか、それ位のレベルだと思う。引き出しからペーパーナイフを取り出すと、サンダ先生に手を叩かれた。


「な、何をなさるんですか!!それは王家からの封書ですよ。蝋封をしているので火にかざせば開きますから。王家の封書にナイフを使うなんて、サンダは哀しゅうございます」

 サンダ先生はそう言うとハンカチで目を拭い出した。最近、サンダ先生の爺や化が激しいです。


「火にかざすって言ってもあまり近づけ過ぎるなよ。紋章が焦げでもしたら価値がガタ落ちするからな…それ、本物の金を使ってるらしいぜ」

 ボルフ先生の話によると、王家の封書は配下への褒美にも使えるとの事。事実、家宝にしている騎士の家もあるらしい。


「マジっすか…それで内容は…マジッ!!こいつ馬鹿だろっ!?」


「お前、王家に馬鹿はヤバイだろ…うわっ、こりゃねえわ」

 ボルフ先生が呆れるのも無理はない。こんな命令をだす馬鹿が本当にいるとは…。


「ボーブルに娼館を作れですか。しかも娼館の館主との会う日時まで指定されてますよ…ホートー・オリゾン?聞いた事がない名前ですね」

 大抵の王族はチェック済みなんだけどホートー・オリゾンなんて名前は聞いた事がない。


「あー、赤衣(あかえ)の馬鹿息子か。そいつ、遊び過ぎて継承権を剥奪されたんだよ」

 なんでもホートーは酒色に溺れて継承権を剥奪されたらしい。そしてホートーは真っ赤な服を好んで着ているそうだ。そこで付いたあだ名が赤衣の馬鹿息子らしい。


「でも無下には断れない相手なんですよね」

 俺は領地経営を始めてまだ日が浅いぺーぺーの領主。しかも分領の領主だから権力なんてないに等しい。


「ホートー様のお父上は現王の弟君って…つまりホートー様は王様の甥になります。ボーブルに汚らわしい娼館は建てたくありませんが、逆らわないのが得策だと思います」


「しかし、おかしいな。ホートーは隣国(ランドル)の貴族の娘との婚約が決まった筈だぞ」

 男女関係なく婚約者がいようが配偶者がいようが遊び人は遊ぶ。


「とりあえず指定された娼館に行って館主と話をしてからですね」


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 高価な色ガラスを使った魔石街灯が闇夜を怪しく照らす。街角に立つ娼婦達は原色の光を浴びて、全身から妖艶な色気を放っている。俺が来ているのは王都の東部に位置する歓楽街。その中でも娼館がひしめいている一角に来ている。ここにホートーが指定した娼館があるらしい。


「しかし、凄い格好ですね。サンダ先生がいたら卒倒しちゃいますよ」

 娼婦のお姉様方は、みんな露出度が高く扇情的な格好をしている。ドンガを連れて来たら、ここは血の海と化すだろう。鼻血の海だけど…。


「彼奴等も客を捕まえる為に必死なんだよ」

 生真面目オークのサンダ先生は娼館はおろか歓楽街の存在その物を毛嫌いしている。だから今日のお供はボルフ先生一人だけ、そのボルフ先生も歓楽街は仕事以外では来た事がないそうだ。ボルフ先生にとって娼婦は貴重な情報源。ワイルド系なイケメンボルフ先生は娼婦にも人気があるそうだ。でも、誰か一人と仲良くなるのは愚策らしい…敢えて言おう。滅べ、イケメンと。


「色っぽい服は蜘蛛の網みたいなもんですね。捕まったら金を吸いとられるんですから」

 虫は体液を吸われたら蜘蛛に捨てられるが、金が無くなった客は娼婦に捨てられてしまう。


「好き好んで自分から網に掛かりに行くんだから、同情は出来ないけどな。金を払ってまで女と遊びたいものかね」

 もう一度言おう…滅べ、イケメン。金を払わなきゃ相手にしてもらえない人もいるのだ。


「需要があるから、この町が生まれたんすよ。性欲は灰になるまで無くならないって言いますし。生真面目な恋愛論も大切ですけど、それだけじゃ息苦しくなりますよ」


「お前も通いたいのか?鼻を無くしても知らねえぞ」

 ボルフ先生は、そう言うと俺の鼻を摘まんだ。どうやらこの世界にもやばい病気があるらしい。娼館を許可するなら、予防をきちんとしないと大変な事になってしまう。


「通いませんよ。それに婚約者がいるのに娼館に通ったら大問題になります」

 政治の世界でスキャンダルが致命傷になるのは異世界も同じ。わざわざ自分から落とし穴に落ちる必要はない。


「あれだけ嫌われてるのに、気にするのか?」


「イニシアチブを取られると不味いですからね」

 マリーナの背後にはアランがいる。いずれマリーナとの婚約は解消するが、こっちが有利な条件で話を勧めたい。なんか離婚に向けて記録をつけている奥さんみたいだ。


「腹は立たないのか?俺だったら婚約を解消するぞ」

 ジャパニーズサラリーマンの叱られ耐性を舐めてはいけない。マリーナの言動が可愛く思える様な嫌味や理不尽に日々耐えているのだ。


「子供の言う事を真に受ける訳ないでしょ。それにマリーナとの婚約を継続していれば勇者と知り合える可能性が高いんですよ。うまく立ち回れば勇者の行動をコントロール出来ます」

 ゲームではジョージの性格が悪過ぎて勇者と対立していたが、ある程度の援助をすれば敵対しないと思う。寧ろ、報奨を出して魔族退治に利用したい。


「勇者か…味方に付けてどうするんだ?」


「この間ドラゴンのブレスを間近で見て分かったんですよ。俺はどう足掻いても高位の魔物や魔族には勝てないって。でも、俺は領主です。民を危険から守る責務があります。だから勝てる奴をけしかけるんですよ」

 何より俺が倒れたらアミが跡継ぎになってしまう。お兄様は可愛い(アミ)をドロドロした政治の世界には関わらせたくないのだ。


「だったら、遊ぶ位は良いんじゃねえか?」

 

「男の嫉妬は根が深いですからね。他の貴族のお気に入りに手を出したら面倒な事になりますよ」

 事実、お気に入りの娼婦を巡って決闘をした貴族もいるらしい。負けた方の親御さんが不憫である。


「お前は領主なんだぜ。跡継ぎを残すのも責務だぞ」

 ボルフ先生が俺に娼館遊びを勧めるのは貴族的に間違っていない。オリゾンでは血統を重要視するから貴族の子弟には子孫を残すのが責務だ。何故なら跡継ぎがいないと領地は没収され家臣が路頭に迷ってしまう。


「俺の生まれた国は一夫一婦制なんですよ。いくら責務とは言え、何人もの女性に手を出すのは抵抗があります。それに側室に選ばれた女性にも大切な男性がいると思うんですよ。彼女に好きな人が出来たって振られただけでも辛いのに、権力で奪われたら耐えられないと思いますよ」

 看護士の元カノが後進国に医療ボランティアに行き、同じくボランティアに行った日本人医師とくっついてしまったキツイ過去があるのだ。¨貴方は一人でも平気だけど、この人は私がいないと駄目なの。貴方の事は好きだけど、それ以上に彼が好きなの¨そんな事を泣きながら言われたら諦めるしかない。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 そこは確実にボーブル(うち)より豪華な造りをしていた。毛足が長く脛まで埋まる絨毯。壁は姿が映りそうな位に磨き上げられている。


(ある意味非日常を提供するエンターテイメントなんだよな。従業員は怖いけど)

 従業員はどう見ても堅気には見えない。でも、その従業員もボルフ先生を見て怯えているんだけど。


「ジョージ様、ナイト・ビーンズモスへようこそ。私は当館の主ハキン・ボウーパッチです」

 出迎えてくれたのは小太りの中年男性。ハキンは背後には幾人もの娼婦を従えていた。遊ぶつもりはないが、思わず娼婦のお姉さん方をチェックしてしまうのは悲しい男の(さが)だろう。

 ハキンは年下の俺に慇懃な態度で接してくる。命じたら俺の靴でも舐めそうだ。


「ジョージ・アコーギだ。今日はビジネスの話と聞いている」


「はい、お前達ジョージ様をご案内しろ」

 俺へとは打って変わって娼婦への態度は強気だ。当たり前と言えば当たり前。ハキンをここの社長としたら俺は大手の取引先の社長で、娼婦は部下に当たる。そしてハキンは娼婦を使って俺を籠絡したいんだろう。普通の中学生なら簡単に籠絡されると思う。しかし、俺の中身はおじさんだ。ハニートラップや娼婦の怖さを良く知っている。


「今日はビジネスの話に来たんだ。ハキンとのみ話せれば良い。女は無用だ」

 涙が出る位、もったいないが娼婦の案内を断る。ここからは交渉になるから、甘い誘惑は断らなきゃいけないんだ。


「左様ですか。ビジネス、つまりナイト・ビーンズモス二号館をボーブルに建てさせてくれるんですね」


「前向きに検討する。しかし、幾つか条件を飲んでもらいたい」

 どうせ建てなきゃいけないなら、条件をつけてやる。


「ジョージ様なら無料でご利用してもよろしいですよ」

 …無料だと。しかし、断らなきゃいけないのが悔しい。


「それは無用だ。まず娼館へ通じる道に門を作り、通行料を徴収させてもらう。安全の確保と子供達の悪影響を考えればこれは譲れぬ。通行料は三千ストーンでどうだ?」

 通行料も大切だけど、一番の目的は誰が来たのかをチェックする為だ。


「分かりました。お客様には当館から通行券を差し上げても構いませんか?お客様にご負担は掛けたくないので」

 ご負担をって絶対に料金に含めるつもりだろ。


「次に避妊、病気の予防を徹底する事。そして娼婦の健康に留意して週に二日は休ませろ」

 娼婦の陰口ネットワークの影響は半端ないらしい。ボーブルに来たら最悪だったなんて噂を広まったら最悪だ。


「分かりました…他にはないですか?」


「娼婦が客から聞いた話を集めてくれ。噂でもなんでも良い」

 話をまとめて歓楽街を出ると見知った顔を見つけた。


(あれはケイン?なんか質の悪い奴等とつるんでるな)

 ケインの周りにいるのは年上の不良少年達。歓楽街近くにヤンキーが集まるのは異世界も同じらしい。

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