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嫌われ者始めました〜転生リーマンの領地運営物語〜  作者: くま太郎


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ジョージとドラゴン

 ハイードロ進学基金は意外な副産物を生んでくれた。


「ジョージ様、ウォールナットさんも中学に進学するって本当だか?」

 ドンガの目にキラキラと輝くお星様が見えた。ゴツい熊っ子は、顎に拳を添えながらワクテカ状態で俺を見ている。

(クマが、そのポーズを取ると暖かくなっちゃうだろ)


「ジョージ様、ラパンさんも中学に進まれるんですよね。ク、クラスは何クラスあるんですか?いや、参考までに聞きたいなーなんて思いまして」

 ヴェルデの目にはハートが見えていた。狸小僧は頬を赤く染めて、胸の前で人指し指をチョンチョンと突っつき合わせている。


「らしいな…お前達、学校には勉強しに行くんだぞ。あまり浮かれてヘマをするなよ」


「分かっただ」「分かってます」

 二人とも勢いよく返事を返してくれたが、幸せオーラを出しまくっている…言えない、ケインとピーターも中学に進学するなんて俺には言えない。不思議な事にハイードロ進学基金の合格者の半数か俺の関係者だった。今回の合格者は全部で10人。そのうち俺と関係があるのは、同じ小学校のウォールナット、ラパン、ケイン、ピーターの四人。そしてアーシック領から移住してきたドワーフ娘リリル・ハンマー。裏から手を回した訳じゃない。何しろ審査は第三者を入れて厳正に行った。基準は能力・熱意・家庭環境等、多岐に渡っている。


(そういやミケは絆の神様の神使なんだよな)

 ミケの加護なのか分からないが、俺の人間関係はかなり濃くなっている。サンダ・ボルフ両先生に続きハイードロ教の神官ロッコー・ウォーターも家臣に加わった。ロッコーは200才になるエルフだけあり、経験も知識も豊富だから家臣になってくれたのは有り難い…有り難いが、アニエスから更に恨みを買ったのは言うまでもない。

 そして中学のクラス分けは俺の持てる力やコネを総動員してヒロイン達と別にしてもらった。序でにクラスは端と端、校舎も違うからニアミスも少ないと思う。ちなみにヒロイン達が通う特別進学クラスには多くの希望者が殺到しているらしい。最終的に主人公の総取りになると言うのに。


(さて、残るはドラゴンとの交渉だけか)

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 ドラゴン:ドラゴンは、魔物の中でもトップクラスの力を所有している。その鱗は鉄より硬く普通の武器では掠り傷すら付けられないと言う。また様々なブレスを使いこなし、一匹で騎士団を殲滅した事もある。その為、ドラゴンを倒した者にはドラゴンスレイヤーの名が与えられる。

 …果たして、生きて帰ってこれるだろうか?主人公とヒロインがラストダンジョンを攻略出来るレベルになると、固有スキル一撃だけでドラゴンを倒せてしまう。これ以上、ヒロインの恨みを買うのは避けよう。あんなチートな人達には逆立ちしたって勝てる気がしない。


「神様、お願いしますだ。どうかウォールナットさんと同じクラスにして下さい…出来たらお、お友達になりたいだす」


「神様、お願い致します。好き嫌いもしませんし家業も今以上に手伝いますからラパンさんとクラスメイトにして下さい…ぜ、贅沢を言うなら斜め後ろ位の席になりたいです」

(同じ学校に通えるのが、そんなに嬉しいのか?振られたら残りの月日が気まずいんだけどな…そんな事を考えて恋する年じゃないか)

 ふと、自分の初恋を思い出す。好きな子がサッカー部のエースを好きだと聞き泣いて諦めた。ただの噂に踊らされて大泣きしたなんて随分と可愛い昔話である。

(まっ、振られて泣いてる時は側にいてやるよ)

 ワクワクしながら中学校生活を話し合う二人の為にも、ドラゴンとの交渉を頑張らねば。


  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 タスク山はドラゴンが生息しているだけあり、標高が高い。酸素マスクなんてないから登山を諦めた方が良さそうな高さである。ゲームでは酸素の薄さなんて関係ないし高山病にも掛からないが、ここは現実(リアル)的な世界。下手したらドラゴンに会う前に滑落死する危険性がある。


(酸素マスクどころか登山靴もピッケルもないんだよな)

 ドラゴンに会う為に、フリークライミングで登って転落死エンドなんて笑えない。


「さて行きましょうか…ジョージ様、頂上を目指すのですか?」

 伝説のドラゴンに会えるとあってサンダ先生は大張り切りです。流石は学者脳オーク…そういや学者さんって、ハリケーンに突っ込んだりマグマの側に行くんだよな。(プログラマー)には分からない心理だ。


「いや、中腹にドラゴンが翼を休める場所がある筈です。そこでコンタクトを取ろうと思います」

 頂上なんて狭い足場でドラゴンと遭遇したら、押し出しで(ジョージ)の負けになってしまう。

 当たり前であるがタスク山には登山道なんて存在しない。ゲームではスイスイと進めていたが、足場を確かめながらの山登りは体力も時間も消費する。しかも、中腹部までは深い森が支配しており現在地も分からなくなってしまう。唯一ラッキーなのはオークも狼人も嗅覚が優れているから山林で迷う危険性がない…もし、はぐれたらミイラになる自信がある。


「しかし、これだけマナが濃いのにゴブリンの一匹も居ないとはな」 


「ここはドラゴンの棲み家ですからね。気付かれたら…餌…になりますよね」

 そう、俺達みたいな異分子は嫌でも目立つ。ドラゴンに気付かれる可能性はかなり高い。


「大丈夫ですよ。ドラゴンは魔石を食べる以外は、滅多に生き物を襲わないそうですから」

 サンダ先生は滅多にと言うが、俺達は野性生物にとって最大の禁忌(タブー)、領域侵犯をしている訳で…。


(考えるな、ジョージ。こういう時に考えると現実になってしまうんだ)

 恋愛イベントは起きないが、俺はトラブルイベントを引き寄せる体質らしい。


「…サンダ」

 ボルフ先生の顔が一気に険しくなる。


「ええ、こちらを見張ってますね」

 何が見張ってるんですかと聞くのは野暮だろう…つうか、お約束イベントが速すぎる。普通はもう少し引っ張ってユーザーの気持ちを高めてから起こすのが基本だと言うのに。


「付いて来いって感じだな」

 どこか楽しそうなボルフ先生、この(バトル)中毒(ジャンキー)め。


「ええ、もう姿を隠す気もない様ですよ」


(見ちゃ駄目だ、絶対に見ちゃ駄目だ。転ばない様に足元をしっかり見るんだ…あっ)

 流石はお約束体質。足元を見ている癖に木の根っ子に蹴つまづいてしまう。その拍子に見えてはいけない物が見えてしまった。


「で、でけぇ…マジかよ」

 優に5mは越えている生物(ドラゴン)が上空を翔んでいる。ドラゴンはビビる俺を嘲笑うかの様に大空を悠然と飛んでいた。


「まだ若いドラゴンだな。まっ、偵察役だしな」

 あれで若いドラゴン?確かにボスが偵察には出ないよな。だったらボスドラゴンはどれ位大きいんでしょうか?


「若いと言ってもドラゴンですから、ブレスを吐かれたら一巻のお仕舞いですよ」


「違いねえ」

 何故か笑い合う両先生。これは現場経験(たたかい)の差なんだろうか。


「この状況で、良く笑えますね」

 ラノベやゲームではドラゴンと平気で対峙しているが、あれは嘘だ。これだけ離れていてもチビりそうな迫力がある。


「ばーか、向こうがその気なら俺達はとっくの昔に丸焦げだっつーの」

 確かにそうなんだけどさ。デカい犬は首輪に繋がれていても恐い。頭で理解出来ても感情をコントロールするのは不可能だ。


「ドラゴンは理知的な種族ですよ。それにジョージ様が背負っている物も無理矢理奪ったりしませんよ」

 俺が背負っているリュックにはマナツリーで作られた魔石が詰め込んである。良く考えなくても一番狙われやすいのは俺だ。慰めとしては、魔石を置いてる店や倉庫を襲ったドラゴンがいない事位だ。


「精々、丸飲みされない様に気を付けろよ」


「何を気を付けろってんすか?俺なんかじゃ偉大なるドラゴンの前では手も足も出ないっすよ」

 ドラゴンの聴力がどれ位なのか分からないから、出来るだけ持ち上げておく。手も足も出ないのは事実だから口先だけでなんとかするしかない。


「もう少しで森が開けますよ…いよいよいドラゴンに会えます。ドラゴンと対面出来るなんて学者冥利につきますね」

 サンダ先生はまともな人だと思っていたが、知識欲が刺激されるとストッパーが外れるらしい。

 森を抜けると、そこは地獄だった。

 そこにいたのはドラゴンの群れ。大きい個体では軽く10mを越えてる方もいらっしゃいます。


(一、二、三…って何体いるんだよ。こんなお出迎えいりません)

 しかし、礼を欠いては不利になる。なんとか声を絞り出して口を開く。


「は、初めまして。わ、私は今度ボーブルを治めさせて頂く事になりましたジョージ・アコーギです。今日は引っ越し前の挨拶に来ました」

 俺の言葉が終わると巨大なドラゴンが群れの中から出て来た。目からは涙が溢れ出るし、膝はガクガクと震えっ放しです。


「これはこれはご丁寧にすいません。あいにく長老のキンウロコは急な来客で席を離れない為、(わたくし)黒ブチが承ります」

 ドラゴンさんめっちゃ理知的です。


「いえいえ、領地を治めると言いますがそれは人間の都合でございます。それと宜しかったら、これをお納め願いますか?」

 背中からリュックを下ろしてドラゴン側に差し出す。


「これは各種魔石詰め合わせ。しかも魔物臭さがない一級品」

 ドラゴンが唾を飲み込む音って迫力が凄いですね。夢に出てきそうです。


「もし、お話を聞いて頂けたら、まとまった量を月一で提供する準備があるのですが」

 そこから俺は本気のプレゼンを始めた。正に命懸けのプレゼンである。

 タスク山及び緊急時におけるボーブル地方の防衛をドラゴンにお願いしたい事。

 その見返りとして、魔石を月一で提供。受け渡し場所はタスク山の麓にある村。

 受け渡しを観光の目玉にしたい事。

 タスク山には許可を得た者しか登らせない事。もし許可なく登った者がいれば警告を発してもらい、それを無視する様であれば俺達に受け渡して欲しい事。ただしドラゴンに危害を加える様な悪質な者に関しては、その場で対処しても構わない。


「私達を見世物にする気ですか?」


「観光を収入源とする事で、民にタスク山の見張り役をさせます。領主の紙切れ一枚での命令より効果があると思いますよ」

 ドラゴンに戦いを挑もうとする冒険者がいたら、村人は宿泊を拒否するだろう。


「後日、長老からのご返答があるかと思いますよ…これからよろしくお願いしますね」

 安心したのか腰が抜けて、その場にへたりこんでしまった。これで引っ越しが出来る。


  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 同刻、ボーブル山山頂。ドラゴンの長老キンウロコは巨大な身を縮こまらせながら、来客に相対していた。


「こ、これはミケ様。本日はどの様な用事でしょうか?」

 キンウロコの目の前にいるのは、彼の指よりも小さな猫型の神使。


「なに儂が加護しとる猿人と、仲良くして欲しゅうて頼みにきたんや」


「ミケ様の頼みとあらば…所で今日はお一人なのですか?」

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― 新着の感想 ―
[一言] ミケってどんだけやばい存在なんだ、他の神使もそうなのか、ミケの位が高いのかも気になるところ。
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