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嫌われ者始めました〜転生リーマンの領地運営物語〜  作者: くま太郎


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ジョージの計画

 俺の新たなアダ名が王都に広まっているそうだ。


「これはこれはジョージ吐く爵、随分と王都でお噂になっていますぞ」

 執務室に入ると、爺ちゃんが大袈裟に両手を広げて出迎えてくれた。


「もう爺ちゃんの耳にも、入っていたんだね」

 ジョージ吐く爵。このアダ名は例のゴブリン騒動で、俺に付けられたアダ名である。どうやら、第一小の奴等が面白がって広めてくれたらしい。It's小学生クオリティ。


「そう情けない顔をするな。貴族や騎士の間では“ジョージ・アコーギは無手単身で、生徒も備品も傷つけずにゴブリンを無傷で三匹も倒した。しかも、成績も優秀なので、近々分領されるらしい”そんな風に言われているんだぞ」

 まあ、俺がボルフ先生に頼んで流してもらったんだけどね…自分で俺ツエー、頭もイイーッ!!って噂を広めるのはかなりの抵抗がありました。でも、爺ちゃんの耳にまで届いたのは別の要因があると思う。


「やっぱりゴブリン召喚が原因?」

 お約束な展開だけど、ゴブリン召喚の犯人はまだ捕まっていない。王都の召喚師達にアリバイがあるらしいし、小学校にゴブリンを喚び出すメリットも見当たらないそうだ。


「ああ、王宮魔術師の話では、教室のドアの前から召喚の痕跡が見つかったそうだ」


「まるで俺個人を狙ったみたいだね…でも、そうなると、新しい疑問が生まれるんだよな」

 まず、俺個人を狙う理由。俺を亡き者にしたい人物の筆頭はアデリーヌ・アラン母子。しかし、二人とも前回で懲りているし、召喚がバレた暁には爵位を剥奪されかねない。

 次に怪しいのはライテック家の人達。しかし、俺が死んだら融資が途絶えてしまう。ちなみにライテック家からは見舞いの便りが届いたが、マリーナからは梨の礫である…父親と婚約者が容疑者って、良く考えれば酷い話だ。


「新しい疑問ですか?」

 サンダ先生は小学校にゴブリンが召喚されただけで激怒した真面目オークである。悪辣な発想自体に、嫌悪感を感じるらしい。


此奴(ジョージ)を殺したいんなら、ゴブリンよりもっと強力な魔物を喚んだ方が確実だろ?此奴(こいつ)なら、スケルトン辺りを三体も喚べば天国行きだぜ」

 そう、教室前にゴブリンをピンポイントで喚べる力があるのならゴブリンより強い魔物も喚べる筈。


「その辺は引き続き調査を行う。ジョージ、本当に分領先はボーブルで良いのか?」

 確かに分からない事を議論しても、徒労に終わるだけだ。


「そうだよ。むしろボーブルでなきゃ困る」


「その訳を聞かせてもらえるか?」

 ボーブルはコーカツ領と隣り合っているから、爺ちゃんはボーブルの現状を知っていると思う。それに遅かれ早かれ理由は伝えなきゃいけないだろう。


「先ずボーブルは山海の恵みや作物の実りが豊か。そして広大な砂浜があるから塩田を作れるし、森林があるから薪にも困らない。何より緊急時に警戒するのは東部だけです」

 タスク山から流れるスケイル川がオング平野を作り、その土は豊かに肥えている。ちなみにスケイル川では、時折ドラゴンの鱗が見つかる事があるらしく、名前の由来にもなっているとの事。


「東部…アランの事か?」

 爺ちゃんの顔が苦虫を噛み潰した様になる。ボーブル北部は王都、西部はコーカツ領、南西部は海、南部にはタスク山があり、その向こうはナイテック領だ。


「むしろ警戒すべきはナイテック家の方だと思いますが」

 サンダ先生の懸念は妥当だと思う。闇のナイテック家の現当主は実兄を暗殺をするだけあって、キミテでもジョージと同じ不人気キャラだった…いや、勇者の血筋だけあり中々のイケメンでジョージより人気は高かったです。 向こうは薄い本で主役になっていたけど、ジョージはNTR物しかなかったし。


「そこは対策を考えていますよ。タスク山のドラゴンを味方に付けようと思っています」


「確かにドラゴンがいれば攻めては来ないな…しかし、言葉は通じるのか?」


「俺のレコルト言語翻訳機能を鑑定してみたら、レコルトの言語文化を有する生物全てが対象になっていました。つまり、ドラゴンとも話し合いが出来るんですよ」

 言語の線引きは分からないけど、ゴブリンや動物の言葉は分からなかった。雀のさえずりや蛙の合唱は音として聞くから風流なんだと思う。雀のさえずりが“おはよう、昨日の毛虫美味しかったね”や“おっす、今日はバッタ食べに行こう”とか、蛙の合唱が“彼女、ヌメヌメした肌が可愛いね”や“ありがとう、貴方の鳴き袋も大きくて素敵よ”と訳されたら気が休まらない。予想としては信号的な言語は対象にならないんだと思う。


「でも、ジョージ様の知識ではタスク山のドラゴンは凶暴化するんですよね」


「それも予想は付いています。ドラゴンの主食は魔物らしいんですよ。正確には魔石を食べているらしいんです。その際、魔物の血肉も一緒に食べてしまうんですよ」

 ボーブルに魔物がいないのは、ドラゴンを恐れているかららしい。その為、ボーブルのドラゴンは遠くまで狩りに行っているとの事。恐らく魔王の影響で凶暴化した魔物の血肉の影響で、ドラゴンも凶暴化してしまったんだろう。


「魔石を提供する代わりに、タスク山の警備をしてもらうのか」


「ええ、各地から魔石の屑石を処理名目で引き取ります。それをマナプラントに吸収させて、ドラゴンに渡す魔石を作りだそうと考えています」

 その際、処理費用はきっちり頂く。


「ちゃっかりしてると言うか悪どいと言うか…それでエンデンってのは何なんだ?」

 ボルフ先生が塩田を知らなくて当たり前、オリゾンでは岩塩が一般的である。ただし、アコーギ領にもコーカツ領にも岩塩鉱脈は存在しない。つまり、有事に岩塩の輸出を規制されたら一大事なのだ。ましてや魔王が復活すると、魔物の数が増えて物流の妨げになる。ゲームでは描かれていないが、岩塩の値段は鰻登りになるだろう。


「早い話が海水を煮詰めて塩を作る手段です」

 構想では枝状架方式を取り入れる予定だ。枝状架方式は海水を緩やかな水路に流す事で塩分濃度を濃縮させ、それを枝状にした竹に振り掛けて更に塩分濃度を高くする方式だ。海水の汲み上げにはハイドーロボールを使えば、労力を少なく出来る。


「他には何を考えているんだ?」


「塩もそうですが、ドライフルーツを作って船舶の補給場所にしようと思います。船が来れば物流が活発になりますし」

 この世界ではまだ壊血病が船乗りの恐怖になっている。壊血病の原因はビタミン不足、ドライフルーツならビタミンが豊富だし日持ちがする。ドライフルーツにする果物も、ボーブルで作る予定。次いでに芋類や燻製肉を作れば金を落としてくれるだろう。


「しかし、それでは魔石の買い取りに費用が掛かってしまいますよ」


「魔王が復活すれば魔物が活発になります。つまり、魔石の産出量が増えるんですよ。数が増えれば、市場に魔石がだぶついて値下がりが起きると思います。むしろ、魔石に頼りきっていたら、経済崩壊の危機があります」

 ゲームでは魔石の値段に変動はないが、数が増えれば値が下がるのは当たり前。そして魔物が増えれば農作業や牧畜に悪影響が出て出荷量は減るだろう。その点、ボーブルは魔物の数が圧倒的に少ないから安心して働いてもらえる。魔石がなくても死にはしないが、食物や塩がないと人は生きていけない。


「それだけに構想が練れていればボーブルでもやっていけるかもな。中学に入ったら直ぐにボーブルに移るのか?」


「下準備が出来れば直ぐにでも移ろうと思うんだ。いくら領主の息子でも、いきなり来た餓鬼なんて信用されないだろうし」

 幸いな事にボーブルは、その立地上コーカツ家に忠誠心を持っている人も少なくないらしい。ローレン・コーカツとアラン・アコーギの血を引く俺にはもってこいの土地である。


「下準備ですか?」


「構想は構想でしかありませんからね。実現出来なきゃ意味がありません。だから俺は、ドワーフの技術者をスカウトに行こうと思います」

 土地を整備しなきゃ移住者の家を建てられないし、塩田をやるにしても道具を作ってくれる技術者がいなくては絵に描いた餅にしかならない。


「ドワーフか…アーシック領に行くのか?」

 アーシック領は王都の北部に位置しており、コーカツ領からは馬車を使っても片道一週間は掛かるだろう。


「ええ、鉱物の枯渇によりアーシック領では失業者が増えていると聞きます。名工はアーシック家が手放さないと思いますが、若手や仕事に困っている技術者ならアーシック家も文句はつけないでしょうし」

 寧ろ、治安の悪化や風紀の乱れを考えると渡りに船になるかも知れない。


「ドワーフをどうやって動かすんだ?」

 爺ちゃんの疑問は尤もだ。慣れ親しんだ土地を離れるには、それなりの覚悟がいる。


「しばらくは俺が雇う形をとる。そしてボーブルが気に入れば、身分に関係なく永住権を与えようと思ってるんだ」

 俺は労働が大好きだし、職種を問わず労働者を尊敬している。まともに働かない貴族より何倍も何十倍もましだ。


「これは忙しくなりますね」

 サンダ先生が嬉しそうに笑う。その顔にはやる気が満ちていた。


「今更だろ。此奴に使われてから、ずっと忙しいだろ?」

 ボルフ先生がニヤニヤしながら俺を指差してくる。ちなみにボルフ先生の一族にもボーブルに来てもらう予定だ。確かに、領主と中学生の二足のわらじは忙しいと思う。でも、それが未来への投資なんだ。それに忙しいのを理由にすればマリーナと会わなくて済むし…先ずは走りだそう。



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