ワノ国編~領主が一番偉いって誰が決めた?
俺が公爵になれたのは実績だけじゃない……まあ、人気や血筋でもないんだけど。
一番の理由は首輪をつける為だ。力がある貴族なら、国政に組み込んでしまえってやつ。
早い話が名ばかり公爵なんです。
だから……。
「ワノ国か。国交も結びてえし……小僧、行って来い」
イジワール公爵が、即断で命令してきた。爵位的には同じだけど、権力の強さは歴然。
反論は無理だけど、言い訳を考えないと。
「しかし、部下の新婚旅行を勝手に決めるのは、流石に無理かと思います。ミューエさんはフェルゼン帝国の貴族なんですし」
サンダ先生とミューエさんの新婚旅行を名目にして、風継一家をオリゾンにご招待する……のはまだ良い。
問題は移動手段だ。キンウロコ様を始めとするドラゴン一団が、乗せて行く気満々なんです。
あの方達、信仰の対象なんだぞ。キンウロコ様なんてオリゾンの建国にも関わっているんだぜ。
背中になんて乗ったら、プレッシャーとストレスで俺の胃が一分も持たないと思う。
「ジョージ、レオパルド伯爵も了解済みだ。問題ない。行ってくるんだ」
爺ちゃんが厳命してくる。“も”……?
「まさかサンダ先生も了承しているんですか?」
両巨頭が、何の仕込みも無しに無茶振りしてくる訳がない。きちんと俺を囲んでいるよね。
「ああ、異国を見れますって大喜びだったぞ。尽くしてくれた家臣は労ってやらないとな」
イジワール公爵が、俺の肩を叩いてくる。もしかしなくても、つんだってやつ?
昔なら爵位で逃げれたんだけどな……もう、両巨頭は王様に報告に行っているし。
◇
ワノ国に同行してもらうメンバー。
サンダ先生とミューエさん、ドンガと凛は確定だ。残りのメンバーは、どうしよう。
(凛の人間関係が良好ですってアピールしておきたい……凛って、誰と仲が良いんだろ?)
高校にあまり行けていないから。全く分かりません。
でも、俺には頼りになる嫁がいる。疲れた時は、膝枕してくれる優しい嫁さんだ。
「カリナ、ワノ国行きの事で、相談に乗ってもらえないか?」
カリナはクラスの中心的存在らしい。凛の人間関係も良く把握している筈。
「学校で、凛と仲の良い子?ユリアにリリル。それとコニーとアニエス様かな」
つまりアイン・ヘゥーボ・ヴェルデ・谷も連れて行く必要があると……いつものメンバーじゃん。
「谷とアニエさんは一回のワノ国に行っているし、脚気の問題もあるから谷は連れて行きたい。ユリアは勇者の子孫だし、ヴェルデには贈り物を選んでもらう必要がある。タンス作りには、工業ギルドの協力は不可欠か」
身内に有能なメンバーが多くて助かります。
(ワノ国か……日本酒飲みたいな)
谷が脚気に取り組んでいる間なら、反論出来る奴はいない。干物で一杯、最高じゃないか。
そう、俺は公爵様なんだぜ。
「お城だとオデットさんかな。一番は凪さんだけど」
凛はドンガと結婚して、ボーブルに残るらしい。でも、凪さんはどうするだろ?
「凪さんも久し振りの里帰りだから、同行してもらった方が良いな」
オデットさんは、あくまで母さんのメイドだ。何度も同行してもらうのは、申し訳ない。
「そうだね……もう凛ちゃんが、そのメンバーを誘っているよ。もちろん、オデットさんとお義母様も」
何ですと!母さんを誘っただと?確かに母さんは凛やユリアを可愛がっていた。凪さんの事も気に掛けていたし。
「ちなみに母さんはなんて言っている?カリナは平気か?」
何がとは言わない。でも、嫁姑問題って旦那は気付かないって言うし。
何より船内の偉さ順位が二位になってしまう……オデットさんがいたら三位か。最近カリナに頭が上がらないし、両先生にも頭が上がらないんだよね。
領主が一番偉い?他所は他所、うちはうちなんです。
「あたいは助かるな。お義母様は、作法とか教えてくれて助かるんだ」
まあ、カリナも結婚前から城に出入りしている訳だし……なんか家庭内でのヒラルキーがどんどん弱くなっていく気がするんですが。
「後はエレファントエンペラーの皮を手に入れて、なめすとなると時間が掛かるな」
時間稼ぎをしたい訳じゃない。でも気持ちの準備って大事じゃん。
「それなら問題ないよ。オデットさんが狩ってきてくれたから」
……買ってじゃなく、狩ったのね。なんでも谷がフライングシップを操縦して、生息地に行ってきてくれたそうだ。
巨大象を一人で倒すメイドさん。
「贈り物はヴェルデと相談して、日本から持ってきた野菜や果物の種を、サンダ先生とドンガからの贈り物にすれば良いな」
ビタミンB1が豊富で、日持ちがする野菜や果物が良いと思う。
◇
今からトラブル起きてくれないかな?……絶対にこれアウトだろ!
出来上がった鞍は、見事な造りだった。うん、造りは良いよ。
「せ、背中に乗る仕様なんだ。キンウロコ様の許可降りるかな」
鞍には座席や風防がついており、安全だと思う。でも、キンウロコ様の背中に乗るのはアウトだと思うの。
「問題ないぞ。ってか、キンウロコ様の身体に合わせて作っているんだぞ。協力がないと無理だろ……俺達はクロカゲさんに乗るからな。絶対に土足で乗るんじゃねえぞ。あと足も綺麗にしておけ」
ボルフ先生は奥様と参加。俺が打診する前に決まっていました。
「荷物の脇に乗って行くのは、駄目ですかね?」
身体を縄に括り付けておけば安心だし。
「駄目だ。キンウロコ様の好意を無駄にするんじゃねえ」
今回、一番乗り気なのは、他ならぬキンウロコ様。ワノ国の竜に俺達を自慢したいらしい……里帰りした孫が連れて来た友達を観光案内するノリでした。
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