主役は譲ります
お久しぶりです
ミスリルゴーレムは遺跡を守る様にして、動いている。コースはいつも同じ……歯車と揶揄されたサラリーマン時代を思い出す。あの頃は上をうらやんでいました。
動力がないと歯車は動かない……でも、動力となった今は活動しっぱなしです。
「サンダ先生、ここに落とし穴を作って下さい」
遺跡の周囲は硬い岩盤なので、人力で穴を掘るのはきつい。良くここに地下遺跡を作ったよな。
(硬い岩盤に守られていたから、遺跡が残っていたんだろうな)
だから、今の時代でもゴーレムが現役で動くと……ふと思った。領主の定年って何才なんだろう。
「お任せ下さい……アースホール」
流石はサンダ先生。理想的な大きさだ。ミスリルゴーレムの巡回路に落とし穴が出来上がりました。
次は……。
「トラッシュスライム君、今日はここに泊まってね」
トラッシュスライムを落とし穴に入れて、上から蓋をする。
「おい、ジョージ、それじゃスライムが逃げちまわねえか?」
ボルフ先生は、怪訝そうな顔で聞いてくる。このジョージ・アコーギが、そんな初歩的なミスをするとでも?
「トラッシュスライムは狭くて、湿気がある所を好むんです。そしてこの辺りには遮蔽物がない。引っ張り出さない限り、スライムは穴から出てきませんよ」
心配なのはスライムの量。今やトラッシュスライムは工業ギルドの大事な稼ぎ頭。領主と言えども無駄遣いは許されないのです。
穴の向こうにジョージ特製トラップを設置。我ながら低コストで完璧な仕掛けだと思う。
「相変わらずせこいと言うか、小ずるいと言うか……それで、どうやってミスリルゴーレムを罠に誘導するんだ?いくら巡回路と言えども、ピンポイントで落とし穴の上を通らねえだろ」
そこも策を練っている。細工は流々仕上げを御覧じろってね。
「あのミスリルゴーレムは魔石で動いています。だから、魔石を置いておく事で、罠まで誘導するんです」
魔石をエネルギーにしていると言っても、かなりの低燃費らしい。ヘゥーボの調べでは、ゴブリンの魔石で一年は動けるらしい。
しかも設置したのは、ボーブル特製の純粋な魔石。ゴーレムでなくても、欲しがる一品だ。
「ゴブリンの死体がかなりあったもんな。エネルギー切れは期待出来ないって事か……それで、どうやって魔石を他の魔物から守るんだ?」
このジョージ・アコーギが、そんな初歩的なミスを……やばい、どうしよう。
「ド、ドラ糞を撒いておけば、なんとかなるかと……」
やばい。忘れていた。多分、大丈夫な筈。
「こんな乾燥した所におけば糞が乾いて、臭いも薄まると思うぜ。なにより、鳥系の魔物に狙われたら、どうするんだよ?ほれ、早速嗅ぎ付けて来たぜ」
言うと同時にボルフ先生は上空にナイフを投げる。そしてコンドルみたいな魔物が落ちて来た……考えるんだ俺。
「か、案山子を設置すれば」
魔物も警戒して近づいてこない筈。
「引き抜かれてお終いだっての……魔物除けの結界を張っておく。今度からは、きちんと企画書をだしておけ」
俺は公爵様で、ボルフ先生は騎士だ。公的には俺が主でボルフ先生が従。でも、実際は俺の方が立場が弱いのです。
「と、とりあえずこれで完成です。観客席で谷達を待ちましょう」
谷はブン・ターカーさんやランドサイドの人間を迎えにいっている。ミスリルゴーレムが巡回してくるまで、まだ時間があるのだ。
◇
観客席はトラップから少し離れた所に作った。ここは暑いから、冷やしたワインやお茶を売らせてもらいます。
罠の右後方に谷とアニエスさん組。左後方にはサンダ先生、ミューエさん組、ドンガ、凛組が待機。アニエスさんが魔力隠蔽の結界を張っているから、ゴーレムに気付かれる心配はない。
そして罠から少し離れた所にアイン、ユリア組がランドル騎士団と待機。
当初の予定と少し変わりました。だって、女性陣が自分も参加するって聞かないんだもん。
つまり、俺の隣には……。
「公爵様、自ら餌になるなんて……帰ったらお義母様とオデットさんに報告だよ」
カリナがいる訳で……お願いだから、オデットさんに報告するのだけは止めて下さい。
直前にボルフ先生がカリナに耳打ちしていたのが気になります。
「適材適所ってやつさ。ここが一番指示を出しやすいんだよ」
俺がいるのは、ランドル騎士団とトラップの中間地点。丁度、全員の顔が見える距離だ。
「何時になったら、あたいは安心出来るんだろうね……来たよ」
カリナの獣耳がピクリと動く。ハンドサインで全員に合図を送る。
……間近で見るとゴーレムさんの迫力が凄いです。だって金属の塊が動いているんだぜ。
「予定ポイントに入った。谷、アニエスさんお願い」
俺の言葉を聞いた谷とアニエスが動く。
「アニエス行くぞっ……コントロールウインドウ」
ゴーレムが落とし穴の向こうにある魔石を拾おうと瞬間を狙って合図を出す。
谷君、アニエスさんの協力もあり今じゃ一端の魔術師に成長。俺より魔力が高いってずるくない。
突風がゴーレムを襲う。後方から風を受けた所為で、ゴーレムの巨体がぐらつく。面積が多い分、風の影響も受けやすいのだ。
「落とし穴に落ちた……サンダ先生、ドンガ、頼む」
落とし穴の中にはトラッシュスライムが仕込んである。つまり潰されたトラッシュスライムはゴーレムの足に絡みついて、固まるのだ。
「今です……ドンガ君、行きますよ」
流石はサンダ先生、ゴーレムが穴から足を出した瞬間を見逃さなかった。
「分かりましただっ」
ドンガ、お前俺に敬語使った事ないじゃん。その差はどこから来るんでしょうか?
ドンガの一撃で前方に倒れ込むゴーレム。そこにサンダ先生……ミューエさん、凛の追撃が加わる。
勢いよく倒れ込むゴーレム。
「よし、食い込んだ。ほーれ、ゴーレムちゃん、魔石はこっちだよ」
俺が地面に設置しておいたのは楔形加工したミスリル。先端にはダイヤモンド粉末を仕込んであります。
「音声を認識しないんだから、挑発しても意味ないだろっ!お姫様抱っこされたくないんなら走りなっ!」
公衆の面前で、それは止めて下さい……ちくしょう、ボルフ先生の仕業だな。
必死で走ってアインの元へ。
「ゴーレムに楔が刺さっていますよね。あそこに打撃を加えて下さい」
アインがゴレームの前に出て注意を引き付ける。
「よそ見をしていると痛い目に遭うっすよ。そこ、もらうっすよ」
ユリアの投げたミスリルナイフが、ゴーレムの飾りを削り取る。すかさず拾い上げるユリア。しかも、懐にしまいやがった。
「お任せ下さい。ランドル騎士団、俺に続け!」
ブン・ターカーさんとランドル騎士団の打撃がゴレームに降り注ぐ。楔から亀裂が入り、見事ゴレームは真っ二つに。
観覧席からは楔は見えない筈。つまり、あちらからは騎士団がゴレームを倒した様に見えるのだ。
新作始めました なんと恋愛小説です 胸を張って君に好きと言う為に です。良かったら読んで下さい。後々嫌われ者読書がクスリとする展開があるかも?




