新婚旅行その2 無茶振り
昔フェルゼンに行った時は、こそこそと隠れる様にして行ったんだよな。でもランドルでは国をあげての歓待だ。
まあ、立場も実績も違うから当たり前なんだけど。
「ようこそ、ランドルへ……それとカリナ、おめでとう」
出迎えてくれたのは、ラフィンヌ様。カリナとは文通で友情を育んだそうで、久し振りの再会で盛り上がっている。
「ご招待ありがとうございます。大勢で押し掛けて申し訳ございません」
今は同等の立場だけど、将来はホートー夫人となる方だ。
調子に乗らず敬語を使います。
「何言ってるの。あの戦いの功労者ばかりじゃない。むしろ有難いわ……相談したい事もあるしね」
うん、嫌な予感しかしない。でも俺は招待客、しかもメインゲストだ。そんな無茶ぶりはされないと思う。
「私に出来る事なら、なんでもしますよ。それとフライングシップですが、工業ギルドの者が説明をしますので」
ランドルの研究者の圧が凄いのです。秘密にしたい事もあるので、リリルとヘゥーボに任せよう。
「助かるわ。ファルコ伯爵ですわね。お初にお目に掛かります。お孫さんはあちらでお待ちですよ」
ラフィンヌ様、気を使わせてすいません。ファルコ伯爵は一刻も早く、イリスさんに会いたいらしくそわそわと落ち着かない。それを優しくなだめているサユリママとはまるで永年連れ添った夫婦の様だ。
「それなら私はお邪魔ですね。どこで待てばよろしいでしょうか?」
ボーブルでは恋愛相談の達人と慕われているサユリママだけど、その正体は魔物……の長老。使節団の一員として認められた事自体が奇跡なのだ。
「い、一緒に来てはくれないのか?」
途端に不安気になるファルコ伯爵。初めての外交じゃないんですから……サユリママの安全も心配なんだろうけどさ。
「私が行くとネルケ君も同席しなくては駄目になるんですよ。まずはイリスさんとゆっくりお話しをして下さい」
流石は長老、諭し方が上手い。なんかフライングシップの次にサユリママに視線が集まっていないか?
「サユリお姉様、その節は大変お世話になりました。ぜひ、お姉様に相談したいという女性が大勢おりまして」
それで主に女性陣が見ていたのか。ラフィンヌ様はサユリママに相談して、ホートーを射止めた。それにサユリママの恋愛相談所には外国からも客が来ている。
その人気も納得だ。そして俺の注目度は、さらに下降と。
「私でよろしければ……貴女はお手紙をくれた方ですね……まあ、よかった。おめでとう」
一瞬で女性陣に取り囲まれるサユリママ。その人気は芸能人顔負けだ。
◇
俺が魔王戦で一番活躍した筈。みんなは体験談を語りにそれぞれの会場へ……。
「ジョージ・アコーギ卿ですな。ようこそ、ランドルへ。自分はランドルで騎士団を率いているブン・ターカーという者です」
なのに俺は髭のごついおじさんと話し合いをしています。
(ランドルの騎士団長か……嫌な予感しかしね)
ランドルで優遇されるのは、魔力の高い者。それでも詠唱中は無防備になるので、護衛の騎士は必須。
当然、ランドルの騎士団は少数精鋭となる。
「ジョージ・アコーギです。それでお話とは」
装備の相談なら嬉しいな。今なら領主権限で、格安で提供しちゃうよ。
「話が早くて助かります。魔法使いの連中は無駄に話を長くしていけません」
いや、どちらかというと俺もそっちのタイプなんですが。
「近接戦でなら、魔法使いは騎士には勝てません。話術だけでも優位に立ちたいのでしょう。それで本題の方は?」
ブーンさんは色々とストレスが溜まっている様だ。まあ、上司は魔法使いばかりだもんね。
「これはすいません。実は魔法を無効化させるミスリルゴーレムが現れまして、騎士団としてもほとほと手を焼いてるのです」
なんでも遺跡を発掘したら、大昔の魔法使いが作ったゴーレムを目覚めさせてしまったらしい。魔法が全く効かず、騎士団に討伐が回ってきたとの事。
でもミスリルゴーレムには武器も効かなくて困っていると。
それを俺に倒せと……まじかい?
短いですが、活動報告で見ていただきたい事があったので それとノクターンで連載始めました




