修学旅行4
お久しぶりです 新作十万文字書き溜めしていました 転生魔王は巡り合う です
さて、どうしよう。俺は公爵だ。領内だけじゃなく、校内でも一番偉い。立場上、ホテルの一番高い部屋に泊まらなきゃいけない。
そうしないと、他の生徒が泊まる部屋のランクを落とさなきゃいけなくなるそうだ。
(過去の俺の馬鹿……なんでこんな贅沢な部屋を作ったんだよ)
今晩俺達が泊まるのは、ボーブルホテルの最高級スイートルーム……豪華過ぎて落ち着かず、一歩足を踏み入れた瞬間から帰りたくなりました。
一番最悪なのはベッド。無駄にでかくて柔らかい。こんな所で寝れる訳がない。
畳で雑魚寝の方が熟睡できる。
「ドンガ、お前身体大きいから、このベッドを使え」
この部屋に泊まるのは俺・ドンガ・ヴェルデ・ヘゥーボの四人。この中で一番でかいのは熊人のドンガ。ベッドを譲るのは不自然じゃない。
忠義心に厚いアイン君なら代わってくれるかもしれないが、シロー君と旧交を温める為、自室に泊まるそうだ。
「おでは従者用のベッドで良いだよ。主用のベッドに寝るのは騎士として失格だど」
……昔なら喜んで寝てくれたのに……それならヴェルデだ。
「ヴェルデ、ここはお前の所の客も使っているんだ。寝心地を確かめる必要があるじゃないか?」
好奇心の塊であるヴェルデなら食いつく筈。てか、食いついて下さい。
「評判はお客様から聞いていますので、大丈夫です。なにより公爵様を差し置いてベッドに寝たなんて世間に知れたら商売に響きます」
ここを使うのは猿人の貴族が多い。評判を伝える方が得策なのかも知れない。
こうなれば……。
「ヘゥーボ、このベッドにはマジックアイテムを使っているんだぞ」
企業秘密だけど、背に腹は代えられない。
「知っていますよ。それは工業ギルドで作ったんですから……依頼主であるジョージ様が使って頂かないと、ギルドとしても困ります」
今やヘゥーボはアイゼンさんの右腕となり工業ギルドを切り盛りしている。ハンマー家に婿入りは確定だと思う。
「……仕事を思い出した。ちょっと海の家の事務室に行って来る」
あそこには俺専用の布団がある。あっちの方が体に合う。
「止めないだども、この階の見張りをしているのは、オデット様だど……止めた方が良いと思うんだな」
なんでオデットさんがホテルの見張りをしているんだ?あの人キンウロコさんにも勝ったんだぞ。
「なんで?母さんの護衛をしてる筈じゃ」
修学旅行の見張りなんて先生で十分だろ。オデットさんが守っていたら、難攻不落過ぎて誰も近づけないぞ。
「もう少しご自分の立場を考えて下さい。もし女子生徒に侵入されたら一大事なんですよ。ボーブルの税収や技術は、貴族にとって垂涎の的です。娘に既成事実を作らせて嫁にねじ込む位してきますよ」
ヴェルデはそういうとため息を漏らした。
昔はキスって聞いただけで顔を赤くしていたのに……純情タヌキ小僧も今やリア充。
(なにもしなくても部屋に入って大声をあげられたらアウトか……オデットさんなら同性だからセクハラとか言われないもんな)
その前に男性でもオデットさんに勝てる人が存在しないと思う……廊下が駄目なら外から逃げるのはどうだろうか?
「ちなみに空中はオデットさん特戦隊のサキュバスさん達が守ってくれているそうですよ」
がちで隙がないのか。大人しく寝るしかないと修学旅行の夜と言えば枕投げ……もう枕投げする年じゃないしな。
恋バナ……この面子だと、ただのノロケ合戦になってしまう。
「明日の予定は地引き網体験とドラゴンショー見学だな。朝早いから寝るか」
魚介の他に肉や野菜も用意している。ボーブル物産の魅力をピーアールしよう。
◇
修学旅行の準備で疲れが溜まっていたらしく、ベッドに入った瞬間爆睡してしまった。
「……朝焼けの海は何度見ても最高だな。海は穏やかだし絶好の地引網日和だ」
今度こそアジのたたきをオリゾンに広めるんだ。
メニューにはないけど、公爵の力を使ってねじ込んでやる。
……認めよう。俺は既にカリナに手綱を握られ胃袋を掴まれている。
「魚は三枚におろして……頭や骨はスープに使うよ。何かあったら困るからお刺身はなしで」
公爵夫人がコックにテキパキと指示を出していく。
「分かりました……流石は奥様だ。調理の指示が的確だよな」
「何より食べる人の事を第一に考えていらっしゃる」
「本当にジョージ様は良い奥様をもらわれた。カリナ様がいる限り、ボーブルは安泰だぜ」
元料理人だけありカリナはコックやハウスキーパー隊から慕われている。下手すれば俺より人気があるかもしれない。
「ボルフ先生、動いたら駄目ですか?」
夫人がバーベキューを取り仕切る中、領主は海の家に軟禁されていた。
「俺の目の前で、動く度胸があるんならな。公爵のお前が動いたら、他の生徒も動かなきゃいけなくなるだろうが!貴族の子供が火傷したら、どうするんだよ」
男子生徒はまだ良い。女子生徒が火傷したら、うちの責任になってしまう。だから今回は焼けた物を好き勝手にとる形にした。
「……ワノ国から手紙が来てますね“エンドで流行っている病について相談したい”……返信だけにしておくか」
手紙に書いていた症状を見る限り脚気だと思う。でも初見でそこまで介入出来ないし、文化を変えるのは容易ではない。
「ワノ国か……結構な日数が掛かるんだろ?」
谷が行った時は片道二週間くらい掛かったそうだ。流石に二週間も領地を空けられない。
「ええ、ドンガの事もあるので一回は行きたいんですけどね」
向こうから両親を連れてきてまた送るとなれば、二往復で八週間。俺も谷もそんな余裕がない。
「ドラゴンに相談してみたら、どうだ?前みたいに運んでもらえば問題ないだろ」
確かにドラゴンは遠くまで狩りにいくらしい。流石に運ばれながら海上を行くのはリスクがあり過ぎる。
「ギリアム商会を通してアドバイスでも送っておきますよ」
ドラゴンで乗り付けたら確実にパニックになると思う。
◇
……乗り付けないでもパニックになりました。普段のドラゴンショーは安全を考えて、遠めから見てもらっている。
今回は希望者は間近で見れますって形式だ。でも貴族の子供は魔物すら見た事がない奴が殆んど。中には馬より大きい生き物は初めてっていう人もいた。
「あそこまで良いリアクションをしてもらえると、アーティスト冥利につきますね」
そんな中アカダマさんは大声で歌い低空飛行や火炎放射のサービス付き……場内は軽くパニックになりました。
「ありがとうございました。アカダマさんはワノ国って知っていますか?」
ドラゴンは長命な生き物だ。聞いた事位あると思う。
「知っていますよ。若い頃は良く遠飛しました。ワノ国に用事があるんですか?」
遠出じゃなく遠飛なのね。イジワールにはドンガも行ったんだよな。
「俺の配下にドンガって熊人がいるじゃないですか。あいつの婚約者がワノ国出身なんですよ。一度挨拶には行かせたんですが、向こうの親御さんがこっちの生活を見たいらしくて」
日数がかかるから悩んでいるんですって言おうとした瞬間。
「ここで挨拶の練習をしてましたよ……私も挨拶に行きたいですし、背中に乗っていきませんか?」
イジワール領に初めて行った時、ドンガはアカダマさんに懐いたらしい。家では長男だから、両親に甘えられない。そんなドンガをアカダマさんは孫感覚で可愛がったそうだ。
その所為かアカダマさんは凄い乗り気。
ありがたい……でも怖い。そして断り辛いです。
(頭をフル回転させろ。失礼にならない様に断るにはどうすれば良いんだ?)
「あの何人くらい行けるのですか?」
オークって耳が良いんですよね。離れた所で護衛してくれていたサンダ先生が、飛びついてきました。
「そうだ。サンダ殿の新婚旅行をワノ国にしてはどうですか?ドンガ坊も凛ちゃんも皆に好かれています。編隊を組んで行けば大丈夫ですよ」
外野が俺を置いて盛り上がっていきます。ここから打開する方法を教えて下さい。
新作転生魔王は巡り合う は六月頭まで毎日予約投稿しているので、その間嫌われ者と悪役令嬢も書いていきます




