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嫌われ者始めました〜転生リーマンの領地運営物語〜  作者: くま太郎


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ジョージと魔石

 俺の言葉を聞くと、その人は驚いたのか一瞬目を丸くした。そして堪えきれないと言った感じで笑いだす。やがて明るい笑い声が部屋に木霊した…笑い声の主は爺ちゃんとボルフ先生、決してマリーナとアランではない。俺は見合いの報告をしに、先生達と爺ちゃんの館に来たのだ。 


「クックック、ゴキブリ百匹分とは随分手酷く嫌われたな」

 笑い過ぎた所為か、爺ちゃんの目に涙が薄っすらと浮かんでいる。真面目なサンダ先生はリアクションに困っているけど、ボルフ先生は腹を抱えて笑っていた。


「マリーナは一回もジョージ様と目を合わせませんでした…お前、良くあの空気で一時間も我慢できたよな」

 ボルフ先生の言う通り、マリーナとのお見合いは一時間で終わった。でもマリーナと会話した時間は正味五分もなかったと思う。それでも気まずい空気にはならなかった…いや、俺がさせなかった。サラリーマンには今一盛り上がらない場をなんとか繋ぐ会話術が必須なのだ。


「アランに二人で散歩でもしてきたらどうだって、言われた時は本気で困りましたよ」

 アランに言いたい、お前と違って息子(ジョージ)はイケメンじゃないんだぞと。尤も、マリーナの具合が悪くなったから散歩は中止になったけど。但し、マリーナは帰る時が一番元気で良い笑顔でした。多分、マリーナが日本にいたら¨今日、田舎から弟が来てるの¨そんなお断りの定番台詞を笑顔で喋ると思う。


「あのジョージ様は平気なんですか?」

 真面目で優しいサンダ先生は、俺がマリーナに嫌われて傷付いていると思っていたるんだろう。

 

「だって向こう(マリーナ)はまだ子供なんですよ。本気になる方がヤバいじゃないですか。劇に出てくる悪役を毛嫌いする様な感覚だと思いますよ」

 しかし、俺に恋人が出来たら浮気になるから、とっとと婚約を解消したいんだけど…

(待てよ、俺の恋人って何歳くらいがベストなんだ!?俺の個人的ストライクゾーンは二十四才から四十才…精神年齢的にはベストだけど実年齢だと(あね)さん過ぎるか)

 少なくとも今のマリーナは恋愛対象から外れ過ぎていて、恋愛感情より保護感情が出てきてしまう。


「随分と冷静に割り切っているんですね」


「見た目は餓鬼ですけど、中身は勤め人(リーマン)のおっさんですからね。割り切らなきゃ、やってられない事が沢山ありましたよ」

 仕事ばかりにかまけていたら彼女に振られた事があったけど、振られたからと言って納期は伸びてくれない。割り切ってキーボードを叩かなきゃ一歩も前に進めないのだ。


「俺としたら可愛い(ジョージ)穀潰し(ライテック)と親戚にならなくて安心したよ」

 マリーナの事を嫌ったり憎む気はないけど、泥棒に追い銭を渡す気は更々ない。しかし、今の俺はただの餓鬼。前世の知識があるだけの無力な餓鬼でしかない。その為には力を付ける必要がある、単純な戦闘力だけじゃなく経済力や権力を持たなきゃいけないんだ。

  

「爺ちゃん、マナプラントの調子はどう?」

 マナプラントはキミテにも出てきた植物系の魔物だ。蔦を自在に操り、プレイヤーの魔力を吸い取ったり魔石を盗んだりするので、キミテでも嫌な魔物の代表格とされている。そしてこっちでもマナプラントは嫌われていた。マナプラントは魔石や魔力を吸収して、成長する。知らぬ間に魔石保管庫まで蔦を伸ばして倉庫が空っぽになっていたなんて事もあるらしい。


「バッチリだ。まさかマナプラントがあんな風に使えると思わなかったよ。これで屑石の処理にも困らなくなるし、何より事故を防げるのが一番有難い」

 魔石の使い方は多岐に渡る。魔法の触媒として使われる事もあるが、日常生活でも多く使われていた。例えば火の魔石で煮炊きをしたり、地の魔石に術式を刻み込んで衝撃吸収の魔石に加工したりするのだ。魔石は人々の暮らしに深く根差しており、魔石なしには暮らしが成り立たないとさえ言われている。

 ただ魔物が残す魔石は、形が歪な物が多く加工しなければまともに使えない。その際に、どうにも使えない小さな欠片が出てしまう。それが爺ちゃんの言った屑石だ。


「闇の魔石は特に屑石が多く出ますからね。ジョージ様の発見はオリゾンだけではなくレコルト全土に大きな影響を与えますよ」

 闇の魔石は他の魔石にはない特有の性質を持っている。どの属性の魔力も通さないので、絶縁体代わりとして使われているのだ。だから煮炊きする際に火の魔石を固定する台座等に使われている。その為、どうしても他の魔石より屑石が多く出てしまう。


「ああ、屑石が引き起こす事故はかなりの数だ。それに保管するにしても場所を取るし、処理費用も莫大だからな」

 屑石とは言え魔石だ。火の屑石が原因で大火となり多数の死傷者をだした事故もあったそうだ。


「しかし、まさかマナプラントに屑石を食わせるとはね。しかも成長したマナプラントから新たな魔石が取れるんだから驚いたよ」

 そう、俺が思い付いたのはマナプラントに屑石を食べさせると言う処理方法。 しかも、マナプラントは摂取した魔石に応じた属性に成長してくれた。


「それとマナプラントを加工すれば魔石運搬用の箱が作れます…爺ちゃん、これで融資をお願い出来るかな」

 領地を経営するにしても、新たな事業を起こすにしても先立つのは金だ。本当ならアランからの援助が入る筈なんだけど、それを貰ってしまったらマリーナとの婚約を破棄出来なくなってしまう。爺ちゃんからも援助を受けられると思うが、それを快く思わないコーカツ家の家臣もいるだろう。しかし、俺が金になる技術を提供したのなら、話は別だ。ない知恵を絞り、色々試して俺はボーブルを独立領にする。


「ああ、これなら誰にも文句は言わせない。ジョージ、頑張れ。話は変わるが、お前の記憶だと、この後どうなっていくんだ?」

 

「この後って言われても物語が始まるのが四年後だけどそれで良い?」

 キミテはオリゾンにある小さな村バウムから始まる。バウムは大きな依り処の木があるだけのなんの変哲もない小さな農村。主人公の父親はかつて王宮で兵士をしていたが、退役をして故郷のバウムで農業で生計を建てながら暮らしているって設定。


「それおかしくねえか?王宮の兵士は定年まで雇用されるんだぞ」

 ボルフ先生の言う通り、兵士を終えても雑務をこなす為、そのまま雇用が延長されるらしい。


「確か王宮の権力争いに巻き込まれて退役に追い込まれたって設定でしたよ」

 しかし、それは正義感の強い主人公の父親を疎んでの策略だった。その縁もあり、主人公は王宮騎士団の団長に可愛がられたりもする。


「それこそおかしいです。ただの兵士が権力争いに巻き込まれるなんてあり得ませんよ。もし、権力争いに巻き込まれたとしても、団長職にある人なら距離を置きますよ」

 王宮騎士団の団長になるには、子爵家以上の家柄でなくてはいけないそうだ。団長には実力も必要だけど、兵士を一定数動員出来なくては駄目らしい。つまり、自らトラブルの元に近付いたりはしないと。


「主人公が父親に鍛えられていて戦いの基礎が出来ているって言うのと、小さい頃にマリーナと会った事がある設定にしたかったんですよ」

 ちなみに主人公とマリーナはその頃に結婚の約束をしており¨僕の婚約が先だからお前の婚約は無効になる¨と言うとんでも理論を展開してくれる。勇者には法手続きは無効なのかもしれない。


「王宮を放逐されてライテック家と繋がりがある兵士か…確か麦騒動の時にライテック家に賛同した兵士が十数人放逐されているぞ。ジョージ、続きを頼む」

 流石は爺ちゃんだ、政治関連にも詳しい。なんでも麦騒動が起きる頃には、ライテック家は兵士を養えなくなっていたらしく、色んな所から出向扱いで兵士が貸し出されていたそうだ。


「バウム村の近くには小さな祠があるんですよ。普段は鍵が掛かっているんですが、ある日主人公が祠に行くと何故か鍵が外れるんです」

 何故、鍵が外れたのかと突っ込んではいけない。運命の悪戯と言う奴だ。


「アサシンとしては突っ込み満載なんだが続けてくれ」


「祠の中には小さな珠が奉られているんですよ。主人公が近づくと突然珠が光り始めて神使ピュリア・アイデックが復活するんです。主人公はピュリアの導きにより王国の高校に入学、そこでヒロイン達と出会うんですよ」


「神使のピュリア…まさか勇者ブレイブ・アイデックの神使ピュリアですか?」

 サンダ先生が驚くのも無理はない。ピュリアはかつて勇者と共に戦った神使。勇者の血に反応して封印が解けたと言っていたが、実際異世界に来てみると勇者の子孫って沢山いるんだよね。


「ええ、フェアリータイプの神使で人気もありましたよ。そして入学式でマリーナと出会うんです。しかし、入学式の帰り道でマリーナはゴブリンに襲われてしまうんですよ。そこに…」

 所謂戦闘のチュートリアルだ。作り手が言うのもあれだが突っ込み所満載だから強引に押し進める。


「そこに主人公が駆け付けるって言うんじゃねえよな。王都にゴブリンが出る訳ねえだろ!!」

 甘かった、ボルフ先生が見逃してくれなかった。ボルフ先生の言う通り、王都の警備は厳重でゴブリンなんかが侵入しようとしたら警備兵に瞬殺されてしまう。


「その時、ジョージ様はどうしていたんですか?マリーナさんに良い所を見せる絶好の機会じゃないですか」

 このイベントを駆け足で説明しようとしたのにはもう一理由がある。いや、ここからジョージの不遇な扱いが始まってしまうのだ。


「マリーナと一緒にいますよ。そしてゴブリンに返り討ちにされて気絶します」

 何故かマリーナは帯剣をしておらず、運悪く魔力も尽きていて魔法も使えない。そこでジョージがゴブリンに立ち向かうが、レイピアを当てる事すら出来ずに戦闘は終了。ちなみにジョージはドンガ達に運ばれて退散する。主人公がゴブリンを倒してマリーナの好感度が上がるのだ。


「ゴブリンに返り討ちだと?今のお前でもゴブリンクラスなら余裕で勝てるんだぞ!?」


「仕方ないでしょ!!これで主人公(プレイヤー)は格好良い、ジョージは格好悪いって、印象づけられるんですから。そして二年生の夏に六魔枢の一人が復活、三年の二月には魔王を倒す事になります。魔族に関しては別の次元から攻めてくるから確認のしようがないですし」

 きちんと卒業式に間に合うのはお約束である。


「今出来る事をやるしかないんだな。ジョージ、気を抜くなよ。サンダ、ボルフ、ジョージの事を頼む」

 少なくともゴブリンに負けて気絶するのは避けたい。

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