ヴァルムの決断
新年あけましておめでとうございます。更新出来る位には落ち着きました
グルウベの領地も残るは首都のみとなった。首都は遠巻きにゴーレム塀で囲んでいる。
俺が今いるのは監視台ゴーレムの屋上。監視しているのは、グルウベ城。ゲームでは、グルウベ城が魔王城へと変化する。
魔王城の出現は、魔王ゴライアスの降臨を意味しているのだ……魔王降臨でバタバタしている隙をついて攻め込むというせこい作戦です。
監視している俺に近付いてくる男がいた。
「しかし、お前も悪趣味だよな。飢えた民の目の前で、大規模な祭りを開くなんて絶対に地獄行きだぜ」
挨拶を省いて嫌味を言って来たのは、王族のホートー。ホートーはグルウベ侵攻作戦の司令官である。ちなみに俺はホートーの副官に強制任命され、逃げ場を失いました。
「逃亡してきたグルウベ民は温かく迎え入れてますよ。それに兵士の慰労も兼ねてますので」
グルウベから逃げて来る民は日に日に増えてきている。それは俺の鑑定業務の増加も意味する訳で……ぶっちゃけ、きついです。
「塀一枚を挟んで、向こうは地獄で、こっちは酒池肉林の天国……招き入れたくても、残っているのは狂信者レベルの民だ。下手に追い詰めれば、手痛いしっぺ返しを喰らっちまうな」
ホートーがグルウベの民を助けようとしているのは、正義感もある。でも一番の狙いは戦力の低下だ。
「自ら魔物の餌になっている人もいると聞きます。正に地獄ですよね」
グルウベで残っている純粋な戦力はアサシン隊と代皇の側近位だと思う。それを魔族で穴埋めしているのだ。
「それにしても、サキュバスって凄いよな。石頭の神官長を一晩で篭絡しちまうんだからよ……あーっ!俺もサキュバス娼館で遊びてー」
兵がグルウベの女性を襲わないようにサキュバス娼館の出張所を作ったんだけども、これが驚く程の大盛況。
今まで禁欲生活を送っていたグルウベの神官も、どハマりしているらしい。ホートーの言う通り、文字通りここは酒池肉林の地なのだ。副官は恩恵に預かれていないけどね。
ちなみにランドルの代表はホートーの婚約者でもあるラフィンヌさん。お陰でホートーは、サキュバス娼館に通えていないのだ。
「ムート伯爵がサキュバスの長老と結婚を発表してから、更に利用者が増加しましたもんね」
お堅いフェルゼン帝国の騎士もムー君がサユリママとの結婚を発表してから、サキュバス娼館に列を作っている。
驚く事に、サユリママは二十代前半レベルまで若返っていた。そしてサユリママの説得と前回の戦での功が認められ、ネルケとイリスさんとの婚約が正式決定したそうだ。
「そういや明日の前線担当はヌボーレ家だな…………一応、お前も同行しろ。ヴァルムの奴も逃げた女の事なんて忘れて、サキュバス娼館で遊べば良いのによ」溺れる者は藁をも掴む
ヴァルムは、あれ以来修行僧並みにストイックな生活を送っているそうだ。
グルウベサイドはマルールさんに頼み込んで、ヴァルムを誘惑させるだろう。つまり、明日の俺は寝返り防止要員なのだ。
「それだけマルールさんの事が好きだったんでしょうね。身勝手な愛情表現ですけど、好きにさせておくしかないですよ」
焼け木杭には火が付かなきゃ、良いんだけども……。
とりあえず、ヴァルムに明日同行する事を報告に来ました……ヌボーレ陣地が、物凄くピリピリしています。
「ジョージ君、良い所に来てくれたね……ちょっと相談があるんだ」
ヴァルムは飯の量を“一番貧しい民と同じにする”と言って減らしているらしい。その所為で、かなり痩せていた。自己満足な罪滅ぼしだけど、心配になってくる。
そうして、こう来たか……今から戻って対応策考えなきゃ。
◇
前線担当を命じられた家の役割は、大きく分けて二つ。攻め入ってくるグルウベとの戦闘。そして避難民の確保だ。普段なら収容施設に入居してもらってから、俺が鑑定して保護するかを判断している。
でも、今日は現場で判断しなきゃいけない。流石に危ないので、護衛が大勢付いて来ています。
「女々しいと言うべきか、一途と言うべきか……両極端だよな」
グルウベアサシン隊が襲ってくる危険性があるので、ボルフ先生も護衛に来てくれている。
「でも、名案だと思いますよ……そこの方、避難民はこっちですよ。本陣には近づかないで下さい。」
フードを目深に被った女性が、ヴァルムのいる本陣に近付こうとしたので、ストップをかける。
素早く鑑定、案の上マルールさんだった。
「ジョージ様ですよね?お願いします。ヴァルム様に会わせて下さい……許されない事をしたのは、分かっています。でも、ヴァルム様がご飯も碌に食べていないと聞いて心配なんです」
マルールの目には涙が浮かんでいた。
おじさんからの評価は、長い台詞を噛まずに良く言えましたねだ。
「ヴァルム様からの言伝を預かっています。“マルールさん、貴方には大変申し訳ない事をしたと思っています。せめてもの罪の償いとして、いくらかのお金をお渡しします。生活の場を用意しましたので、向こうで彼氏と幸せに暮らして下さい”との事です」
いや、大変だったよ。マルールさんが安全に暮らせる場所を確保するのは。オリゾンはもちろんフェルゼンもランドルもアウトだ。
「マルールさん?……嘘ですよね」
マルールさんの目には失望の色が浮かんでいる。そしてマルールさんの周囲にいる連中も動揺していた。
「本当です。それと本陣には絶対に近付かない方が良いですよ。ヌボーレの兵士が殺気だっていますから……マルールさんの彼氏にトロイアーさんも、それで良いですよね?全員掛かれっ」
鑑定をしたら、トロイアーもいたのだ。グルウベ教国アサシン隊隊長トロイアー・フントが。
「忌々しい。ジョージ・アコーギ!せめて貴方の首だけでも、もらいますよ」
俺に襲い掛かろうとするトロイアーの背後に音なく忍びよる影があった。
「おっと、ジョージの守護騎士である俺様を忘れてないか?カリナの嬢ちゃん、マルールを確保してくれ」
影の正体はボルフ先生だ。ボルフ先生がトロイアーを抑えている間に、俺は彼氏と呼ばれて反応した男に近付く。
「騎士?騎士が私に敵うとでも?……グフッ」
トロイアーがボルフ先生に襲い掛かろうとするも、あえなく返り討ちに。
「残念ながら俺は元アサシンだよ。どっかの馬鹿弟子の所為で、六魔枢と戦って無駄に強くなったアサシンさ」
はい、馬鹿弟子は獣人を拘束します。俺も六魔枢と戦ってパワーアップしたので、獣人を拘束する位は余裕なのだ。
「こっちもオッケーだよ……あんたはどうして、こう危ない作戦しか思いつかないのさ?結婚前にあたいを未亡人にする気?」
カリナは俺の目を見るなり、お説教をスタート。逆らうのはとても危険だ。うちは婚約者と姑、小姑の仲が良い。
お説教が、三倍の量になってしまう。
「嘘?獅子人の貴女が貴族の婚約者なの?それにお説教なんてして殺されないの?」
マルールさんは唖然とした目でカリナを見ている。
「ジョージは、そんなケチ……小さい男じゃないよ」
カリナさん、ケチを言い直さなくても良いじゃないですか。
まずはマルールさんの隷属の首輪を解除。そして行動制限の首輪に付け替える。ちなみに隷属の首輪の解除パスワードは、ヴァルムから聞きました。
「さて、あんたらには外国に行ってもらう。旅費はヴァルムの金から使わせてもらうぞ。お前等に掛けた行動制限は罪を犯さない事と、宗教の勧誘をしない事だ」
行き先はムー君の孫娘にして、イリスさんの姉シャルルの嫁ぎ先。リヤン様効果なのか、仲睦まじくやっているそうだ。
丁度、フェルゼンに支援物資を届けに来ているそうなので、帰りの船に乗せてもらうのだ。




