表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嫌われ者始めました〜転生リーマンの領地運営物語〜  作者: くま太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

169/199

ミケの歌

大変お待たせいたしました。言い訳は活動報告に

 チーポの居城は六魔枢最後の砦だけあり、無駄にでかい。ついでに造りが複雑だし、敵も多く出る……筈だった。


「ハピネスクラウンの部屋を出てから、敵と遭遇しませんね」

 城には人っ子一人いないんじゃないかってレベルだ。部屋を出てからゴブリンとすら遭遇していない。


「案外、魔王軍も人材不足なんじゃないか?ここは王都だし、補給も難しいと思うぞ」

 ボルフ先生の発言を聞いて、ピンと来た。魔王軍の最終目的は、魔王ゴライアスをレコルトに呼び寄せる事だ。

 ゴライアス降臨のムービーは、かなり気合が入った物だった。大勢の魔族が召喚陣に魔力を注ぐと、禍々しい光が溢れゴライアスが姿を現す。


「……短い期間で六魔枢が倒されたから、魔王を迎える準備に人手がとられているのかも知れませんね」

 召喚陣に辿り着くと、瀕死の魔族が“これで今までの苦労が報われる。魔王様の御力で、この世界は闇に沈むのだ”そう言って息絶える。十分な準備期間があっても、疲労死するのだ。魔王城はがちでデスマーチ中なのかもしれない。


「邪悪の魔石には、魔力が溜まりきっていない。でも、六魔枢は壊滅状態……このままでは、魔王ゴライアスを召喚出来ないまま、計画が頓挫してしまう。だから魔王軍は総出で召喚の準備をしているんでしょうね。ブリスコラが率いていた軍隊を壊滅出来たのも大きいと思います」

 流石はサンダ先生、きれいにまとめてくれました。

 今思えばあの戦いは、時間稼ぎの側面もあったと思う。普通合戦は長い時間を掛けないと決着がつかないものだ。

 それが予想外の援軍と挟撃にあってしまい、魔王軍は壊滅。さらに司令官のブリスコラも戦死。

 株主お披露目の前にクラッキングで紹介ムービーがおじゃん。しかもチーフプロデューサーが倒れたようなもんか……魔王軍から残業代請求されないよな。


「あんたの巻き込みパワーは、魔王軍にも効くんだね……ハピネスクラウンの前に敵が多くいたのは、苦肉の策だったんだろうね」

 その虎の子も、俺のネガティブパワーで壊滅と……魔王軍にもサービス残業あるのかな。


 ◇

 魔族の城にふさわしくない荘厳で神々しい扉。そこに描かれるのは、神グルウベの降臨物語。


「ここがチーポの部屋です……手筈通り、ここは俺に任せて下さい」

 笑顔でみんなを安心させる……実際は滅茶苦茶ビビってます。

 チーポは強い。空中を飛んでいるから攻撃を当てにくいし、上空から魔法を避けるのは至難の技だ。


「良くここまで来ましたね。褒めてあげましょう。私の名はチーポ。神に逆らいし、愚かな堕神使。さあ、戦いましょう」

 そこにいたのは美青年と言っても、差支えない男性。その背中からは真っ黒な羽が生えている。


「これを見ても、まだ戦うと言えるかな?」

 懐にしまっておいた物を取り出す。それはミケから預かった封筒。


「それはなんですか?……採用通知!?差出人はラブーレ様……だ、騙されませんよ」

 しかし、チーポの手は震えていた。俺はオボロと戦う前にミケに交換条件を出した。それはチーポを神使として、復帰させる事だ。

 ……

「もう一つ。これを頼めるか?これが飲めないなら六魔枢退治はしない」

 要件を書いた紙をミケに手渡す。俺達だけがきつい目に合うのは納得出来ない。神使サイドも巻き込んでやる。

「……検討しといたる」

 さすがに即答はできないか。

「なにも良い思いさせろとは言わない。体裁が整えば良いんだ」

 ……だって、チーポの倒し方思いつかなかったんだもん。

 勝算はあった。チーポが完全に悪落ちしていたら、ミケは断った筈。それに、検討するって事は、ミケもチーポを必要な人材だと認めている証だ。


「信じられないなら、中身を確認してみて下さい」

 厳重に封がしてあるから、俺も何が書かれているか知らない。


「ポーチ・ワンワン ラブーレ農園課長代理補佐として採用する ラブーレ……ラブーレ様、逆さ名を名乗って、堕神使となった私をお側において下さるのですか?」

 今、なんて言った?逆さ名でポーチ?聞き間違いだろうか。


「あ、貴方は魔王軍にスパイとして潜入していた事になっています。受けてくれますよね?」

 疑問は残るが、強引にでも話を進めてやる。疑問は残るが。


「これが神の愛なんですね……ウウゥ……ワオーン!」

 チーポは泣き崩れたかと思うと、思いっ切り遠吠えをした。そこにいたのは、巨大な黒い犬……チーポ・ポーチ ミケ・ニャアニャア ポーチ・ワンワン……そういう事か。


「まさかポーチ様にお会い出来るとは……ラブーレ様の畑をお守りされている神使。それがポーチ様でございます」

 サンダ先生は感涙にむせび泣いているけど、それって番犬って言うんじゃ?


「この馬鹿弟子っ!ポーチ様と言えば、オリゾンいや、レコルトでは知らぬ者がいねえっていう神使だぞ!ミケ様の時といいお前はっ」

 ボルフ先生は、そういうと俺の頭を押さえつけてきた……ボルフ先生も泣いている! いや、カリナもミューエさんも泣いている。


「ミケか……あいつこそ辛かったろうに。きちんと神使の役割を果たして……君らはミケと顔見知りなのか?」

 見知っているってレベルじゃないです。俺がレコルトにいるのも、ミケが原因なんだし。


「い、一応契約させてもらっています」


「さすがはミケだ。魔王軍は、君の活躍でてんてこ舞いさ。ところで、ミケは奥さんと復縁出来たのか?」

 奥さん?あのドラ猫に奥さんがいるのか?


「プライベートな話を聞いた事はないですけど……」

 復縁って事は別れているのか……聞かなくて良かった。


「まだ無理なんだね……ミケの奥さんの名はピュリア。ピュリア・ニャアニャアが彼の妻だ。かつて勇者を導いたピュリアはミケの奥さんなんだよ」

 思わずフリーズしてしまった。

「ねえ、君は今どこで何をしてるの 夜露で体を濡らしてないかな?寒さに震えてないかな? 儂の中の君は、あの日のまま笑顔だけど 今の君はどこで何をしてるの? 君を思うと、儂の胸は切なさで張り裂けそうになるよ‥‥どや、新曲切ない猫ちゃん(ロンリーキャット)゛は?」

「波と一緒に君を追いかけたー遠い夏の日。今でも夢に見ている儂を君は笑うかな?焼けた砂浜で、またノミ取りして欲しいよー無邪気イノセンスサマーー」

「その坂には名もない花が咲くという。儂は坂を超える時、お前を思い出して一筋の涙を零すやろ。涙が地に落ちた時、新たな花が芽吹くんや……失恋ざぁかー」

「君は自由気まま、フェアリー。いつも儂を惑わすよ。そうさ、儂は恋のハンター。今はもういない君の面影を追い掛けて、今日も恋の迷宮をさ迷うのさ。行方不明ミッシング・フェアリー」

 そういや、あいつの歌う歌って、殆んど失恋物だったよな。

 行方不明の妖精ピュリアの切ないミケか……


ミケの歌で忘れている物があったら教えて下さい 一番最初のぷにぷにの肉球以外で

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ