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嫌われ者始めました〜転生リーマンの領地運営物語〜  作者: くま太郎


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調子に乗ると痛い目に合います

 やばい。このパターン絶対にやばい。


「丈治、お前なにソワソワしてんだ?」

 流石は谷崎先生、鋭い観察眼をお持ちだ。


「ジョージ様、ここにはどんなお宝があるんすか?この青いタイルは好事家に高値で売れそうっすね」

 ユリア、もう好きなだけ剥がして良いよ。なんなら宝箱の場所を教えるから、アイン君と二人で取って来て下さい。


「ユリア、オデットさんに言われた事忘れてないだろうな」

 アイン君の言った物騒な言葉おでがに心臓が喉から飛び出しそうになる。

 俺の予定ではカリナ達を撒いて、ヴェルソーとは一人で戦う予定だったんだ。ヴェルソーはマッドサイエンティストな神官で、この城には色んな仕掛けがしてある。それを利用すればパーティーを分断出来る筈……だった。

 でも、谷とアニエスさん、アイン君とユリアも合流して今やパーティーメンバーは総勢十人……振り切れるだろうか?

 いや、振り切るんだ。その為に俺は先頭を走っているんだ。


「忘れる訳ないっすよ。“ジョージ様の挙動が不審です。こういう時は決まって、馬鹿げた行動をなさります。敵城に侵入したら、お側を離れないよう”っすよね」

 流石はオデットさん、お見通しなんですね。オデットさんは、俺が赤ん坊の頃からの付き合いだ。俺の行動なんて、お見通しなのか。


「打ち合わせ通りいくぞ。陣形一だ!」

 ボルフ先生の言葉に合わせてみんなが一斉に動き出す。

 ボルフ先生とサンダ先生が俺の前に踊りでて、谷とカリナがサイドをガード。背後にはドンガと凛。右後ろには、アニエスさん。左前にはアイン君、左後ろにはユリア。

 お前らは俺のSPか!?……いや、アニエスさん以外は俺の部下だから似たようなものなんだけどさ。

(まだ大丈夫だ。ヴェルソーの仕組んだトラップを使えば、パーティーを分断出来る)

 この先にある扉の鍵を開けようとすれば、ワープシステムが発動されて、パーティーが分断されてしまう。もちろん、俺は最短ルートに行ける位置を覚えている。

 後は怪しまれないように罠を発動させれば、オッケーだ。

 ちなみにお約束で、好感度が高いキャラと二人っきりになります。


「この扉、鍵が掛かっていますすね」

 サンダ先生が扉をガチャガチャさせいる。これはチャンスだ。


「自分に任せるっすよ……トラップ付きのドアっすか。この程度のトラップを解除するなんて、朝飯前っすよ」

 俺が出る前にユリアがあっさりトラップを解除してしまった。そうか、義母が生きていたから、盗賊の技術を十二分に仕込まれたんだね。


まだだ。次のトラップは下りてくる壁だ。前方と左右から壁が下りてきてパーティーを分断してしまうのだ。


「この程度なら……アイスプリズン……カリナ、お願い!」

 マジかよ!アニエスさんの魔法が壁を凍りつかせる。谷の影響で、氷結に詳しくなった結果か。


「任せて……風牙爪」

 カリナの爪が壁を切り裂く。


「これ位の重さ……なんともないだっ!凛、頼むだよ」

 ドンガは、そう言うと壁を支えた。ゲームのドンガなら絶対に逃げてると思う。アグレッシブになり過ぎです。


「任せるでござるよ。二人の息は、ピッタリ。これぞ、阿吽の呼吸。以心伝心ラブラブ斬」

 凛の刀が壁を一刀両断した。でも、そのネーミングは止めた方が良いと思う。凪さんが、ますますいじけてしまいます。


「邪魔ですっ!」

 サンダ先生に至っては、拳で壁を砕いた……でも、まだ大丈夫だ。

 次のトラップは計算式を解かないと駄目なのである。しかも大学生レベルの問題なのだ。

これはワープした先にある式をあてはめれば解除される。最短ルートに続く床に立っていれば、一人で戦える筈。


「計算式……なんでこんなのを解く必要があるんだ?」

 谷はそう言うと式をスラスラと解いていった。いや、ヴェルソーのマッドサイエンティストっぷりを際立たせる演出なんですけどね。

そんなあっさり解いたらドヤ顔で、仕込んだヴェルソーの立場がなくなります。

 つうか、お前等絶対にゲームのクリアの仕方間違ってんぞ!

 あれだ、攻略本やサイトを見ておいて、歯ごたえがないっていうタイプだろ!おじさんが子供の頃は、方眼紙にマップを書いたりしたんだぞ。

……なんだかんだ言いながら、ヴェルソーの部屋に到着……だって、ボルフ先生が“ジョージ、次はどっちなんだ!早く、答えろ”って怒鳴るんだもん。


「ここに水の六魔枢がいるのか……行くぞ」

 そこはまるで実験室だ。床も壁も真っ白である。そして所狭しと、フラスコやビーカーが置かれていた。

 ここのグラフィック、凄く面倒だったらしく、グラフィック担当班のトラウマになったそうだ。

 そこにいたのは、異様な雰囲気を放つ白衣を着た小男。顔中傷だらけである。中でも目を惹くのは背中から伸びたホース。それはヴェルソーの背後にある水槽へと繋がっていた。


「ようこそ、天才科学者ヴェルソーの実験室へ。まあ、全員、数分後には死にますがね。でも、安心して下さい。貴方方は科学の礎となるのです」

 そう言うとヴェルソーは高らかに笑った。こいつの自信は戦闘力から来ているのではない。自信の源は水槽に入っている万能回復薬。少し飲むだけで、HPもMPも全回復するチートなアイテム。ゲームバランスの関係上、一個しか手に入らない。


「俺が合図するまで、適当に戦って奴の気を逸らしてて下さい……くらえっ!」

 ヴェルソーの目を狙って、矢を放つ。ダウンしている隙にシャイニングボディで周囲と同じ色に変わる。


「痛いじゃないですか……でも、無駄、無駄。こんな傷は直ぐに回復しますので」

 ヴェルソーが立ち上がると、同時に全員が一斉に攻撃しだした。みるみるうちに、ヴェルソーは傷だらけになっていく。でも、直ぐにヴェルソーの傷は治ってしまう。

(間断ない攻撃に加えて、シャイニングボディによる保護色。なにより万能回復薬に対する過度な自信で、俺の動きに気付いてないな)

 目指すは、水槽の真下。気配を消し、抜き足差し足で近付いていく。やってって良かった、アサシン修行。

 水槽の真下に来たのを、見計らってシャイニングボディを解除。


「超竜変身!ゴールドジョージ」

 懐から取り出したキンウロコ様の鱗を掲げて、変身する。


「いつの間に?そこから離れなさい」

 俺の存在に気付いたヴェルソーは、ボルフ先生達を無視して、俺に攻撃をし始めた。

 でも、俺はそんなヴェルソーを無視する。気分はスズメバチ駆除業者だ。

 背中に背負った板を下し、展開していく。板は五十センチ四方の箱へと変化。この箱はヘゥーボの作った色々収める君を小さくした物。

色々収める君についている蓋を開けて準備完了。


「悪いけど、これを借りるぞ」

 ヴェルソーの背中についているホースを切って、箱の中に差し入れる。万能回復薬は次々に色々収める君の中へ。


「ど、泥棒!それがどんなに貴重な物なのか分かっているのか?」

 分かっているから、パクるんです。今のボーブルの技術では、強化ガラスの水槽なんて作れないし、陶器だと割れる危険性がある。でも、色々収める君なら、万能回復薬の時間が止まるので、液漏れの心配がない。


「お前こそ、自分がどんな状況か分かっているのか?後ろを見てみな」

 回復薬のないヴェルソーが、俺のパーティーに敵う訳もなく一瞬にしてボコボコに。

 これで、クリアと思ったら誰かが俺の襟首を掴んだ。


「ジョージ!あんたこそ、自分がなにしたか分かってるの?あたい達が、どれだけ心配したか分かる?」

 襟首を掴んだのは怒り心頭のカリナさん……あたい達?気付けば俺はパーティー全員に囲まれて、お説教の雨あられを受ける羽目になった。


 這々の体で、ヴェルソーの城から脱出……でも、今回の件は母さんとオデットさんに報告がいるので、一息もつけません。


「ルラキ湖が……あの美しかった湖が……」

 アニエスさんが、変わり果てたルラキ湖を見て涙を流した。ルラキ湖は、魔物や騎士の血で真っ赤に染まっている。

 そして激しい戦いの所為で、生き物の影がない。


「さてと、谷崎君。アニエスさんを笑顔にしたくないか?」

 俺は谷に向かって小声で呟く。


「そんなの当たり前だろ!なにか方法があるのか?」

 あるし、その為に色々仕込んだのだ。


「あるよ……でも、お前がアニエスさんの気持ちに応えるってのが条件だ」

 駄目ならリップル様に進言するだけなんだけどね。


黒歴史ノート持って異世界へ もよろしくお願いします

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