またもや?
今なら編成コストが足らずに、レアキャラの中に混ぜられたノーマルキャラの気持ちが良く分かる。
俺が必死こいて倒した魔物をみんな余裕で倒していく。特にベガルが凄い。剣に光の気をまとわせて一撃で倒していく。聞いた話ではスノウさんと付き合うようになってから、光属性もパワーアップしたそうだ……リア充度も影響するのか。
「しかし、いつ見ても不気味な城だな……なんでわざわざ古い城に住むかね」
ボルフ先生の視線の先にあるのは、蔦が這いまくった古びたお城。ここが闇の六魔枢テネーブル伯爵の居城である。
確かに数日前に現れたにしてはボロっちい。ぶっちゃければホラー感を演出する為なんだけど、古いのにはきちんとした理由がある。
「まあ、本物のテネーブル城ですから。中に住んでいる人も当時の人達ですよ」
一番人気は幸薄そうな幽霊メイドさんだった。ゲームだから幽霊メイドに魅力を感じるけど、実際会うとなれば尻ごみしてしまう……しまった!みんなのテンションを下げてしまったかもしれない。
しかし、心配は杞憂だったようだ。
「当時のお城ですか!それは資料的価値が高いですね。ブレイブ・アイデック時代のお城が当時のまま見られるなんて感激です」
サンダ先生は知的好奇心が刺激された様で、テンションがマックスに……日本で言えば江戸時代のお城が当時のまま見られるようなものか。
「ブレイブ・アイデック時代の品は高値がつくんすよ!しかもテネーブル伯爵の城が出どころとなれば好事家に大受け間違いなしっす。正にお宝の山っすよ」
ユリアは盗賊魂に火が付いたらしく、目を輝かせている。三百年も経てば所有権はなくなっているからセーフだと思う。
ちなみにマエストロ・グライツァーのコレクションを燃やした事がユリアにばれたら『貴族の癖に絵画に興味がないんすか?』ってめちゃ怒られた。
「つまり古流剣術の達人と戦えるという事か。これは得難い経験だな。ウィル・ロッシュ級の使い手がいれば嬉しいんだがな」
ベガルはまだ見ぬ強敵との戦いを想像してうずうずしている。ウィル・ロッシュはブレイブ・アイデックの幼馴染みで、一流の剣士だったという。テネーブル伯爵に仕え、彼もまた魔王軍に寝返ったそうだ。
「お宝か……谷崎先生にお返し出来る物ありますかね?と、父さんにも何かあげたいし」
ゲームと同じ展開で数週間前クレアさんが病に掛かってしまったのだ。まあ、谷がいてくれたお陰で直ぐに治療もでき大事にはいたらなかった。でも、ギリルさんの狼狽っぷりが凄かった。たまった有給を全部使い付きっ切りで看病していたのだ。そんな二人はただ今新婚旅行中である。
父さんって言葉通り、ギリルとクレアさんは無事結婚、アイン・ジードになったのだ。闇落ちどころか順風満帆で、シロー君とも仲良くやっているらしい。
「木を切るのが先ですからね……テネーブル伯爵の部屋はあそこだから、あの辺だな。水の形は円盤状に固定。回転数は一秒毎に五十回転…ハイドロカッター」
六魔枢を二人倒したお陰で俺の魔力も上がり、ハイドロカッターの威力もあがった。太い枝くらいは斬れる様になったのだ。でも、太い幹はまだ無理です。
◇
この城を日本に移築したら、アトラクションとして人気が出ると思う。城の中は薄暗く、いかにもホラーゲームって感じだ。
「お城に入ったらみんな散らばったけど、無事かな?」
今日は初回なので調査に力を割く事にした。その結果、数人ずつに別れての探索になったのである。予め城のマップを渡しておいたので、全員目的地へと散らばっていったのだ。
残された俺とカリナはみんなを探しながら、探索。城の食堂についたら聞き覚えがある声が聞こえて来た。
「自分、仕事がなってないっすよ。天井に蜘蛛の巣があるし、床もテーブルも埃だらけ。こんなのオデットさんに見つかったらお説教じゃすまないっすよ」
説教じゃすまないと言いながら、幽霊メイドに説教するユリア。無口だったゲームとえらい変わりようだ。
(説教しながらフォークをぱくった!?説教は幽霊メイドの気をそらせる為なのか)
「ジョージ、金庫を開けたら古銭がたんまりあったぜ。これ高値がつくんだぞ」
さすがは盗みもしていた元アサシン。ボルフ先生はゲームで開けられない仕様にしていた金庫をこじ開けたらしい。
「……記録を見ると国から多額の税を強要されてますね。伝承と違って贅沢はしていない様ですし、魔族が民を煽動したという説の裏付けになりますね」
サンダ先生は書庫に行って調べ物をしていた様だ。ちなみに全員無傷である。
「なんか変だよね?倒しても倒しても魔物が湧いてくる?これだけの人員を養う食糧をどうやって確保してるんだろ」
調理員の性なのか、カリナは城の食糧事情が気になるらしい。ゲームならプログラムで片付けられるけど、現実だとおかしい。城に住める人員は決まっているのに。
「俺の知っている城と造りは同じですね。今日は一端帰りますよ」
そして明日はクレルがケイオスと一緒にファンをはめるXデイでなのある。さあ、二人とも俺が仕掛けた罠におちるがいい。
◇
総合商店に同行してもらうのはカリナ、凛、ユリアの三人。表むきの用事は普段のお礼である。それに加えて……。
「なんで俺まで悪趣味な企画に付き合わせるんだ」
谷とアニエスの二人にも同行してもらっている。
「ケイオスのプライドはブレイブ・アイデックの子孫って事なんだ。そのプライドを壊さないと、パンチが届かないのさ。アニエスさんは直系でケイオスより立場が上なんだ。プライドを壊すのには打って付けなんだよ……それにこれで、普段のお礼が出来るだろ?」
ユリアがナイテックの血を引いている事は本人にも内緒だし、凛は違う姓を名乗っているので無理なのだ。
「……分かったよ。それで俺は何をすれば良いんだ?」
流石は我が親友。俺の考えを読んでくれたようだ。
「ファンの事を頼む。女房に浮気された上に、年下の餓鬼に慰められたんじゃ彼奴も立つ瀬がないだろ?……しかし、この世界も女性の買い物は長いよな」
谷と俺は中央ホールにあるベンチで待機中である。そして俺達の周りを総合商店の職員が取り囲んでいる。周りにいる職員全てが俺のトラップなのだ。
ここは俺のテリトリーだ。職員には予め今日の罠を説明してある。
「ジョージ様、ファン様一行が到着しました。それとケイオスと、彼が招待したゲストも先ほど到着しました」
報告してきたのは説明会で俺に絡んできた女戦士。今では接客業が板につきフロアリーダーを任せている。ここには男一人では入れない。だからケイオスはゲストと来たのか。
「ご苦労様。何か動きがあったらまたお願いします。くれぐれも一般のお客様にはご迷惑をお掛けしない様に配慮して下さいね」
総合商店の売り上げは安定しており、ボーブルの収入に貢献してくれているのだ。
「万事ぬかりなく……それと、こちらのお支払いをお願いします」
女戦士が手渡してきたのは一枚の領収書……皆さん、容赦なく買い物してくれたようです。
「社割は使える?……使っても、意味ないよな」
ここの経営者は俺だ。社割を使っても、意味はない。ここは素直に払っておこう。でも、ホームキーパー部門に伝わるのだけは防がなくては。
「ジョージ様、ファン様一行がこっちに近付いてきております……」
報告して来たのはフーマ三姉妹の長女萩野。その顔色はどこか優れない。
「……噂をすればなんとやらだ。こっちに来たぜ」
ケイオスは馴染みの娼婦を総合商店に呼び出しファンに抱きつかせる算段らしい。クレルの両親もいるから、そんな事になれば大騒ぎだ。偶然通りかかったケイオスが一緒に非難し、離婚。慰謝料うまーって展開らしい。
「偶然ですわね。でも、お会いしとうございました」
娼婦が両手を広げながらファンに向かって走り出す。
「あなた、その女はなに?浮気者」
「ファン君、娘という奥さんがいながら君は離婚だぞ」
クレルとその父親が予め決めておいた台詞を喋る。ちなみにケイオスは従業員の巧みなブロックにより現場確認する事が出来ない。
「見損なったぞ。ファン君、奥さんを愛していると言ってたではないか!……あれ?」
ケイオスは場に出て来て愕然としていた。娼婦はファンに抱きつく寸前で方向転換して俺の所にきたのだ。
「ジョージ様、お陰様で簿記に合格出来ました。ありがとうございます……ケイオス様、残念でしたわね。もう娼婦の睦言を信じたら駄目ですよ。普通に考えたら分かりませんか?娼婦を駒としか考えないお客と将来を案じてくれる領主様、どっちに重きをおくかなんて」
ケイオスの計画はアサシンギルドからだけでなく、娼婦からも筒抜けだったのだ。
「またお前か……ジョージ・アコーギ!」
そう言われても絡んできたのはそっちなんですが。
「国難で大変な時に、くだらない事に俺の大事な部下を巻き込むな。お前等がなにをしていたかなんて全部分かってるんだよ……ファン、これが報告書だ。きついだろうがしっかり目を通してどうするか決めろ」
ちなみにクレルの相手は女性陣にお任せだ。俺が口で女性にかなう訳がない。
……ケイオスの言い訳『夢にご先祖様が現れて命令してきた。その言葉に従ったら、援助してくれる人に会えたので調子にのった』……前にもこんな事があったよな。
今年一年ありがとうございました。




