ひとくちロマンス
ここは、アンティーク調のオシャレカフェ「HITOMEBORE」。
ひとめぼれ、だなんてマセた名前にしたもんだ。
「いらっしゃっせー」
カランカランとドアが鳴り、市也は店員らしく返事をした。
「コレ!」
「痛っ!・・・なんだよ、店長」
「その、寿司屋みたいな言い方ダメ!
女性客も多いカフェなんだから、もう少し丁寧に、優雅に」
市也は、カウンターの裏でコッソリ叩かれた太ももを、軽くさすった。
はぁ、知ってますよ、どうせ俺にはカフェの店員なんざむいてねー
どっかのガソリンスタンドか、それこそ寿司屋にでもいた方が
まだ様になる。
でも、仕方ねぇだろ。
だって、店長の従兄弟なんだからよ。
「いらっしゃいませ、お決まりですか?」