4 「あなたは今夜目撃者! あの有名マジシャンがなんとスタジオに!」
「わるいけど足りてるから」
プロデューサーが肩を押して退場させようとする。そのたびにジャラジャラと、身につけた貴金属が耳障りな音を立てた。腕輪に首輪、ピアスにネックレス――とりあえず動くたびに小刻みな音がやかましい。
「ホワッツ!? オーノー、日本人冷たいアルねー。ミー、一度でイイからテレビジョン、デテミタカタアルヨー」
「どこ出身やねん! 中国人だってアルなんて言わへんわ!」
「Oh-.中国アル言わないアルか。ソーリー。じゃ、ゴザルでイクヨー」
「日本人だってゴザルなんて言わんわ!」
「OK。じゃ、ニャつけるニャ。ゴメンニャ」
「男がニャをつけるなァ!」
「なんでアンタがキレんねん」
谷川が鼻息のあらい物理学者をたしなめた。
「失礼。物理学に通じるモノがあったので」
「いやいやないやろ。どこにもないやろ」
「シュレディンガーの猫という、立派な物理学用語があるのだ!」
「なるほどのう」
「納得すんなや! つーかソレ、ほんま物理学かいな?」
「事実の検証は是非この『ブツカク』で!」
「スキあらばかい! モォつっこむのしんどい!」
「番組始まって以来のグダグダ感……これはいける!」
突如、プロデューサーが叫んだかと思うと、ビシッ! とサングラスの人を指した。
「採用!」
「ミーの実力、オモイ知ったヨウネ」
サングラスをクィと指で押しあげ、ククク、とフテキに笑う。
「菅っさん、このまま続けるの?」
今井があきらめたようにたずねた。
「うん、時間押してるし、このままいっちゃう。マキでよろぴく」
くるくる指をまわす。
「かーっ! ほんまテキトーなん勘弁してやー!」
「ミー、とても怖いところシってまーす。イマからイクね、テイクアウト」
「移動すんの? これから?」
「チカク、チカクねー。歩いて10分。オチカクヨー」
「みすず、大丈夫か!?」
笹岡が走ってみすずのもとへ駆け寄った。
「う、うん。ちょっと、びっくりしちゃって」
「立てる?」
「え?」
いつのまにかしりもちをついていた。
手を貸してもらって何とか立ち上がる。
「あ、あちしも……」
となりにいたギボー・無謀も、腰をぬかしていた。