17 巨乳少女捜査網! {〆}
「とり憑かれた、と?」
呪物のおそろしさは効果の多様性にある。直接的な危害以外に、長期的な不調をひきおこすもの、時を経て効果を生むもの。幸福すら、それが呪物でよるものなら、呪いとなんらかわりはしない。禍福はあざなえるなわのごとく、あとに大口をあけた不幸が待ちかまえているかもしれない。
呪物はもち主に対して効力をおよぼす。それはつまり、『とり憑かれた』ということ。
「いままで、こんなことはなかった。孫は――灯里は、わしに黙ってどこかへ行くはずがない」
「アカリ、ですって?」
花音がめくじらをたてて反応した。
「もしかして、野墨――灯里というお名前ですの?」
「わしの孫じゃ」
「ま――」
ワナワナふるえだす。
「――彼女なら、さきほどお会いしましたわ!」
「灯里にあったのか!」
おどろきに目をひらく老店主。
「ええ! ずいぶんと、さま変わりされていましたけれど。あれはまるで別人のよう」
「あー。さっきのムネが大きい子? なんか、たくさん取り巻きがいたね。ナンパ男がたくさん」
柄のしたじきからようやく解放された日和がぼやきながら立ち上がる。
「なっ――なぜ、連れてこなんだ!? 悪い男にひっかかっておったのか!」
立ってそうそう、つかまれてガクガク揺さぶられる。
「わ、わるいオトコっていうか、わるいオンナにたぶらかされてるカンジ?」
「人格憑依」
あえかがつぶやく。
「そのカガミに封じられた何者かが、もちぬしにとり憑いて人格をのっとる。彼女は灯里さんであって、灯里さんでないかもしれません」
「そんなことあるんス?」
「ええ。経験がありますから――」
言ってしまってから、「しまった」という表情をするあえか。
「そういえば、このあいだ、師匠が師匠でなくなってたような」
「とにかく! いまは灯里さんの心配が先決です」
話題を変えようと声をあらげ、”一刻堂”に話をもどす。
「その魔女の伝説が真実であるなら、おそろしいことが起こる予感がします」
あえかの脳裏に、昨晩の光景がよみがえる。
武者の亡霊。あの場所で対峙した彼女は、灯里だったのかもしれない。魔女にカラダをのっとられた灯里は、あのような強力な悪霊を復活させ、なにをしようとしていたのだろう?
「わかりましたわっ! 元凶は野墨灯里! かなめを殺したのも、あの女にちがいありませんわっ!」
花音がいきり立つ。
「しもべ一号! 引き返しますわよ!!」
「オレ?」
自分を指さし、あえかをみる。
「待ちなさい! 魔女はひとのこころをたやすく操るすべを持ちます。抵抗力がなければ非常に厄介な敵。しろうとが相手できるものではありません」
「それならば、”舞姫”さま! ご助力ください! ともに逆賊を討ちとりましょう!」
「討ちとるなどと――」
さりげなく”一刻堂”の店主に目をやる。
「灯里を、さがしだしてくれ」
「はい」
しっかりとうなずく。
「灯里さんを見つけましょう。話はそれからです」
「さすが”舞姫”さま! この芦品花音、その心意気に感服いたしました! かんなぎの巫女であられる”舞姫”さまがいれば百人力ですわ!」
「春日くん。用意なさい」
厳しい口調で、あえかは告げた。
「考えうるかぎりの道具をリュックにつめて。手遅れにならないうち、かならず正気にもどして連れ帰ります」




