表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/77

14 逃亡犯潜伏中!

『全校生徒の皆様! 校内に不審者がまぎれこんでおります! みつけましたらただちに風紀委員長であるこの芦名花音あしなかのんまでご報告くださいませ!』


「話がおおきくなってる気がするんだけど」

 校舎中にひびきわたる声に、御堂がげっそりした顔でふりむいた。


「オレたちがなにしたっていうんだ!」

「健全な部活動をいとなむ女子たちに可愛かわいイタズラしかけただけじゃないか!」


「やっぱバ○サンのケムリがまずかったんじゃね?」

 御堂がカバンをあさり、残りの缶づめを取りだした。

「てかさ、なんでバ○サン?」

「家にゴキがでたから買ってこいってうちのママンが」


『――不審者は三人! とくにわれらがなよ竹の”かぐや”さまを、あろう事か下劣なワナにはめ、あまつさえ許嫁にまでおとしめた犯罪人春日日和! その仲間志村(なにがし)とその他一名! 正々堂々出てきなさい! わが家宝三国兼定みくにかねさだでお相手しますわ!』


「だれが出てくもんか」

 いわれのない罪で犯罪者あつかいされ、ムッとする日和。


「日和、いまの話は本当か?」

 志村に声をかけられてふりむくと、目の色を変えた友がいた。

「きさまというヤツは、えげつないわなで許嫁という地位を手にいれたのか! うらやましいぞ日和! オレにもやりかた教えろ!」

「ちがう! 知らん! あれはヤツらの作戦だ!」

「バカおまえら! 騒ぐなよ! 居場所バレるだろ!」


 緑の葉をしげらせたソメイヨシノの木がおおげさにガサゴソ揺れて、しばらくして沈黙する。


「……どうやらバレてないようだ」

 ほっとしたのもつかの間、


――ヒュンッ


 こずえを切り裂き、ガコォン! とふといみきに尾羽をつけた矢が突きささった。

 固まる三人。


「……はずしました」


 むね当てをつけた白袴の少女が弓をおろした。

 後輩からわたされた二の矢を受けとり、となりにいる花音に冷静につげる。


「つぎは当てます」

「そう。ではやっておしまいなさい」

「くそぅ!!」


 御堂はバ○サンの栓をぬくと、木の上から投げつけた。

「同じ手はくいませんことよ!」

 芦名花音はステップをつけて踏みこむと、転がってきた缶をつま先で蹴りかえした。

 白いケムリを上げながら、バ○サンはソメイヨシノの幹にあたってぼてっ、と下に転がった。


「――ゴフッ、げふぐふっ」


 日和以下3名がバ○サンのケムリに巻かれる。

「今ですわ! 奴らに逃げ場はありません!」

 威勢のいい声がおしよせてくる。


「おとなしくなさい! 私が天国に送ってさしあげますわ」


「……どうやらこれまでのようだ。女子高生のオシオキ、オレは甘んじてうけよう」

「志村! 目を覚ませ! おまえがおもってるよりヤツらの尋問はつらいんだぞ!」

 尋問プレイの妄想にちた友の、ほほを叩いて正気にさまそうと努力する。


「あきらめるのはまだ早い」

「御堂……この状況で、おまえはまだ、あきらめていないというのか?」

「あきらめたらそこで試合終了だ。オレたちにはまだ、やらなければならないことがある」


 カメラを雄々(おお)しくかかげる御堂。

 陽光を反射するレンズのかがやきに、志村が目覚めた。

「そうひゃ! 目的を果たふまへ、まだ死ふわへはゆはん!」

 さんざんほほを張られ、痛みに涙をうかべていた。


「しかしどうやって……?」

「この御堂忠史。かつて幼少の頃は昆虫博士と呼ばれ、ムシキングの二つ名で呼ばれたこともある。この木はソメイヨシノ。この季節、青々としげった葉をむさぼり食らうモノどもに若干の心当たりがある」

 デジタルカメラを首から下げると、枝をつかむ。


「うんせっ、うんせっ」


「なにしてんの?」

「揺らすんだ! そこに脱出の糸口がある!」

 やることもないため、二人も懸命に揺らしはじめる。

「なにをしているのかしら」

 もはや奴ら(きゃつら)かごのなか。


――なにをしても無駄なこと。


「――捕縛いたします。皆様、相手は男。窮鼠きゅうそネコをかむとも申します。各々武器を手放さぬよう」

 と言って、三国兼定を手にゆうゆうと木の根本に近づく。


「もっとはげしく! 勢いが足りない!」

「アイアイサー!」


 妙なかけ声をあげて木の上に居座るおろか者どもに天誅てんちゅうを下すべく、なぎなたの先を頭上にむける。


 ポト。


 その剣先に、ふとい毛糸のようなモノが落ちてきた。

 まじまじとながめる。

 もぞもぞ動いていた。

 ウネウネとのたくっている。

 全身をおぞけが駆けぬけた。


「いぃーーーーーーーーーーーやぁーーーーーーーーー!!!!」


「「きゃーーーーーーーーーー!!!!」」


 緑色や茶色の毛虫。

 次から次へと降ってくる。

 毛虫の雨に右往左往し、前後不覚に陥るルカ女の女子たち。


「いまだ!」


 御堂の合図で幹にしがみついて地面までおりる。

「こっちだ!」

 出口にむかう日和と逆方向へと駆け去る二人。


「なんで!?」

 Uターンして追いかけた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ