8 オンナノコノキモチ<2>
「委員長さん、用事をたのまれてくれるかしら?」
帰りのホームルームにて、美鈴は名指しで指名された。
「あ、はい」
今日は撮影なかったよね。予定を思い起こし、うなずく。
日和に声をかけようとして、また喧嘩してたことに気づいてためらう。
「先生!」
ぴっ、と手があがる。
「それならボクも手伝います!」
「え!」
ひょっとして――
期待して手のあがった席をみると、話したこともない男子だった。
「それならオレも!」
「いやいや拙者が!」
ガッカリする美鈴。
「あなたたち男には頼めない用事なの。職員室まできてくれる?」
「はい、わかりました」
美鈴は立ちあがると、チラリと日和の席を見た。
しきりに窓の外を気にしている。
香月の到着を待っているのだろう。
バカみたい!
「――先生! 春日君に手伝ってもらっていいですか!」
邪魔してやろう。そんな気持ちがムクムクとわいた。
「だから言ってるでしょう? 男はいらないの」
「でも――」
「そうだぞ! 俺いそがしいんだ!」
帰り支度をまとめてソワソワしている様子をにらむ。
「どうせあの女のところいくんでしょ! 少しくらい手伝ってくれてもいいじゃない!」
「おまっ! なぜそこでキレる」
「キレてないわよ! バカじゃないの!?」
「バカじゃないよぅ……」
剣幕におびえる日和。
「痴話ゲンカならホームルームのあとでやってくれない?」
「そんなんじゃないです! その――わたし一人だけだと、いろいろ大変だから……」
「そういえば、副委員長の役が空いてたわね」
美鈴が顔をかがやかせる。
「はい!」
「そ。じゃ、春日君よろしく!」
「なんですと!?」
青天の霹靂。
「その任命はいかがなものかと!?」
「それじゃ多数決をとりましょう。春日君が副委員長になることに反対の人」
日和はビシッ! と手を挙げた。
日和以外は手を挙げなかった。
「それじゃ確定」
「民主主義反対!!」
机をバシバシたたいて遺憾の意を示すが、少数派の意見は無視された。
「それじゃ委員長と副委員長、このあと職員室まで来ること」